魔界人の妄想録

思いついたお話しや物語を書いています

交野パラレルワールド 星から落ちた神様 序章

2023年11月18日 20時10分31秒 | 物語
僕は星野夏彦。35歳独身、一人暮らし。一応公務員で実は作家志望、といっても小説などといった類いではなく、妖怪や神様などの伝説や動物などを対象にした物語を書いていて、どちらかといえば伝奇作家と呼ばれるようになりたいと思っている。
交野市に赴任して3年。日頃は自宅と職場の往復に時間を費やしてんだけど、「伝奇作家」としてはこの地域は僕にとっては魅力的で宝物がざくざく。周辺を歩き回って取材し、ある物語を執筆中です。ものになるかどうかはわからないけど、まあ趣味の延長だね。
その日の夜も、夜泣石は本当に夜泣くんだろうかと考えながら構想を練っていたところ、凄まじい音と地響きに驚いた。頭の中を除夜の鐘が鳴り響いているような感覚だった。そして意識が遠のいていくのを感じた。
どれくらい時間がたったんだろう、ふと我に返りった。実際は寝てしまって目が覚めたというところなんでだろうけれど。実はインターホンが何回も鳴らされて目が覚めたようだ。まだ鳴らされているので、慌てて返事をする。
「はい、なんでしょう」
「なんでしょう、じゃないです。どうしたんですか連絡もなく休むなんて」
モニターには女性の顔が。あ、沙織さんだ。天野沙織さんは僕の3年後輩の同僚。非常に有能な人で仕事もテキパキこなしミスはほとんどない、というか完璧にこなしてしまう。先輩の僕なんかよりも評価は段違いに高い。部長の陰謀で席は遠く離れているし、仕事の絡みもないので話をする機会は皆無と言っていいほどない。ある日の飲み会でこの部長に、沙織さんへの思いをくどくど話していたようなんだけど、そのせいかな?だけどこれはあとから同僚に聞いた話で僕には全く記憶がない。
「休むってどういうこと。僕は今起きたとこなんだけど。」
「相当寝ぼけてますね。もう夕方です。部長が心配して、連絡もないのはおかしい。天野さん、家が近いようだから様子を見てきてくれないか、って言われたんですよ。私もドキドキしながらこちらに来ました。生きてるようでほっとしました。お菓子買ってきたんで開けてくれますか?」
「わかりました」とマンションの玄関スイッチを押す。
確かに話をしながらも頭はぼーっとしている。足下も多少危なっかしい。
ドアをたたく音。そして「天野です」という声。
ドアを開けると、少し怒った顔の沙織さん。でもとても嬉しくなった。
「じゃあこれ、渡しますね。そんなニヤニヤしないでください。部屋には絶対入るなって部長から釘を刺されてますからね。」
いや、ニヤニヤしているつもりはないんだか、あまり体に力が入っていない。意識がまた遠のいていく。体が斜めになって沙織さんもほうに倒れかかっているようだ。「きゃあああ」という沙織さんのけたたましい悲鳴が聞こえたが、そこでまた僕の意識は途絶えた。しかしその直前に頬に強い衝撃があったのを確かに覚えている。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿