魔界人の妄想録

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【饒速日考4 何故物部氏の御祖神はニギハヤヒなのか?

2022年11月23日 14時25分41秒 | 紀行
真弓常忠氏の名著とされる『古代の鉄と神々』によると、物部氏は製鉄に携わっており、このため製鉄の神としての「オオナムチ(=大物主命、大国主命)」を奉じていた。しかし御祖神はニギハヤヒとしているのは何故か?
真弓氏によると「物部氏の祖神であるニギハヤヒノミコト(饒速日命)は火から構想された神格とみる説は早くからあり」とし、『因幡国伊福部臣古志』と題する系図に
大己貴命の子として「五十研究丹穂命(いきしにぎほのみこと)」とされており、これは饒速日命の別名とされる「胆杵磯丹杵穂命(いきしにぎほのみこと)」通じるとしている。そしてこの神は尾張氏の祖神である「火明命」であり、このことからニギハヤヒは「火の神」としている。真弓氏はニギハヤヒが製鉄に関連していることを伝えようとしているわけだけれど、ここでは深入りせず、それよりもこの系図には大国主を初代とすると、第8代に「櫛玉饒速日命」があり、ここではオオナムチとの関係を確認することにとどめる。
だとすれば、物部氏は偉大な「大国主命=大己貴命」を御祖神とするのではなく「饒速日命」としたのだろうか。
僕はここにも物部氏の政治的意図があるのだと思う。天武天皇の時代は、物部氏は石上とウジ名を変え、天皇に非常に近い朝臣という高い地位についた石上麻呂がいたことは先述の通り。そしてその時代から見ても古い神々の時代には、天皇と変わらない地位の神であり、その時代から天皇に恭順していたことを示したかったに違いない。つまり物部氏の祖神は天津神でなければならなかった。大国主はどう頑張っても「国津神」で、この神を御祖神とするわけにはいかなかったに違いない。Wikipediaの新撰姓氏録によれば「ニギハヤヒは、天神(高天原出身、皇統ではない)、天火明命(アメノホアカリ)は天孫(天照大神の孫)とし両者を別とする。」とある。さらに物部氏による『先代旧事本紀』では饒速日命と天火明命は同一神とし、自らを天孫としている。ここでさらに注意しておくべきは、住吉神を奉じる津守氏は、この天火明命を自らの御祖神としており、ここに勢力的な力が働いたのではないかと考えている。

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