魔界人の妄想録

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お話し くまうさぎ

2023年11月18日 10時17分15秒 | 物語
 ある朝、いつものように目覚ましにしているテレビがオンになった。夢見がよくなかったので、とても爽快とはいえない目覚めだ。悪い夢だったが、しかしどんな夢であったのかは覚えていない。まあ、よくない夢だったんだろう。今日も仕事だ。いつものように歯磨きへ。そして鏡に映った自分の姿に驚いた。耳がウサギのように伸びている。あのスポックより相当長い。顔中毛むくじゃら。なんだこれは?つかんだ歯ブラシを落としてしまった。
それでも懐かしいような気もするから、いつも通りなんだろうととりあえず納得する。
 そしていつものように朝シャワーを浴びようと服を脱ぐと、なんと体中毛むくじゃら。いつからこうなったんだろうと少し疑問に思ったが、いやいやいつも通りなんだろうとここでも納得する。だって浴室の排水溝がよく詰まるじゃないか。このせいだよ。つまりいつも通りってことだ。
シャワーを終え、服を着て、改めて鏡で自分の姿を観る。やはり毛むくじゃらだ。耳は確かにウサギのようだが、毛むくじゃらの顔はどちらかといえば、こりゃ熊だな。と苦笑い。それは“くまうさぎ”というか“うさぎくま”というか、まあそんなところだ。
 ワイシャツを着てネクタイを締める。上着を着て職場へ向かう。道すがら多くの人とすれ違うが特に驚かれることはなかった。他の人には人間の姿に見えているのか、少なくとも違和感はないようだ。
駅について電車を待っていると、いつものようにこちらに走ってくる同僚のA子さんの姿がみえたので、いつものように「おはよう」と声をかけた。A子さんは声をかけられたことに非常に驚いたようだった。「え?誰?」という表情のあと「ああ、Xさんですね。声でわかった。」
「どうしたんですか、今日はとても顔色が悪いですよ。別人みたいです」と言われた。そして「あの私今日はあっちの車両から乗りますね」と走っていった。あなたとはとても一緒にいられないという感じだった。僕のことを知っているヒトには、この姿がある程度わかるのかもしれない。だとしたら、確かに逃げ出したくなるよね、これじゃあ。
 そういえば僕の周りにヒトはまばら。なんかあるんだろうな、きっと。
 困ったもんだ。

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