どれくらい時間がたったのだろう。ヒルコは自分が自分以外の世界の中にあることを自覚し始めていた。雨水が口に入れば飲み込み、固形物が入ればなんでも飲み込んだ。ヒルコはそうして生きながらえていた。雨に打たれても、強い日差しにさらされても、どれほど冷たい風がヒルコを痛めつけても、ヒルコはただ受け入れ耐えていた。どうやら生き続ける運命にあるらしい。昼にしろ夜にしろ、目が開いていないヒルコにはどちらでも関係はなかった。ただ終わることなき空腹だけはヒルコを悩ませていた。
自分の体をゆだねているものの動きがゆったりしたものになった。川から海に入ったようだがヒルコは知る由もなく、ただ任せているだけだ。
しかし葦の舟は次第に緩んできた。にじみ出てきた水はヒルコの体を冷やし始めた。葦の舟はもうすぐばらばらになってしまうかもしれない。さすがに水に沈めばヒルコも生き延びることは難しいだろう。状況を理解はできなかったがヒルコは「死」という得体のしれない恐ろしい感覚に包まれた。それは2度目の感覚。この体が流された時だ。ヒルコはイザナミの最後の言葉を思い出していた。
泣き叫ぶ声。「あなたは日の御子、日る子」
そうか「私はヒルコというのだ。」
そしてそれは甘い感覚に変わった。ぬくもりのある優しい感覚。
その時ふわりと体が宙に浮いたような気がした。
自分の体をゆだねているものの動きがゆったりしたものになった。川から海に入ったようだがヒルコは知る由もなく、ただ任せているだけだ。
しかし葦の舟は次第に緩んできた。にじみ出てきた水はヒルコの体を冷やし始めた。葦の舟はもうすぐばらばらになってしまうかもしれない。さすがに水に沈めばヒルコも生き延びることは難しいだろう。状況を理解はできなかったがヒルコは「死」という得体のしれない恐ろしい感覚に包まれた。それは2度目の感覚。この体が流された時だ。ヒルコはイザナミの最後の言葉を思い出していた。
泣き叫ぶ声。「あなたは日の御子、日る子」
そうか「私はヒルコというのだ。」
そしてそれは甘い感覚に変わった。ぬくもりのある優しい感覚。
その時ふわりと体が宙に浮いたような気がした。