くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ゴーストハント⑤鮮血の迷宮」小野不由美

2011-07-24 20:52:38 | ミステリ・サスペンス・ホラー
耳鼻科に行きました。
でも、蓄膿症じゃなかった。どうも歯肉炎じゃないかと。歯槽膿漏ですかね。もう一度歯医者に行くべきなのか。それとも、その可能性を見過ごす歯医者に通い続けていいものなのか、迷います。一時期よりは楽になりましたがね。
肉体が不健康なときは、自分だけ不公平な感じがするものです。でも、「浦戸」とは共感し合えないな。
小野不由美「ゴーストハント⑤鮮血の迷宮」(メディアファクトリー)。どうしてもあのラストの「浦戸」が、バスタブに入っているあの表情が、いなだ詩穂さんの絵で浮かんでくる衝撃の回です。
でも、ですね。今回読んでみてびっくりしたのは、「浦戸」は結構後半になってからしか出てこない。
前半ずーっと家のことが描かれます。わたしは心ひそかに、小野さんの重要なモチーフのひとつは「家」(「館」)ではないかと考えているのですが、この作品は顕著な例ですね。(極端にいえば「ゴーストハント」は「家」と「学校」の因縁を描く物語ではないかとも思います)
外側と内側に測量上の落差のある洋館。行方不明になった若い人たち。集められた霊能者たち。壁一面に描かれる「助けて」「死にたくない」の文字。
怖い。
こんな迷路みたいな家、わたし(すごい方向音痴)なら何もなくとも迷子確実です。でも幸い(?)若くはないので餌食にはならないで済むかと思うのですが。
ドラキュラ伝説と、エリザベト・バートリとの混同など、ゴシック風のエッセンスもあります。
ところで、この巻で気になったのはもうひとつ。「浦戸」が経営していた「美山慈善病院」。
「施設に入るのは無料で、食費も無料。収入がない人には生活必需品の支給まであったらしいの。その施設にいれば、衣食住の心配はいらないってわけね」
「その代わり、働ける人には病院の掃除や雑用、敷地内の整備なんかを手伝わせていたらしいけど。これは鉦幸氏が別の場所に持っていた孤児院や救貧院でも同様のシステムだったみたい」
こんなふうにまどかさんが語ります。「大盤振る舞いの慈善事業」とも「すごくサービスのいいところ」とも言っている。
だけどこのあたり、わたしにはどうも納得できないというか……。いや、ストーリーには全く関係ないんですが、「患者作業」って、傍目から見るといいシステムなんでしょうか?
誠に勝手な連想なのですが、わたしはこの慈善病院の説明でハンセン病療養所を思い出しました。ここに暮らす人々の手記を読むと、「患者作業」がいかに過酷で苦痛だったかがよく出てきます。だって自分も病人なんだよ。
まどかさんの話によると、介護人も多かったそうなので、わたしの考えすぎだとは思いますが、入院患者なのに作業をしなくてはならないのはやっぱり辛いよな、と。
無料だからしかたないというご意見もあるかもしれませんが、後半で実は料金返納の義務はあったことも明かされる。
孤児院はもちろんですが、この病院も救貧院も若い人限定なのかしら。それとも人集めのために、一定のバランスが取れるような構成になっているのかしら。
でも、「浦戸」がなんの見返りもなく年寄りを救済するとは思えないので、やっぱりそうなのかも。
彼の腹心たちが何を考えていたのか、そして、別荘番の男性が姿を消したのは何かあったのか。
この解決されない闇のような疑問が、この物語にさらに暗い影を投げ掛けるように思います。

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