くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ぼくとあいつのラストラン」佐々木ひとみ

2013-06-27 05:09:08 | YA・児童書
 スカイエマさんが挿絵を書いている本、まずは読みやすい児童書から、ということで、佐々木ひとみ「ぼくとあいつのラストラン」(ポプラ社)です。
 あらすじを読むと展開は自ずと知れてしまうんですが……。
「大すきなジイちゃんが死んでしまった……。そのお葬式の日、あいつがぼくのまえにあらわれた。ボサボサ頭に、白いシャツ、カーキ色のズボン。ニヤニヤわらって、こういうんだ。『おい、走ろうぜ』ー」
 でも、ジイちゃんが隣の家の方であること、お父さんは実の親同然に慕っていること、病気のこととかバアちゃんとのやりとりとか、細部に工夫があっておもしろく読みました。特に、隣に行くとき本来なら道路まで出るのに、急ぐからと畑を突っ切って行くところにリアリティを感じてしまうわたしです。そりゃ、わたしの実家から畑を通ると、一キロ先の分校に半分くらいの距離で行けるからなんですが。(親が通った分校です。今はなくなってしまいましたが、小さい頃はよく遊びました)
 ジイちゃんは若い頃から足が速くて、地域の駅伝チームの指導までしていた。バアちゃんはいいところの娘だったのに、反対を押し切って嫁にきた。結婚記念日に、ジイちゃんはプレゼントを隠していて、それをみつけるようにいう。みつければバアちゃんの勝ち。みつからないときは、頭を下げて教えてもらう、というのも仲がよくていいな。
 著者は仙台在住なんだそうです。
「どんなにか走りたかったべなぁ」なんて台詞もあって、地元をイメージしているのかもと思いました。「だべ」圏は広いですけどね。「小宿」という習慣とか「種馬所」という地名もなんかいいよね。
 主人公の武(タケ)の足が、挿絵ではものすごく細くてつい他の絵と比べてみたくなったんですが、ラストの見開きが素晴らしく効果的です。
 表紙カバー、表裏は同じ場所を時間を変えて描いているのですね。青い空、木洩れ日の中を走る二人の少年。夕闇の中、昼間の喧騒が嘘のようにひっそりとして、カンナの花が揺れている。
 もうその時刻になると、何もかもが明らかになっていますよね。ヒサオとユウコのことも。そういう、「絵で語る」ようなところが、エマさんの魅力なんだと思います。
 


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