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マイケル・サンデル『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)』

2011年05月30日 01時13分56秒 | 書評(その他著者)
ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)
マイケル サンデル,Michael J. Sandel
早川書房


今回は、マイケル・サンデル『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)』を紹介します。昨年話題になったハーバード白熱教室の講義録です。学生との議論があるので、講義を受けている感じがする。レクチャーの最後は千葉大学の小林教授のワンポイント解説がある。DVDを買うよりは安いかも。最初の第1回から第5回ぐらいまでは私が経済学部卒なのかその考え方がよくわかり、読みやすかった。サンデル教授と学生達の議論はのところは読みやすいかもしれないね。やっぱり第6回のカントの話はサンデル教授の講義がほとんどで学生達との議論がほとんどなかったので、難しいね。これでもわかりやすく説明してあるんだろうけど、やっぱり難しいね。

第1回 殺人に正義はあるか
レクチャー1 犠牲になる命を選べるか
○道徳的ジレンマ
○道徳的論法
・帰結主義的:行為の帰結(結果)に道徳性を求める
・定言的な考え方:ある種の義務や権利の中に道徳性を求める
レクチャー2 サバイバルのための殺人
○ベンサムの功利主義「最大多数の最大幸福」-正しいことは、効用を最大化すること([快楽ー苦痛]を最大化する)
ミニョネット号沈没ー一人を殺し三人が生き残った(詳しくはリンク先参照)
(その行為についての反論)
1,殺人は殺人。どんな理由があったにしろ、絶対に間違っている。
→どこから基本的人権が来ているのか?
2,公正な手続きが必要。例え犠牲になることがあっても、一人一人が平等に扱われるべき。
→公正な手続きはどんな結果をも正当化するのか?
3,同意の考え方。強制の下でなければ、同意があれば残りの者を助けるために、一人の命を奪うこともやむをえないのではないか。
→同意の道徳的な働きはなにか?

第2回 命に値段をつけられるのか
レクチャー1 ある企業のあやまち
○費用便益分析ーその事例
・費用と便益の数値化(金銭化)→その結果から政策や法律を決定していこう
○功利主義への反論
1,個人の権利もしくは少数派の権利を尊重していない
2,全ての価値や好みを集計することは不可能ー(人の命であっても)全ての価値を金銭に置き換えることが出来るのか?
レクチャー2 高級な「喜び」低級な「喜び」
○ジョン・スチュワート・ミル
・ベンサムの功利主義の理論を引き継ぐ
・正義を守り人の尊厳を尊重すれば人間の幸福を最大化できる
・人間の行為には質の違いがあるのではないかー高級な「喜び」低級な「喜び」の区別→両方を経験してみると、高級な「喜び」を選ぶ→ミルの議論はすでに功利主義の枠を超えているのではないか?

第3回 「富」は誰のもの?
レクチャー1 課税に「正義」はあるか
○リバタリアニズム[市場原理主義、自由原理主義、自由至上主義]ー個人の自由や所有権を含む権利を非常に重要視する
・自己所有の考え方ー自分を所有するのは自分だ
○リバタリアニズムによる政府の見方
1,干渉主義的な立法を否定ー自分を守ることを強制する立法の否定 (ex)シートベルトの着用義務
2,道徳的な立法の否定ー美徳の促進ないしは道徳的な法律の制定の否定 (ex)同性愛者の結婚の禁止
3,富者から貧者への所得の再分配の否定
○何が所得の分配を公正にするのか(ノージック)
1,取得の正義(最初の保有)ー収入を得るための手段を公正に取得したか
2,移転の正義(自由市場)ーその分配が自由な意思決定によるものか
・2つの正義によって公正に稼いだお金であれば、課税であっても所得を取り上げるのは間違っている。課税は道徳的に強制労働に等しい。
→自己所有の原理の侵害ー功利主義が破綻した理由
レクチャー2 「私」を所有しているのは誰?
○リバタリアニズムへの反論
1,貧しい者のほうがより金を必要としている
2,統治される者の同意による課税は強制ではない
3,成功したものは社会に借りがある
4,富は部分的に運で決まるので当然のものではない

第4回 この土地は誰のもの?ーこの回は『これからの「正義」の話をしよう』には収録されていない。
レクチャー1 土地略奪に正義はあるか
○ジョン・ロック
・社会契約論の主張者
・アメリカ独立宣言に大きな影響を与えた
○自然権を持つとは
・自然状態(政府や法ができる前の状態)ー自由な状態なんだけど、行動が制約される→自然法による縛り
・自然法による唯一の縛りー自然権(生命・自由・財産)を自ら手放すことはできないし、他人からそれを取り上げることもできない
○なぜ自然法による縛りがあるのか
・我々は神の被造物だからー厳密に言えば自分のものではない
・私たちの自然権は不可譲なものだからー差し上げたり取引したり売ったりすることができない
※アメリカ独立宣言「アメリカ国民には、生命、自由、そして幸福の追求に対する不可譲の権利がある」
○私有財産に関して
・政府や法が存在しない状態でも、私有財産権は生じる
・自分自身の所有者であり、その労働の所有者であり、労働の果実の所有者である。自然状態で集めたり、狩りをしたりして手に入れたものだけでなく、囲い込み、耕して改良した土地の所有者である。ただし、他者のために同様の土地が残されている場合に限る。
レクチャー2 社会に入る「同意」
○なぜ自然状態にとどまらずに政府を作ったのか?
・自然状態では誰しも自然法が執行できる→自然法を侵害した場合は誰しも処罰できる
→生命・自由・財産に対する不可譲の原理を享受できなくなる
→自然状態から抜け出すためにはみんな(政府やコミュニティ)に同意するしかない
○ロックと政府について
・恣意的ではない一般的な法の下で、政府が選択したものや多数派が行ったことであれば、課税であろうと徴兵であろうと、それは人々の基本的な権利の侵害には当たらない。

第5回 お金で買えるもの 買えないもの
レクチャー1 兵士は金で雇えるか
○軍事の徴兵制ー同意に関する問題として
・兵士を確保するためには
1,徴兵制
2,条件付徴兵制(行きたくなければ自分の代わりに兵士を雇ってもいい。南北戦争時のシステム)
3,志願制
・リバタリアニズムだと3→2→1の順だろう
○志願制や条件付徴兵制に対する反論
・公平性と自由
・市民道徳と公益
レクチャー2 母性売り出し中
ベビーM訴訟 (詳しくはリンク先参照)
○代理母契約強制に対する反対理由
・同意に瑕疵があったー情報が不完全
・非人間的ー金で買ってはいけないものがあるんじゃないのか

第6回 動機と結果 どちらが大切?
レクチャー1 自分の動機に注意
○カントの言う自由とは
・自由に行動することー自律的に行動することー自分自身で与える法則に従って行動することーそこに導く理性はひとつ
→目的自体のために目的を選ぶことが出来る→人の尊厳を尊重する→理性を実践する
・他律的に行動することー自分で選んだわけではない傾向性(本能的な欲望や衝動)に従って行動すること
○カントの道徳性の概念
・行為の道徳的価値は、義務の動機に基づく。つまり、正しい行いを正しい理由のためにする。
・善意は、その結果や成果のために、良いものになるのではない。それ自体が良いものである。
・道徳法則に従うためには、何らかのインセンティブが必要である。そのインセンティブは道徳法則に対する敬意だ。
・義務の動機の反対は、傾向性に基づく動機である。
○純粋実践理性
・特定の経験的目的とは無関係に、アプリオリ(先験的:経験的認識に先立つ)に意思を規定する道徳法則を制定する理性
レクチャー2 道徳性の最高原理
○カントの3つの対比
<道徳性>
1.動機:義務vs傾向性
<自由>
2.意思の決定:自律的vs他律的
<理性>
3.命法:定言命法vs仮言命法
○理性はどうやって意思を決めることができるのか?
・理性が人の意思を決めるなら、その意思は自然の支配や傾向性、あるいは状況から独立して判断する力となる
・仮言命法(XがほしいならYをしろ)ー目的に対して手段を選ぶ理性
・定言命法
○定言命法
1.普遍的法則の定式ー格率(人がそれに従って行動す原則)の普遍化ー格率が定言命法に相当しているかを調べるテスト
2.目的としての人間性の定式ー人間性を単に手段としてのみでなく、常に同時に目的として扱うように行為せよ

東京大学特別授業[前篇]ーイチローの年俸は高すぎる?
○第1回レクチャー2のミニョネット号沈没の議論
○イチローの年俸は高すぎるのか?
○東大の入学資格をお金で買えるのか?


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