読書・映画を通した想いの整理棚

読書をしたり映画を視たりした後、浮かんだ感想・批評を行なうブログ。ジャンルは多岐にわたる。

女性科学者に支えられたノーベル賞(4)データの山からパルサーを探しあてたジョスリン・ベル

2006-05-05 11:49:17 | 科学書
 ジョスリン・ベルは、粘り強く、心優しき女性天文学者だった。大江秀房氏は『科学史から消された女性たち』でそう述べている。
 イギリスの天文学者で、1960年代の終わりに、初めて、「電波信号源が遠い宇宙空間にある」「パルサー」を4個も発見したのだ。しかし、上司の教授、ヒューイッシュがこの件でノーベル賞を受賞してしまった。

 当時は、パルサーの存在がまったく予想されていなかったので、観測された電波信号が地球上の人間活動に起源をもつものと広く思われていた。

 ジョスリン・ベルは、「3メートル弱の木の杭を1000本ぐらい大地に打ち込み、アンテナとする支柱間に銅線を張りめぐらし、それらを導線ケーブルでつなぎました。銅線が長ければ長いほど電波を捕獲する感度があがるので、銅線は全部で190メートルは使いました。」と述べている。つまり、電波望遠鏡の建設も自分の手で行なったのである。そして出来上がった電波望遠鏡から毎日吐き出されてくる、30メートルもの記録用紙を根気よく解析し、ついに新しい電波パルス=パルサーに出会ったのであった。

 上司のヒューイッシュ教授は、むしろその電波源を人間活動に由来すると考えていた。だから、ジョスリン・ベルが、どうみても「ジュスリンが発見した電波信号源が遠い宇宙空間にある」という認識に到達していたのは間違いないと、ヒューイッシュの同僚の天文物理学者フレッド・ホイルが、当時から主張し、ジュスリンをもっと評価すべきとロンドンタイムスに投稿したぐらいだ。

 ジョスリン・ベルが受けたこうした女性差別や不遇に対する考え方は、「(差別や不遇への)批判は正しいかもしれないが、女性が身を持ってそれを乗り越えないかぎり、現状を甘んじて受け入れるしかない」というものだったらしい。だから、ヒューイッシュ教授のノーベル賞受賞も順当と思っていたらしい。なんとも謙虚でいじらしい。
 
 この話を読んで、思い出したのがジョディ・フォスター主演の「コンタクト」という映画だ。あれは、このジョスリン・ベルの物語であった。

 『科学史から消された女性たち』にでてくる女性科学者たちは、どの人もドキュメントにしたり、映画にしたりする価値がある人たちばかりだ。

 これにて、科学は男性たちばかりのものではなかった、情熱を持って科学研究に取り組んだ女性が多くいた、ただ歴史に埋もれているだけだという記入を終了する。