アメリカの知の巨人ノーム・チョムスキーの『9.11アメリカに報復する資格はない!』 2001年9月11日のいわゆる9.11テロ後1ヶ月の間に行われたチョムスキーへのインタビュー集。今でこそ、アフガニスタン・イラクへのアメリカによる攻撃がヨカラヌものだったという識者は多い。しかし、テロ直後にこのような見解を明らかにすることは普通は難しかろう。真のインテリゲンチャに違いない。 . . . 本文を読む
悪意と悪事が生じて怨みが生まれ、復讐が生まれて再復讐が生じ、負のスパイラルに陥る。現代にもいくらでも例がある。その連鎖を止めるのに一つの方法がある。「鎮魂」の行為である。法隆寺は実は「怨霊を鎮める鎮魂の寺」だった。梅原猛氏の渾身の作。今までの歴史では、聖徳太子の「氏寺」という認識。それをひっくり返す歴史書である。 . . . 本文を読む
「近代日本は、二度、神を殺した」というのが基本主張の書。著者は、かの、哲学者であり、闘う学長であり、スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」の脚本家であり、縄文の3仙人の一人と言われた梅原猛氏である。2度の神殺しとは、一度目は、明治期の「廃仏毀釈」、二度目は、敗戦時、現人神の「人間宣言」。 . . . 本文を読む
「戦争は人を殺す、それがすべてである。」に始まる対談・鼎談『戦争の克服』現代世界随一の知識人ジャック・デリダのアジアにおける高弟哲学者-鵜飼哲氏、国際法学者-阿部浩己氏、作家-森巣博氏の3者。壮大な世界戦争の分析である。20世紀が終わって、19世紀に戻ってしまったというのが3人の一致した世界の見方。勿論、戦争の頻発に由来させてのことである。 . . . 本文を読む
“何かに凝る”ということは、人間いくらでもある。ある技能を身につけることに凝ればその領域の職人に、ある分野の知識習得に凝り努めれば学者になれる。そういう凝り方は病気とはみなされない。しかし、「ブランドもの買い物症候群」「グルメ食べ歩き症候群」「不倫症候群」ともなれば、病気である。家庭や関係を壊したり、人を傷つけたりするからである。大平健『豊かさの精神病理』はそれを教えてくれる。 . . . 本文を読む
法律は用語が難しくていやだという人が多いが、法律はことばを現実へ適用するとどうなるかという問題をシビアに思考訓練できるものである。その意味で、現実から遊離したことばの独り歩きを防ぐものとして、誰でも読めば学ぶことが多いはずである。『入門著作権の教室』(尾崎哲夫著)は、入門なので、わかりやすく、しかもインターネット時代の著作権問題を網羅しながら上手に説明している。 . . . 本文を読む
「グローバリゼーション」といったことが日常語られる。その実際がどうなるか、オーストラリアの例で具体的に語られるのが『多文化主義社会の到来』(関根政美著)である。オーストラリアは「多文化主義社会」でしか国家の発展を望めない国の成立の仕方だった。けれど、世界のグローバル化の中で、多かれ少なかれ「多文化社会」の意義を認めないと国はどこも未来像を描けなくなってきている。日本も例外ではない。 . . . 本文を読む
サル社会の研究や人類発祥の由来、コミュニケーション力やコミュニケーション表現のサルと人間の比較研究などに造詣の深い著者正高信男氏が著した、IT世間の描写『他人を許せないサル』。若者に限らず、相当の割合のケイタイ依存者がいる日本社会の病理を明らかにしようとした書。 . . . 本文を読む
またしても内田樹氏である。くどいと思われるだろうが自然と手に取ってしまうのだから仕方がない。『街場の現代思想』タイトルも良い。氏は、若い頃ベンチャー企業にも手を染めたことがあるらしい。学者一筋でなく、いろいろな経験を積んでいることが性根が座っている由来だったかもしれない。『街場』ということばが気に入った。 . . . 本文を読む
久々の硬派の論、『私家版・ユダヤ文化論』は、西洋哲学研究者、内田樹の本領発揮の書である。戦争の世紀20世紀は、最大の戦争(第二次世界大戦)において600万の犠牲を出した受難者ユダヤ人のことを避けては語れない。内田樹は、勇敢にもユダヤ文化論を私家版としてユダヤ教の起源にまでさかのぼって説き起こした。ナチの迫害が神話の起源から続く長い長い迫害であり、反ユダヤの心理までも精神分析的手法を交えて説き起こすユダヤ文化をわしづかみに理解させる書である。 . . . 本文を読む
イエドヴァブネ、ワルシャワ、アウシュビッツ、ザクセンハウゼン、市谷、ソウル朝鮮総督府跡、三十八度線、オドゥサンなど、凄惨な虐殺や戦闘のあった場所で政治学者とジャーナリストが「戦争」を真正面から見つめ、語ったユニークな書『戦争の世紀を超えて』(森達也VS姜尚中)20世紀は戦争の世紀。人々がその記憶を忘れかけたのか、21世紀も更に輪をかけた戦争の世紀になりそうな世界状況にストップをかけたいという切実さが胸に迫る書。 . . . 本文を読む
肝の据わった内田樹氏の『知に働けば蔵が建つ』は、いわゆる常識的でない発想の仕方が詰まっている書である。「ブログの書き散らし」に手を入れてまとめた本と言われているから、話題はいろいろ、かつ荒削りで大学の論文みたいに綺麗に首尾一貫する所はない。しかし、ものごとの捉え方に内田氏のユニークな発想がそこここに見られる面白い書物だ。 . . . 本文を読む
学者が大学の研究休暇をもらって英国の学者仲間とだけ交流して、英国が分かったと思い、「イギリス」礼賛の書を書き、「ゆとりのある」「おとなの国」などという評価をして、読み手に誤解を与える風潮を戒める林信吾氏の書『これでもイギリス好きですか?』平易なことばで綴られた「イギリス」の大まかな100~200年間がわかる歴史書でもある。 . . . 本文を読む
コメディアンの太田光氏と人類学者の中沢新一氏の『憲法9条を世界遺産に』は、近頃珍しい身体をはった9条解釈対談書である。普通の護憲の書とは違う輝きを放っている。縦横、自由に自分の人生観も掘り下げ、文化・歴史にもおよび、哲学にもおよび、生と死の考察にもおよび、これほど深くて広い9条解釈を読んだことがない。 . . . 本文を読む
「心なんて身体の奥も奥、奥底にあるに決まっている」と通常思われている。私もそう思っていた。この書を見た時、何!?という感じを受けた。河野哲也『心はからだの外にある』は、まずタイトルで、エッ?不思議な考え方もあるものだと思った書である。帯に「性格なんてナンセンス」ともある。少々難解だが、通常の考え方じゃないものの魅力が詰まっている書だ。 . . . 本文を読む