読書・映画を通した想いの整理棚

読書をしたり映画を視たりした後、浮かんだ感想・批評を行なうブログ。ジャンルは多岐にわたる。

パルサー発見の女性科学者本人の弁『話す科学』で再登場

2006-05-18 11:15:50 | 科学書
 パルサー発見の女性科学者、ジョスリン・ベルの再登場である。別の本『話す科学』(アダム・デイヴィス著)で、ジュスリン・ベルがまた取り上げられているのを見てビックリした。科学界では、よく知られた人物に違いない。成し遂げた業績とノーベル賞を逃したことの両方で・・。

 ところで、ノーベルが天文学者や数学者とあまり仲が良くなくて、天文学部門、数学部門にノーベル賞がないのをご存知だろうか?パルサー発見で、天文物理学として、ノーベル賞が与えられ、ノーベル賞に新分野が切り開かれたと言われている。それを、ジュスリンは、純粋に喜んでいる。例え、指導教官がそれでノーベル賞を取ってしまっても・・。

 パルサーとは非常に質量の重い、しかし、大きさはあまり大きくない「中性子星」というものだそうだ。そこからの最初の信号を見つけたのが彼女だ。遠い宇宙からの信号ということで、最初は「リトル・グリーンマン」と名づけたそうだ。冗談ぽく「異星人」からの信号と仮に名づけたらしい。けれども、その後、3つ、計四つのパルサー発見の段階では、もう異星人説は完全にやめたようだ。現在、2000個もみつかったそうだ。

 指導教官がノーベル賞を取るに至る過程の、通常なら開いているドアが閉まっていて、秘密めいた会議が行なわれていた所へ用事があって訪れたら、それがパルサー発見をどう発表しようかという会議で、自分がはずされていたことなど、控えめに語られているが、ありありと情景が浮かんだ。

 結局、それでも、ジョスリンとしては、自分が大学院生で、身分が学生ということがはずされた原因だと思うと語っている。女性差別に遭ったのではないと考えているようだ。一方で、婚約した女学生はもう仕事はできないという風潮はあったと述べている。その頃、ジュスリンは婚約中だったらしい。
 その時の表現が面白い。「学生という身分が、問題だったのだと思うわ。とはいえ、婚約した女子学生は、急に今までと違うあつかいを受けるようになると言わざるを得ないけれどね! あのころはまだ、科学は、威厳あるご老人が研究するものという、古いイメージが残っていたの。そしてそういったご老人たちの下に、彼らに言われるとおり働いて、自分から進んでなにも考えない、子分の一群が仕えていたのよ。」

 他さまざまな女性に厳しい状況に対して、インタビュアーのアダムが訊く。
「今になって振り返ってみて、そういった全てのことを恨めしく思う?」
 ジョスリンの答えは、
「ある面では、ちょっぴり腹立たしいわね。私は、自分にできることをしてきたの。人生は常に妥協だから。あの時期の自分自身と社会状況を考えれば、かなり良い妥協を見い出してきたわ。でも、世間の思い込みとはひっきりなしに戦っていたわね。」だった。

 今、女性を取り巻く環境は、彼女の時代と比較して、少しでもましになっているのだろうか?