医学界の常識を告発し続ける米山公啓氏の書『脳は本当に歳をとるのか』。生れ落ちてから人の脳神経細胞は減る一方であるというのはなんとなく常識化している。「毎日10万個もの脳神経が死ぬ。そして再生はしない」ということが一般の我々も日常言ってはばからなかった。老齢化を極端に恐れ、忌避する傾向が日本では強い。その状況に一矢報いる書である。 . . . 本文を読む
この5年間の脳科学的知見の発展振りはすごい。今、それを踏まえてスピルバーグが「A.I.(Artificial Intelligence=人工知能)」を創るとしたら、ちょっと違ったものになったのではないかと思い、書いてみたくなった。脳・人工知能といった領域の科学的知見が進むに連れて、いよいよ人工物と自然の生物との間の距離が開き、簡単には創れないということが分かってきた5年間だと思うからである。 . . . 本文を読む
「心なんて身体の奥も奥、奥底にあるに決まっている」と通常思われている。私もそう思っていた。この書を見た時、何!?という感じを受けた。河野哲也『心はからだの外にある』は、まずタイトルで、エッ?不思議な考え方もあるものだと思った書である。帯に「性格なんてナンセンス」ともある。少々難解だが、通常の考え方じゃないものの魅力が詰まっている書だ。 . . . 本文を読む
「努力をすれば報われるはず」と学校で教えられる。しかし、社会に出てみれば、そう簡単にはいかない。努力で報われた人はイチローレベルのごく僅かな天才のみ。逆に努力したのとはちょっと違うだろうに「勝ち組」に入っているような人もいる。そういう理不尽な状況に押しつぶされる人が増えている。『貧乏クジ世代』と自称他称一番はっきりそれが表れている世代を気鋭の精神科医香山リカが語る。 . . . 本文を読む
先生が生徒から「あなたはどこで生まれましたか?」といった「あなた」呼ばわりされて違和感を感じない日本人教師はいない。しかし、毎年毎年、学生に日本語を教えながら、そういう学生を育ててしまってストレスを感じたカナダ在住の日本語教師、金谷武洋氏の「国語」へ反逆の書『日本語に主語はいらない』、以前取り上げた『なんのための日本語』(加藤秀俊)に通じる書である。 . . . 本文を読む
人間はものを見るのにどうしてもフィルターを通してみる。見ていても「何かがある」と思って追究しなければ本当の意味では分からないし「見えない。」それが「発見できない」の意味である。「カーボンナノチューブ(炭素原子の新種)」の発見者、飯島澄男氏本人の言である。飯島氏は、カーボンナノチューブの発見以前に「フラーレン」という球形の炭素原子の新種を、電子顕微鏡で何回も見ていた。しかし、「発見」に至らなかった。見ても見えずだったわけだ。 . . . 本文を読む
内田樹氏はフランス現代思想研究の専門家、甲野義紀氏は、いわゆる「ナンバ」走りで一躍名が知れた武術家。本当の自分の気持ちは「身体に訊け!」という内田氏の言辞から、自分の本心はどこにあるかを知りたい時には、自分の身体に注目するようになった。フランス現代思想の研究者・内田氏が何故と思っていたら、彼も武術家だったので、驚いた書。 . . . 本文を読む
国が大国の下請けに走ると科学技術も科学技術者も不幸を被る。その代表選手みたいな技術が「トロン」であった。いまやユビキタスコンピューティングの時代の寵児である坂村健氏の「トロン」は、18年前、国のだらしなさでひどい目に遭った技術である。自分の国の国民を守る気概のない国が、科学技術者や科学技術を守れるはずもない。「スーパー301条」につぶされた「トロン」問題。 . . . 本文を読む
限りなく人間に近いロボット創り、日本ではおなじみの技術開発だ。アシモが作り出されるまでの苦労・足跡には、興味深いものがある。ガシャンガシャンと歩くロボットではなく、人間のようにスイスイ歩くロボット。執念がなければそういうことは実現しないのがロボット開発の世界である。それは欧米からすると奇妙に映るらしいが。 . . . 本文を読む
日本も東洋だから、科学貢献はどうかしらないけれど、技術開発には自信を持ってすごいものがあるといえる。その例を畑村洋太郎氏が『成功にはわけある』としてまとめた。その第1は、「光触媒」だ。いろいろに応用できるものらしい。「光触媒を使えば、光のエネルギーを利用して水から水素や酸素を発生させたり、汚れや臭いの元となる物質を分解したり、細菌を殺したりすることができる」そうだ。 . . . 本文を読む