読書・映画を通した想いの整理棚

読書をしたり映画を視たりした後、浮かんだ感想・批評を行なうブログ。ジャンルは多岐にわたる。

意外に面白かった脳科学者のSF小説『プロセス・アイ』

2007-01-26 12:13:08 | その他(政策文書他)
 あと3回で100投稿、それでブログは終了と思っていたので、書きたいものを探しているうちに時間がたった。結局、前回取り上げた脳科学者、茂木健一郎氏の小説を読み、最後の3回のうち一つはこれに決めた。知ってはいたが、小説なんて読みたくないと思っていた。しかし、読んでみたら面白かった。茂木健一郎『プロセス・アイ』である。「アイ」は「A.I.」にかけている。つまり人工知能のことだ。

 茂木氏は自分の脳科学における「クオリア」というテーマで、日夜、研究にいそしんでいる人だ。研究は、科学研究ではなおさら、実証したり、検証したり、実体を見つけたりしなければならない。世界中の脳科学者が「クオリア」問題を明らかにしたいと望んで一番を競っているようだ。茂木氏も世界に伍して頑張っている脳科学者と聞いている。

 ヒトのことば獲得の道筋を茂木氏の脳に関する書籍で随分学んだ。

 その氏の研究の結果、到達する先にあるような物語をファンタジーに託したようなSF小説とみた。

 登場する科学者に、従来的なデカルト流「近代科学論」を説かせたり、いまやそれじゃ不十分と考える科学者に未来の「科学論」を説かせ、「ニューエイジ」論の位置づけを説かせたりしている。現代の科学が直面している、主観を取り込まない客観のみの科学が陥っている混沌の状況をよく描いていると思われた。

 それだけじゃなく、現世界のもっとも上位にあるメタを政治と捉え、政治や経済、総じて社会の関係を科学と結びつけて未来の新世界を構築して見せた点には、舌を巻いた。宗教もからませてである。

 SF小説のストーリーは明らかにできないので、止めておく。

 しかし、これを読むと「人工知能」「クローン人間」「金で国を買う」など、近未来的には、悪だと言い、駄目だと言っても、科学者を含めたヒトの興味を押し留めることはできそうになく、事実上はいつの日か惹起されそうな事柄だと覚悟みたいなものを持たざるを得ないように思った。

 そのことが実際に起こるまで、あんまり生きていたくはないが……。アンダーグラウンドでは、既にいろいろ手に染められているのかもしれないけれど。

 無知であるが故に世の中に翻弄されるのだけは避けようと思って生きてきた。だからいろいろな世界で起こっている事柄を知るために勉強も怠らなかったつもりだ。しかし、この『プロセス・アイ』に描かれているような世界になったら、残念だが、翻弄されまくりだろうな、と考えざるを得ない。

自分の突っ張りもここのあたりまでだな、きっと。

 小説では、天才科学者の頭脳を使った危険な科学的試みの中で「クオリア」を究明できたようだ。その内容は当然のことながら現状は未知だから、明らかにされてはいない。
 茂木氏にはクオリア問題を、是非とも、今現在の科学研究の中で解いてもらいたいものだ。