ふるさとは誰にもある。そこには先人の足跡、伝承されたものがある。つくばには ガマの油売り口上がある。

つくば市認定地域民俗無形文化財がまの油売り口上及び筑波山地域ジオパーク構想に関連した出来事や歴史を紹介する記事です。

筑波山伝承 ガマの油売り口上

2014-06-10 | ガマの油口上

 ガマ油の売り口上は、筑波山で生まれた 
 
大阪の陣後、筑波山大御堂門前でガマの油が店頭に並び筑波山名物となった。ガマの口上は江戸で活躍した永井村の兵助により有名になった。

                     光誉上人の墓  
           
ガマの油をつくって大阪の陣に徳川方として出陣した。  
                      

                  筑波山神社 隋神門脇

 永井村の兵助、江戸に出たが筑波山大御堂参拝団講中に加わり筑波山大御堂門前で口上よろしくガマの油がどのように売れるのを見て、ガマの油で儲けようと決心した。

 兵助は江戸蔵前で居合抜、坂歯磨き売、香具師総元締めの永井兵助の門下に入り、ガマの油を売ることになった。親分の居合の刀技をヒントに紙切り、腕切りの刀技を工夫し大評判、大繁盛した。以後家具師によりガマの油売りは全国に広がり、ガマ口上も全国で聞けるようになった。       
                  

 【関記事】
  
 ガマの油売り口上保存会の設立の経緯と「居合い抜き」

   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆  秘伝  


ガマの油売り口上
 
 
  さあさあお立ち合い。御用とお急ぎなかったら、ゆっくりと聞いておいで。

遠出山越えは笠の内。聞かざる時は、物の出方・善悪・黒白(あいろ)がトーンと分からない。 山寺の鐘がグォーングォーンと鳴ると雖(いえど)も、童子一人来たって鐘に撞木(しゅもく)をあてざれば、鐘が鳴るのか撞木がなるのか、トントその音色が分からぬのが道理じゃ。

〔関連記事〕 
江戸時代の服飾文化・藍染めとガマの油売り口上
 

         山寺の鐘がグォーングォーンと鳴ると雖も・・・・・   

           
                                  筑波山神社大御堂の鐘  
  
 さて、手前ここに取りい出だしたるこれなるこの棗(なつめ)。 この中には一寸八分唐子(からこ)発条(ぜんまい)の人形が仕掛けてある。 

 我が国に人形の細工師(さいくし)、あまたありと雖も、京都にては守随(しゅずい)、大阪表(おおさかおもて)にては竹田縫之助(ぬいのすけ)、近江(おうみ)の大掾(だいじょう)藤原朝臣(ふじわらのあそん)、 この人たちを入れて上手名人はござりませぬけれども、 手前のは、これ近江の細工じゃ。 咽喉(のんど)には八枚の小鉤(こはぜ)を仕掛け、背中には十と二枚の歯車が組み込んでござりまする。 

              手前ここに取りい出だしたるこれなるこの棗       
             

 【関連記事】
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 この棗をば大道に据(す)え置くならば、 天の光を受け地の湿りを吸い上げまして、陰陽(いんよう)合体。パッと蓋をとる時には、ツカツカツカと進むが虎の小走り虎走り、 後ろへ下がって雀 独楽(こま)どり独楽返(こまがえ)し、 また孔雀霊鳥の舞と、十二通りの芸当がござりますけれども。 如何に芸当が上手であろうとも、投げ銭や放り銭はおことわり。 手前大道にて未熟な渡世(とせい)はしているけれども憚りながら天下の町人、泥のついた投げ銭・放り銭なんかバタバタ拾うようなことはいたしませぬで。
 

 しからばお前、投げ銭や放り銭貰わねえで、何を以て商売としているのかい、何を以っておまんま食べているのかいと、心配なさる方があるかも知れないけれども、 これなる此の看板示すが如く筑波山妙薬は陣中膏ガマの油。 此のガマの油という膏薬をば売りまして生業(なりわい)と致しておりまするで。

                市販されているガマの油  
          

 さて。 いよいよ手前ここに取りいだしたるがそれその陣中膏はガマの油だ。 だが、お立ち合い。蟇々(がまがま)と一口に云っても、そこにもいるここにもいるという蟇とは ちとこれ蟇が違う。 

 ハハア。蟇かい。 なんだ蟇なんかならおれ俺んちの縁の下や流し下(もと)にぞろぞろいる。 裏の竹藪にだって蟇なんかいくらでもいるなんていう顔している方が居りますけれども、あれは蟇とは言わない。

 ただの引蛙 ・疣(いぼ)蛙 ・御玉蛙(がえる)か 雨蛙(あまがえる) ・青蛙  何の薬石(やくせき)効能はござりませぬけれども手前のは  これ四六の蟇だ、四六の蟇。

           ガマカエル               

  四六五六というのはどこで見分けるかっというと、此の足の指の数。 
 えー前足の指が四本。後足の指が六本。これを合わせまして蟇鳴躁(しきめんそう)は四六の蟇だ、四六の蟇。 また、この蟇の採(と)れるのが、五月、八月、十月でござりますから、 一名これ五八十(ごはつそう)は四六の蟇だ。四六の蟇。 
  
さてしからば此 の四六の蟇の住む処、 一体何処なりやと言うなれば、此れより遥(はる)か北の方(かた)、北は常陸の国は筑波の郡(こおり)、 古事記・万葉の古から歌で有名 「筑波嶺(つくばね)の峰より落つる男女川 恋ぞつもりて渕となりぬる」 と陽成院(ようぜいいん)の歌にもございます。

 【関連記事】 ガマの油売り口上 「常陸の国は筑波の郡」の由来


             関東の名峰筑波山の麓・・・・・・
        

 【関連記事】  陽成院の歌が謳われた頃は大震災と火山噴火の時代だった              


 関東の名峰は筑波山の麓、臼井 ・神郡(かんごおり) ・館野(たでの) ・六所(ろくしょ) ・沼田 ・国松 ・上大島(かみおおしま) ・東山から西山の峰にかけましてゾロゾロと生えておりまする大葉子(おんばこ)と言う露草をば喰らって育ちまするで。 
           

 さてしからば、此の蟇から此の蟇の油を採るにはどういう風にするかって言いますと、 先はノコタリノコタリ急ぎ足、 木の根、草の根 踏みしめまして山中深く分け入り、 捕えきましたるこの蟇をば四面(しめん)に鏡を張り、その下に金網・鉄板を敷く。 

 その鏡張りの箱の中に此の蟇を追い込む。 さー追い込まれたガンマ先生。鏡に写る己の醜い姿が四方の鏡にバッチリと写るから たまらない。 我こそは今業平(いまなりひら)と思いきや、鏡に写る己の姿の醜さに、ガンマ先生びっくり仰天いたしまして、御体(ぎょたい)から油汗をばタラーリ タラーリ タラーリ流しまする。

      油汗をばタラーリ タラーリ タラーリ流しまする  

               
 その流しましたる油汗をば 下の金網からぐぐっと抄(す)き取り集めまして、 三七(さんしち)は二十と一日の間、柳の小枝をもちまして、 トロリ・トロリ・トローリ とよく煮炊きしめ、 赤い辰砂(しんしゃ)に、椰子油、 テレメンテーナ・マンテーカという唐(から) ・天竺(てんじく) ・南蛮渡りの妙薬をば、 合わせまして、 よく練って練りぬいて造ったのがこれぞれ 此の陣中膏ガマの油の膏薬でござります。
   
         赤いシンシャにテレメンテーナ・マンテーカ        
           
          筑波山梅林内にあった旧「おたちあい」の展示物
    

 これにてこのガマの油の造り方お分かりでござりまするかな。 エー、分かったよ。分かったけれども、どうせ大道商人(あきんど)のお前のガマの油なんかろくな効目なんかあるまいと思ってるような顔している方がおられるようだけれども、 薬というのは何に効くのか効目が分からなかったら値打ちがねえよ。

  しからばガマの油の膏薬 何に効くかと云うなれば、 まずは疾(しつ)に癌瘡(がんがさ) 火傷(やけど)に効く。 瘍(よう) ・梅毒(ばいどく) ・罅(ひび)に霜焼(しもやけ) ・皸(あかぎれ)だ。 

 前に廻(まわ)ったらインキンタムシ、後に廻ると肛門の病(やまい)。 肛門の病と云っても水戸黄門様が病気になったんじゃないよ。 此れを詳しく云うなれば、出痔(でじ)に疣痔(いぼじ) ・走り痔 ・切れ痔 ・脱肛(だっこう)に鶏冠痔(けいかんじ)。 
 鶏冠痔というのは鶏(にわとり)の鶏冠(とさか)のように真赤(まっか)になる痔で痔の親分だ。 だが手前の此のガマの油をば グットお尻の穴に塗り込むというと、三分間たってピタリと治る。

 まだある。槍傷 ・刀傷 ・鉄砲傷 ・擦(す)り傷 ・掠(かす)り傷 ・外傷一切。 まだある。大の男が七転八倒(しちてんばっとう)して畳の上をばゴロンゴロンゴロンと転がって苦しむほど痛(いて)えのがこれこの虫歯の痛みだ。 だが手前のこのガマの油の膏薬、これをば紙に塗りまして上 からペタリと貼るというと、皮膚を通し肉を通して歯茎(はぐき)に滲(しみ)みる。

又ガマの油小さく丸めましてアーンと大きな口開いて歯の空洞(うつろ)にポコンと入れるというと、これ又三分間あつ熱い涎(よだれ)がタラリタラーリと出ると共に歯の痛みピタリと治る。

 まだある。 どうだい、お立ち合い。 お立会いのお宅にちいさい赤ん坊はいらしゃるかな。お孫さんでもお子さんでもいいよ。 エー。赤ん坊の汗疹(あせも) ・爛(ただ)れ ・気触れ(かぶれ)なんかには、 手前の此のガマの油の入っておりましたる明き箱 ・空箱 ・潰(つぶ)れ箱、此の箱を見せただけでもピタリと治る。

          この箱を見せただけでもピタリと治る
          


 えー、どうだいお立ち合い。こんなに効くガマの油だけれども、残念乍(ながら)ら効かねえものが四つあるよ。 先ずは恋の病と浮気の虫。 あとの二つは禿(はげ)と白髪(しらが)に効かねえよ。 

 おい、油屋。お前さん効かねえものなんか並べちゃって、もうガマの油の効能つうのは終わりになったんじゃねえかと思ってる方がおりますけれども、そうではござりませぬ。 も一つ大事なものが残っておりまする。刃物の切味をば 止めてご覧に入れる。

 ハイッ。手前ここに取出(とりいだ)したるは、これぞ当家に伝わる家宝にて 正宗が暇に飽かして鍛えた天下の名刀、元が切れない中切れない、中が切れた が先切れねえなんていう鈍刀 ・鈍物とは物が違う。 実によく切れる。 エイ。抜けば夏なお寒き氷の刃(やいば)。津瀾(つらん)沾沌(てんとん)玉と散る。

                抜けば夏なお寒き氷の刃    
           

 ハイ。ここに一枚の紙がござりまするので、これを切ってご覧に入れる。 ご覧の通り種も仕掛けもござりませぬ。 
 ハイ。一枚が二枚。二枚は四枚(しまい)。 四枚は八枚。 八枚は十六枚。十六枚が三十と二枚  三十と二枚が六十と四枚。 六十と四枚が一束(いっそく)と二十八(ふたじゅうはち)枚。 
 エイ。 これこの通り細かく切れた。 
 パーッと散らすならば比良(ひら)の暮雪(ぼせつ)か嵐山には落花(らっか)吹雪の舞いとござり まする。

               落花吹雪の舞いとござり まする
           


 どうだお立ち合い。 こんなに切れる天下の名刀であっても、この刀の差表(さしおもて) ・差裏(さしうら)に手前のガマの油を塗るときには、刃物の切味ピタリと止まる。 
 塗って ご覧に入れる。 あーら塗ったからたまらない。刃物の切味ぴたりと止まった。
 我が二の腕をば切ってご覧に入れる。 ハイッ。打って切れない叩いて切れない。
押してきれない引いても絶対に切れない。 

                      絶対に切れない
          

 さて、お立会いの中には、なあんだ、お前のそのガマの油という膏薬は これほど切れた天下の名刀を ただの鈍(なまくら)にしてしまうだけだろうと思ってる方がおりますけれども、そうではござりませぬ。 

 手前 憚(はばか)り乍(なが)ら大道商人はしていると雖も、 
 ご覧の通り金看板天下御免のガマの油売り、そんなインチキはやり申さん。 

                         金看板   
              
        
 此の刀についておりまするガマの油、 この紙をもちまして、きれいに拭きとるならば、刃物の切味が又 元に 戻ってまいります。さわっただけで赤い血がタラリタラーリと出る。
 しからば我が二の腕をば切ってご覧に入れる。 ハイッ。これこの通り赤い血が出ましてござりまするで。

   これこの通り赤い血が出ましてござりまするで。 


 だが、お立ち合い。血がでても 心配はいらない。 なんとなれば、ここにガマの油の膏薬がござりまするから、この膏薬をば此の傷口にぐっと塗りまするというと、 タバコく一服吸わぬま間にピタリと止まる血止めの薬とござりまする。 これこの通りでござりまするで。

 さあて、お立ち合い。お立会いの中には、そんなに効目のあらたか なそのガマの油、 一つ欲しいけれども、ガマの油ってさぞ高けいんだろうなと思ってる方がおりますけれど、 
 此のガマの油、本来は 一貝(ひとかい)が二百文(にひゃくもん)、 二百文ではありますけれども、今日ははるばると出張(でば)っての御披露目。  男度胸で女は愛嬌、 坊さんお経で、山じゃ鶯(うぐいす)ホウホケキョウ、筑波山の天辺から真逆様(まっさかさま)にドカンと飛び下りたと思って、その半額の百文、二百文が百文だよ。
 

さあ、安いと思ったら買ってきな。効能が分かったらドンドン買ったり買ったり。 

   効能が分かったらドンドン買ったり買ったり。
 

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