「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーが教える小学生の算数…『速さの問題(3)』…『速さ・道のり・時間』の相関関係の教え方

2008年10月22日 | 学習指導法

速さの問題について、1回目は 『速さの基本』 の教え方、2回目は 『速さの公式』 の教え方について伝授しました。

今日は、基本的な速さの指導としては3回目として、『速さ・道のり・時間の3つの量の相互関係』について、知識を深めたいと思います。



表を使って、2量関係を理解する…基本編

『速さの公式』の定着と、その『2量関係』の理解を深めるために、『表を用いる』ことは、有効な手段です。

速さに関する、『2量関係』の理解を深めると、速さに関する特殊算…『旅人算・通過算・時計算・流水算』などの理解も深まり、また同じ問題を異なる『複数の方法で解く』ことが可能となり、『幅広い学力』をつけることができます。


『24kmのみちのりを様々な速さで行くときの時間を調べてみます。』

速さ(km/時) 2  3  4  6  8  12  …
時間 (時間) 12  8  6  4  3   2  …

『道のり=速さ×時間』の公式からも言えることですが、『道のりを24kmと一定』にすると、『速さと時間の積が常に一定』になります。

このように、積が一定の2量関係を『反比例する』と言います。

簡単に言うと、一方の数を2倍、3倍、4倍すると、他方は1/2、1/3、1/4となるような2量関係です。

『道のりが一定の時、速さと時間は反比例する』…これをキーワードとして覚えておきましょう。



今度は、『速さを時速4kmと一定にしておいて、かかった時間と道のりの関係を調べます。』

時間 (時間) 1  2  3  4  5  6  …
道のり(km) 4  8 12 16 20 24  …

上の表と『速さ=道のり÷時間』の公式から、『速さ一定』の時、『時間と道のりの商が一定』になっていることが分かります。

このように、商が一定の2量関係を、『正比例(比例)』と言います。

一方が2倍、3倍、4倍になると、他方も2倍、3倍、4倍になるような2量関係を、正比例と呼びます。

『速さ一定の時、時間と道のりは比例する』…これもキーワードとして理解しておきましょう。


同様に子供に表を作って確認させると、『時間を一定』にしたときは、『速さと道のりは正比例する』ことが分かります。

この2量関係を理解し、比を使いこなすことができると、上手く解くことの出来る問題が増えます。

上位校を受験する場合、一つの問題を多角的に解法できる力が要求されますが、こうした2量関係を利用する方法も、重要な解法の一つです。



ダイモンジソウ


グラフを書いて、2量関係を調べる…中級編

上に書いた表を、今度はグラフで表してみます。

『24kmのみちのりを様々な速さで行くときの時間』のグラフは、縦軸に時間・横軸に速さを表すように書きます。

すると、反比例のグラフは、曲線になることが分かります。

この曲線を、双曲線と呼びます。


『時速4kmが一定の時、かかった時間と道のりの関係』のグラフは、縦軸に道のり・横軸に時間を表すように書きます。

すると、原点を通る直線のグラフができます。

このように、反比例のグラフは双曲線、正比例のグラフは原点を通る直線になることが分かります。



比例・反比例の関係を理解して解く…上級編

次のステップは、上の例で説明した2量関係の『正比例』と『反比例』を利用して、『速さの文章題を解くのに、比を用いて式を立てる』ことです。


この考え方を理解すると、問題を比較的簡単に解くことができます。

小学生にとっては上級編になりますが、無論中学受験生にとっては、確実に理解し使いこなせるようにしておかなければなりません。

問題を解く手段として、2量関係を理解した上で比を用いると、計算量が少なくてすむ問題が多いことが分かります。



リンドウ


では、2量関係を使って、速さの問題を解く例を、一つ挙げましょう。

『ある山のふもとから山の頂上まで往復しました。往きは時速1.5kmで登り、帰りは同じ道を時速4.5kmで下ったら、往復4時間かかりました。このときこの山のふもとから頂上までの道のりを求めなさい。』

この問題は、往路と復路は同じ道を通ったので、『道のり一定』です。

『道のりが一定』の時、『速さと時間の関係』はどうなっているでしょうか。

私はこの2量関係が出ると、生徒によくこんな質問をします。

「君たちの家から教室まで、道のりが一定だけれども、今日は2倍の速さで急いで教室に来たので、時間が2倍かかり遅れました…こんなことあるかな?」

「2倍の速さできたなら、時間は半分の1/2になるんじゃないのかな。」

生徒はこうして、体験的に『道のり一定の時、速さと時間は反比例する』ことを理解します。

問題に戻りましょう。

往きと帰りの速さの比は、1.5:4.5=1:3です。

すると、往きと帰りの時間の比は、速さの比の逆比の、3:1となります。

なぜなら、道のり一定の時、速さと時間は反比例するからです。

そこで、往復にかかった時間の4時間を、往きと帰りの時間の比の3:1で、比例配分します。

往きにかかった時間は、4×(3/4)=3(時間)

よって、『道のりは、速さかける時間だから』と言いながら、

求める道のりは、1.5×3=4.5(km)と出すことができます。

ではこの問題を、この2量関係を使わずに求めてみて下さい。
この解き方よりは、難しくなることが分かるでしょう。

ここでは、割合の表し方の一つである比について詳しく説明することはせずに、またの機会に譲っておきたいと思います。



キク


ダイヤグラムを書いて解く


ダイヤグラムとは、一般的には列車などの交通機関の運行表に用いるグラフのことです。

悪天候のために『ダイヤが乱れる』のように使うときの、ダイヤとは『ダイヤグラム』のことです。

列車のダイヤグラムを見ると、上り下りの直線が交差してひし形がいっぱいできます。

その形が、トランプのダイヤの形に似ていることから、『ダイヤグラム』と名付けられたと聞いています。


時間を横軸に、距離を縦軸において、列車の運行などをグラフに表して『ダイヤグラム』を書きます。

このダイヤグラムで、条件となる数値を読み取り、問題を解かせるようになっている設問も、入試では多く出題されます。

また、上級編の速さの解き方として、自分でダイヤグラムを書いて、条件を整理する方法もあります。



実際、速さの文章題を解くには、単に『速さの公式』を丸暗記するだけでは不十分です。

家庭で指導する場合、速さの3つの語彙を、日頃の子供の体験に基づいて理解させることができれば成功です。

表を作成したり、グラフを書くなどして、視覚的に2量関係を理解させるように工夫することも大切です。

そして、子供が問題を解くときに、式だけではなく表やグラフを書いて求める習慣を付けることも重要です。


速さの教え方に興味のある方は、以下のブログも参考にしてください

マッキーの教室:公立小学校で行った「速さの導入授業」

マッキーの学習指導法:速さのコメントに回答

マッキーが教える算数…どうして子供は時間の単位が苦手なのか(1)


マッキーが教える算数…どうして子供は時間の単位が苦手なのか(2)


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2 コメント

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速さの公式 (まるちゃん)
2012-09-06 16:09:23
2008.10.22のページを見ていました。

そこで、山に登る話が出てきました。
「ふもとから山頂まで歩き、行きは1.5km、帰りは4.5kmで歩くと、4時間かかった。さて、ふもとから山頂までの道のりは?」と言う例題の中に

1.5:4.5=1:3 と言う話から、比例配分すると言う話に飛んでいきました。 もっと分かりやすい方法はないのでしょうか??

いきなり 1.5×(3/4)=3 とされると思考が止まります。

taekwondocap@hotmail.co.jp
まるちゃん
返信する
Unknown (マッキー)
2012-09-13 06:56:33
コメントありがとうございます。
このコメントに、正確に回答するためには、相当の紙面を必要とします。
指摘していただいた点について、重要な点も含まれますので、ブログの中で回答させて頂きます。
2012.09.13「マッキーの学習指導法:『速さのコメントに回答』で、別解も含め綴りましたので、御覧ください。
返信する

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