「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの教室:公立小学校で行った「速さの導入授業」

2012年09月09日 | 教室の風景



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公立小学校の学習指導で、「速さ」の項目の導入授業を行いましたが、公立学校での指導7年目にして初めての経験だったことと、算数の項目では最も
興味深い範囲であることで、指導していてとても有意義な時間を過ごすことができました。

無論のこと、長年の塾における受験指導の中で、小学5年の最重要項目として、速さを取り上げ、その導入学習と、速さに関する特殊算を指導してきました。

一般の方はご存じないでしょうが、速さの学習は、割合の指導と並び、教える側の指導能力の差により、その学習指導成果が大きく異なる項目であり、指導に熟達した教師でも、工夫した指導法と生徒の反応に、毎年とても興味が湧くことでしょう。

日頃は、習熟度別クラスの上位生を対象に、既習項目の発展的学習を指導することの多い公立小中学校の授業ですが、今回はクラス分けを行わない小6のクラス全体の生徒を対象に、速さの最初の授業(導入授業)を担当することになりました。

中学受験を前提に、公立学校の学習内容を遙かに越えて指導する必要のある塾の学習指導と異なり、公立学校で基本的な速さの導入授業を行うことは、さまざまな学力の生徒を対象とするために、簡単なようで実は様々な問題が想定されます。

そうした問題を事前に検討し、塾における指導とは当然異なる、公立小学生に合わせた教え方の流れ(学力差・理解力の差がある集団に対して、速さをどう教えるかについては、長年の研究の蓄積が、私にはあります。)で指導を行いました。

公立学校における速さの問題は、「単位量あたりの大きさ」の一つの例として、学習することからスタートします。

この前提を踏まえて、生徒に「速さの基本的な考え方」を理解させることと、生徒自らが「速さの公式を導き出す」ことを主眼に45分の授業を行いましたが、その内容の要点を抜粋して今からライブ風に綴りますので、皆さんはビジュアルに想像しながらご覧いただければ幸いです。


(今年の教室のサマースクール風景)

まず、日常使っている速さとは、皆さん何だと思いますか?

速さとは、物や人が動く度合いや大きさを表すときに使う言葉です。(速さと速度は、力学的に言えば表す意味が異なります。)

速いは「速く走る」と言ったように物のスピードを表す言葉であり、早いは「早く起きる」というように時刻と関連して使われる言葉です。

最前列に座っていたY君とI君を例に、クラスの全員に対して、Y君とI君の「二人のどちらが走るのが速いかを比べる方法を考えてみましょう。」と、まず質問を投げかけました。(Y君もI君も、実際は本当の生徒の名前を使いました。)

「ストップウオッチで計ります。」・・・それだけでは、比べる方法をはっきりと示してはいませんね。

「50メートルを走らせて、どちらが速くゴールしたかを比べます。」

そうですね。

一定の道のり(距離)を走らせて、それにかかった時間を比べることにより、速さを比較することができます。

ウサギとカメの話陸上・水泳などの競技では、このように一定の道のり(距離)を進むのにかかる時間を測定することにより、速さを比較することができますが、この方法は人類がまず最初に考えた仕方だと思います。

しかし、この方法ですと、活用方法がだいぶ限定されますので、次に考えたことは、一定の時間でどれだけの道のりを進んだのかを比較することにより、速さを比べることができるという方法を考えました。

これから私たちが学習する速さは、主にこの方法ですが、私たちが日頃使う速さの表し方も多くはそれに従っていて、例えば道路には円の中に60と言う数字が入った標識や、高速道路には同じように80と言う文字が入った交通標識もこの方法の表記です。

これは時速60km、時速80kmを越えた速さで、車を走らせてはいけませんと言う意味の標識です。

時速とは1時間に進む距離で、また分速とは1分で進む距離で、そして秒速とは1秒で進む距離で速さを表しています。

日速、年速などという言葉も当然有りです。

このように1年・1日・1時間・1分・1秒という時間を、単位時間と呼びます。

ですから、単位時間に進む距離で速さを表すと言っても良いでしょう。

(この段階までで、速さの表し方は「単位量当たりの大きさ」の考え方で表記することを理解させます。)

時速60kmは、毎時60kmとも言いますし、60km/時と書いて60km毎時と読みますが、どの表記も間違いではなく、問題に指定された単位があれば、それにしたがって書いた方がよいでしょう。

ところで、距離と道のりという言葉が出てきますが、(黒板にAとBの2点を書いて)A町とB町までこのように湾曲した道が付いていますが、その道を道なりに進んだ長さのことを道のりと言い、AとBを直線で結んだその間の真っ直ぐな長さのことを距離と言いますが、一般的には道のりのことも距離と呼んでいます。

ですから、人や車の実際の速さを求めるときなどは、進む道は一般的には真っ直ぐではありませんから、どちらかと言えば、道のりという言葉を使った方が、より正確な使い方です。


(雨上がり後のムクゲ)

さて、ここまで出てきた言葉は、何でしょう?

「道のりと時間と速さです。」

そうですね、私たちはこれからこの3つの量の関係を学習することになります。

そこで皆さん、私がこれから黒板に書く、一つの文を理解して暗記して下さい。

「Y君は、時速4kmで3時間歩いて、12km進みました。」

黒板に書く間、3時間歩いて、どれだけ進みますかと問えば、ほぼ全員が経験的に12kmと答えます。

整数値で経験的に理解できるこの文を使って、生徒自らによって、この3つの量の関係式(公式)を導き出してもらおうという授業を行います。

まず黒板の時速4kmの4を消して四角を書き入れ、では「3時間歩いて12km進みました」、ではその速さはどう計算しますか。

多くの生徒の手が挙がり、12÷3=4(km/時)という答えが返ってきます。

すなわち、速さを求める公式はどうなるかと言えば、はい君・・・「速さ=道のり÷時間」です。

ハイ、その通り!・・・後は省略しますが、道のりは=~、時間は=~、このようにして苦もなく多くの生徒が速さの公式を導き出すことができました。

(他の公式は、道のり=速さ×時間、時間=道のり÷速さ、これらの3つの公式は、3つの量の同じ関係式を3つの形に変形しただけです。)

今日は、整数の問題で、君たちも経験的に数値を求めることができましたが、数値が小数や分数となるとどう式をたてたらよいのか分からなくなります。

そんな時、この文を暗記し、そこから出てきた公式を声を出して言う習慣を付けると、いつかこの文を思い出さなくとも、すんなりと公式が常識として出てくるようになります。

速さに関する問題を考える時、丸を書いてその中にくもわ(はじき)という3つの文字を書いて、式を導き出す方法などが
ありますが、君たちは3つの公式を導き出した理由を理解して、式が出せるようにして欲しいと思います。

また、あまり勧められませんが、この3つの公式の1つだけを覚え、数字がわからない所に四角を書いて、四角を求める式として計算しても答えを導き出すことができます。

(ただし、その後の学習を深めるためには、例えば比例や反比例の関係などを理解するためには、3つの量の関係式(公式)が明確に理解されていることが大切ですので、1つの公式を覚える方法は、次善の策と言えます。)

さて、君たちがこの速さの公式を覚えても、答えを導き出す途中には2つのハードルが待ち構えています。

そのハードルとは、時間と長さの単位変換と、小数と分数の計算です。

すでに習った学習項目ですが、せっかく新しい考え方を知っても、こうした基本的な学力が不足していると、答えを出すことができません。

最後に、速さの単位の変換をみんなでやってみましょう。

「この列車の速さは、秒速16mです。」…秒速は、1秒間に進む道のりで表しますが、ではこの秒速を、分速…1分間で進む道のり、時速…1時間で進む道のり、に換えることを考えてみましょう。

君たちの家から学校までの道のりを測るのに、cmのものさしを使う人はいないはずで、mの単位の巻尺などを使うはずです。

同様に君たちの前を列車が通過する時間を求めるのに「時間」の単位は使わず「秒」の単位を使うはずで、またA駅からB駅まで列車で行く時間は、「秒」ではなく「分」や「時間」を使うように、その対象により的確な単位を使うことが必要になります。

ですから、速さの単位も、単位の変換を行なって、最も合った単位で計算することが必要になりますから、こうした問題の練習が必要となります。

こうした単位変換の問題も、整数値の出題ですので、比較的簡単に生徒は答えを求めることができます。

(問題は、与えられた数値が小数や分数の時、答えを出すことができない生徒がいますが、整数値での練習を繰り返し、答えではなく導き出す考え方を理解させることが大切となります。)

この問題についても、生徒との様々なやり取りがありましたが、単位と計算についての範疇となりますので、紙面が長くなり過ぎたようですので、今回はその指導法は割愛します。



(実家の玄関先に咲いていたユリの花)


【速さに関する参考資料】

小学生に対する速さの学習指導については、かつてのブログで様々な視点で綴ってきましたので、興味ある方はご覧下さい。


『速さの問題(1)』…『速さの基本』の教え方

『速さの問題(2)』…『速さの公式』の教え方

『速さの問題(3)』…『速さ・道のり・時間』の相関関係の教え方


家庭で教える小学生の算数『特殊算』…速さの文章題(1)『旅人算…その1』

家庭で教える小学生の算数『特殊算』…『旅人算…その2・中学入試問題《渋谷幕張中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その3・中学入試問題《雙葉中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その4・中学入試問題《立教新座中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その5・中学入試問題《麻布中学》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その6(最終回)・中学入試問題《女子学院中学》』


マッキーの算数指導法『特殊算』…『『通過算…その1・中学入試問題《栄東中・十文字中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その2・中学入試問題《慶應義塾湘南藤沢中等部》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その3・中学入試問題《森村学園中等部》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その4・中学入試問題《市川中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その5・中学入試問題《湘南白百合学園中学校》』


マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その1・中学入試問題《浅野・吉祥女子》』


マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その2・中学入試問題《明治大学附属明治中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その3・中学入試問題《桐朋中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その4・中学入試問題《灘中学校》』


『時計算…その1・中学入試問題《跡見学園中学校》』

『時計算…その2・中学入試問題《立教新座中学校》』

『時計算…その3・中学入試問題《城北中学校》』

『時計算…その4・中学入試問題《青山学院中等部》』

『時計算…その5・中学入試問題《香蘭・共立》』

(以上の特殊算は、中学受験を前提とする速さに関する文章題で、その問題は単に最新の入試問題からピックアップしただけでなく、各特殊算で知っておかなければならない典型的なタイプを抽出して分類し、その考え方と指導法を示したものですので、家庭で指導する時の参考にして下さい。)


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