「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーが教える小学生の算数…『速さの問題(2)』…『速さの公式』の教え方

2008年10月10日 | 学習指導法



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前回速さの問題の第1回目は、『速さの基本』の教え方を伝授しました。


今回は、実際速さの問題を解くのに不可欠な、『速さの公式』の教え方を伝授しましょう。

『公式』と名の付く関係式は、ただ『単に覚える』のではなく、『既存の知識』と関連づけながら、『納得して覚える』ことが重要です。

そうした指導に、教え手の工夫が必要であり、指導の力量差が出ることになります。

それは、子供が日頃の生活で体験したことや、すでに知識として持っていることから類推し発展させて、新しく学ぶ事柄を納得して理解して知識として定着させることを、どれだけ上手くサポートできるかということです。



速さの公式とは

速さの問題は、まず『速さ』と『時間』と『道のり』の3つの数量を使います。

注:『A~B間の道のり』と『A~B間の距離』は、厳密に言うと異なります。
道のりは、本来曲がりくねった道をそのままトレースした長さのことで、距離は、A~B間を直線でつないだ、その線分の長さのことです。
しかし、速さの公式では、一般的に『道のり』=『距離』として扱っています。
厳密に言うと、上の理由から『道のり』を使った方が、良いでしょう。

この3つの数量のうち、いずれか2つが決まると、残りの1つの数量を計算で求めることができます。

このときに、『速さの公式』を使うと、素早く答えを出すことができます。

『速さの公式』を覚えることは不要と言っている指導者もいるようですが、どういった生徒を対象として、そうした考えをお持ちなのかを、明確にする必要があります。

「多くの問題を解いているうちに、数値の取り扱い方を体得するであろう」と言った仙人の御託宣のようなスタンスでは、速さの問題を解けない中学生を大量に作り出してしまう結果ともなります。

特に、中学受験を考えに入れた場合、この『速さの公式』は、自在に使いこなせなければなりません。

『速さの公式』は、5年生の初めに、遅くとも5年生の夏休み明け(四谷大塚・予習シリーズは9月)には、覚える必要があります。
『速さの公式』とは、以下の3つの式のことです。

速さ=道のり÷時間

道のり=速さ×時間

時間=道のり÷速さ

ただこの公式は、『速さ』と『道のり』と『時間』の3つの数量の関係式を、それぞれの数量を求める3つの式に変形したに過ぎません。



速さの公式の教え方


では、この公式をどの様に子供に教えたらよいのか、幾つかの方法をお教えしましょう。


①『はじき法』の教え方

小学校において速さの学習は、『単位量あたりの大きさ』の一つの例として取り扱われます。
そうした基本的な考え方に多くの時間を割いて、速さの問題を解法するのに、『公式』を曖昧なままにして解こうとすると、必ず生徒間の習熟度の差というハードルに突き当たります。

そこで、機械的に手っ取り早く解くのに用いられる方法として、この『はじき法』(私が命名)があります。

その方法は、まずを描き、そのまん中に横一線に直径を描きます。
つぎに下の半円に、先ほど書いた直径に垂直になるように半径を書きます。
すなわち、円の中にTの字が入ります。

その図の上の半円に「き」、下の2つの四分円に「は」と「じ」の文字を入れます。
すなわち速さの「は」・時間の「じ」・距離(道のり)の「き」です。
上から順に読めば「きはじ」ですので、本来は「きはじ法」とでも呼ぶべきでしょうが、この解き方の問題点が端的に示されている「はじき」という言い方を、今回はとります。


横線は、分数の割るの記号。縦線は、かけるの記号と考えます。

例えば、距離20km、速さ5km/時が分かっているときの時間は、まず円の中の分子『き』に20を、分母『は』に5を入れ、それを計算すると4時間と答えが出ます。

この機械的に数値を代入して値を求める方法は、「はじき」という言葉もいやだけれども、答えを出すだけが目的で、算数の本質を忘れているようで、私は好きになれない指導法です。

この「はじき」法を使って、問題を求めるように指導している問題集も見かけます。

また、算数を指導している者として、私と同様に本質的には気に入らないけれども、どうしても公式を覚えられない生徒に対し、苦肉の策として導入している指導者も多いと思います。

このはじき法(きはじ)を、「先生、学校で『木(き)の下の、ハ(は)ゲたじ(じ)いさん。』と習ったよ。」と言う生徒もいて、これはあまりに情けない教え方だと思ったこともあります。


中学になっても、この『はじき』を使っている生徒を見かけますが、ちょっと問題です。
『はじき』を使う場合でも、必ず『速さの公式』を暗唱しながら使い、できるだけ早く『はじき』を卒業すべきでしょう。中学において速さの問題が解けない生徒に対し、時間的制約からこの「はじき法」で指導する数学教師が多いことも事実です。速さの概念を、小学校でしっかりとマスターさせる努力が必要でしょう。 



②『速さの単位』から教える方法

速さの単位は、km/時と書くことはすでにお話ししましたが、この単位こそ速さをどう求めたのかを、明確に表しています。

速さ=km/時(km毎時)=km÷時=道のり÷時間

ということになり、速さの単位から出てくる、この式1本だけを、まずしっかり覚えさせます。
(計算として、A÷B=A/Bとなることが理解できていないといけません。)

先ほどの例の、距離20km、速さ5km/時が分かっているときの時間は、
この公式に代入して、
5=20÷□
よって、□=20÷5=4(時間)と求めます。

すなわち、公式1本を確実に教え込む方法です。

また、小学校において「速さ」の指導をする場合、「単位あたりの量」の考え方の一つとして指導します。

したがって、「単位時間」当たりに進んだ「道のり」によって「速さ」を表すという事を、まず学習するわけです。

この流れの指導から考えれば、公立学校では、速さ=道のり÷時間の一本だけ教えて、後は未知数を四角と置いて問題を解く教え方で充分ともいえます。したがって、単位量当たりの学習から導き出されるこの速さの単位から、速さの数値の取り扱い方を指導する方法は、公立小学校では適している指導法です。

ただし、子どもにとって体験的に理解できる式は、「速さ×時間=道のり」であり、この式が理解しやすければ、「単位あたりの量」の学習から外れますが、この式のみを教えて、後は未知数を□と置き求める方法もあります。(学校での指導では、違和感がありますが、家庭で教える場合は、この式のほうが有効でしょう。)


③『経験的例文の暗記』から教える方法

『時速4kmで2時間歩くと、8km進みます。』

この例文を、まず覚え込ませます。

この例文は、数値が簡単な整数で単位もそろっているので、速さの公式を理解していなくとも、経験的に子供は理解できるはずです。

『時速4kmで2時間歩くと、□km進みます。』

公式を理解していない子供に、念のためこの問題を聞くと、間違いなく正解します。

□=4×2=8(km)…比較的簡単に子供は答えます。
その後に、『道のりは、速さかける時間』と言わせます。
式が初めに出てきて、それを見ながら公式を言わせるわけです。

『時速□kmで2時間歩くと、8km進みます。』
『時速4kmで□時間歩くと、8km進みます。』

それぞれ式をたてて、同様に公式を言わせます。
公式を、子供自身で作る喜びもある方法です。

次に、数字を異なる整数値(体験的に理解できる範囲)に変えて、同様に式をたてて答えを出す練習をくり返します。

そのうちに、経験的に出す式を通して、速さの公式を自然に理解させる方法です。基本的な事柄から、次第に複雑な問題に考え方を発展させていく、こうした指導法が大切です。しかし、漠然と答えが出てくる状態に留めるのではなく、「速さ・時間・道のり」という3つのキーワードを用い、子どもたちが説明できる明確な知識として定着を図るべきです。



④『面積図』を使って教える方法

『面積図』は、中学受験生に対して、『つるかめ算』・『平均算』、そして『割合』・『速さ』などの文章題を解く手段として、条件を整理する上手い方法として教えます。

一般的には、長方形を2つ組み合わせた複合図形を描き、与えられた条件を小学4年生程度の長方形に関する求積問題に変換して解く方法です。

速さの公式の指導にこの面積図を活用させる方法は、長方形の縦に『速さ』、横に『時間』そしてその長方形の面積に『道のり』を対応させて教えます。

長方形の面積を求める公式は、速さの公式よりも、生徒はビジュアルに遙かに理解し易いことは明らかですので、公立学校の指導には有効な教え方です。

例えば、縦に書く速さを4km/時と固定しておいて、横の時間を1時間・2時間~と増やすと、それにつれて面積と対応する道のりが増えていくのが視覚的に理解されます。

この教え方は、「速さ×時間=道のり」の関係式を面積図で表し、その式を視覚的に理解させる方法であり、公式1本を確実に覚えて対応する考え方に一致するとともに、面積を求める公式を利用して、他の未知数を求める考え方を視覚的に子どもに理解させることができます。

この表し方は、実は高校物理の等速直線運動の学習で、速さと時間と移動距離(道のり)との関係をグラフ化したときに得られるもので、縦軸を速さ、横軸を時間とすると、できあがる長方形の面積が、移動距離を示すという考え方と、基本的に同じ方法です。


3つの数値の内、求める数値を□と置いて、速さの公式を図形的にビジュアルに教える方法と言えます。



実際に『速さの公式』を使うときの問題点

「時速15kmの自転車で15分進んだ道のりは□mです。」

この様な数値に問題を変えると、公式を覚えているか、ちょっとした工夫ができる子供でないと、正解できません。

実際の問題では、この様に単位変換を行わないと、解答できないものが多く出題されます。

この問題はまず、
「分速250mで15分進んだ道のりは~」と変えるか、
「時速15kmで1/4時間進んだ道のりは~」と変えます。

後は、公式を言いながら、
「道のりは、速さかける時間だから~」
250×15=3750(m)
または、15×1/4×1000=3750(m)と答えを出します。


この様に、速さの問題を解くには、『速さの公式』を覚えること、『単位変換』を確実に行えること、『分数計算』が確実に素早くできる力を付けることが必要です。

『速さの公式』を理解し使えるようになったなら、『速さ』と『時間』と『道のり』の3つの数量の相互関係の理解を深める学習が必要です。

次回は、こうした点について指導の方法を伝授しましょう。



速さの指導法に興味ある方は、以下のブログも参考にご覧ください。


マッキーが教える小学生の算数…『速さの問題(3)』…『速さ・道のり・時間』の相関関係の教え方

マッキーの教室:公立小学校で行った「速さの導入授業」

マッキーの学習指導法:速さのコメントに回答

マッキーが教える算数…どうして子供は時間の単位が苦手なのか(1)


マッキーが教える算数…どうして子供は時間の単位が苦手なのか(2)



以下の特殊算は、中学受験を前提とする速さに関する文章題で、その問題は単に最新の入試問題からピックアップしただけでなく、各特殊算で知っておかなければならない典型的なタイプを抽出して分類し、その考え方と指導法を示したものですので、家庭で指導する時の参考にして下さい。


家庭で教える小学生の算数『特殊算』…速さの文章題(1)『旅人算…その1』

家庭で教える小学生の算数『特殊算』…『旅人算…その2・中学入試問題《渋谷幕張中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その3・中学入試問題《雙葉中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その4・中学入試問題《立教新座中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その5・中学入試問題《麻布中学》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『旅人算…その6(最終回)・中学入試問題《女子学院中学》』


マッキーの算数指導法『特殊算』…『『通過算…その1・中学入試問題《栄東中・十文字中》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その2・中学入試問題《慶應義塾湘南藤沢中等部》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その3・中学入試問題《森村学園中等部》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その4・中学入試問題《市川中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『通過算…その5・中学入試問題《湘南白百合学園中学校》』


マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その1・中学入試問題《浅野・吉祥女子》』


マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その2・中学入試問題《明治大学附属明治中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その3・中学入試問題《桐朋中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その4・中学入試問題《灘中学校》』


『時計算…その1・中学入試問題《跡見学園中学校》』

『時計算…その2・中学入試問題《立教新座中学校》』

『時計算…その3・中学入試問題《城北中学校》』

『時計算…その4・中学入試問題《青山学院中等部》』

『時計算…その5・中学入試問題《香蘭・共立》』

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2 コメント

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すごーい (チョコ)
2011-12-05 08:01:09
私は算数がとっても嫌いです。
でも、マッキーさんのやり方で、速さのテストが…100点でした
とてもやくにたちました
返信する
Unknown (マッキー)
2011-12-05 11:47:24
コメントありがとうございました。

この文面からすると、チョコちゃんは小学生ということになりますが、当たっていますか?
算数は、分からなくなるとつまらない教科に、分かってくると、とても興味深い教科となります。
常に、「どうしてそうなるのだろう」という問いかけを自分にしながら、嫌がらずに学習を続けてください。
そうすれば、いつかきっと算数が好きになると私は確信しています。
返信する

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