あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

親方物語 1

2014-09-14 | ガイドの現場
それは1本の電話から始まった。
ガイドの友達を通じて、ドライバー依頼の話である。
南島でテレビドラマの撮影をするのでドライバーが必要だと言う。
いつもはこの時期には山にいるのだが、今年は雪の降り始めが遅く7月に入っても未だスキー場がオープンできない。
こういうタイミングで事が起こる時は全てが上手く行く。
そして直感が行けと言っている。
僕は一も二もなく承諾をした。
仕事の日が近づくに連れ、だんだんと詳細が出る。
どうやら僕の仕事は美術の監督と一緒にロケ地を先回りするらしい。
なんか、よく分からないが、まあなんとかなるだろう。
こんな仕事で馬の合わない人に当たったらどうしよう、などという考えも頭をかすめたが、それよりも素晴らしい出会いがあるのではという気持ちでワクワクして仕事の日を待った。
そしてそのワクワク感は最後の最後まで僕を裏切ることはなかった。


7月19日
ツアー初日は移動日。
僕はクライストチャーチからクィーンズタウンまで飛行機で飛んだ。
今日の仕事はクロムウェルへ移動後、クィーンズタウンへ車で戻り撮影隊を迎えに行くだけという、わりと簡単な仕事だ。
ちなみに僕は撮影の仕事はこれで3回目である。
1回目は映画クライマーズハイ。
一期一会 ある映画の話
2回目はNHKのグレートサミットという山のドキュメンタリー。
グレートサミット 1
グレートサミット 2
そして今回はフジテレビのテレビドラマのロケ。
主演男優のOさんの出たドラマを一回二回見たはずだが全く記憶に無く、空港で皆を出迎えてもどの人がそうか分からなかった。
もちろん女優のTさんも知らない。
他にも俳優は何人かいたが、見事に誰も知らない。
まあ、ニュージーランドに住んでいてなおかつテレビも見なけりゃ知らないのは当たり前だが、本人達にわざわざ「僕はあなたの事を全く知りませんが、よろしくお願いします」などと言うわけでなく当たり障りのない挨拶をして過ごした。
それぐらいの社会性は身に付けている。
その日の夕方に美術の人と面会をした。
鈴村さんという50代後半の人当たりの良さそうなおじさんだ。
とりあえずこの人の指示に従っていればよいようだ。
その晩は顔合わせを兼ねた食事会。
今回は総勢60人ぐらいか、大きなグループだ。
一応一通り紹介があったが、とても一気には覚えきれない。
僕は人の顔と名前を覚えるのが絶望的に下手くそで、教えてもらってもすぐに忘れてしまう。
ボスの名前のスズムラだって間違えてミズムラと言ってしまう。
主演のOさんとTさんのことを、自信を持って「この人がそうです」と言えるまで2日かかった。
チーム全体のメンバーと役割がなんとなく把握できたのは撮影ツアー最終日だ。


続く
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