あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

8月21日 Craigieburn

2016-08-23 | 最新雪情報
若い時にさんざん通ったこの山だが最近では滑る機会も減ってしまった。
駐車場から歩きロープトーに引っ張られ山頂に立つと、昔の想い出が次々によみがえる。
ここのロープトーではこんなことがあった。
この斜面ではこんな滑りをした。
あの時一緒に滑った仲間たち。
この前日本で会ったヤツもいたし、それ以来会っていない人もいる。
青春という言葉が浮かんでくるのは、それなりに歳を重ねたからだろうか。
仲間達のことを考えながら、僕は一人で滑った。


チケットオフィスから森を抜けてフィールドへ行く。この雰囲気が好きだ。


一番上のロープトーを架け替える予定だろう。新しい小屋ができて支柱も立っていた。このスキー場もそれなりに変わっていく。


山頂へ登ればクライストチャーチも見えた。いつもポーターズから見えるのとは角度が違う。僕が住んでいる場所からはここは見えない。


ここの名物でもあるブッシュトラック。昔はこの看板もなく、森への入り口が分かりづらかった。


森の中を滑るコースがあるのはニュージーランドの中でもここだけだろう。


ジェットコースターのようなコースを抜けるとロッジの裏へ出る。


今日のランチは山で買ってみた。野菜で隠れているがソーセージも入っている。


ハミルトンフェイスへ行くトラバースは雪が残っているが、スノーボーダーには辛いだろう。


ニュージーランドで一番急なスキー場。こんなシュートがいたる所にある。


最後は通称ビッグベンドまで滑る。日本語で言ったら大曲だな。

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南島満遊記

2016-08-22 | 高座
えー、度々のお運びで。
清水亭聖笑と申します。
ここで出させていただくのも何回目でしょうかね、しばらくご無沙汰でした。
ほら、そこの旦那。
今、ニヤっと笑って、「お、今回はこいつが出たぞ」と思ったでしょう。
これが寄席でしたら「待ってました!」と声が飛ぶんですが、こういうブログだとそうもいかない。
こちらとしては、あの旦那さんがあの女将さんが読んでくれるんだろうな、そんなことを思いながら話を進めるわけです。
しかしなんですな、時が経つのは早いもので、もう8月も半ばを過ぎてしまいました。
この前やっと冬が始まったと思ったのに、うちの庭ではチューリップなんかが芽を出し始めてたりして、ふきのとうなんかも出ちゃいました。
スキーヤーのあたしとしてはちょっとさびしかったりして。
あ、言っておきますがね、あたしはもともとスキーヤーでして、本職はスキーなんです。
間違っても、噺家が本職ではないんです。
スキーできるんです、こう見えても。
スキー場以外であたしに会いますと「本当にスキーなんかできるの?このさえないおっさんが」という目で見られますが、一応、人並みに滑れるんです、はい。
そんなスキーヤーの感覚ですと、今は冬真っ盛り。
山は白銀の雪に覆われ、吹けば飛ぶような軽い新雪がどっさり積もった中を、ばふばふと滑るのが理想です。
ところがもう冬の盛りを過ぎてしまい、巷では春の兆し。
あこがれていたあの先輩に想いを伝えられずに近づく卒業式を迎える女子高生のような。
もしくは長い行列を並んでやっと頼んだラーメンを、空腹のあまりむさぼり食って気がついてみたら汁しか残っていなかったような。
そんな心持なんです。
さてね、ここ数日ブログもアップしてなかったんですが、遊んでいたわけではないんです。
ちゃんと働いていましたよ。
そりゃお盆といえば我々は一番忙しい時期。
あっちからもこっちからもガイドの依頼で声がかかるのであります。
ありがたいことですな。
でもこちらの身体は一つですので予約は一つしか受けられません。
この仕事は数ヶ月前から予約が入っておりましたので、あちらを断り、そちらにお詫びをして、という具合でした。
そして行ったのが南島ツアー。
クライストチャーチからテカポ、マウントクック、クィーンズタウン、ミルフォードサウンド、という王道コース。
今までに何回こういうツアーをしたか数え切れないのですが、真冬は初めてです。
まあ、一応専門はスキーですので8月のこの時期はスキーの仕事が全てでしてたが、今回は観光とちょっとしたハイキング。
今まで自分が何度も行った場所で時期が変わればこういう景色になるんだろうな、と思っていました。
ですが実際に自分の身をそこに置き自分の目で見て肌で感じるものは違う。
新鮮な感覚でツアーをしまして、あたしも楽しませていただきました。
でもなんですな、こうやって見てみると今さらながらこの国はすごいなって思います。
氷河も山も湖も森も海も全てすごい。
そして人間ってちっぽけなものだな、でもちっぽけでもまぎれもなく存在している。
そんなことを考えて数日間過ごしたわけです。
普段はカメラも持ち歩かないのですが、今回は写真をたくさん撮りましたので一挙に公開します。
写真ごとのコメントはしませんが、「ああ、ここはあの場所だろうな」と思ってください。
さて「トラベルの語源はトラブルである」などと申します。
旅というものは人生と同じでさまざまなトラブルがあるもので、その都度それに対処しながら前に向かって進むものです。
特に多いのが忘れ物。
「はい、皆さん、忘れ物ありませんか」なんていつも言っているのですが、そんな自分がやっちまった。
クィーンズタウンタウンの宿の戸棚にダウンジャケットを忘れてきた。
出発する時に何か忘れているような気がしたんですが、ダブルチェックをしなかったら、やっぱりそれだった。
まあ、クィーンズタウンのボスに連絡をして、預かっといてもらいました。
♪私バカよね~おバカさんよね~
バカでもいいんです、どうせすぐに春になるし。
それより落語の落ちができました。
今日の下げは英語圏だけにダウンといたしましょう。

ドドン、ドン。



































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8月15日 Porters

2016-08-16 | 最新雪情報
高曇りだが安定した天気が続く。
今日の仕事はレースチームの送迎。
朝一でポール設定の手伝いをしたら、基本その後は自由である。
雪も安定しているので30分ほどスキーを担いで登り裏を滑ってみた。
今まで何回も登った場所だが、やはり実際に登ってみると何かが違う。
それは微妙に違う角度から見る景色であり、ゲレンデから離れる爽快感であり、孤独に山に身を置く緊張感なのか。
分かった気になるのと、実際に自分の身をそこに置くのとでは全く違うものだ。
違うものがあるとすれば、それは自分の心なのであろう。
そしてそれに気付くにはやはり自分の足で登るということが必要なのだと思う。
時間でみれば1時間足らずのものだが、十分に密度の高い時間を味わった。


誰もいないバーンにポールを張っていく。これはこれで気持ちいいものだ。


こんな具合です。


こうやって見ると、同じスキーでも随分と違うものだ。


リフトを使わずに歩いて登る人もいる。これもまたスキー。


山頂へ一人で登る。自分の前に道はなく、自分の後ろに道ができる。


オリンパスが間近に見えた。後ろに見える氷河を載せた山はマウントロールストンだろうか。


自分が登ったら、後ろから人が来た。良く見ると下から登ってきたスキーヤーだった。


そして今日の1本。雪質はコーンスノー。短い1本だが、充分に堪能した。

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8月11日 Porters

2016-08-12 | 最新雪情報
晴れた日が続く。
前回の降雪から数日間、晴れが続き雪の状態も安定してきた。
ポーターズのビッグママも真っ白で滑れそうだが未だクローズ。
顔なじみのスキーパトロールに聞いたところ、滑れる場所まで10分ぐらいサイドステップで下る。
それぐらい雪が薄いのだと。
まあ7月に雪が少なかったのでそれも仕方なかろう。
天気予報では次の嵐が近づいているようだ。
さらに次の新雪を期待するのはスキーヤーの性。
人間の欲望とは切りが無いものである。


無風快晴、絶好のスキー日和。


山頂から見た南アルプスも全部晴れ。


やっぱりこの地形が好きなんだなあ。


一つ裏のクリスタルボールは絶好のバックカントリーエリア。


名物コース、ビッグママもオープンまでもう少し。


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8月9日 Craigieburn

2016-08-10 | 高座


えー毎度のお運びで。
あたくし清水亭聖笑と申します。
え?出る場所が違う?
そこは最新雪情報だって?
まあ、いいじゃあありませんか、固い話は抜きにして、あたしに出番をくれても。
今回は清水亭聖笑がお届けする雪情報、クレーギーバーン編でございます。
しかしまあ、雪が降ってくれまして一安心ですな。
スキーヤーなんてものはですね、雪が無けりゃただの人、いやそれ以下のものでしょう。
雪が無いと仕事もない。
やって来るお客さんの機嫌も悪くなります。
些細なことにも腹を立てて「あのガイドの態度がなっとらん。雪がないのもあいつのせいだ。賠償金払え、慰謝料払え」と無理難題をふっかけられる。
番頭さんにはすまなそうに「悪いがお前さん、泥をかぶっておくれ」と暇を出される。
子供は鼻水を垂らしながら「父ちゃん、ひもじいよう」
かみさんはやつれた顔で「あんた、どうすんのさ、この寒空に路頭に迷って」
「そうだな、こうなったら一家で大川に身を投げるか」となってしまいますが雪が降れば話は別。
お客さんはニコニコと機嫌よく、時にはチップもはずんでくれる。
お客さんがハッピーだと、仕事が終わった後のビールも飯も美味い。
ボスも機嫌よくボーナスなぞくれたりして、好いことずくめですな。



さて昨日はクレーギーバーンへ行ってまいりやした。
お客さんはオークランド在住のハイデン、歳の頃は20代前半といったところでしょうか。
彼と二人で山に向かいました。
国道から山道へ入ると様相は急に変わる。
森の中の雪道になるんですが、これがまた綺麗なんです。
朝日が森に差し込んで、時折木の枝に積もった雪がふわっと落ちて、それが朝日に照らされキラキラと光る。
「なんか別の国に来たみたいだなあ」とハイデンがつぶやく。
ニュージーランド人でもそう思うんですねえ。
もっともオークランドなんて大都会はあたしらから見れば外国のような場所ですがね。
そのうちに木々の隙間から山も見えてくると、ハイデンの興奮も高まってくるのがこちらにも伝わる。
ああ、分かる分かる、その気持ち。
あたしも25年ぐらい前に同じようにワクワクしながら友達とこの道を通ったものでした。



駐車場に着き、荷物を持ってロッジに行きます。
ハイデンは5日間、ここに滞在。
あたしは街で別の仕事があり、スキーをせずに引き返しますので彼ともここでお別れ。
一期一会ですが、こういうのもいいですな。
今年は何回かクレーギーバーンに足を運んでいるんですが、まだ滑っていない。
タイミングが合わないというのはこういうものなんでしょう。
スキーはしないのですが、せっかく山に来たのでロープトーの乗り場まで歩いてみました。
ちょうど通りかかったパトロールと一緒に雪の話なんぞしながら5分ぐらい歩きます。
山のあちらこちらに、好き者が滑ったあとがあります。
あたしが見ましても「まあ、よくもあんな所まで行ったねえ」なんて場所まできっちりシュプールがついていました。
そしてクレーギーバーン名物の曲がったロープトーの写真を撮って、山を後にしました。
スキーをしたかったのは山々ですが、いいんです、あたしは。
ハイデンのキラキラ輝く目とワクワク感で充分。
まだかけ出しとはいえ、あたしも噺家のはしくれですもの、滑らせてはいけないでしょう。

ドドンドン


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8月7日 BrokenRiver

2016-08-08 | 最新雪情報

晴れた!
視界が悪い日が続いた不満を吹き飛ばすような無風快晴の日曜日。
オリンパスもテンプルベイスンも全て開いたので人々は分散されて、混雑もまずまず。
普段はパウダーと言っても風で叩かれることが多いのだが、今回は風もあまり強くなかったので雪質も良好。
好条件が揃いに揃った8月の最初の週末だ。
この日の仕事はクライストチャーチからブロークンリバーへお客さんを連れて行ってお客さんはそのまま滞在。
夕方にクレーギーバーンからブロークンリバーへ別のお客さんをお連れした。
クレーギーバーンでは滑らなかったが駐車場は満杯。
ミドルベイスンの雪のつき具合はよく、パウダーフリーク達の滑った跡がいたる所にあった。
雪不足を危惧したのは既に過去のこと。
ニュージーランドスキーの冬はピークを迎えた。


一番下からのロープトーに乗ってさらに上を見上げるとこんな斜面が待っていた。


とりあえず今日の1本めはこんな所。


リッジトーはロープが伸びすぎてクローズ。こんなこともある。


奥に行きたい人は登る。たかが10分ぐらいの登りに文句を言う人はここに来ない。


山頂からの景色も冬化粧。


その奥にはパラダイスが待っている。


そこからどういうラインで滑る?


微妙な凸凹の下には岩が隠れていることがある。瞬間の判断と自己責任。


パトロールのダグは何年目だろう。存在がすっかり定着した。


気持ちいいかって?気持ちいいんです。


リッジトーが開かないおかげで1日中こういう場所が残った。まるでヘリスキーだ。


とりあえず真ん中をいただきます。



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8月6日 Porters-BrokenRiver

2016-08-07 | 最新雪情報
最新雪情報をアップしていないが、山に行っていないわけではない。
山には毎日行っているのだが、視界が晴れない日が続く。
8月に入り毎日のように雪が降り、積雪量も1m近くになった。
パウダーはあるのだが、とにかく視界が悪く滑るのもままならない。
雪が無いなら無いで文句を言い、雪が降っても視界が悪いと文句を言う。
人間とは常に文句を言う、罪深い存在なのだろうか。
それでもブロークンリバーのメンバー達は雲の切れ目を狙いパウダーを滑る。
この日の仕事は朝一でポーターズに行ってお客さんを下ろし、ブロークンリバーへ行ってパウダーを何本か滑りお客さんをピックアップ。
その後再びポーターズへ上がりお客さんを迎えてクリストチャーチまで。
山道はチェーン規制、1日に3回もチェーンを着けたのは自分の中でも記録だ。


国道も雪化粧。チェーン規制で車の通りも少ない。


四区でも麓からチェーンをつける。


古いメンバーのジョックと視界が悪い中、一緒に滑った。


パーマーロッジもこの積雪、文句なし。


気温が低いので雪質は極めて良好。


この日は時間の関係でグッヅリフトを使わずにお客さんの荷物を担いで滑って駐車場まで滑って下りた。


グッヅリフトに乗れるようになって、使わなくなった山道。
最後に歩いたのはいつだったか。


駐車場までもパウダーだが、調子に乗ると石を踏む。
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ウンは運。

2016-08-03 | 高座
えー、毎度のお運びで。
今日も馬鹿馬鹿しいお話にお付き合いお願いいたします。
あたくし、清水亭聖笑と申します。以後お見知りおきを。
この名前もですね、ふとしたことからついちゃったんです。
ふざけ半分で高座調でブログを書いたら受けに受けて、龍という友達がコメントに清水亭聖笑という名前をつけてくれました。
この友達というのが古い付き合いでして、昔は互いにやんちゃを共にした仲。
どんな悪さをしたかって?
へへ、悪さと言えば飲む打つ買うってのが相場でしょうが、そんなの一々聞くのは野暮ってもんです。
奥さんとの馴れ初めも知っていますし、その奥さんと一緒にスキーパトロールとして働いたこともありました。
当時我々はクィーンズタウンを拠点にブイブイ言わせておりまして。
その奥さん、当時はまだ奥さんではありませんがこの娘がまた可愛くてね。
髪はショートカットでちょっとボーイッシュ、クィーンズタウン小町などと呼ばれておりました。
狭い町なので噂が広まるのも速い、みんな若い盛りなので男共はみんなその娘を狙ってる。
そんな中でさらりとその娘をさらっていったのがこの男、いつのころからか二人で手をつないで街を歩いてたりなんかして。
失恋にあけくれた男共が悲しみにくれて昨日一人、今日一人、ボチャーンボチャーンと真冬のワカティプ湖に身を投げる始末。
この男が個性の塊のような仁でして、あたしもかなり個性は強い方ですが負けず劣らず、類は友を呼ぶと申しますな。
若い時にはずいぶんとがっていて、出る杭は打たれて出すぎりゃ抜かれてという具合で苦労もしましたが、今では千葉に新居を構えて夫婦仲むつまじく一姫二太郎という家族をもっています。
去年に日本に帰った時も成田にJCと迎えに来てくれて、ニュージーランドに帰る時には空港まで送ってくれたわけです。
え?JCって誰かって?
あーた、それをここで聞いちゃいけない。
それこそ話の収集がつかなくなっちまう。
そういうのはですね、『ああ、きっとJCという人の話もいずれ高座にでてくるんだろうなあ』というひそかな期待を持ちつつ、毎日をつつましく明るく生きるんです。
えー、その龍という友人がつけてくれたこの名前、清水亭聖笑。
好いか悪いかは別として、ついちまったものはあたしのものです。
ちなみにあたしの好きな歌手で竹原ピストルという人がおりまして。
この人の名前が友達につけられたそうです。
まだ無名だったころにつけられて、それでやっているうちにメジャーになった。
今さら変えられない、と本人はちょっぴり後悔しているようです。
きっと飲み会の席かなんかで酔っ払ってついちゃったんですかねえ、トーマスのように。
あたしも清水亭聖笑を襲名しましたから、いずれはこの名前で本でも出しましょうか。

さてウンの話です。
先日、犬の散歩に近所の公園に行った時のことです。
近所の公園と言ったってそんじょそこいらの公園とは違う。
広大な敷地には羊の牧場あり馬のパドックあり、池もあり野鳥もたくさんいます。
馬のパドックを通った時に馬糞がたくさん落ちていた。
これを肥料にしたらどうかな、などと考えました。
そんなおりにばったりと羊の移動にでくわしました。
そこでは時々おじさんが車で羊を移動させているのですが、この時はなかなか羊がいうことを聞いてくれずうまく動いてくれない。
あたしも長いことニュージーランドにいますし、縁あって牧場にも住み込みでいましたから羊の移動のやり方を知っている。
なので犬のココと一緒に羊の移動を手伝ったんです。
その時におじさんに聞きました。
「こんちやー。あのですね、馬のパドックに落ちてる馬糞、持ってってもいいですか?」
「おうよ、お前さんならかまわんよ、好きなだけ持ってきな」
「まあ一輪車に一杯ぐらいなんで」
「ああ、いいよ。勝手にきてやってきな」
「ありがとさん」
そんな具合に許可も得た翌日。



「兄貴、兄貴じゃありませんか。おはようございます」
「おお、八か、おはよう。」
「兄貴、犬の散歩ですか。それにしては妙なものを持ってる。ネコ車なんぞ押してどこへ行くんですかい?」
「ああ、そこの公園に馬のパドックがあるだろ。そこに馬糞を拾いに行くところなんだ。ちょうどよかったお前もついてこい」
「馬糞って馬のクソでしょ。なんでそんなものを?」
「庭の肥料にしようと思ってな」
「ほう、相変わらずマメなお方だね。まあ天気も好いですし、よござんしょ、お供します。」
小川にかかる橋を渡って公園に入ります。
「兄貴、兄貴、こんなところにうなぎがいるじゃないですか。ひいふうみいよう。いやあずいぶんたくさんいますな。食えるんですかい?」
「おお、その鰻は何年か前から住みはじめてな。いつか捕って蒲焼にしてやろうと俺も狙ってるんだ。ちょうどいい、お前川に入って何匹か捕まえて来い。」
「いやですよ。こんな寒い中に水に入るなんて。犬のココに捕らせたらどうです。」
「ダメだよこいつは。夏の暑いときは時々ここで泳ぐんだが、鰻の上をスーッと素通りだ。今度、罠を仕掛けようかと思ってる」
「じゃあその時は呼んでくださいよ。おっと、この先の茂みを抜けると、見えてきた見えてきた。白い雪をかぶった山が今日もよく見えるじゃないですか、兄貴」
「ああ、この遠くに山が見える景色が好きでなあ。」
「あそこがハットで、あの山がポーターズですかい。よおく見ればビッグママの斜面も見えるじゃないですか。それはそうとこの前ブロークンリバーに行ったんですって?ブログで読みましたよ。どうでしたかい?」
「そりゃ良かったさ。なんて言ったって待ちに待ったシーズン初日だよ。言うなれば初物だ。初物を食わねえのは江戸っ子の恥って言うじゃねえか?食ってきたさ、今シーズン初のパウダーさ。そりゃ旨いに決まってる。人が少なくて滑っても滑っても、あっちにもこっちにも残ってる。それをお前はみすみす逃して大馬鹿野郎だね」
「そう言わねえでください。あっしも野暮用がありましてね。でもやっと山も開いて冬らしくなりましたね」
「全くだよ。一時はどうなるかと思ったがな。おう、そこのゲートを開けてくれ。ネコ車を通してと、ココも早く入れ。八はそこを閉めて来てくれ。」
「へい、しかしこの牧場のゲート。まあニュージーランドですからどこもかしこも牧場で羊はいるんですがね。街の中で、それも住宅地のすぐ近くでこういう牧場がある環境ってなかなかないんじゃないですかい?いやあいい公園ですね、ホント。お日様もポカポカと気持ちいいや、へへ。お、見えてきた見えてきた、あれがクソ畑ですね。」
「なんだい、そのクソ畑ってのは」
「いえね馬のクソがあちこちにあって畑のような場所でクソ畑」
「くだらないことを言ってるんじゃないよ。第一お前はクソ、クソって言うけど、あれはウンコ。縮めてウンだ。ウンと言えば運。運がいいと言えば付いてる証。付いていれば何事も上手くいく。バクチでも丁と張れば丁が出る。半と張れば半が出る。今回はと見送ればさいころが重なるというように運が好いというのはそういうことだ。その運を拾いに行くんだ。こんなありがたいことはないじゃないか。それをお前はクソクソと言ってりゃ幸運だって逃げちまうよ。」
「あい、すみません。じゃあ、あっしもその運のおこぼれにあずからせていただきやす。それはそうと馬がいないじゃないですかい。」
「昨日まではいたんだよ。どこか別の場所に移したんだろ。ほら向こうの方で馬のいななきが聞こえるじゃないか。これならココを繋がなくても大丈夫だな。もし馬がいたら繋がなきゃと心配してたんだよ」



「あっ、兄貴、大変だ。ココが馬のクソじゃなくて馬のウン様をくわえてる。」
「なんだいそのウン様ってのは?」
「少しでも幸運にあやかろうと思って様をつけみました」
「馬鹿だねお前は。そんなところで様をつける奴があるか。」
「それよりさっきからココが馬糞をくわえてウロウロしてるんですが、あっ、あっ、ごっくん。飲んじゃった。食っちまいやしたよ、兄貴」
「ああ、たまに羊の糞とか馬糞とかくわえてて飲みこんじゃうことがあるんだ。後で吐いてたりするがな。」
「へえ、兄貴の家の夫婦喧嘩は食わないけど馬糞は食っちゃうんですね。すると兄貴の夫婦喧嘩はクソ以下ということですかい」
「馬鹿なことを言ってんじゃないよ。それより手を動かしな。この用意したスコップで馬糞を拾って一輪車に乗せるんだ。」
「へいへーい。♪犬の散歩に馬糞拾って積むのはネコ車、あチョイチョイと。あれ、兄貴、何か軽トラが来ましたよ。何か車の後ろに鎖のようなものを引っ張ってぐるぐる走ってる。何をやってるんですかね」
「馬糞というのは塊になってるだろ、そのままだと分解も遅いし、下の草も生えてこないからああやってばらけさせているんだろう。そこに前のヤツが転がってるだろう。」
「へえ、こいつですか、確かに乾燥して匂いもなく、干し草って感じですね」
「それに俺たちがここの馬糞の塊を持っていけば、あの人の仕事も減る、わずかだがガソリンも節約になる。一石3丁とはこのことだ。」
「ふうん、上手いもんですなあ。あれ、今度はこっちに来たよ。乗ってるのは若い女の子だ。可愛いね、へへ。あ、停まった。兄貴となんか楽しそうに話してるぞ。いいなあ。ココも頭なでられて尻尾振って喜んじゃって。あ、行っちゃった。兄貴、兄貴、何を話してたんですかい。『そこの素敵な御仁はどなた』なんて言ってましたかい」
「言ってねえよ、そんなこと。俺もよあの娘は今まで見たことは何回かあったが話をしたのは初めてでな。日本人ですか、はいそうです、って言ったらよ、お父っつあんはイギリス人、おっ母さんは日本の広島の出だそうだ。もっともここで生まれ育ったから日本語は少しだけだって言うがな。こちらのことも色々聞かれたからスキー関係の仕事をしています。ハットですかと聞かれ、いえいえ主にポーターズとかブロークンリバーなんぞに行ってますと言ったら、驚くことにクラブフィールドのこともよく知ってるじゃねえか。それでこの前のオープンの日のことでひとしきり話して盛り上がったってわけだ。わかったかい、こんちくしょうべらぼうめ」
「なんだい、その最後のこんちくしょうべらぼうめってのは」
「いやよ、あまりに一つの台詞が長かったから勢いでな。まあ後は向こうのパドックのどこそこに行けばもっと馬糞はあるよなんて話をしたのさ。どれ、あらかた馬糞も溜まったことだし、そろそろ帰ろうか。」



「兄貴、こうやって持ってみると案外軽いんですね。土なんかネコ車に一杯にしたら重たくてヨロヨロしちゃうじゃないですか。これぐらいなら楽勝だい。そんでこれを持って帰ってどうするんです?」
「うむ、地面に穴が掘ってあって、そこで堆肥をつくるんだが、今は一つ空いているのでそこに入れてイーエムで分解させようと思ってる」
「へえ、あのドイツの車、あれを使うんですか」
「何を言ってるんだね。そりゃビーエムだろうが」
「さいですか。ああコマーシャルのこと?」
「それはシーエム」
「ダイレクトメール?」
「それはディーエム。いい加減にしろ、全くお前は。イーエムのことを知らんのか?以前のブログにも書いたはずだぞ、何?読んでないって、しょうがないな、探してあげよう。どこだったかな、あれはだいぶ前の話だったな。あった、あったこの話だ。読んでみろ。」
「へえ、なになに、ふむ、ほうほう、それで、ふむ、なるほど、あらかたわかりました。しかしなんですな、これが世のためになるんですかい。」
「なる。それにな、お前が運んでいる馬糞、これも世界を救うのだぞ。それがお前には分からないのか」
「へえ、分からないので教えて下さい。」
「よし教えてやろう。まずはこうやって馬糞を使って土を作る。これが良い土になり、良い野菜ができる。特に大根なんか最高だな。さてここに仮に山田太郎くんという子がいるとしよう。この太郎君、不治の病を患い医者からさじを投げられてしまった。親御さんがたいそう悲しんでな、死ぬ前にしたいことはないのかと聞いたら、ニュージーランドに行きたい。それなら生きているうちにとニュージーランド旅行に行くことになった。ニュージーランドでは世話になったガイドさん、すなわち俺のことだが、そこに食事に招待された。そこでうちの大根を使って料理をしたら、あら不思議、どの医者も見放した病がきれいさっぱり治ってしまった。ありがとうございます、せっかく拾ったこの命、世のため人のために使いますと一生懸命働いて出世した。一度は死を覚悟したくらいだから世の仕組みもよく分かる。今のこの世を牛耳っている支配者とも対決してなんと改心させてしまった。そこからは争いや奪い合いのない世界となり、星子が言っているような地球人70億による地球祭へとなっていくのだ。さあ分かったか、この馬糞がゆくゆくはこの地球を救うのだ。」
「いや、兄貴、突っ込みどころがありすぎてどこからつっこんでいいのか分からねえけど、地球を救うなんて、なんでそんな大きな話になるんですかい?」
「そりゃお前、ウンの話だけに、小さいのはいけねえ」

ドンドドンドン



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8月1日 Porters

2016-08-02 | 最新雪情報
週末はポーターズも忙しかったようだ。
ビッグバーン、ブラフフェイスも開き、パウダーはあっという間に踏まれてしまったらしい。
明けて平日の月曜日は人も少なく、のんびりしたムードである。
ブラフフェイスは開いたが名物バーンビッグママは未だ開かず。
開けるにはもう一降り必要だろう。
次の雪の予報は水曜日。
しばらく悪天候が続きそうだ。


スキー場のてっぺんからクライストチャーチが見える。街も晴れたようだ。


ブラフフェイスへの入り口は石ころだらけだが、その奥にはビッグバーンが広がる。


ビッグママの雪のつきぐあい。すごくがんばれば滑れないことはないが、パトロールとしてはオープンできないといったところだ。


昔からの友達マリリン、パトロールのアイリーンと一緒にブラフフェイスへ。


闖入者あり。ポッサムがカフェの屋根にいた。ここでポッサムを見たのは初めてだ。


食べ物を求めて地面に降りてきた。


こちらは高山オウムのケーア。若鳥なのだろう。くちばしの付け根と目の周りが黄色い。
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7月31日 Broken River

2016-08-01 | 最新雪情報
前回の降雪が落ち着いたころに新たな新雪があった。
山は雪化粧を重ね、滑れる範囲も広がっていく。
ブロークンリバーは日曜日そして晴天パウダーという好条件もあって、人混みでごった返した。
長い間待っていたクラブメンバー、パウダーフリーク達の笑顔が集う。
駐車場は一杯で下の道に車を停め、グッズリフトの長い行列を待ち、やっとの思いでゲレンデへ。
着いた時には見える場所はあらかた踏み荒らされていた。
だが見えない場所を知っているのはローカルの強みでもある。
メイントーのてっぺんに立つと日本人のスノーボーダーに声をかけられた。
どうやら向こうは僕のことを知っているらしい。
話を聞くと2年前にここにきたユータの知り合いだと。
そしてアライ時代に一緒にパトをやって今はニセコでガイドをしているターナーの弟子だと。
しかも20年来の旧友、龍とも繋がっている。
ならばニュージーランドバックカントリー風のおもてなし。
パウダーが残っている裏のバーンへ連れ出した。
感動の嵐、当然だろう。
初めてのクラブフィールドに誰の助けも借りずに一人でやってきたその行動力を僕は認める。
駐車場からわけの分からないグッズリフトに乗り、初めてのロープトーに四苦八苦。
何回も振り落とされてやっとたどりついたてっぺんに僕がいたわけだ。
そこからはジェットコースターのごとく裏のアランズベイスンでパウダーを滑って、パーマーロッジでビールと極上ソーセージのバーベキュー。
きっとヤツの頭の中は、ぐちゃぐちゃで分けが分からなくなっている事だろう。
それもまた経験。
久しぶりに活きのいい若いヤツがやってきた。


オープン最初の週末とあって駐車場も一杯。下の道に停めて歩いた。


グッズリフトも長蛇の列。30分待ち。


だいぶ雪もつき冬本番。


出会ったケンジを連れて、1本目は通称アバランチという裏のコースへ。


そりゃもう大興奮さ。


空は青く、雪は白く、人は滑る。


パーマーロッジにてケンジとレネ。


山頂から奥も開いた。これからが冬本番である。

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