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宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『語り口の問題』加藤典洋(1948生れ)、ちくま文庫(『敗戦後論』所収)、1997年

2015-11-13 13:44:12 | Weblog
Ⅰ “アーレントは「民族の娘」なのに「同胞」への愛に欠ける”との批判を受ける;これに対しアーレントは“ユダヤ民族の共同性(※民族性)を解体し、公共性に置きかえるべきだ”と反論
(1)
A ハンナ・アーレント『イェルサレムのアイヒマン』(1963):元ナチの戦犯アイヒマンがイスラエル当局により1960年逮捕、1961年裁判、1962年死刑判決・絞首刑。
B ハンナ・アーレントは、ユダヤ民族の共同性(※民族性)に対置して、公共性を置く。

(2)
C パーリア(、最低存在)としてのユダヤ人。(アーレント)
C-2 日本人は、戦後、道義的にパーリアとなった。(加藤典洋)
C-3 『敗戦後論』(1995)で、加藤は「歴史を引き受ける主体」の構築の必要を述べた。
C-4 第2次大戦で日本は「道義的な敗北」を経験した。「日本の300万兵士の死者の弔い方」の問題の出現。

(3)
D これに対し高橋哲哉が、アーレントの主張を論拠に、加藤典洋を批判。
D-2 “加藤が「自国の死者」を「同胞」としてかばうのは、おかしい”と高橋が言う。

(4)
E アーレントは『イェルサレムのアイヒマン』で、① “ユダヤ人評議会がナチスに協力し、ユダヤ人絶滅政策に手を貸した”と批判。また②アーレントの「語り口(tone)」が皮肉、風刺をまじえ、しゃれて乾いた語調で、心あるユダヤ知識人の反感をかう。
E-3 “「同胞」への共感に欠ける”とショーレムが批判。“「判断」=「裁く」責任は、「同胞」に対しても向けれれる”とアーレントが反論。
E-4 “「語り口」がひどい”、つまり“「民族の娘」なのに「同胞」への愛に欠ける” とショーレム。そして、「語り口」をflippanncy(軽薄で小生意気)とする。

(5)
F “「自国の死者」を「同胞」としてかばう”との高橋の批判は当たらないと、加藤は、反論する。
F-2“共同性(Ex. 民族性)を解体し公共性を構築することが、敗戦の「ねじれ」の解消を可能とする”と加藤。


Ⅱ 「共同性」(※民族性)を殺すもう一つの道:「語り口」、あるいは私性の中にある「言葉」では言えないもの
(6)
G アーレントは、「共同性」(※民族性)を殺すため、ホロコーストから遠く、場違いで、しゃれた都会的な雑誌『ニューヨーカー』を意図的に選んだ。そこに、アイヒマン裁判の傍聴記事『イェルサレムのアイヒマン』を掲載。
G-2 アーレントの軽薄な「語り(tone)」の最も深く秘められた動機は、「悲しみ」であると加藤。
G-3 この「悲しみ」の主体は、「共同性」(※民族性)に連なる、私自身の人格の一部、一断片である。

(7)
H アーレントは、確かに、私的な領域への撤退としての「愛(love)」でなく、公共的な領域に属す「敬愛(respectr)」
を好んだ。
H-2 しかし公共性は、生の範囲の全領域を覆わない。公共性は全能でない。

(8)
I アーレントは「共同性」に対し醒めている。
I-2 国家イスラエルに希望をつなぎ、好意的に見るヤスパースに対し、アーレントは 言う。“イスラエルも堕落した他の国家と何一つ変わらない権威的な国家なのだ”と。

(9)
J 「共同性」の単位である「私」から逃れる方策を、アーレントは探す。
《評者の注》: 公共性の構築手段である「言葉」だけでは、「共同性」から逃れるのに十分でないと、アーレントは考える。
J-2 「共同性」がアイヒマン裁判では、検事ハウスナーの悲壮な「語り口」として、現れる。
J-3  「共同性と同じ世界の住人である私性」による共同性の殺害のため、アーレントは、わざと、異なる「語り口」を選んだと、加藤氏。

(10)
K 「恥じ入り続ける」ことは、本来、「書けなくなる」事態なのに、それを、高橋哲哉氏が平気で「言葉」で言えるのはおかしいと、加藤氏。
K-2  「言葉で語る罪責感とは、安っぽい感傷性である」とハンナ・アーレントが言う。
K-3 アーレントの「語り口」の問題は、「私性が、個人という公共性の洗礼を受けないまま、共同性の外に抜ける可能性を示している」。(加藤氏)
K-4 「口にされればそこで消えてしまうものとして、その人の中に生きている」ものが、私性の中にある。
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