歩けば楽し

楽しさを歩いて発見

  思い出を歩いて発掘

   健康を歩いて増進

「憮然」の正しい使い方は、国語に関する世論調査

2019-10-31 | アート・文化
 文化庁は「国語に関する世論調査」を発表した(9月29日)。
 調査は、文化庁が国語(日本語)施策の参考とするため、「現代の社会状況の変化に伴う、日本人の国語意識の現状」について、平成7年(1995年)度から毎年実施している世論調査である。調査対象・規模は全国の16歳以上の男女3,000人で、平成17年(2005年)度分からは有効回収数2,000を目標に3,500人前後に調査を依頼している。調査方法は個別面接方式である。
 「国語に関する世論調査」は言葉のはやりすたりも調べている。
 「国語に関する世論調査」から意味を間違いやすい言葉の問題を出題。
 「憮然」という言葉の正しい使い方はどちらか。
  A:失望してぼんやりしている様子 28.1%
  B:腹を立てている様子 56.7%
   正解は、A「失望してぼんやりしている様子」 正解率は28.1%。
 「御の字」。次の2択、どちらが正しい使い方だろうか。
  A:一応納得できる 49.9
  B:大いにありがたい 36.6
   正解は、B「大いに有り難い」 正解率は36.6%。
 砂をかむよう
  A:悔しくてたまらない様子 56.9%
  B:無味乾燥でつまらない様子 32.1%
   正解は、B
 書きとり問題。
 どちらの言い方を使うか
 ”自分が言うことに嘘偽りがないことを固く約束する様”は、
 「天地~」に誓う。この~にはどんな漢字が入るのか。
  正解は「天地神明」で正解率は32.1%。
  すべての神々に約束する。約束をたがえたら罰せられてもよいという意味
  「天地天命」と誤用ことが多いという
 論理を組み立てて議論を展開すること
  A:論戦を張る 44.0%
  B:論陣を張る 29.5%
   正解は、B
 *
 調査によると、読書量が以前に比べて「減っている」と回答した人の割合は67.3%で、5年前(25年度調査)の65.1%や10年前(20年度調査)の64.6%と比べ、減少している様子。
 「減っている」理由(複数回答)を尋ねると、
  仕事や勉強が忙しい:49.4%
  視力など健康上の理由:37.2%
  スマホやゲームなどで時間が取られる:36.5% 5年前より10.2ポイント増加した。
 「読書量を増やしたいか」との質問に
  そう思う:28.0%
  ややそう思う:32.44% 計60.4%が読書に前向きだった。5年前と比べると5.9ポイント減少。
 国語に関して国に期待することも尋ねた(複数回答)。
  家庭や社会で正しい言葉遣いが行われるようにする:39.5%)
  学校での国語の教育をより充実させる:35.3%
  言葉の意味・由来や国語の伝統が受け継がれるようにする:33.3% などの回答

 今日で10月は終わり、明日からは11月。秋・冬がドンドン迫ってくる・・周囲の山々は紅葉。
 チョット遠くのスーパーに出かけた。スーパー近くの街路の植栽地に赤い実が沢山付いている木を見つけた。”モッコク(木斛)”の木だ。常緑中高木で、葉は厚くて細長く、樹皮は灰褐色である。6月~7月に、蘭の香りに似た芳香のする淡黄色の小さな5弁花を下向きに咲かせる。球形の果実がなり、10月頃から赤く熟す。
 ”モッコク(木斛)”は江戸五木の1つ。 江戸五木とは江戸時代に江戸で重視された造園木で、モッコク、アカマツ、イトヒバ、カヤ、イヌマキである。庭木の王者とも言われたが、最近は流行らない・・。
 モッコク(木斛)
 別名:赤実の木(あかみのき)
 学名:Ternstroemia gymnanthera
 ツバキ科モッコク属
 雌雄異株、両性花の株と雄花だけの株がある
 常緑中高木、樹高6m~15m
 開花時期は6月~7月
 花は芳香のする淡黄白色の5弁花(径1.5cm位)
 10月~11月頃に球形(径1cm~1.5cm)の果実が赤く熟す


文化勲章にノーベル化学賞受賞の吉野彰氏ら6氏、文化功労者に21氏

2019-10-30 | アート・文化
 政府は2019年度の文化勲章受章者6人と文化功労者21人を発表した(10月29日)。文化勲章の親授式は11月3日に皇居で、文化功労者の顕彰式は11月5日に東京都内のホテルで開かれる。
 文化勲章(6氏)
 甘利俊一(あまり・しゅんいち):83歳。東大名誉教授。
  数理工学分野で世界に先駆けて情報幾何学を創設し、神経回路網理論研究でも卓越した業績を上げた。
 坂口志文(さかぐち・しもん):68歳。大阪大特任教授。
  過剰な免疫反応の抑制をつかさどる制御性T細胞を発見し、自己免疫疾患治療に向け臨床応用に道を開いた。
 佐々木毅(ささき・たけし):77歳。元東大学長。
  政治思想家の研究を基礎として現代政治分析に取り組み、1980年代以降の日本の政治に道筋を示した。
 田沼武能(たぬま・たけよし):90歳。写真家。
  報道カメラマンとして活動を始め、国内外の子どもを被写体とした独自の世界を作り写真家の地位向上に尽力した。
 野村萬(のむら・まん、本名野村太良=のむら・たろう):89歳。能楽師。
  狂言の魅力を国内外に伝え、「おしん」などテレビドラマにも出演、多くの人に感銘を与えた。
 吉野彰(よしの・あきら):71歳。旭化成名誉フェロー。
  モバイル機器などに欠かせないリチウムイオン電池の基本構造を確立し、高い評価を得た。同時に文化功労者にも選ばれた。ノーベル化学賞を受賞
 文化功労者(21氏)
 佐藤忠男(さとう・ただお、本名飯利忠男=いいり・ただお)映画評論家。
  評論では平明な表現の鋭い問題提起が評価され、映画による国際交流に努めた。89歳。
 石井幹子(いしい・もとこ)照明デザイナー。
  照明で空間をデザインして環境を活性化させることを提唱し、東京タワーや姫路城などのライトアップを手がけた。81歳。
 猪木武徳(いのき・たけのり)大阪大名誉教授。
  労働経済学、経済思想、現代経済史・日本経済論の三分野にわたり、独創的な研究手法で卓越した業績を上げた。74歳。
 馬場あき子(ばば・あきこ、本名岩田暁子=いわた・あきこ)歌人。
  古典的な流麗さを備えて説得力を持つ短歌を創作し、短歌の普及にも力を注いだ。91歳。
 宇多喜代子(うだ・きよこ)俳人。
  精神性も社会性も悲喜も織り込む独自の俳句の方法を見いだし、著作では歴史の隙間に埋もれた無名の俳人も取り上げた。84歳。
 大林宣彦(おおばやし・のぶひこ)映画監督。
  夢や遊び心あふれる映画を創作し続け、故郷尾道が舞台の「転校生」や「時をかける少女」などで知られる。81歳。
 金出武雄(かなで・たけお)カーネギーメロン大ワイタカー記念全学教授。
  顔に関する画像認識技術や自動車の自動運転で独創的な研究業績を上げた。74歳。
 興膳宏(こうぜん・ひろし)京大名誉教授。
  中国古典文学の研究で優れた業績を上げ、日本のみならず中国・フランスでも高い評価を受けた。83歳。
 小林芳規(こばやし・よしのり)広島大名誉教授。
  国語史学の分野で、先端をとがらせた木の棒「角筆」で書かれた文字を発見するなど学会に大きな影響を与えた。90歳。
 近藤孝男(こんどう・たかお)名古屋大名誉教授。
  時間生物学の分野で、生物時計の特性がタンパク質の機能に基づいていることを明らかにした。71歳。
 笹川陽平(ささかわ・ようへい)日本財団会長。
  財団の常勤役員として、行政の手の届かない文化振興・社会貢献事業などでさまざまな課題の解決に取り組む。80歳。
 佐々木卓治(ささき・たくじ)東京農業大総合研究所参与。
  作物ゲノム学の分野で、プロジェクトリーダーとしてイネゲノム全塩基配列を解読した。72歳。
 田渕俊夫(たぶち・としお)日本画家。
  自然と時代を丁寧に考証した作品は装飾性と精神性を兼ね備え、日本画の確たる表現を築いたとして高く評価された。78歳。
 宮城能鳳(みやぎ・のうほう、本名徳村正吉=とくむら・まさきち)舞踊家。
  琉球舞踊と組踊における女形の卓抜した技芸で、沖縄の文化の向上に貢献した。81歳。
 萩尾望都(はぎお・もと)漫画家。
  少女漫画を多彩で深みのある内容表現が可能なジャンルへと発展させた。代表作に「ポーの一族」「トーマの心臓」など。70歳。
 藤原進一郎(ふじわら・しんいちろう)元日本障がい者スポーツ協会理事。
  障害者スポーツの普及に尽力し、98年長野パラリンピックでは総監督を務めた。87歳。
宮本茂(みやもと・しげる)ゲームプロデューサー。
  任天堂のゲーム開発の中心人物。マリオシリーズなどで知られ、日本のゲームを世界に誇る文化に発展させた。66歳。
 坂東玉三郎(ばんどう・たまさぶろう、本名守田伸一=もりた・しんいち)歌舞伎俳優。
  歌舞伎界を代表する女形として活躍し、新劇や海外戯曲にも出演している。69歳。
 柳沢正史(やなぎさわ・まさし)筑波大国際統合睡眠医科学研究機構長。
  分子薬理学の分野で、睡眠や覚醒を制御する神経伝達物質オレキシンを発見した。59歳。
 渡辺美佐(わたなべ・みさ)音楽プロデューサー。
  アーティスト多数を世に送り出し、大衆エンターテインメントを担う渡辺プロダクションの黄金時代を築いた。91歳。

 今日の天気は晴れ~曇、風は弱い。最高気温は21℃、最低気温は10℃。
 散歩道沿いの”コムラサキ”に沢山の小さな実が紫色になっている。実は径3mm程と小さいが、数十個纏まっている。
 名(コムラサキ:小紫)の由来は、実が紫式部を小さくしたものから。紫式部はやや背が高くて果実は小紫よりやや大きく、比較的パラパラとした実の付き方である。”コムラサキ(小紫)”の果実は小さく、纏まって付く。
 コムラサキ(小紫)
 別名:小式部(こしきぶ)
 学名:Callicarpa dichotoma
 クマツヅラ科ムラサキシキブ属
 落葉低木、丈は2m~3m
 枝は垂れ、これに花・実が付く
 開花時期は6月~8月
 花色は薄紫、実(径3mm程)は緑から紫色となる
 成実は9月~12月
 果実が白色のものがあり、シロミノコムラサキ(白実の小紫、別名:白式部)と言う


紅葉が始まる10月の新寺こみち市

2019-10-28 | まち歩き
 今日は10月28日。新寺小路緑道で毎月28日に行われる「こみち市」の日である。
 今日の天気は晴れ~曇り、風は弱く、日差しも弱い。秋が深まるが如く、緑道の所々の木々が紅葉し始め、葉も散り始める・・まだ緑緑の木々も多いけど。
 新寺小路緑道のある新寺界隈は、多くの寺院が集まる寺町で、区画整理によって新寺二丁目蓮池公園から新寺五丁目公園までの歩道のみの「新寺小路緑道」が整備された。緑道(東西640m・幅10m)はサクラなどが植えられ、車などの騒音も少なく、素敵な散歩道だ。
 今日のお買い物は、山形県天童市からの”ラフランス”。
  ラ・フランスは、フランス原産のセイヨウナシ(洋なし)の品種
  不正円の果実で果皮部には斑点がある。大変香りが良く、濃厚な甘みと滑らかな舌触りで、上品な味である
 ヤギに触れ合える
  入口付近で、宮城教育大の学生さんが飼育するヤギに触れ合える


軽量で安全な水素キャリア材料<室温・大気圧において光照射のみで水素を放出>を開発

2019-10-27 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院材料系の河村玲哉修士課程2年、宮内雅浩教授、筑波大学の近藤剛弘准教授、Nguyen Thanh Cuong(ニュエン タン クオン)研究員、岡田晋教授、高知工科大学の藤田武志教授、東京大学物性研究所の松田巌准教授らの共同研究グループは、ホウ素と水素の組成比が1:1のホウ化水素シートが室温・大気圧下において光照射のみで水素を放出できることを発見した。研究成果は10月25日”Nature Communications”に掲載。
 ホウ化水素シートは「ボロファン」という通称名で理論的に存在が予測されていた二次元物質で、2017年9月に本研究グループが初めて合成に成功した。ホウ化水素シートは軽元素のホウ素と水素からなり、その質量水素密度は8%以上と極めて高く、爆発のリスクある水素ガスボンベに代わる軽量で安全な水素キャリアとしての応用が期待されていた。
 今回、見出した現象はホウ化水素シートに紫外光を照射する単純な操作で、室温・大気圧という穏やかな条件で水素を取り出すことができる。これを応用することで爆発性のある水素の運搬を、高温や高圧を要する従来手法よりもはるかに安全に達成することが期待できる。さらに本研究では、計算科学によって電子構造の観点から、光照射による水素放出のメカニズムを解明することに成功した。
 発表のポイント
 〇ホウ化水素シートが常温・常圧条件で光照射のみで水素を放出
 〇水素放出のメカニズムを計算科学による電子構造から解明
 〇安全・軽量なポータブル水素キャリアとしての応用に期待
 研究成果
 本研究グループの第一原理計算によると、ホウ化水素シートではホウ素の結合性軌道から反結合性軌道への遷移(a→b)、ならびに水素の反結合性軌道への遷移(a→g)が起こることが示唆された。特に水素の反結合性軌道への遷移は紫外線のエネルギーに相当する。すなわち、光エネルギーでg軌道に電子を遷移できれば水素の結合を弱められ、常温・常圧で紫外線の照射のみで水素が放出されるのではないかとの仮説を立てた。
 これを検証するため、2種類の光源を用いてホウ化水素シートから放出されるガスの分析をおこなった。可視光の照射はホウ素の結合性軌道から反結合性軌道への遷移(a→b)を起こすことができる一方、紫外線照射は水素の反結合性軌道への遷移(a→g)を起こすことができる。この結果、第一原理計算の予想通り、紫外線の照射で水素が生成することが確認できた。また、紫外線を照射したときの水素生成量を定量したところ、ホウ化水素シートの質量の8 %にあたる水素を放出できることがわかった。
 従来の水素吸蔵合金における質量水素密度は、高いものでも2%程度だった。また、シクロメチルヘキサンのような有機ハイドライドも有望な水素キャリアとして知られているが、その質量水素密度は6.2%で、水素放出には300℃以上の加熱が必要だった。今回、宮内教授らが報告するホウ化水素シートは、既往の水素キャリアと比べて極めて大量の水素を、光照射という極めて簡便な操作で放出できることがわかった。
 今後の展開
 現行の車載用燃料電池には高圧水素タンクが搭載されているが、本研究成果により、安全・軽量・簡便なポータブル水素キャリアとしての応用が期待できる。
 ◆用語説明
 〇ボロファン
 ホウ化水素シート。ホウ素と水素の組成比が1:1のナノシート状物質。
 〇水素キャリア
 水素を貯蔵・輸送するための担体。高圧水素ガスボンベ、液化水素、アンモニア、有機ハイドライド、水素吸蔵合金などが知られる。
 〇グラフェン
 炭素原子一層あるいは数層分の厚さからなるシート状物質。
 〇第一原理計算
 実験データや経験パラメーターを使わない基本的な原理に基づく計算。
 〇結合性軌道および反結合性軌道
 分子同士を結合させるために働く軌道、および、分子同士の結合を開裂させるように働く軌道。

 今日の天気は曇り。風が少し強く、少し冷たい。
 数日前から”キンモクセイ”の花が咲いている。花が咲き始めるころ、蕾のころから香る・・とても良い香り。
 花から強い芳香を放つ庭木の代表格は、
  キンモクセイ(金木犀)
  ジンチョウゲ(沈丁花、花期2月末~3月始め)
  クチナシ(梔子、花期6月~7月)で、「花の三香木」と呼ぶ。花と香りが楽しみ。
 ”キンモクセイ(金木犀)”は雌雄異株。日本には雄株のみの渡来(中国が原産)、なので結実しない、稀に雄株もあると言う。名(キンモクセイ:金木犀)の由来は、黄色(金色)の花を付け、樹皮がサイ(犀)の皮膚に似ているからと言う。
 キンモクセイ(金木犀)
 学名:Osmanthus fragrans var. aurantiacus
 モクセイ科モクセイ属
 常緑小高木
 江戸時代初期に渡来(雄株のみ)
 開花時期は9月下旬~10月中旬
 花は淡いオレンジ色、花径は数mm程度
 枝にビッシリと大量に咲く
 散った多量の花びらがオレンジ色の絨毯の様に地面に広がる


ヒイラギモクセイの花が咲く

2019-10-26 | 園芸
 台風一過、爽やかな秋空が広がる・・と言いたいが、今日の天気は風が少し強く、空には雲が多い。
 散歩道の沿いに背高の生垣がある。塀から微かだけど、良い匂いがする。寄って見たら、塀に点々と白い小さな花が咲いている。”ヒイラギモクセイ”の花である。花の寿命は短い(数日位かな)ようで・・今年は開花を見ることができた。
 ”ヒイラギモクセイ”は”ヒイラギ(柊)”と”ギンモクセイ(銀木犀)”の交雑種と考えられている。雌雄異株であるが、雄株のみが知られており、結実しない。
 ヒイラギモクセイ(柊木犀)
 学名:Osmanthus × fortunei
 モクセイ科モクセイ属
 雌雄異株(雄株のみが知られてjる)
 常緑小高木
 開花時期は10月
 開花期間は短い
 花は白い小さな4深裂の花(4mm位)
  2本の雄しべがあり、花の中心に退化した雌しべが見える
  僅かに芳香がある
 ギンモクセイ(銀木犀)が咲き終わった頃に咲く
  特徴による見分け
   葉のトゲトゲ:銀木犀 < 柊木犀 < 柊
          すべすべ トゲトゲ 大きくトゲトゲ
   開花の時期:銀木犀 → 柊木犀 → 柊


有害赤潮ラフィド藻シャットネラの遺伝子配列を解読

2019-10-25 | 科学・技術
 水産研究・教育機構瀬戸内海区水産研究所の紫加田知幸主任研究員らは、自然科学研究機構基礎生物学研究所の内山郁夫助教らと共同で、有害赤潮ラフィド藻シャットネラ・アンティーカからRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて大量の遺伝子配列を解読することに成功した(10月16日発表)。独自に開発した遺伝子解析プログラムなどを用いて、赤潮の発達・衰退に影響する光合成、光受容、栄養塩の取り込み、活性酸素産生などに関与する遺伝子の配列を明らかにした。得られた情報は、遺伝子の発現量を指標として赤潮藻の生理状態を診断し、赤潮の発達・衰退を予測する技術開発の基礎となる。本成果は、令和元年7月31日に”Frontiers in Microbiology”誌より公表された。
 研究の背景
 西日本の沿岸域を中心に赤潮が頻発しており、養殖業に甚大な被害が発生している。長年、世界中で赤潮藻を直接駆除する方法が検討されてきたが、未だ実用的な技術は開発されていない。赤潮の発生予測に関する研究開発も長年進められてきたが、実用レベルには到達していない。赤潮の発達を予測するには、赤潮藻の増殖や遊泳力を知る必要があるが、これらを常時物理的かく乱のある現場において簡便に計測する技術はいまだ確立されていない。また、赤潮藻の増殖や遊泳力には長期的な環境履歴が大きく影響すると考えられるため、水温や栄養塩濃度などの外部環境だけからこれらを正確に推察することも困難である。このため、赤潮藻の増殖や遊泳力を推定する新しい技術を開発することが課題となっている。
 研究の成果
 瀬戸内海区水産研究所・有害有毒藻類グループは、赤潮藻シャットネラ・アンティーカの遺伝子配列を次世代シーケンサーによって網羅的に解読した。大量のデータを用いることにより、他の赤潮藻を対象として行われた先行研究と比べて、完成度の高いデータを得ることができた。また、これらの遺伝子の中から、シャットネラの赤潮発生に関連する遺伝子の候補を探索した。これまでの研究によりシャットネラの赤潮発生に重要と考えられている生理特性として、窒素やリンが豊富な環境で活発に増殖すること、特定の波長の光を感知して日周鉛直移動を行うことで昼間は表層で光合成を行い、夜間は底層の栄養塩を吸収することができること、活性酸素を大量に産生して他の微生物の増殖を抑制することが知られている。本研究により、窒素やリンの取り込みや代謝、光シグナルの受容、光合成、活性酸素の産生などに関わる遺伝子配列を同定した。
 さらに、それらの遺伝子配列を他の藻類を含む様々な生物と比較することにより、シャットネラ遺伝子固有の特徴を持つかどうかを検討した。その結果、いくつかの興味深い遺伝子を見いだすことができた。その代表的な成果として、シャットネラの魚毒性に関与すると考えられている活性酸素を産生する酵素NADPHオキシダーゼ(NOX)が挙げられる。シャットネラで同定されたNOX遺伝子群は、他の生物における相同遺伝子とは区別されるグループを形成し、酸素分子を還元する膜貫通領域を多数有していた。同様の特徴は、同じく赤潮を形成して魚をへい死させる別系統の藻類(渦鞭毛藻)であるカレニア・ミキモトイのNOXにおいても認められた。
 今後の展望
 今回得られた情報は、遺伝子の発現量を指標として赤潮藻の増殖、遊泳力および魚毒性を推察する技術開発の基礎となる。今後、生理状態の指標となる可能性のある遺伝子について、異なる環境条件下で分裂速度、遊泳の速度や方向および曝露した魚の致死量と同時に発現量を計測することなどにより、検証および絞り込みの作業を進めていく。また、取得データは専用のwebサイトを開設して、バイオインフォマティクスの専門家ではない研究者でも簡単に閲覧・検索できる形式で公開した。これによりたくさんの研究者がシャットネラについて様々な角度・視点で解析を行い、本生物の理解が深化することが期待される。
 ◆用語解説
 〇シャットネラ・アンティーカ
 シャットネラとは、海水中に生息し、赤潮の原因となる植物性プランクトンのこと。海産ミドリムシや、ホルネリアとも言われていた。光合成によって海の栄養素を吸収し、通常1日1回分裂して増殖している。
 条件がそろって大量発生することで赤潮を引き起こし、高密度のシャットネラが鰓に影響を与えた結果、呼吸機能が低下して窒息死させる。ブリやシマアジ、ハマチなどの生息を脅かし、例年6月~9月ごろに魚類養殖業に度々大きな被害を与えている。水温が20℃以上になると活発に活動し、八代海や有明海、播磨灘などでシャットネラによる赤潮が発生。漁業被害は数十億円にのぼることもある。
 現在の赤潮発生予測は、海水中のシャットネラの増減で判断し、一定水準を超えると警報を発令しているが、最近発見された、シャットネラが発芽する前段階である種細胞(シスト)の海底分布状況の監視を続ければ、赤潮が発生しそうな海域を特定できる可能性があると期待している。事前に養殖業者などに早期出荷を呼び掛ければ漁業被害を軽減できる可能性もある。
 〇次世代シーケンサー
 ランダムに切断された大量のDNA断片の塩基配列を同時並行的に決定することができる機器。
 本研究ではシャットネラから抽出したRNAをcDNAに変換後、基礎生物学研究所の次世代シーケンサーIllumina Hi-seq 2000を用いて解読した。
 〇活性酸素
 酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称。スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素などが含まれます。シャットネラは活性酸素を大量に産生する能力を持っており、魚毒性にも関与すると考えられている。
 〇NADPHオキシダーゼ
 細胞膜や食胞膜上に存在し、酸素分子を還元して活性酸素の一種であるスーパーオキシドを産生する酵素。

 今日の天気は曇り。こちらはまだ雨が降っていない・・夕方から強い雨の予想。
 梅田川沿いの堤防が散歩道。川岸の堤防・道路に”セイタカアワダチソウ”が密集し、花が咲き始めている。昨年に見た場所から少し移動したようだ。良く繁茂している。
 ”セイタカアワダチソウ”は明治末期に渡来した北アメリカ原産の帰化植物である。多年草で種子や地下茎で増える。地下茎から種子発芽を抑制するアレロパシー物質を分泌するので、純群落を形成して繁茂する。この物質は他種も、自らの種も、発芽も抑制するので、他種植物の侵入も、自己の連作も、困難となる。
 急速に広がったのは第二次世界大戦後で、養蜂業者の蜜源植物として種子の散布説がある・・どこからでたのか不明。花粉症の元凶かと言われた時期があったが、その後関係は薄いと嫌疑は晴れたが悪いイメージは残っている。
 セイタカアワダチソウ(背高泡立草)
 学名:Solidago altissima
 キク科アキノキリンソウ属
 多年草、種子や地下茎で増える
 北アメリカ原産、明治末期に渡来した帰化植物
 河原・埋立地などの荒れ地で見る
 丈は1.0m~2.5m
 開花時期は10月~11月
 花は茎上部に多数集まって付く、花径は数mmと小さい



夢は起きるとすぐに忘れてしまう、仕組みを解明

2019-10-24 | 健康・病気
 名古屋大学環境医学研究所の山中章弘教授らの研究グループは、脳のメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)がレム睡眠中に記憶を消去していることを明らかにした(9月20日発表)。本研究は、北海道大学木村和弘教授、寺尾 晶准教授(現東海大学教授)、吉岡充弘教授、大村優講師、SRIインターナショナルのキルドフ博士の協力を得て行った。本研究成果は、2019年9月19日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Science」のオンライン版で公開。
 ポイント
 〇睡眠時に記憶がどのように固定され、消去されるのかその仕組みはよく分かっていなかった。
 〇マウスを用いた実験で、視床下部に少数存在するメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)がレム睡眠中に活動し、記憶を消去する役割があることを発見した。
 〇MCH神経が記憶に影響を与えるメカニズムの解明は、強い恐怖心を伴った経験の記憶がトラウマとして残ってしまう心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療法開発への貢献が期待される。
 研究グループは、超小型顕微鏡を用いた神経活動の記録をマウスに適用して、MCH神経にはレム睡眠中に活動するもの、覚醒中に活動するもの、レム睡眠と覚醒中の両方で活動するものの3種類があることが分かった。特定の神経の活動を操作することができる光遺伝学や化学遺伝学の手法を用いて、このMCH神経活動が記憶に重要な海馬の神経活動を抑制すること、さらにレム睡眠中に活動するMCH神経が記憶を消去していることを明らかにした。
 研究の内容
 研究グループは、マウスの記憶行動と光遺伝学や化学遺伝学の手法を組み合わせた実験により、MCH神経の活動が活性化すると記憶が消去され、抑制すると記憶が定着されることを見いだした。特に、記憶の中枢領域である海馬が担当する記憶に対し、MCH神経が記憶の消去をもたらすことが分かった。この仕組みを明らかにするために、マウスの脳を用いて、記憶に重要な海馬に足を伸ばしているMCH神経の末端を光遺伝学の手法で活性化させたところ、海馬の神経の活動が抑制されることが明らかになった。
 次に、MCH神経の活動が、睡眠と覚醒状態に伴ってどのように変化するのかについて調べた。ファイバーフォトメトリーと呼ばれる手法を用いて神経活動を測定しながら、同時に脳波と筋電図を用いて睡眠と覚醒を判定したところ、マウスではレム睡眠時にMCH神経の活動が強くなることが分かった。覚醒時にもMCH神経が弱く活動していたことから、睡眠と覚醒状態におけるMCH神経の活動をさらに単一細胞レベルで調べた。マウスの頭に載せられる約2gの超小型顕微鏡を用いて、脳内でMCH神経の活動を1つの細胞ごとに記録したところ、MCH神経には、①覚醒時に活動するMCH神経、②レム睡眠時に活動するMCH神経、③覚醒時とレム睡眠時の両方で活動するMCH神経の3種類が存在することが明らかになった。
 さらに記憶とMCH神経の活動の関係を調べるため、マウスの記憶を評価する新奇物体認識試験で物体を記憶させた後に、MCH神経の活動を活性化もしくは抑制する実験を行った。光遺伝学や化学遺伝学の手法によりMCH神経の活動を活性化したところ、一度記憶が形成されているにもかかわらず、その消去が進むことが判明した。一方、MCH神経の活動を抑制したところ、記憶の定着が向上することも判明した。新奇物体認識試験だけでなく、文脈的恐怖条件付け試験による恐怖記憶でも同様の結果が得られた。
 また記憶保持期間における睡眠とMCH神経の活動の関係を調べるため、物体を記憶させた後に、1)レム睡眠中のみでMCH神経活動を抑制した場合、2)ノンレム睡眠中のみで抑制した場合、3)覚醒時のみで抑制した場合の記憶を比較しました。その結果、1)レム睡眠中にMCH神経の活動を抑制した場合にのみ記憶が向上した。しかし、2)ノンレム睡眠中と3)覚醒時にMCH神経の活動を抑制しても記憶に影響はなかった。
 以上の研究結果から、レム睡眠中に活動するMCH神経が、海馬の神経活動を抑制することにより記憶を消去することが明らかになった。
 今後の展開
 睡眠中の記憶の定着については多くの研究がされている一方で、消去についてはこれまでほとんど研究が進んでいません。今回新たに分かったMCH神経による記憶が消去される仕組みをきっかけとして、睡眠中の記憶制御の全体像の解明が期待される。
 また、MCH神経を活性化させると、文脈的恐怖条件付けの記憶も消去されることから、MCH神経だけを活性化する方法を見つけることで、強い恐怖心を伴った経験の記憶がトラウマとして残ってしまう心的外傷後ストレス障害(PTSD)において、その記憶を消去する治療への応用も期待される。
 ◆用語説明
 〇メラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)
 メラニン凝集ホルモン(MCH)ペプチドを産生する神経。魚から発見され、皮膚のメラニン胞を凝集させて色白にさせることから命名された。ほ乳類にもよく保存されており、視床下部に存在する少数の神経細胞がMCHを産生し、脳全体に軸索を投射する。摂食行動亢進に関与するとされてきたが、近年睡眠覚醒調節にも関与していることが報告されている。
 〇レム睡眠
 急速眼球運動(REM)を伴う睡眠であり、ノンレム睡眠の後に現れる。脳の活動は高くなっており鮮明な夢を見ているとされているが、完全に随意筋が脱力しているため、夢の内容に従って身体が動くことはない。レム睡眠中は呼吸数や心拍数が乱れる。脳波ではシータ波成分(4-7Hz)が多くなる。逆説睡眠とも呼ばれる。一方、ノンレム睡眠は、眠ると最初に現れる睡眠。脳の活動は低下しており、呼吸数や心拍数も低下して安定する。脳波ではデルタ波成分(1-3Hz)が多くなる。徐波睡眠とも呼ばれる。
 〇光遺伝学
 特定の波長の光により活性化される分子を標的神経だけに発現させ、標的神経の活動を光を用いて高い時間、空間精度にて制御する実験技術。
 〇化学遺伝学
 特定の化学物質により活性化される人工受容体を標的神経だけに発現させ、標的神経の活動を特定の化学物質を用いて長時間持続的に制御する実験技術。
 〇ファイバーフォトメトリー
 光を用いて神経活動を測定する技術の1つ。光ファイバーを脳に刺入して、自由に行動している動物の脳内において特定の神経活動を記録することができる。
 〇単一細胞レベル
 一つ一つの神経細胞の活動をイメージングによって明らかにする。特定神経細胞だけに標識となるインジケーターを発現させることで、標的神経活動を計測することが可能となる。
 〇新奇物体認識試験
 マウスは、見たことがない新しい物体に興味を持つ性質があり、新しい物体には近づいて探索する。一度探索させて覚えた物体は、二度目に与えてもそれほど興味を示さないが、忘れると再び新奇物体として探索する。物体への接触時間を測定することでマウスの記憶力を測定することができる。
 〇文脈的恐怖条件付け試験
 マウスにおいて、場所や状況の記憶を恐怖の反応であるすくみ行動(フリーズ)を測定することで評価する試験。マウスはある場所で電気ショックを受けると恐怖で動きが止まってしまうフリーズを起こし、その場所は嫌な場所として記憶される。一定時間後に、マウスを再び電気ショックを受けたのと同じ場所に戻すと、その時の恐怖記憶を思い出し、今度は電気ショックが来ないのにフリーズする。フリーズの時間を測定することで、記憶の程度を評価することができる。

 今日の天気は曇り~晴れ。早朝には雨が降ったようだ、気温は低くなり、最高気温18℃、最低気温14℃。・・秋は深まり、冬がやってくる。
 近所のお庭の塀際。”フジバカマ”が咲き始めた。散房状に淡紫紅色の小さな花が付いている。茎に赤みがあり、本来の”フジバカマ(藤袴)”ではなく、雑種の園芸品種ではないかと言う・・サワヒヨドリとフジバカマの雑種と推定されるサワフジバカマか。本来の藤袴は昔は群生していたが近年激減し、準絶滅危惧種に指定されている。
 ”フジバカマ”は秋の七草の一つである。春の七草は「食」を愛で「七草がゆ」、秋の七草は花を「見る」を愛でる。
 秋の七草
  藤袴(ふじばかま)
  萩(はぎ)
  尾花(おばな)→ 薄(すすき)
  葛花(くずばな)→ 葛(くず)
  撫子(なでしこ)
  女郎花(おみなえし)
  朝貌(あさがお)→ 「朝顔」ではなく、「桔梗」との説が定説
 フジバカマ(藤袴)
 学名:Eupatorium fortunei
 キク科ヒヨドリバナ属
 多年生植物
 草丈は50cm~180cm
 開花時期は10月~11月
 散房状に淡紫紅色の小さな花が付く


温度に応じて太陽光の透過光量を自律制御できる液晶複合材

2019-10-23 | 科学・技術
 産業技術総合研究所構造材料研究部門光熱制御材料グループ山田保誠研究グループ長、垣内田洋主任研究員は、神戸市立工業高等専門学校、大阪有機化学工業株式会社と共同で、液晶と高分子の複合材料を開発した。これは、二枚のガラス基板の間隙に混合原料を満たし硬化させて作製することができ、構造が単純で作製が容易であるため、調光ガラスなどに応用可能である。この複合材料は、温度変化によって透明度が切り換わり(低温で透明、高温で白濁)、同時に光の前方散乱強度が変化する性質がある。これにより、近赤外領域を含む光の全透過量を可逆的に20%以上変えることができる。
 ポイント
 〇温度変化による相転移を利用して透明と白濁を切り換えられる液晶複合材料を開発
 〇新規の液晶複合構造の開発により、前方への透過光量の制御に成功
 〇建物や移動体の窓に貼り付けることで、暖冷房負荷低減に貢献
 近年、省エネが求められる中、住宅やオフィスビルなどの建物の暖冷房負荷の低減にも注目が集まっている。とくに、温暖地での暖冷房負荷の低減には窓から入る太陽光透過量の制御が有効である。調光ガラスは、外部からの刺激で太陽光透過を制御するガラスである。
 液晶を用いた調光ガラスは、電気で制御するタイプが既に上市され、フィルム化もされている。また、温度によって自発的に透明と白濁が切り換わる、熱応答型の液晶複合材料も報告されている。しかし、透明と白濁の切り換え特性を活用して、光の全透過率を制御するという試みは、これまで成功していなかった。単に白濁状態のみを実現するには、入射光を透過側に散乱(前方散乱)させるだけでよく、そのような材料は比較的容易に作製できる。しかし、これだけでは全透過率は下がらないので、プライバシーガラスとしては使えるが、省エネ用途には適さない。省エネ用途では、白濁時に全透過率を下げる必要があるが、それには光を入射方向とは反対の方向に散乱(後方散乱)させる、内部構造を有する材料を作らなければならない。しかし、温度によって後方散乱が変化する熱応答型の液晶複合材料の開発は格段に難しかった。
 研究の内容
 高分子ネットワーク液晶(PNLC)と呼ばれる液晶と高分子からなる複合材料を、二枚のガラス基板ではさんだ構造の調光ガラスを開発した。この調光ガラスは、液晶、モノマー(高分子の原料)、重合開始剤の混合原料を二枚のガラス基板の間隙に満たし、紫外光を照射して重合させて作製される。今回開発したPNLCは、高分子の網目の中に液晶が満たされている構造で、生活温度付近で、温度によって透明と白濁が切り換わり、同時に全透過率が大きく変化する。低温では、液晶分子が配向し、液晶相と高分子相の屈折率が一致するので、PNLCは光学的に均一となり透明になる。一方、高温になると、液晶分子の配向が乱れて屈折率が変化し、光学的に不均一になるため、光散乱が生じて白濁する。この時、光の散乱方向を入射側に向けることができれば、その分だけ全透過率を下げられる。
 今回、光重合で形成されるPNLCの微細な構造を詳しく調べて、白濁状態では後方散乱が生じて、透明と白濁の切り換えによって、全透過率が大きく変化するPNLCの構造を見出した。全透過率は、試料前方に散乱した全ての光を検出した際の透過率で、今回開発したPNLCは20%以上の変化幅を示した。この変化幅は、既に実用化されている液系の調光ガラスと比べても引けを取らない。全透過率は、窓を想定した場合、窓への太陽光の全照射量に対する室内入射量の相対値に相当し、透明時と白濁時での全透過率の差が省エネの指標となる。また、透明状態での直進透過率は、従来の熱応答型の液晶複合材料並みの70%を上回る値を達成した。直進透過率は、入射光と同じ直進方向(ここでは拡がり角10度の範囲)の光強度をもとに算出した透過率で、透明さ(白濁の少なさ)の指標となる。本PNLCの直進透過率は、太陽光を受けた際の窓ガラスの昇温速度に十分追従して変化できる。例えば、今回のガラス基板で挟んだ材料の温度を30℃から50℃に上げると、直進透過率は30秒以内に80%以上から10%以下に下がる。
 従来の液晶を用いた調光ガラスは、白濁現象を利用したプライバシーガラスとしての用途が主だったが、今回開発した全透過光量も制御可能な熱応答型のPNLCは、暖冷房負荷低減に有効な生活温度(今回の試料では35℃)付近で調光が可能であるため、ガラスへ組み込めば省エネ窓ガラスとして期待できる。また、作製工程や動作原理が単純であるため、製造・施工・運用の面でも有利である。さらに、固相の薄膜として扱うことができるため、既築の建物などに後貼り施工できるプラスチックフィルム基板への展開も可能であり、調光フィルムへの応用など、一層の普及が期待される。
 今後の予定
 実用化に向けて、全透過率の変化幅の拡大と耐久性の向上に取り組む。また、今回実現したガラス基板を用いた調光ガラスは、新築建物などの窓ガラス施工が想定されるが、今後は、窓ガラスへの後貼り施工ができるプラスチックフィルム基板を用いた調光フィルムの作製技術開発に取り組む。
 用語の説明
 ◆調光ガラス(フィルム)
 電気や光、熱などの外部刺激によって光の透過量や反射量を制御できる層を有するガラス(プラスチックフィルム)。
 ◆前方散乱、後方散乱、全透過率、直進透過率
 光を吸収しない対象物が散乱を生じ白濁している場合、対象物に入射した光は、四つの形態で伝播していく。まず、対象物をそのまま通過する直進透過光と前方に散乱して通過する前方散乱光、そして、反射して後方に戻る直進反射光と後方に散乱する後方散乱光である。これら四つの伝播光の強度の比率は、入射光強度に対する光強度として表され、それぞれ直進透過率(Td)、拡散透過率(Ts)、直進反射率(Rd)、拡散反射率(Rs)と呼ばれる。全透過率(Ttotal)は、直進透過率と拡散透過率の和となる。なお、拡散反射率は白濁度(ヘイズ)と呼ばれ、透明度の低さの指標となる。
全透過率については、省エネ窓ガラスを想定する場合、太陽光強度が分布する(図3(a)の灰色のスペクトルで表現)波長域で考える必要がある。直進透過率は、本研究では、図3(b)中に示すように、拡がり角10度の範囲の光強度を検出した際の透過率とした。
 ◆生活温度
 慣用的に認められた用語でないが、ここでは、日常生活で経験しうる温度として定義。気温だけでなく、窓や外皮などの表面温度も含める。
 ◆高分子ネットワーク液晶 (PNLC)
 液晶と高分子の二相からなる微細構造を持つ複合材料。電気制御型の研究開発が多くなされ、窓だけでなく、表示機器や情報処理素子への応用が見込まれている。

 昨日(10月22日)は、「即位礼正殿の儀」が行われた。
  おめでとうございます

 今日も晴れた。気温が段々と低くなり、散歩には上着が必要となる。
 塀に”ワイヤープランツ”が植えられている。細い茎は赤茶色で光沢があり細かく枝分かれ、タマゴ型の葉っぱは1cmほどで、濃緑色で光沢がある。茂ると緑のカーテンの様で綺麗だ。塀だけでなく、観葉植物として鉢植えや寄せ植えで楽しめる。
 所々で花が咲いる。花は小さく透明感のある緑色。開花時期は春~秋と長いけど、余り目立たない。実はまだ見えない。
 名(ワイヤープランツ)の由来は、赤茶色の細い茎が針金のように見えるから。
 ワイヤープランツ
 別名:ミューレンベッキア
 学名:Muehlenbeckia axillaris
 タデ科ミューレンベッキア属
 匍匐性常緑低木
 原産地はニュージーランド
 開花時期は4月~11月
 花は5弁花(5裂花)、ベルの様な実が成る



複数の原子からなる高次の物質の周期律を発見、新たな周期表の誕生

2019-10-21 | 科学・技術
 東京工業大学科学技術創成研究院の塚本孝政助教、春田直毅特任助教(現京都大学福井謙一記念研究センター特定助教)、山元公寿教授、葛目陽義准教授、神戸徹也助教らの研究グループは、コンピューターシミュレーションを用いた理論化学的手法に基づき、分子などの微小な物質(ナノ物質)が持つエネルギー状態を記述する「対称適合軌道モデル」を開発した。このモデルは、ナノ物質が持つ様々な幾何学的対称性に着目することで、それらの形状や性質などを正確に予測する。さらに、この理論モデルにより、複数の原子からなる高次の物質の間にも元素のような周期律が存在することを発見し、この周期律を元素周期表と類似の「ナノ物質の周期表」として表すことに初めて成功した。本成果は、2019年8月19日発行の英科学雑誌「Nature Publishing Group」の「Nature Communications」オンライン版に掲載。
 要点
 〇分子などの形状と性質を予測する新たな理論モデルを開発
 〇複数の原子からなる高次の物質の間に新たな周期律を発見
 〇まだ確認されていないナノ物質の存在を予見
 現在までに、118種類もの元素が発見され、元素周期表に加えられている。この周期律の起源は、原子の電子配置にあることが明らかになっている。
 従来の周期表では、単一の原子の性質が扱われているが、複数の原子からなる高次の物質でもこのような周期律が発見されれば、物質科学の世界において非常に有用な指標となる。しかし、このような原子より大きなスケールの物質では、その性質を支配する原理や法則は見出されていなかった。原子とは異なり、大きさ・組成・形などの様々な要素を持っており、単純には分類できないためである。
 研究成果
 研究グループは、微小な物質(ナノ物質)が持つ幾何学的対称性(形)に着目し、コンピューターシミュレーションと群論を応用することで、様々なナノ物質のエネルギー状態(電子軌道)を正確に予測する「対称適合軌道モデル」を開発した。このモデルに基づき、ナノ物質を評価することで、形状・性質・安定性などの系統的な予測が可能となった。
 この取り組みの中で、ナノ物質の持つ複数の電子軌道が幾何学的対称性ごとにある一定の法則に従うこと、つまり周期律があることも明らかになった。原子の場合と同様に、ナノ物質の性質も電子配置(すなわち電子軌道の埋まり方)によって決まる。今回発見された新たな周期律を、ナノ物質が持つ要素(原子数・電子数・元素種など)ごとにまとめることで、元素周期表に類似した「ナノ物質の周期表」として表すことに初めて成功した。この「ナノ物質の周期表」は、従来の元素周期表に現れる「族」「周期」に加え、「類」「種」という新たな軸を持つ多次元の周期表で、既に知られている実在の化学物質や天然物に加えて、未発見のナノ物質も含まれている。こうした高次の周期表は、ここに示すものだけでなく、ナノ物質の持つ幾何学対称性ごとに異なるものが存在する。
 ナノ物質を構成する原子の個数や元素の種類、元素の比率には、無限大の組み合わせが存在する。今回見つかった「ナノ物質の周期表」を指針とすることで、その無限大の組み合わせの中から、今まで検討されてこなかった未知の物質や新たな機能材料の発見が期待できる。
 ◆用語説明
 〇理論化学的手法
 数学や物理学、コンピューターシミュレーションなどを駆使することで、実験室で実験を行うことなく、物質の性質を明らかにする方法論のこと。実験で得られるデータを精緻に解釈したり、新たな化学現象を予測したりするのに用いられる。
 〇エネルギー状態
 原子や分子などの物質は、正電荷を持つ原子核と負電荷を持つ電子の集まりで構成される。各電子は、原子核の周りに広がる軌道に収まる。軌道には様々な形があり、それぞれが異なるエネルギーを持つ。このように軌道は、電子がとりうる各エネルギー状態という意味を持つ。2個の電子までが同じ軌道に入ることができる。
 〇対称適合軌道モデル
 ナノ物質が持つ幾何学的対称性に着目し、群論を応用することで構築された理論モデル。ナノ物質のエネルギー状態を予測し、また特定の形や性質を持ったナノ物質の設計を行うこともできる。
 〇幾何学的対称性
 物質が持つ対称性は、左右対称といった幾何学的な性質で測られることから、幾何学的対称性と呼ばれる。正四面体・正八面体・正二十面体などの形をした物質は、特に幾何学的対称性が高い。最も高い幾何学的対称性は球対称(球)であり、物質を構成する最小単位である原子は球対称である。一方で、分子などのナノ物質は複数の原子から構成されるため、球対称よりも低い幾何学的対称性しか持つことはできない。
 〇元素周期表
 元素の物理的・化学的性質は、原子番号に従ってある一定の周期で変化することが知られている。これを基に、「族」と「周期」という二つの軸を持たせて、元素を分類・配置したものを元素周期表という。1869年にロシアの化学者メンデレーエフにより提唱された。
 2019年は、元素周期表の発見からちょうど150周年であり、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)により「国際周期表年(IYPT2019)」として宣言されている。
 〇ナノ物質の周期表
 「対称適合軌道モデル」から見出される、大きさ・組成・形に関する周期律に基づいて、ナノ物質を分類・配置した表。「族」「周期」「類」「種」という複数の軸を持つ、多次元の周期表である。従来の周期表と同様に「族」「周期」はナノ物質の電子配置を識別し、加えて「類」はナノ物質の構成原子数、「種」は構成元素種を識別する。ナノ物質の幾何学的対称性(形)ごとに異なる周期表が存在する。
 〇電子配置
 元素固有の性質は、原子が持つ軌道にどのように電子が入るかによって決まる。これを電子配置と呼び、元素の性質に周期性が現れる要因ともなっている。一方で、ナノ物質の性質も電子配置によって決まるが、物質によって電子軌道の持つエネルギーが大きく異なるため、その性質に周期性は現れない。
 〇群論
 代数学の概念の一つである「群」を取り扱う学問。「群」とは、ある条件を満たす数学的集合のことで、フランスの数学者ガロアにより着想された。群論は数学の世界にとどまらず、物理学や化学をはじめとする幅広い分野で応用されている。
 本研究では、ナノ物質の持つ幾何学的対称性と電子軌道との関係について、群論を用いて考察することで、ナノ物質の新たな分類に成功した。

 天気は晴れ。散歩では朝晩の寒さが見に染む・・大げさなかな・・最高気温19℃・最低気温10℃。
 散歩で見つけた、季節外れに成りかけの花。散歩道沿いの畑の隅で、”ムラサキツユクサ”が咲いている。蕾が沢山見え、これから蕾が順次咲く、花は一日花である。
 ムラサキツユクサ(紫露草)
 ツユクサ科トラデスカンチア属(ムラサキツユクサ属)
 多年草
 原産地は北アメリカ、日本には明治時代に渡来
 開花時期は6月~10月
 花は径3cm位の3弁花、花弁は丸い
 花の中央の雄蕊(おしべ)が目立つ
 花色は紫が基本で、赤紫・白色などがある


2019年秋の卸町ふれあい市

2019-10-20 | まち歩き
 今日は昨日の雨が上がり、朝から晴れ。雲が多く、時々曇り、風も殆どなく、穏やか。
 2019年、平成最後(令和始め)の秋の卸町ふれあい市に行って来た。今年もいつもと同様に沢山の人出。
 特に、お野菜が割安なので、これがふれあい市始めのお買い物。・・大きなキャベツが100円(税込み)だった。
 開催日時
 令和元年 10月19日(土) 9:00~16:30
      10月20日(日) 9:00~15:00
 場所:卸町サンフェスタ、各問屋社屋(若林区卸町2-15-2ほか)
 駐車場:無料(約2,000台)


 メイン会場の横に卸町神社がある。その脇でライブコンサートがあった。

死んだふり(死にまね)を制御する遺伝子群を発見

2019-10-19 | 科学・技術
 岡山大学の宮竹貴久教授らの研究グループは、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの矢嶋俊介教授、玉川大学農学部の佐々木謙教授との共同で、「死にまねの長さ」を制御する遺伝子群を探索し、チロシン代謝系のドーパミン関連遺伝子が関与することを世界で初めて明らかにした。本研究成果は、日本時間9月30日午後6時に英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載された。
 死にまね(死んだふり)は哺乳類、魚類、鳥類、両生類、爬虫類、甲殻類、ダニ類、昆虫と動物に広く普遍的にみられる行動で、天敵による捕食を回避するために動物が進化させた防衛戦略である。ファーブルが「昆虫記」のなかで、死にまねは生物が陥る一種の仮死状態であり、適応的な意味はあるのかと疑問を投げかけている。研究グループは、2004年に死にまねが適応的であることを発表して以来、死にまねの研究で世界をリードしている。
 研究グループは、米・小麦類の世界的重要害虫であるコクヌストモドキにおいて、少しでも刺激を与えると死んだふりを長くしつづける系統と、どんなに刺激を与えても死にまねをしない系統を20世代以上育種した。これら育種系統間で次世代シークエンサーを用いた解析(トランスクリプトーム解析)を行った。その結果、系統間では518の発現の異なる遺伝子の存在が判明。系統間では脳内で発現するドーパミンの量が異なり、ドーパミンを体内に摂取あるいは、注射すると死にまね時間が短くなった。さらに、系統間ではチロシン代謝系に関与するドーパミン関連遺伝子の発現が著しく異なることを明らかにした。
 今回の研究により、脳内で発現するドーパミンに左右される、死にまねをする・しないという行動の差がゲノムレベルでも解明された。この発見は人の挙動に関する疾患についても重要な示唆を与えるとしている。

 雨が深夜から降り続いている。午前は少し強く、午後からは小雨となる。気温は低く、最高気温は18℃、最低気温は16℃。
 雨が降る前の散歩。近所の”ザクロ”の木に実が付いてる。木の葉はまだ沢山残っており、実も幾つか付いている。
 ”ザクロ”は花より果実が有名である。球状の果実は花托の発達したもので、熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が現れる。ザクロの実が割れる様が語源と思われる、「ザックリ」があるとか。
 名(ザクロ)の由来は良く分かっていない。二千年前、ペルシャ北部の安石国から中国に伝わり、果実が瘤の様だったので、安石榴・石榴(ジャクリュウ)と呼ばれた。これが”ザクロ”の名の由来説がある。
 ザクロ(石榴、柘榴、若榴)
 学名:Punica granatum
 ザクロ科ザクロ属
 落葉小高木、およびその果実
 雌雄同株。雄花と両性花がある。
 原産地は西南アジア、日本には平安時代(10~11世紀頃)渡来。
 多くの品種・変種がある。
  一般的な赤身ザクロの他、白い水晶ザクロ・果肉が黒いザクロなどがある
 開花時期は6月~7月
 花は5cm位の筒状をした6弁花、花色は鮮紅色。
 果実は花托の発達したもので、球状となり、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が沢山見える。果肉一粒の中心に種子がある。
  多くの男性の中にいる一人の女性を指す「紅一点」の語源は、
  中国の詩人・王安石(11世紀)の「万緑叢中紅一点」で、青葉の紅いザクロ花の咲く様子、を詠んだ


低電圧駆動で超高輝度のペロブスカイトLED(PeLED)を開発

2019-10-18 | 科学・技術
 東京工業大学 元素戦略研究センターの沈基亨大学院生、金正煥助教、細野秀雄栄誉教授らは、近年、新たな発光材料として注目を集めているペロブスカイト型ハロゲン化物を用い、低電圧駆動で超高輝度のペロブスカイトLED(PeLED)の開発に成功した。電極からのキャリアの注入と発光層内での移動の両方を促進するという新たなアプローチでLEDの高性能化を達成した。研究成果は、7月30日(現地時間)に米国応用物理学会「Applied Physics Reviews」に掲載された。
 要点
  高性能ペロブスカイトLED実現に向けた新概念を提案
  新アモルファス酸化物半導体で、励起子をペロブスカイト層内に閉じ込める
  5Vで500,000 cd/m2の緑色発光素子を実現
 開発したアモルファスZn-Si-Oは、CsPbX3の伝導帯下端よりも浅い位置に伝導帯下端を持つことで励起子の閉じ込めが可能で、しかも高い電子移動度により効率的な電子注入が期待できる。この指針により作製されたCsPbBr3の緑色発光素子は2.9 Vで10,000 cd/m2、5 Vで500,000 cd/m2に及ぶ低電圧超高輝度を実現した(電力効率は33 lm/W)。さらに赤色発光素子では20,000 cd/m2の世界最高輝度が得られた。この成果はPeLEDの実用化に向けた新たな方向性を提案するものである。
 CsPbX3は発光中心となる励起子の束縛エネルギーが小さいので、非発光型遷移が起こりやすく、低い発光効率の原因と考えられていた。そのため量子閉じ込め効果を持つ低次元の発光材料が専ら研究されてきた。しかし、低次元材料は電子や正孔が動きにくく、電流注入での発光効率が高くなりにくいという問題が生じる。今回の研究ではCsPbX3を発光層とし、これに適した電子輸送層を用いることで、電極からのキャリア注入と発光層内での移動の両方を促進する新たなアプローチでLEDの高性能化を狙った。
 ◆用語説明
 〇ペロブスカイトLED(PeLED)
 ペロブスカイト構造を持つCsPbX3発光材料からなるEL素子のこと。
 〇CsPbX3(X=Cl、Br、I)
 通常のぺロブスカイト構造をとる物質で、太陽電池材料としてよく研究されている。
 〇cd/m2
 カンデラ毎平方メートル、国際単位系(SI)における輝度の単位。
 〇lm/W
 ルーメン・パー・ワット。全光束を消費電力で割った数値。1ワットあたり、どれだけの光束を発生させることができるかを示す特性値。
 〇非発光型遷移(消光)
 子と正孔が再結合すると発光するが、欠陥や不純物があると、再結合のエネルギーが発光以外のエネルギーとなり発光に至らない。
 〇量子閉じ込め効果を持つ低次元の発光材料
 電子、正孔、あるいは正孔と電子が対になった励起子が0、1あるいは2次元のポテンシャルのなかに閉じ込めることができる発光材料。電子と正孔の再結合によって発光が生じるので、高い発光効率が得られる。
 〇蛍光量子効率(PLQY)
 外部から光をあてることで発光する効率で、発光する光子の数/あてる光子の数。
 〇励起子束縛エネルギー
 励起子は電子と正孔が対をつくった状態(励起子)から電子と正孔に解離させるのに必要なエネルギー。
 〇電子親和力
 真空準位から測った伝導帯下端(最低非占有分子軌道)までのエネルギー差。
 〇エネルギー準位
 電子の軌道が持つエネルギー。
 〇0次元的電子構造
 電子の存在する場所が原子の大きさと同じくらい狭い領域になっており、「点」と見做すことができるような構造のこと。
 〇Cs3Cu2I5
 発光するサイトであるCu-Iが0次元的に閉じ込められている結晶。青色発光し、90 %という高い蛍光量子効率を示す。
 〇エネルギーアライメント
 真空準位を基準に伝導帯の底と価電子帯の頂上のエネルギーを様々な物質で並べたもの。異なる物質を接触したときに電子や正孔がどちらに移動するかが判断できる。
 ◆ペロブスカイト構造
 ペロブスカイト構造は、結晶構造の一種である。ペロブスカイト(perovskite、灰チタン石)と同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えば、BaTiO3(チタン酸バリウム)のように、RMO3 という3元系から成る遷移金属酸化物などが、この結晶構造をとる。
 理想的には、立方晶系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを中心として、酸素Oは立方晶の各面心に配置している。酸素と金属Mから成る MO6 八面体の向きは、金属Rとの相互作用により容易に歪み、これにより、より対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移する。
 これにより、この結晶の物性が劇的に変化する。例えば、対称性の低下により、モット転移を起こし、金属Mのサイトに局在していた価電子がバンドとして広がることができるようになったり、金属Mのサイト同士のスピン間の相互作用による反強磁性秩序が崩れ、常磁性に転移したりする。この歪みによる相転移は、温度の上昇による金属Rのイオン半径の増加や、金属Rサイトに不純物原子を導入することなどでコントロールすることができる。
 マントル内部のペロブスカイト
 数十GPaを超える超高圧の環境では、ペロブスカイト構造は非常に一般的な構造である。この構造には、原子を稠密に詰め込むことができるためである。地球内部における主要な化学組成である MgSiO3 は、地下約660kmから約2,700kmのマントル下部において、ペロブスカイト構造をとっていると考えられる。この MgSiO3 を、125GPa、2,500Kという超高圧高温環境下におくと、ポストペロブスカイト構造と呼ばれる、より原子が稠密に詰め込まれた相に転移することが明らかにされた。地下約2,700kmより深いマントル最下層では、MgSiO3 はポストペロブスカイト構造をとっていると考えられる。

 今日の天気は曇り、時々晴れ。夕方から夜に雨の予想。この雨が大災害の雨となりません様に。
 散歩道沿いのお庭で”ハマギク”が咲いている。花はマーガレットに似た白花である。茎は木質化して越冬し、春先に新しい茎を伸ばし、秋にやや大柄な白い花を咲かせる。葉はやや肉厚でへら型、表面には光沢がある。
 ”ハマギク”は、1属1種の日本特産種であり、学名は、”Nipponanthemum nipponicum ”、英名は「Nippon daisy」である。自生地は、青森県から茨城県にかけての太平洋側の海岸と言われる。花壇綱目(江戸時代初期の園芸書)に、”ハマギク(浜菊)”の名があり、その頃から栽培されていたと思われる。
 ハマギク(浜菊)
 別名:吹上菊(ふきあげぎく)
 学名:Nipponanthemum nipponicum
 英名:Nippon daisy
 キク科ハマギク属
 耐寒性多年草 、茎・枝は木質化する
 葉は肉厚で艶があり、縁に波状の鋸歯がある
 丈は30cm~90cm
 開花時期は9月~11月
 花はやや大きめ(径6cm位)で、日本的な清楚な白い花
 ◆花壇綱目
 江戸時代の園芸家水野元勝の著書。3巻、1664年脱稿、1681年刊、1716年に再版。
 日本最初の園芸書。花卉(かき)200余種についてその形状や栽培法を記述したもの。



広い温度範囲での形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発

2019-10-17 | 科学・技術
 物質・材料研究機構(NIMS)はソウル国立大学と共同で、形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発した。従来の合金よりも広い温度範囲で形状記憶効果が得られ、チタン・ニッケル合金よりも高温での形状記憶効果が示された事で、今後、高温用アクチュエータなどへの応用が期待される。本研究成果は、「Scientific Report」誌の2019年9月11日オンラインe版に掲載された。
 研究内容と成果
 Jein Lee ICYS 研究員らは最も良く知られたfcc系ハイエントロピー合金であるCrMnFeCoNi合金(通称カンター合金)に着目し、その周辺で組成を変化させた時のfcc相とhcp相のギブス自由エネルギーをCalphad法により計算し、その結果NiをCoで置換する事でfcc相とhcp相のエネルギー差が非常に小さくなること、また約1000K以上で広いfcc相安定組成域が存在する事を見いだした。
 この計算結果に基づいてCr20Mn20Fe20Co40-xNix (x = 0~40)という一連の合金を作製し、特性を調べた結果、特にx=0, 5 の合金が可逆的なfcc-hcpマルテンサイト変態を示す事、さらに室温で変形後、加熱する事で元の形状が回復する形状記憶効果を示す事を見いだした。
 形状記憶合金としてはすでにNiTi合金、Fe-Mn-Si合金などが知られており、これらの既存の合金は形状回復温度の範囲が限られているが、今回見いだされたハイエントロピー合金では広い組成域でfcc固溶体が得られるため、形状回復温度を低温から高温まで幅広く変えられる可能性がある。またCr30Mn10Fe20Co40合金ではNiTi合金では373Kが上限である形状回復温度を700Kまで向上する事ができた。NiTi合金について高温で形状記憶効果を得るにはPd などの貴金属やHfなどの希土類元素の添加が必要であったが、開発合金は比較的安価な遷移金属元素のみからなっており、材料コスト的にも有利と考えられる。
 今後の展開
 今後はさらに詳細な研究、特に熱処理や微細組織制御により形状記憶特性や繰り返し特性の向上に向けた研究開発を進める必要がある。
 ◆ハイエントロピー合金
 ハイエントロピー合金とは5種類以上の元素を等モル比で混合して得られる固溶体合金、)およびその周辺組成の合金の総称である。この様な組成の合金では自由エネルギーの配置のエントロピーが大きくなるため、規則合金に比べて固溶体が安定になる事が予想される。
 これまでの合金探索は1種類の元素を主要元素とし、それに少量の異種元素を添加した合金が殆どであった。ハイエントロピー合金では多元系かつ高濃度の合金組成を持つ合金であり、これまでに開拓されてこなかった組成範囲を探索するもので、これまでに無い優れた特性や新たな機能の材料の発見が期待されている。
 ◆用語解説
 〇固溶体合金
 結晶内で複数の成分の原子が均一かつ無秩序に分布している単相の固体。
 〇規則合金
 結晶内で異なる成分原子が規則正しく配列している合金。
 〇マルテンサイト変態:
 合金において結晶格子中の各原子が拡散を伴わずに連携的に移動することにより新しい結晶構造となる相変態。
 ◆形状記憶合金(英:Shape memory alloy;SMA)
 形状記憶合金は、ある温度(変態点)以下で変形しても、その温度以上に加熱すると、元の形状に回復する性質を持った合金で、この性質を形状記憶効果(SME)という。
 このような合金の性質が確認されたのは1951年のことで、1970年代頃から利用が研究され始めた。しかし実用化が始まったのは1980年代に入ってからのことで、以後機械工学分野から医療分野にまで応用されている。
 温度で制御可能な形状記憶合金の他に、磁性による制御が可能な強磁性形状記憶合金もある。

 雲多いが晴れ。気温は、最高気温は21℃、最低気温は8℃、朝昼晩の温度が大きい。
 散歩で、”イヌサフラン”の花を見つけた。花は彼岸花の様に葉を付けずに地面から出現し、茎先に花のみが付いている。この花姿から”裸の貴婦人”とも呼ばれる。花の咲く時期は、春咲き・秋咲き・冬咲きがあり、日本では主に秋咲きが普及している。
 球根・種に毒(コルヒチン)があり、その毒(コルヒチン)は痛風発作予防薬として使われる薬である。新聞記事で、高齢女性が自宅で栽培していた”イヌサフラン”を生で食べて食中毒で死亡した、とあった。
 厚生労働省の植物性自然毒 高等植物の説明では、
 イヌサフラン(別名:コルチカム)
  分類:ユリ目 Liliales、ユリ科 Liliaceae、イヌサフラン属 Colchicum
  (APG 分類体系ではユリ目、イヌサフラン科、イヌサフラン属 )
  学名:Colchicum autumnale L.
  英名:autumn crocus
  生育地:ヨーロッパ中南部~北アフリカ原産の球根植物
   日本には明治時代に渡来し、園芸植物として広く植えられる
  形態:多年生の球根植物
    球根は径3~5cmの卵形で、9月~10月に花茎を 15cm ほど伸ばし、
    アヤメ科のサフラン Crocus sativus L. に似た花をつける。
    室内に放置した球根からも開花する。翌春に 20 ~ 30cm ほどの葉を根生する。
    耐寒性が強く、何年も植えたままで開花する。
  毒性:全草に毒性あり
  毒性成分:アルカロイドのコルヒチン( colchicine )
    種子には 0.2%~0.6%、鱗茎には0.08%~0.2%含まれる
  鎮痛薬として使用されるが、嘔吐・下痢などの副作用を示す 。
  中毒症状:嘔吐、下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難、重症の場合は死亡することもある。
    ヒトの最小致死量は体重50 kgの場合、コルヒチンとして4.3mg程度。
 イヌサフラン
 別名:コルチカム
 学名:Colchicum autumnale
 ユリ科(イヌサフラン科)コルチカム属
 球根草(自然分球で殖える)
 原産地はヨーロッパ、北アフリカ
 開花時期は9月~10月
  (秋咲き)
 花色は淡い藤色・濃い藤色・白色など
 花姿は春に咲くクロッカス(アヤメ科)に似ている


空腹に伴い味覚を調節する神経ネットワークの発見

2019-10-16 | 食・レシピ
 生理学研究所の中島健一朗准教授・傅欧研究員は、同研究所の吉村由美子教授の研究グループ、東京大学大学院農学生命科学研究科の三坂巧准教授の研究グループ、同研究科東原和成教授の研究グループとの共同研究により、マウスにおいて空腹に伴い味覚を調節する神経ネットワークを発見した。本研究結果は、「Nature Communications」誌(日本時間2019年10月8日)に掲載された。
 摂食行動はヒトを含む動物にとって最も重要な行動の1つである。このうち、味覚は、その基本的な役割として、栄養豊富な好ましい食物を積極的に摂取し、有害な成分を忌避するなど、食物の価値決定に関与する。
 しかし、この判断基準は常に一定ではなく、空腹のときには味の感じ方や好みが普段とは異なることが知られている。このような現象はヒトに限らず、マウスやショウジョウバエなど異なる種の生物でも観察される。しかし、その原因はよくわかっていなかった。
 近年、多くの研究により、脳基底部の視床下部弓状核に存在するアグーチ関連ペプチド産生神経(AgRPニューロン)が空腹時に活性化することで食欲が生み出されることが明らかになってきた。また、このニューロンは様々な脳部位とネットワークを形成しており、これらの部位の活動を抑制することが知られている。
 本研究ではマウスをモデルに、”AgRPニューロン”が空腹時の味覚の変化に寄与するかを検証した。
 空腹にしたマウスの味覚をリック評価試験により測定したところ、通常飼育時と比べて、比較的低濃度の甘味溶液でもリック(舐める)回数が増大した。一方で苦味溶液については、通常はリック回数が大きく低下する濃度でもリック回数が高い状態が維持された。この結果から甘味など好ましい味はより嗜好するのに対し、苦味や酸味など不快な味に鈍くなることが分かった。
 そこで、オプトジェネティクスにより、”AgRPニューロン”を活性化させマウスの脳内を人工的に空腹状態にして評価したところ、興味深いことにマウスを絶食させた時と同様の味覚の変化が生じた。また、この変化は、外側視床下部に接続する(投射する)”AgRPニューロン”を活性化した場合にのみ生じ、他の脳部位に投射する”AgRPニューロン”では誘導されなかった。
 次に、外側視床下部のニューロンは興奮性と抑制性の2つに大別されることから、どちらのニューロンが味覚を調節するかを調べた。”AgRPニューロン”が投射先のニューロンの活動を抑制することに注目し、DREADD法を用いて、両グループの活動を人工的に抑制して味覚を評価したところ、興奮性ニューロンの活動が低下すると空腹時と同じように甘味や苦味の嗜好性に変化が起こった。対照的に抑制性ニューロンにはこのような効果はなかった。
 外側視床下部の興奮性ニューロンも”AgRPニューロン”と同様、様々な脳部位に投射していることに注目し、各投射経路の活動をDREADDにより1つずつ人為的に抑制することで味覚調節部位をさらに調べた。その結果、不安中枢の1つである外側中隔核へ投射するニューロンを抑制すると、空腹時と同様に甘味への嗜好性が高まったが、苦味に関してはリック行動に変化がなかった。一方、嫌悪情報の応答部位である外側手綱核に投射するニューロンを抑制すると、苦味に対して感度が低下したが、甘味に関してはリック行動に大きな変化がなかった。これらの結果から、甘味と苦味は別々の経路で、それぞれの情報が伝えられていることが明らかになった。実際、外側中隔核の活動は甘味摂取により抑制されるが、空腹時に甘味を摂取すると、その抑制がさらに強まる。一方、外側手綱核は苦味摂取により活性化するが、空腹時に苦味を摂取した場合には活性化の程度が抑えられることも判明した。
 以上、一連の結果から、空腹に伴って生じる味覚の変化は視床下部”AgRPニューロン”を起点とした神経ネットワークにより調節されることが分かった。また、外側視床下部の興奮性神経が中継点として働き、好きな味と嫌いな味とで別経路を介して制御されることが分かった。
 視床下部”AgRPニューロン”を起点とした味覚調節システムの元来の役割は、飢餓が身近な野生環境において、糖など栄養価の高い食物を普段以上に好むように嗜好を変化させ、多少悪くなった食物でも妥協して食べるようにすることと思われる。このような味覚の調節は、少しでも効率的にエネルギーを摂取して生き延びるために存在していると推定される。
 また、この神経ネットワークが不安・嫌悪など感情に関わる脳部位の活動を制御することを考慮すると、摂食時の生理状態(空腹・満腹など)により味の感じ方(美味しさ・まずさ)が変化するという現象の神経基盤であると考えられる。
 ◆用語説明
 〇味覚
 ヒトでは甘味・うま味・酸味・塩味・苦味の基本5味から構成される。マウスなど、げっ歯類もこれらの味を識別することが出来る。
 〇視床下部弓状核
 摂食を調節する脳部位。食欲を高めるニューロン(AgRPニューロン)とその反対に抑制するニューロンの2種類から構成される。
 〇リック評価試験
 マウスに味のついた溶液を提示し、そのリック(舐める)回数を測定することで、味に対する好き・嫌いを判断する方法。
 〇オプトジェネティクス
 光応答性のイオンチャネルを用いる事で神経細胞の活動を光刺激によってコントロールする手法。
 〇DREADD法
 人工薬剤にのみ反応する受容体を用い神経細胞の活動をコントロールする手法。神経活動を興奮させるタイプと抑制させるタイプの2種類が存在する。

 今日の天気は、朝から快晴。朝晩は冷え込み、最高気温は18℃ほど。日毎に秋から冬へと季節は移る。
 朝早く、畑に出かけたら、空にお月様。10月14日(体育の日)は満月だった・・見えた。

ノーベル賞経済学賞に貧困の緩和で業績の3氏に

2019-10-15 | 学問
 スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)は、2019年のノーベル経済学賞(Nobel Prize in Economics)を、貧困に関する研究の業績で、インド出身の米国人アビジット・バナジー(Abhijit Banerjee)氏、フランス出身の米国人エスター・デュフロ(Esther Duflo)氏、米国人のマイケル・クレマー(Michael Kremer)氏に授与すると発表した(10月14日)。
 アカデミーは、3氏の「世界の貧困緩和に向けた実験的アプローチ」が評価されたと説明。貧困との闘いにおいて、難問をより細かく、より対応しやすい問いに分割することによって、現場での実験を通じて解決できるようにするという、より効率的な方法を、3氏が見いだしたとたたえている。
 バナジー氏は1961年、インドで生まれた。その妻がフランス出身で46歳のデュフロ氏で、両氏は米マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授を務めている。54歳のクレマー氏は、ハーバード大学(Harvard University)教授。
 因みに、女性が受賞するのは、ノーベル経済学賞の50年の歴史上、2009年のエリノア・オストロム(Elinor Ostrom)氏に次いで、デュフロ氏が2人目となる。