民主党代表選は菅首相の勝利で終わる形勢であるかのように報じるマスコミも現れた。勝利したら、機会あるごとに「普通のサラリーマンの息子」だと誇っていた自らの出自を再び誇ることになるのだろうか。
このこと自体が既に菅首相が結果責任意識を欠如させていることの何よりの証明となる。大金持ちの息子だろうが、ホームレスの息子だろうが、愛人・妾の類の息子だろうが、あるいはハーフの息子だろうが、帰化外国人の息子だろうが、政治家として何を成したかの結果が何よりも重要であって、その事実を欠いたなら、大金持ちの息子だろうが、ホームレスの息子だろうが、愛人・妾の類の息子だろうが、あるいはハーフの息子だろうが、帰化外国人の息子だろうが、出自自体への誇りは意味を成さなくなる。
もし菅首相が結果責任意識を常に頭に置いている政治家であったなら、「普通のサラリーマンの息子」であることが指導力、リーダーシップと呼び習わされている政治家に欠かせない必須能力を根拠づける資質とは無関係であることに気づいていたろう。指導力、リーダーシップは父親の身分や職業、学歴、さらに自身の学歴等の出身、あるいは出自に関係なく、その人自身に備わる能力であり、備えなければならない能力だからだ。
また指導力、リーダーシップが結果を保証し、結果責任をもたらす。
菅首相が指導力、リーダーシップを欠いていると言うことなら、結果も結果責任も期待しようがなくなる。
《【民主党代表選】旧民社「首相支持」決定、所属各議員は拘束せず》(MSN産経/2010.9.10 19:15)
民主党の旧民社党系グループ(約30人)が10日、国会内で会合を開き、代表選対応について菅首相を支持するが、一人一人の考えは拘束しないことを決めたと書いている。
民社協会会長として同グループを束ねているのは田中慶秋衆院議員だそうだ。代表選でもなければ、記者に囲まれると言ったことは滅多にないのではないのか。
田中慶秋「(菅政権成立後)約3カ月しかたっていないのに、なぜ首相を代えなければいけないのかという国民の声が多く聞かれた」
誰もが「政治は結果責任」と言う。「約3カ月」では「政治は結果責任」の「結果」は出せないと言うだろうが、「結果」は指導力、リーダーシップによって導かれる。「普通のサラリーマンの息子」であることが導くわけではない。
いわば田中慶秋は「政治家結果責任」の重要な保証要素である指導力、リーダーシップの有無を基準に支持を決めるべきを、首相の在任期間の短さを基準として支持を決めた。田中慶秋自体が結果責任意識が希薄だからだろう。
結果責任意識に立っていたなら、否応もなしに指導力、リーダーシップを問わなければならなくなる。
田中慶秋が旧民社党グループの一員として結果責任意識が希薄であることを証明する記事がある。
《代表選どっちにつこう? 民主党、分裂模様のグループも》(asahi.com/2010年9月7日5時1分)
〈民主党代表選で菅直人首相と小沢一郎前幹事長のどちらを支持するかをめぐり、各グループの結束が揺らいでいる。旧民社党系、旧社会党系は態度を決められず、小沢氏支持を決めた鳩山由紀夫前首相のグループの足並みも乱れる。どちらが勝ってもしこりが残ることは避けられそうにない。〉と冒頭部分。
旧民社党系議員が中心の「民社協会」(旧民社党グループ)の6日の国会内での理事会。
古本伸一郎財務政務官――首相支持
三井辨雄国会対策委員長代理――小沢支持
田中慶秋「基本政策について(候補者)両方から返事が来ているが、満足できるものはない」
だが、菅支持に動いたことは「MSN産経」が伝えている。
記事は解説している。〈態度表明がいつも遅く「勝ち馬に乗る」と揶揄(やゆ)される同グループだが、3日には所属の直嶋正行経済産業相が「内閣の一員として成長戦略を実行するのが私の役割」と首相支持を表明し、「首相支持の流れが強まっている」(ベテラン)との見方も。だが、今回は勝敗が見極めにくいうえ、所属議員の支持も股裂き状態で「対応は決められないだろう」(中堅)との声もある。〉
記事の解説どおりだとすると、「勝ち馬に乗る」を基準とした態度決定だから、勝敗が見極めにくいとなると、誰が「勝ち馬」かそれぞれの判断が分かれて、当然所属議員の支持が股裂き状態となる。
「勝ち馬に乗る」以外の基準、指導力、リーダーシップや結果責任を一切基準としていないこと自体が田中慶秋を含めた旧民社党グループが結果責任意識が希薄であることの何よりの証明となる。
菅首相が1996年当時、自民党橋本内閣で厚生大臣を務めて薬害エイズ問題に見るべき成果を挙げ、結果責任を果たしたのは事実である。だが、様々な場面でそのことを誇ることも、結果責任意識の希薄からきていると言える。
求められているのは首相として成すべき結果であり、このことに関する結果責任であって、内閣に於ける一大臣としての過去に見た結果ではない。立場も能力発揮の対象・範囲も時代状況も異なる。
このことを自覚していたなら、結果責任を求めて常に目を前へ向けることとなり、過去の経験が役立つことはあっても、立場も能力発揮の対象・範囲も時代状況も異なるために結果責任をもたらす保証となるとは限らないのだから、過去の成果を成果とすることはなかったに違いない。
菅首相自身が結果責任意識が希薄であるということだけではなく、首相が1年に何人も代わることは好ましくないと把える国会議員やジャーナリスト、さらに国民世論にしても、結果責任に疎いからこその首相頻繁交代”アレルギーということではないだろうか。
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