細野環境相が13日午前(2011年11月)、福島県伊達市でボランティア約60人と一緒になって除染ボランティアを行ったという。内容は民家の庭先表土削除作業。
細野環境相「地区のみなさんに迷惑、心配かけているので贖罪(しょくざい)の意識も込めて作業した」(asahi.com)
果たして細野環境相の“贖罪”は除染ボランティアすることなのだろうか。
政府自体の“贖罪”に関して言うと、政府の復旧・復興対策に遅れを見せている以上、政府が贖罪とすべきことは1日でも早い実効性を伴った復旧・復興の推進であり、その完了であるはずである。
環境省の関わりについては解決を必要とする懸案は先ず第一に震災によって生じた瓦礫の一刻も早いスムーズな処理であり、除染で生じる汚染土の処理であるはずである。
汚染土の処理に関しては各市町村に設けた仮置き場に3年以内に搬入後、福島県内に設ける1カ所の中間貯蔵施設に移動させ、30年以内に県外で最終処分するとしているが、具体的な方策は決まっていないという。
東日本大震災で発生した大量のがれきを被災地以外で処理する広域処理について見てみると、受け入れを表明している自治体はあるものの、現在東北以外で唯一受け入れて実際に処理を進めているのは東京都のみである。
《クローズアップ2011:大震災8カ月 がれき、行き場なし 「放射能」誤解強く》(毎日jp/2011年11月11日)が伝えている約616万トンの瓦礫が発生した宮城県石巻市の例から受け入れの進捗状況を見てみる。
●瓦礫発生量
岩手県全体で 約476万トン
福島県全体で 約228万トン
宮城県石巻市のみで約616万トン
●被災地内で処理しきれない膨大な瓦礫の広域処理受け入れ先が難航。
●瓦礫は「1次仮置き場」に集積。その後大規模な「2次仮置き場」に運び、粉砕・焼却処理の方針。
●石巻市の2次仮置き場での瓦礫処理
約685万トン(石巻市約616万トン+東松島市&女川町分)のうち391万トン
残る294万トンは広域処理
●搬出先選定は難航し、東京都以外で受け入れを決めた自治体はない。
〈県外搬出のめどが立たないまま県は10月、放射線量の検査を始めた。石巻市の2次仮置き場に集積されたがれきの山から20カ所を選び、木材やプラスチック、繊維などに選別して検査。今月中には結果を公表する。〉と記事。
放射線量検査が10月からの開始となったことと搬出先選定難航について。
県議会「放射線量の検査をしないと、県外搬出のめどが立つはずはない」
県震災廃棄物対策課担当者「国から検査に関するガイドラインが示されるのが遅かった。県だけで判断できる問題ではないので、国が示す調査方法を踏まえて判断したかった」
「国が示す調査方法を踏まえ」なければ、先に進まないということなら、国の遅れをやはり問題視しなければならない。
●環境省の調査。現時点で受け入れに前向きな市町村と組合――全国で54市町村・一部事務組合。
●岩手県の4市町村から受け入れを打診されている秋田県の場合。
6月時点――6市5事務組合と民間処理業者13社が受け入れ可能としていた。
牛肉や稲わらなどの放射能汚染が顕在化以後、25市町村と7事務組合の全てが難色を示す。
秋田県担当者「隣県として支援したいが、県民の不安を取り除かないと話が進まない」
●7月に首都圏から秋田県大館市と小坂町の処理施設へ運ばれた焼却灰に国の処分基準(1キロ当たり8000ベクレル)を上回る放射性セシウムが含まれていたことが判明、住民が態度を硬化、住民団体が結成され、反対活動が続いている。
放射能汚染への懸念が受け入れのネックとなっていることが分かる。
●このネック解消のために環境省は瓦礫〈処分基準設定の根拠や、搬出入時の放射線量測定方法などを示したガイドラインを作成。〉、〈ガイドラインを簡潔にしたQ&Aや説明資料を都道府県に配〉布。
環境省幹部「住民へ説明してもらうには、自治体の担当者に分かってもらわないといけない」
但し、〈放射能汚染への誤解は根強〉く、〈同省の担当課には「放射性物質を拡散させるようなことを国が進めるとは何事か」といった苦情の電話がかかり、応対で業務がストップする日もあったという。〉と放射能に対する拒絶反応の、なかなか溶けない頑固さを伝えている。
環境省幹部「社会の空気を変えていかなくては復興が進まないが、丁寧に説明する以外に方法がない」
とすれば、環境省のトップとして細野環境相が自らが先頭に立って為すべきことは除染のボランティアよりも、瓦礫の広域処理を一刻も早く進めるべく「社会の空気」を変えることに鋭意務めることであろう。
環境省任せの瓦礫処分基準設定根拠や搬出入時の放射線量測定方法等のガイドライン作成やガイドラインを簡潔にしたQ&Aや説明資料の都道府県配布で住民の放射能アレルギーが解消するならいい。現状に於いてさしたる効果を見ていない以上、各種風評被害の排除と共に瓦礫処理引き受け要請の全国自治体行脚を行うことを自らの責任、自らの“贖罪”とすべきではないだろうか。
北海道に於ける広域処理受け入れ状況を見てみる。《北海道11団体で受け入れ可能 被災地のがれき》(MSN産経/2011.11.11 22:39)
●高橋はるみ北海道知事が11月11日の道議会決算特別委員会で道内市町村と事務組合を含めて11団体が条
件付きで受け入れ可能と回答。
●4月の調査では49団体が可能としていた。
●受け入れ可能とした11団体は放射性物質の安全性確認等が条件。
●個別の市町村名は非公表。
〈環境省などの要請に基づき実際に受け入れる場合、道は現地に調査員を派遣して放射性物質をチェックする方針。受け入れ後、焼却灰から基準値を超える放射性物質が検出されれば、灰を搬出元に返還することも検討〉・・・
「個別の市町村名は非公表」が放射能アレルギー状況にある住民の反発を恐れて瓦礫処理の広域受け入れに自治体が如何に及び腰になっているかを何よりも物語っている。国の要請であるから止むを得ないの姿勢なのだろう。「何も好き好んで引き受けるわけではない」の内心の声が聞こえそうだ。
細野環境相が瓦礫の広域処理受け入れ先難航の現実から読み取るべき決定事項は既に触れたようにやはり除染ボランティアなどではなく、環境省の広報任せ・通達任せにするのではなく、また自治体の住民の反発を恐れた及び腰任せにするのではなく、環境相自らが前面に立つ形で全国の自治体を回り、頭を下げて住民に前以て国の責任で放射能除染を確実に行うゆえに放射能をばらまくようなことはないと説明してまわる全国行脚以外に他にあるまい。
今早急に何が必要されているかの意味に於いて細野環境相のいっときの除染ボランティアはパフォーマンスに過ぎない。 |