8月26日のあさひテレビ「サンデースクランブル」で、竹島問題で次のような発言があった。
下條正男(拓殖大学国際学部教授)「韓国と仲良くしない限りですね、アジアの安定ということはありません。一番喜ぶのは中国やロシアや北朝鮮ですよ。
韓国と仲良くすること――」
テリー伊藤「敵が違いますよ」
下條正男「そう。相手を、相手を間違える――」
テリー伊藤「もう一つ、韓国を最終的に助けるのは日本だと思ってるんですよ。例えば韓国が厳しい状況のときに中国が助けますか?
助けないですよ。そこんところを韓国は本当はね、大人になって考えないと、ダメだと思いますねえ」
時間が来たからなのだろう、女性キャスターが、「下條さん、今日は大変有難うございました」と挨拶、このコーナーは終了。
下條正男教授は日韓友好論を唱えているが、あくまでも竹島日本領の立場からの日韓友好論である。韓国が歴史認識で事実と異なることを言ってきた場合は、日本は強く主張しなければならない、政治家は毅然とした態度を取るなどと言っているが、それを行動で示さなければ何もならない、日本領だと説明できるだけの勉強をしてから、韓国へ行くべきだといった発言を展開していた。
下條正男教授の発言は竹島に関わる日本の国益からのもので、日本人なら、誰しも当然と言える国益行動主義とでも名付けることができる。
問題はテリー伊藤の発言である。本人は気づいているかどうか分からないが、テリー伊藤にしても日本の国益に立った発言である。
但し日本の国益に立っていたとしても、韓国側が考える韓国の国益を、日本側から見た場合、それが正しかろうと正しくなかろうと、視野に入れた主張でなければ、説得力を持ち得ないはずだ。
視野に入れていない主張となっているから、「韓国を最終的に助けるのは日本だと思ってるんですよ」といった思い上がったことが言える。
余程韓国を見下した発言となっている。経済力から言って、日本の方が上であっても、ギブアンドテークの関係にあるのであって、例え日本側のギブが上回っていたとしても、韓国は日本と日本側の一方的なギブアンドギブの関係を築いているわけではない。
ギブアンドテークの関係である以上、韓国とは政治的関係を断つことができたとしても、韓国との経済関係を完全には無視できない。無視した場合、日本も経済的にそれ相応の打撃を受けるだろう。
勿論、日本の打撃以上に韓国の経済が打撃を受けたとしても、竹島を日本に売り渡すことは韓国民は許さないだろうから、韓国は日本との関係修復による経済のマイナス回復を図るのではなく、中国との関係を強化することによってマイナスを補う行動を自らの国益とするはずだ。
そうしなければ、誰が大統領となっても、その地位を一時たりとも安泰に保つことはできないだろう。
韓国に対して自ずと強いることになるこのよう行動は日本の歴史認識が大きく影響してもいるだろう。
いわば日本の歴史認識も手伝うことになる中国接近となるということである。
また、中国自身も日韓が領土問題で対立することは、それが激しい対立である程、中国の対尖閣領土問題で有利な材料とな利用し得るから、日韓領土問題対立からの韓国の経済的窮状を黙って見過ごすことはせず、何らかの経済的恩恵を施すことで、領土問題を共通国益とした関係構築の政策を取ることが考えられる。
中国が韓国の竹島領有の正当性をバックアップし、韓国が中国の尖閣領有の正当性をバックアップする。対日領土問題のこの共同戦線にロシアが加わる可能性が当然、浮上する。
歴史認識に関しても中韓は手を握って対日共同戦線を張ることが可能となる。
韓国にとって問題となるのは、アメリカとの関係であろう。経済的にも政治的にもアメリカとの関係を疎遠にすることはできない。政治的、軍事的には韓中、韓米のつかず離れずの綱渡りの関係を国益とするはずだ。
例えば米韓合同演習を引き続いて行いながら、韓国軍の首脳が中国を訪問といった事態の発生も考えることができる。
あくまでも日韓対立の激化によって韓国を経済的に追い詰めた場合の考え得る韓中接近の予想シナリオである。
緊急時にドルなど外貨を融通し合う日韓通貨交換(スワップ)協定にしても、韓国経済の安定が日本の国益につながるギブアンドテークを構造としていたはずだが、李明博大統領竹島上陸に対する対抗措置としてスワップ凍結を検討しているという。
また、安住財相が8月24日の閣議後記者会見で、今年5月合意の日本による韓国国債購入を当面見送る考えを明らかにしている。
さらに、日韓シャトル外交を当面凍結し、野田首相の年内訪韓見送りの検討に入った。
韓国が放棄するはずもない竹島領有を放棄させるために次々と打ち出す経済的圧力は韓国を確実に追い詰める材料として事欠かない。
中国はその外国がどれ程に政治的に独裁体制であっても、どれ程に人権抑圧の国家であっても、その国が豊かな資源に恵まれていた場合、その資源を自国資源とすべく、人権抑圧を無視して独裁体制を外から支える、ルールなき自国国益追求至上主義国家である。
またシリアでアサド政権がシリア国民にどれ程に残虐な弾圧を行い、国民の命を無残に奪おうとも、国連安保理対シリア制裁決議案をロシアと共に3度も拒否権を行使をしている人命軽視国家である。
そのような手段を選ばない中国が、例え日韓通貨交換(スワップ)協定を凍結したとしても、韓国国債の買い入れを見送ったとしても、韓国が不利となる日韓対立のその間隙を中国が狙わないはずはない。
すべて国益に代えるはずだ。
竹島問題で韓国を追い詰めることによって中国に韓国が取り込まれた場合の日本の領土問題上の国益と経済上の国益の損得を考えた場合、竹島を放棄、中国大陸側の領土問題は尖閣諸島に限って集中し、韓国の外交的支援も得て、尖閣諸島を当たり前の日本の国土の一部に持って行き、周辺海域の海洋資源の開発に早急に着手することの方が日本の国益にプラスとならないだろうか。
以上が、《非国民・国賊の提案『竹島なんか、韓国にくれてやれ!』》の理由である。
中国人の中にも資料を示して、尖閣諸島は日本の領土だと主張している中国人が存在しているそうだ。広東捷盈電子科技・取締役会林凡(女性)副主席。
《広東の企業幹部が「尖閣諸島は日本領土」、中国版ツイッターで発言、人民日報記事など証拠挙げ、賛同広がる》(MSN産経/2012.8.25 01:14)
8月24日、中国広東省民間企業幹部の中国版ツイッター「微博」投稿の発言だそうだ。
林凡女史「1949年から71年まで中国政府は釣魚島(尖閣諸島)を日本の領土と認めていた」
記事題名に示している日本領有を示す1953年1月の中国共産党機関紙・人民日報記事以外にも複数の公式地図などを根拠に挙げているという。
中国国内からの感情的な反論は当然予想されるとしても、賛同投稿もあったという。そのいくつかの例。
賛同意見1「知識のない大衆が中国共産党に踊らされたことが分かった」
賛同意見2「中国政府はこれでも釣魚島はわれわれの領土だと言えるのか」
賛同意見3「資料をみて(尖閣諸島が)日本領だったことが明白に分かった」
賛同意見4「(当局に)タダで使われて反日デモを行う連中には困る」
林凡女史は、〈微博の運営会社、新浪微博から「実名」の認証を受けており、10万人以上の読者をもつ。〉と言うから、その発言は多くの中国人によって信頼性を持って受け入れられているはずだ。
同じ内容を扱った「毎日jp」記事によると、〈投稿は次々に転載されているが当局が削除し続けている。〉と書いているが、それが中国人口13億人分の10万人プラスアルファの読者数であったとしても、新聞記事や複数の公式地図は強力な証拠となるはずである。
日本政府は既に在中日本大使館に対して情報収集の指示を行なっているはずだし、あるいは指示が来る前に日本大使館が既に率先して情報収集に当たっているかもしれないが、尖閣領土帰趨決着の一大チャンスではないだろうか。
少なくとも「尖閣省都に領土問題は存在しない」と言っている間は、現状を見る限り、尖閣海域の開発は着手不可能となっている。どの国の異論も許さない形で領土帰趨の決着をつけてこそ、周辺海域の開発は可能となる。
中国に対してこの戦いを挑むとき、韓国の外交的支援が中国に向かうのと日本に向かうのとでは、やはり違いが生じるはずだ。
尤も領土問題が決着を見たとしても、歴史認識の乖離は別の問題である。この決着は国際社会から正当性を得ることのできる日本人自身の戦争総括以外に方法はないのではないのか。
参考までに。
2008年7月19日当ブログ記事――《日本民族優越論そのままに日本人が優秀なら、竹島は韓国領有とせよ》
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