菅仮免の手続きか中身か二者択一的に把えて中身をより重視する性懲りもない学習能力ゼロ

2011-07-21 08:01:27 | Weblog



 7月19日(2011年)の衆院予算委員会。菅仮免は小池百合子自民党議員の質問を受けた答弁の中で政策作成過程に於ける手順と中身について、例の如く立派なご高説を述べている。

 小池百合子「原発というのは最早律することのできない技術とおっしゃったんですね。これについては、即ち、親成長戦略から、原発を外すと言うことなんですか。

 それから一方で、リトアニアでの原発で、優先交渉権を日本は獲得したばかりでございます。トルコ、ベトナム、それぞれ、原発の輸出ということを進めているんですが、その、おー、親成長戦略から原発を外すのかどうか、その一点だけ、お答えください」

 「原発というのは最早律することのできない技術とおっしゃった」とは7月13日に行った菅仮免の例の「脱原発依存」記者会見での発言を指す。次のように言っている。

 菅仮免「3月11日のこの大きな原子力事故を私自身体験をする中で、そのリスクの大きさ、例えば10キロ圏、20キロ圏から住んでおられる方に避難をしていただければならない。場合によっては、もっと広い範囲からの避難も最悪の場合は必要になったかもしれない。さらにはこの事故収束に当たっても、一定のところまではステップ1、ステップ2で進むことができると思いますが、最終的な廃炉といった形までたどり着くには5年10年、あるいはさらに長い期間を要するわけでありまして、そういったこの原子力事故のリスクの大きさということを考えたときに、これまで考えていた安全確保という考え方だけではもはや律することができない。そうした技術であるということを痛感をいたしました」

 その結論が「脱原発依存」であり、「原発に依存しない社会」というわけである。で、菅仮免は小池百合子の質問に次のように答えている。

 菅仮免「先程ですね、浜岡のこと、あるいは、あー、ストレステストのことも聞かれました。あの、あまり細かく申し上げませんが、浜岡の件については経産大臣の方からの提案を受けて、えー、まあ、二人だけではありませんが、両経産大臣とも十分に話をして、えー、要請をいたしたものです。

 ストレステストについても色々と言われておりましたけれども、是非ですね、私は、あのー、確かに、えー、多少手順に於いて、私の不十分さや遅れはあったと思いますけども、あー、すべてを、おー、保安院に任せていくということでは、えー、国民の理解を得られないということで、原子力安全委員会も関与させる形に、えー、両大臣、官房長官含めて、方向性を決めていただいたことは大変よかったと思っておりまして、是非ともですね、御党に於いても、御党に於いてもですね、その中身が悪いか、ただ手続きだけを色々言われているようですが、中身が悪いのかどうか是非ですね、ご議論をいただきたいと、このように思っております。(民主党席から拍手)

 その上で、先程『律することができない』という言葉をー、まあ、取上げられました。私も3月11日、イー、から、勿論今日にまでですが、特に最初の1週間、本当に、イー、今思い出しても、背筋が寒くなるような思いをいくつかいたしました。

 私もどちらかと言えばですね、従来は3月11日まででは、安全をきちんと確認して、えー、原子力というものを活用していくと、そういう方向でものを考えていた、あー、わけですけれども、その、おー、事故というものを実際に体験して、そして、そのリスクが今回、ある程度のところで、えー、収束に向かうことができつつありますけれども、えー、そのリスクの大きさを、考えたときに、果たしてですね、この技術を、完全に安全なものとして、えー、コントロールでき得るかどうかということに、疑問を感じたことが、あー、率直にありましたので、そいういう言葉を使わせていただきました」

 小池百合子は菅仮免のこの“手続きか中身か”については何も尋ねていない。

 菅仮免はこの“手続きか中身か”で一度手痛い思いをしているはずだ。その手痛さは今以て回復できていない。2010年7月参院選前のマニフェスト発表記者会見で党とも内閣とも何ら手続きを踏まずに突然消費税増税の中身を打ち出した。その中身にしても肝心の増税率は与党でありながら、自らの主体性を考えずに自民党の10%案を参考にするという名目で相乗りするもので、自ら手続きを経て試算した10%ではなかった。

 いわば手続きもいい加減、中身もいい加減の消費税10%増税政策の打ち上げであった。

 後になって、この自民党10%増税案相乗りが実際は悪乗りだったことが判明する。菅仮免が「消費税で自民党と一緒の主張をすれば争点から消えるから大丈夫」だと打ち出したことを鳩山前首相が暴露している。小沢一郎元代表と共に反対したが、細野豪志が言うように「アドバルーンをドンと上げて、そこに向けて走るというタイプの人間」に相応しく、ギリシアの危機を一種の威しに使って威勢よく打ち上げ、突っ走って、参院選大敗北・ねじれ国会というしっぺ返しを喰らうこととなった。

 この悪乗りについては当ブログ2010年7月24日記事――《菅首相の“消費税争点隠し”論に見る指導性・責任性の欠如 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。
  
 菅仮免は頭のいい人間らしく、政策を打ち出す場合、手続きよりも中身が重要だと言っているが、実際はどちらも重要で、手続きか中身か二者択一的に把握するのは多くの場合、正しい方法とは言えないはずだ。

 要は順序の問題であるはずだ。手続きを議論と検討を重ねて用意周到に踏むことが最初にあり、その結果としてある次ぎの中身ということでなければならない。

 また手続きを滞りなく果たすことによって中身はより万全となる。中身が最初にあるわけではない。ストレステストにしても、菅仮免は諸費税増税政策の打ち上げ同様に手続きを抜いたばかりか、やはり消費税増税と同様に中身を具体的に整えもせずに言い出した。

 だから、枝野詭弁家官房長官と海江田経産相、細野原発事故担当相の3人による雁首を揃えた原発稼動及び再稼動の新たな安全基準を設けるための「内閣としての統一見解」づくりが後付けとなり、その統一見解を受けた原子力安全・保安院の「安全評価」の実施計画がさらに後付けで作成されることになった。

 いわば具体的な中身がここで出来上がった。具体的な手続きを経て中身の発表という当たり前の順序を取ったわけではない。実態はEUが既に実施しているストレステストという参考書とすることができる基準、もしくは土台があったから言えた菅仮免のストレステスト発言に過ぎない。

 それを「その中身が悪いか、ただ手続きだけを色々言われているようですが、中身が悪いのかどうか是非ですね、ご議論をいただきたい」などと言うのは原発立地自治体や電力会社に「私の不十分さや遅れはあったと思いますけども」程度では済まない混乱と戸惑いを与えたことを棚に上げた不遜なまでの質の悪い開き直り過ぎない。

 手続きを十分に踏んでいたなら、原発立地自治体や電力会社に混乱を与えることもなかったろうし、それらの自治体の首長から手厳しい批判を浴びることもなかったし、批判している様子が繰返しテレビに流されることもなかったろう。

 繰返しの報道は国民の菅仮免に対する元々低い評価に影響を与えてをさらに悪化させたはずだ。

 このことは7月9、10両日に行った朝日世論調査の世論調査が証明している。

◆原発の運転再開をめぐる政府の一連の対応を見て、菅首相はきちんとかじ取りができていると思いますか。できていないと思いますか。

かじ取りができている  9%

できていない     84%

 菅仮免は内閣支持率について、「国民の声は、真摯に受け止めなければならない」と国会で答弁しているが、「その中身が悪いか、ただ手続きだけを色々言われているようですが、中身が悪いのかどうか」の発言は実際には国民の声を真摯に受け止めていないからできる発言であろう。

 但し順序を踏まないままに打ち上げた後付けの中身自体は一応の評価を受けているが、新しい安全基準だと言われれば、具体的な中身を詳しく知らなくても、賛成を示すのは自然な流れである。

◆政府は、運転再開を求めたあと、原発の安全性についての新たな調査をすると決めました。定期検査で停止中の原発を再開するかどうかは、この新たな調査が終わってから判断した方がよいと思いますか。新たな調査とは関係なく、判断してよいと思いますか。

調査が終わってから判断した方がよい 66%

調査とは関係なく判断してよい    21%

 また、政治が手続き、中身、結果を順序として国民の審判を受けるルールとなっていることからすると、菅仮免のように手続きか中身か二者択一的に把握し、中身をより重視する姿勢は結果を抜いていることになり、あるいは結果を見据えていないことになり、その政治姿勢は計画性や先見性を欠いていると言える。

 だからこそ、参院選大敗を招いたのであり、小さな失態で済んだが、ストレステスト打ち上げによる原発立地自治体等の混乱を招くことになったということなのだろう。

 首相就任早々、手続きと中身を欠いたまま消費税増税を打ち出して参院選大敗という手痛い失態を経験したにも関わらず、それを苦い教訓とすることができないままに中身さえよければいいという思い込みのもと手続きを抜くことによって中身も満足に仕上げることができないままに打ち出して何らかの混乱を招いて自らの評価を下げる同じ失態を性懲りもなく繰返すことが菅仮免の常態的な姿勢となっている。

 学習能力なき一国のリーダーと言わざるを得ない。



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