菅首相の「原稿を読まずに答弁しろ」の売り言葉に買い言葉の問われる品位の対象

2010-10-08 08:51:52 | Weblog

 自民党の稲田朋美の10月6日衆議院本会議代表質問。《「原稿読むな」の首相反論に古川副長官が「品位欠いた」と陳謝》MSN産経/2010.10.7 12:10)

 稲田朋美「官僚の用意した原稿を読まず、首相自身の政治家としての言葉で答えてほしい」

 菅首相「『原稿を読まないで答弁しろ』というなら、原稿を読まないで質問するのが筋だ」

 この答弁に自民党が反撥。

 自民党「質問者が原稿を読まなければ、事前に質問通告する意味がない」

 菅義偉議運筆頭理事(自民党)「首相の謝罪がなければ7日の本会議開催に応じない」

 民主党側の反応――

 古川元久官房副長官「品位を欠くところがあり、誠に遺憾だ。今後は適切な答弁に努める」

 菅首相自身も7日の衆院本会議で謝罪している。《【代表質問】「汚い言葉」発言 首相が本会議で「不適切」と陳謝》MSN産経/2010.10.7 14:59)

 菅首相「昨日(6日)の本会議で私の発言に関し、不適切とのご指摘をいただいた。ご指摘を真摯(しんし)に受け止め、以後、与野党が十分議論に臨めるよう努めたいと思います」

 菅首相の謝罪はねじれ国会が野党の協力を必要とする利害状況にあることからの止むを得ない態度なのかもしれない。

 だが、菅首相は謝罪の対象を首相自身の答弁の言葉に置いた。古川官房副長官自身も、「総理の答弁は品位を欠く」として、答弁の言葉自体を品位欠如の対象としている。

 記事は首相が稲田朋美に対して「これほど汚い言葉は使わなかった」と発言したことも紹介している。

 稲田朋美がどのような「汚い言葉」を使ったのか衆議院インターネット審議中継の動画を見てみた。

 菅首相がかつて拉致首謀者の一人である辛光洙釈放嘆願書に署名したことを、「その間抜けぶり」と言い放ち、「拉致問題に取組み決意を官僚の作ったのではなく、あなた自身の、真実味のある言葉で答弁してもらいたい」と要求している。

 その他、「外交安全保障政策が余りに無責任、無策」、今回の尖閣問題の政府対応を「無様な外交的敗北です。菅内閣は腰抜け、ぶれた内閣。検察に政治責任と説明責任を押し付ける卑怯者内閣」と言いたい放題を言っている。

 さらに民主党の2009年衆議院選挙マニフェストを取り上げ、「ウソだらけの詐欺とも言うべきマニフェストで政権を掠め取ったのが民主党」と非難。

 但し政権交代劇に関して、「そのような民主党に政権を掠め取られた我が党も情けない」と自己批判することは忘れない。 

 ここで再度、菅首相の答弁方法に上記と同じ条件をつけている。

 稲田「私の質問はすべて総理に答弁を求めています。官僚の用意した原稿を読まずに、総理自身の政治家としての識見あるご自身のお言葉でお答えください」

 菅首相は答弁の冒頭、上記「MSN産経」が稲田朋美の質問に対して「これほど汚い言葉は使わなかった」と逆批判した言葉を発している。

 菅首相「先ず冒頭、厳しい言葉が並んでおりました。まあ、私も野党時代、かなり厳しい言葉を使っておりました。しかしこれ程汚い言葉を使わなかったつもりです」

 民主党議員からだろう、拍手が起こった。そして答弁の最後に原稿を読む読まないで古川官房副長官が「品位を欠くところがあ」ったとし、菅首相自身も謝罪した箇所。

 菅首相「なお、原稿を読まないで答弁をしろというご指摘がありました。それなら先ず、原稿を読まないでご質問をされるのが、先ず、筋ではないでしょうか。また多くの質問に対して答弁洩れを防ぐためにもある程度のメモを用意することは、当然なことだと思っております。以上稲田さんの質問にお答えしました」――

 「多くの質問に対して答弁洩れを防ぐためにもある程度のメモを用意することは、当然なことだ」には真っ赤なウソがある。「ある程度のメモ」どころか、殆んど最初から最後まで原稿の丸読みとなっている。

 原稿を読みながらの答弁は流暢、明確であるが、しかし淡々と事務的に早口に読み上げていることから、読んでいるだけといった印象を与える答弁となっている。もし官僚が作った答弁ではなく、自身が作成した答弁であったとしても、読み上げる段階で誠心誠意を欠く表現と化していると言わざるを得ない。

 誰もが菅首相が見せた稲田議員に対する答弁自体を対象とした“不適切な発言”、あるいは“品位を欠いた答弁”と問題としているが、それだけではない不適切・品位を欠く対象は別にあるはずだ

 菅首相が日本の内閣を率いる最高責任者という身分と立場にありながら、いわば一国の総理大臣が野党の一議員が発する質問の言葉に対等に対応した発言を行ったと言うことであろう。

 対等に対応することになったから、売り言葉に買い言葉の形式を取った発言となったはずである。子どもの売り言葉に大人が買い言葉で対等に対応した場合を考えたなら理解できる。この行為の場合は大人である自身の精神性を子どもの精神性に貶めた場面ともなる。

 少なくとも菅首相は日本の内閣を率いる最高責任者という身分と立場にある自身をそのような身分と立場にはない野党の一議員に対して売り言葉に買い言葉によって同等の立場を取ることとなった。同等の立場を取ることとなったと言うことは身分・立場が違い、身分・立場が違えば役割・責任の軽重・大小も違ってくるのだから、それらをひっくるめて逆に自身を貶めた関係を取ったことになる。

 そのように貶めたところに品位の欠如があり、品位の欠如を言葉を対象とする以上に対象としなければならないはずだ。何しろ一国の総理大臣である。野党の一議員には許されたとしても、総理大臣には売り言葉に買い言葉の許されない貶めであろう。

 大体が自民党が「質問者が原稿を読まなければ、事前に質問通告する意味がない」と批判していることに関係なしに野党の一議員が原稿を丸読みしたから総理大臣も丸読みしてもいいことにはならない。原稿を読まずとも自身の政策を語ることができないでは何のための総理大臣か分からなくなる。それを「原稿を読まないで答弁をしろというご指摘がありました。それなら先ず、原稿を読まないでご質問をされるのが、先ず、筋ではないでしょうか」と言う。

 まさしく稲田議員と菅首相を対等に置いた発言となっている。

 対等に置くこと自体が品位を欠く行為、品位を欠く精神性と言ってもいいが、同時に自身を誤魔化す行為であろう。

 同じような誤魔化しを温家宝首相との会談についての稲田議員の中国で拘束されたフジタ社員の残る一人の釈放を主張したのかの質問に対する答弁でも見受けることができる。原稿を読み上げての短い答弁でありながら、言葉の途中途中に「オー」、「アー」の間投詞の投げ入れが多くなる。
 
 菅首相「また、アー・・・、フジタ、アー、の社員の、問題については、併行して私と温家宝総理との話と併行して、えー、我が国の、オー、として、その、1名の身柄の、安全の確保等、早急な釈放を、オー、求めて、現在も、オー、交渉を進めて、いるところで、あることを申し上げておきます」――

 これだけの短い言葉を原稿から読み上げる中で、今まで読み上げてきたような淡々とした流暢さはなく、次の言葉を続けて読み上げることができずに、「オー」、「アー」、「えー」を入れて、つっかえつっかえのような答弁となっていた。しかも温家宝首相と読み上げるべき箇所を「温家宝総理」と間違えて読み上げている。稲田朋美が右手を口の脇に置いて何か野次を飛ばしていた。「総理ではない、首相だ」とても言っていたのかもしれない。

 稲田朋美は残る一人の釈放を会談で求めたのかと質問した。答弁は「フジタ社員の問題については私と温家宝総理との話と併行して」と明確には答えないままに問題となっている会談内容を飛ばして、「現在も交渉を進めているところである」と「現在」につなげている。

 明らかに会談当時の「交渉」の誤魔化しであろう。釈放を求める発言を一切省いていたから、質問に対する答弁として、会談の状況を飛び越えて現在の状況を持ち出しすことで補った。

 誤魔化しがあるから、原稿を読み上げているにも関わらず淀みを欠いて、「オー」、「アー」、「えー」が頻繁に入ることになる。

 自身の身分・地位、役割・責任を忘れて、そういった身分・地位、役割・責任のない一議員と同等の状況に貶める品位の欠如と対応した事実の誤魔化しに見える。


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