「聴覚障害」偽装から見て「日本人性善説」は客観的認識能力欠如の証明(2)

2008-03-20 12:14:42 | Weblog


From: "Hiroyuki.Teshirogi" <wbs08540@mail.wbs.ne.jp>
To:<kokkai2@yahoogroups.jp>
Sent: Sunday, December 04, 2005 1:51 AM
Subject: [kokkai2][07395] 日本人の行動様式は「性善」説に則っているのか

 性懲りもなく長文の手代木です。悪しからず。

 マンション・ホテル等の構造計算書偽造問題の発生後、監督官庁である国土交通省は次のようなことを言っている。

 「これまで建築確認制度は性善説で運用してきた。今後は性悪説で制度全体を考える必要がある」

 構造計算の偽装を見抜けずに建築確認を承認した地方公共団体及び民間の指定確認検査機関にしても、いずれも「性善説」に立って、釈明している。

 平塚市「法令の解釈に誤りがないかどうか確かめるのが建築確認の趣旨であり、偽造しているかも知れないという前提で見ていません

 あるいは、「資格を持った人が設計しているわけで、名前を出してですね。全然疑いを持っていません。きちんとできていると思い、審査しているんです

 伊勢崎市「こういった改竄があるとは、正直言って、夢にも思っていなかった

愛知県担当者「1級建築士による偽造は想定しておらず、巧妙な手法なら見抜けない。       全部再計算するには人もカネも時間も、設計事務所並みの態勢が必要になる」
 
松本市「建築基準法に沿った書類が出されるという前提で建築確認しており、偽造があるという前提には立っていない

松本市が建築確認、書類の偽造を見逃した長野県「計算書は国の認定プログラムで作られ、審査で確認する必要のないコンピューターの計算過程で改竄されていたので、見抜けなかった
    
 民間検査機関であるイーホームズ「建築士が書類を作ったので、改竄とは思えなかった

 全員が全員、国家試験を合格して資格を持っている人間が計算・設計した構造計算書なのだから、誤魔化しをするはずはないし、誤魔化しはないという「性善説」を前提に検査していた。裏を返すなら、誤魔化しはいくらでも罷り通るということになる。

 こういったことは日本人すべてがとまでいかなくても、少なくとも社会的に高度な資格を持った日本人は道徳的に誤魔化しを犯さない人格者だと卓越視することによって成り立つ認識であろう。

 選挙で国民の選択を受けて当選した国会議員及びそれ以下の政治家はすべて人格者である。選挙違反も犯さないし、不法に政治資金を取得もせず、収賄といった薄汚い犯罪はとてもとても犯すはずはない。

 東大とかの最高学府を出て、国家公務員試験Ⅰ種を合格したキャリア官僚は接待の名のもと、他人のカネで呑んだり食ったりの乞食行為といったことは絶対にしない。ましてやノーパンしゃぶしゃぶで接待に与ったことのある大蔵官僚などは日本には絶対に存在しない。

 そうでなければ、「性善説」は、我々日本人がお互いに日本人を見る目(客観的認識能力)を持たず、いたずらに買い被ることによって成り立たせていることになって、おおいにまずい。

 日本人は性善説で、欧米は性悪説に立っているとよく言われ、広く認知されている。契約書も、よく読まずに、というよりも、殆ど読ますに判を押すのも、契約書だから、間違いがあるはずはないという「性善説」を前提にしているのだそうだ。

 欧米は後で問題が起きないように、事細かに取り決めを交わし、交わした約束事を契約書に契約事項として明確に記して、確認してからサインすると言われている。

 「性善説」は、人間という生きものが常に性善であることによって正当化される。欧米人は人間が常に性善ではなく(常に性悪と言うことはないだろうから)、ときに応じて性悪となることを予備知識として、社会生活に関わる自己防衛に務めているということだろう。

 そう、人間は犯罪を犯す生きものであるとの認識を常のものとしている。

 日本人が日本人のことを「性善説に立っている」と言うとき、当然そこには日本人が人種的に性善であるという暗黙の認識が生じる。生じなければ、矛盾することになる。

 日本の社会は「性善説」を基本として動いている。何と素晴しいユートピア社会ではないか。

 但し、現実には日本人にも悪党は存在する。悪党の存在と日本人「性善説」に整合性を持たせるとするなら、後者の予定調和を崩した日本人だけが、性善から離れて、性悪化するとしなければならない。いわば使い分けを用いることによって、日本人「性善説」の一般化が可能となる。だとしても、今度は何というご都合主義な日本人「性善説」なのかということになる。

 さらに言えば、構造計算書偽装を見過ごしてしまった民間検査機関や国土交通省及び自治体が自らを性善状態に置いたまま、1級建築士を含めたマンションやホテル建設に関わった者のみを日本人「性善説」を裏切った「性悪」者とする自己性善化の構図は、自らの役目不履行を自ら免罪する責任逃れの口実として利用することも可能であることを示している。

 利用したとき、そのこと自体が既に日本人「性善説」をあやふやにする背信行為であろう。利用することはないとするなら、日本人には責任転嫁行為は存在しないことになる。

 もし日本人が必ずしも性善でないとしたなら、日本人「性善説」はどうして生じたのかという新たな疑問が持ち上がる。

 05年11月29日に行われた衆院国土交通委員会耐震強度偽装問題の参考人質疑テレビ中継を取っかかりとして、日本人「性善説」を考えてみた。

 なかなか見ごたえがあって面白かったと言ったら、強度不足で倒壊の恐れあるとされたマンションの購入者や営業停止に追い込まれたホテル会社に対して失礼に当たるだろうか。

 リポーターの大袈裟な語りやインタビューを駆使してあの手この手で衝撃性を持たせようと手を尽くすワイドショーのわざとらしい作為からは生まれない、それとは無縁の、それぞれが落ち着いてはいたものの、如何に自分には責任がないと証明するか、しぶとさと必死さを露にした生々しい人間ドラマが拝見できた。但し一言で言えば、ワイドショーを取り仕切る連中が見せる正義感と同じく、質問する側も含めて日本人「性善説」からは程遠い、それとは無縁の風景であった。

 ワイドショーの小賢しげな正義感に立った見せ物仕立ての演出に日本人の性善を感じ取ることができる日本人がいたとしたら、お目にかかりたい。

 6人招致された参考人の中で、ただ一人胡散臭さもなく正直に責任逃れしていたのは、建築確認業務を行った民間指定確認検査機関のイーホームズの藤田東吾社長であった。

 「今回のように偽造された構造計算書をいちいち計算するようにという明文規定はなく、適法に業務を行った。偽造を見抜けなかったのは当社だけではなく、多くの行政、他の民間機関も同じだ」と、同罪者を出すことで不可抗力に重点を置く責任逃れを主張した。

 「いちいち計算するようにという明文規定はなく」ても、偽装された構造計算書を通してもいいという規定もないはずだ。

 偽装は検査して判明する。検査を経ずに判明する類の偽造をやらかす間の抜けた国家資格所有者などまず存在しない。イーホームズの社長以下、「偽装」という思いは頭に一切なかった、一度も持ったことがなかったということだろう。誤謬なきものとして扱っていた。

 これは彼らが釈明しているように日本人「性善説」に則って生じた認識光景なのだろうか、それとも単にお目出度い人種だから、自然熟成した認識程度と言うことなのだろうか。

 何と言っても一番の役者はマンション販売会社のヒューザーの小嶋進社長だろう。

「コストダウンの努力と経済設計が悪いと言うなら、コストアップの努力と不経済設計をしろと言うのですかっ」と食ってかかりさえした。委員席から「開き直るな」と言う野次が飛んだが、「政治家ではないから、開き直るといったことはしません」となぜ言い返してやらなかったのだろう。

 なぜか小嶋社長の肩を持ちたくなった。小嶋社長は次のようなことを言って、自分に責任はないとした。

 「正常ではない建築士の偽造の計算書とそれを取り巻く設計事務所、自治体、イーホームズなどの民間確認検査機関が偽造とは知らずに許可を出した。私たちは確認済みという神聖な公文書を疑うことなく着工しただけだ。適法に確認を終え、適法に中間検査を得て、適法に販売した」

 どこが悪い、と言うわけである。マンションを安く作って、安い値段で大量に売る。安さ追求の過程で自己利益を削ることをせずに安さを維持しようとすると、建築単価を不必要に下げる選択肢しか残らない。そのような選択肢を実現するための圧力を設計士や施工業者にかけなかったか。参考人質疑ではその点を追及すべく、施工業者の木村建設に、「鉄筋の数を減らすように姉歯設計事務所に圧力をかけなかったか」問い質したが、「そう言ったかもしれないが、あくまでも遵法の範囲内でという認識だった」と、軽くかわされてしまった。

 要は偉大なイエスマンの自民党武部幹事長が口にした、「悪者探し」に終始しただけであった。

  「聴覚障害」偽装から見て「日本人性善説」は客観的認識能力欠如の証明(3)に続く


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