海江田経産相が達成予定日時を一言も言わないから、質疑に入る早々に記者の方から聞くことになった。 記者「いまほどガソリンの被災地の方にとっては、あとどれくらい待てばまず来るのか、そういう観点からちょっと話していただけますか」 海江田経産相「まず、このシステムと申しますか、これは直ちに決定しまして、それぞれのところに通知をいたしまして、タンクローリーの手配などに入るわけでございますが、一番大きな問題と思いますのは、例えば13の製油所というのは、これは機能している、そしてそれを直ちに増産をしてもらうということでございますが、これが増産をしたものがここへいくまでの間の日数がかかりますから、その意味で言うと何とかぎりぎり急いで2日後、3日後、ここにはこれがしっかりと動き出すという形にしなければいけないと思っております」 記者は「ガソリンの被災地の方にとっては、あとどれくらい待てばまず来るのか」と被災者に物資が届くのはいつ頃かと最終到達日時を聞いた。対して海江田経産相は「何とかぎりぎり急いで2日後、3日後、ここにはこれがしっかりと動き出すという形にしなければいけない」と、「動き出す」という言葉で計画が軌道に乗るのは「急いで2日後、3日後」と答えている。 と言うことは、計画が着実に実施され、被災者が困窮・不満を解消できる最終到達までいくにはさらに日数がかかると見ていることになる。 大体が「ガソリン・軽油等の緊急の供給確保と輸送力強化の抜本対策」を「直ちに決定しまして」と言っているが、地震発生から6日経過しての決定である。その遅れも然ることがなら、菅政府が打ち出した物資支援計画が軌道に乗るのは「急いで2日後、3日後」、被災者に届くのはさらに遅れるとしているのだから、末端まで行き渡るには相当な日数を必要とすることになる遅さということになる。 菅政府は何が不足しているか、何が必要かの状況把握に時間を必要としたと言うかもしれないが、普段の生活で必要とし、消費している生活物資の中から大規模災害によって何が不足し、その結果何を必要としているが逆算すれば簡単に拾い出せる。 3月11日午後2時46分の激しい揺れを伴った地震発生から3分後の2時49分に直ちに津波警報が発せられた。静岡にいてもバカに長く続く揺れだな、東海地震かなと気分が悪くなったくらいで、相当な地震だと判断できたのから、被災地域住民に恐怖さえ引き起こす程の実感を与えただろうし、「東日本全体で約6分間続いたことが、東京大学地震研究所の古村孝志教授らの解析でわかった」と「asahi.com」記事が伝えていることからすると、まだ激しく揺れている間の津波警報であり、自治体からの避難命令だったことを考えなければならない。恐怖の上に恐怖に駆られて預金通帳といった貴重品を身につけるのが精一杯といった避難だったに違いない。いわば多くが貴重品以外は着の身着のままの避難であったはずだ。 そして地震発生後30分程で襲ってきた大津波。《地震発生から津波来襲まで最短30分》(YOMIURI ONLINE/2011年3月12日12時03分)によると既に記事題名に出ているが、岩手県大船渡市では地震発生約30分後に3・2メートル以上の津波、岩手県釜石市や宮古市、宮城県石巻市では地震約35分後に4・1~3・3メートルの津波、平野部の福島県相馬市では約1時間後に7・3メートル以上の津波が襲っている。 巨大な津波が日本家屋の殆んどを倒壊させ、生活物資共々流出させた。テレビが津波が押し寄せる瞬間から放送していたのだから、自ずと何が不足かその日のうちに分かったはずだ。水・食糧、季節が冬なら暖房資材と暖房燃料、医薬品、その他の生活物資、車の燃料等ということになる。 生活物資の殆んどを失ったということなら、それらが補充されなければ被災者を極度な不足状態に置くことになる。 その不足を被災住民に代わってテレビが日々伝えていた。灯油が欲しい、飲料水が欲しい、医薬品がまもなく底をついてしまう、生理用品がない等々――。 何が必要か把握していたはずなのに地震発生から6日経過してから、必要物資の確保とそれを被災地に輸送する対策を決定した、実施はこれからだと記者会見まで開いて一大臣が宣言する。 政府は支援遅れの理由を道路の決壊、港湾の機能停止、各陸上施設の損壊等を挙げるだろうが、それらの復旧を政府自らが指示して急がせたとしても、復旧を待ってからの物資支援がいたずらに被災者の困窮を長引かせ、精神的苦痛を我慢の限界を超えるまでに与えてからの達成であるなら、国民の生命・財産を守る政府としての義務上の危機管理対応とはならないはずだし、何のための政府の存在かということになるはずだ。 だが、菅政府は物資支援の進捗と万遍のない配布を基本的には各施設の復旧を待つ姿勢でいた。そして今後も待つ姿勢でいることは各施設の復旧に賭けていることからも分かる。このことの証明に最も象徴的に現れている上記記者会見での海江田経産相の発言を取上げてみる。 海江田経産相「一番東北地域、とりわけ太平洋側のこの重要な輸送所でありますこの塩釜(「塩竃」という文字を使っているが、「塩釜」と表記する)、この塩釜の機能を一日も早く回復をさせなければいけないということで、いま既に塩釜の輸送所の機能としては、ここにある油が既に運び込まれております油を内陸部、中に向けた機能というのは今日から回復をしております。 問題はこちらから例えば船で運んでいって、そして船で塩釜の輸送所に着くということ、これが残念ながら大きな地震と津波で打撃を受けましたから機能が十分果たせていないわけであります。この機能を果たすために、掃海、海をきれいにしなければいけない。とりわけいろいろな浮遊物もございますから、そういうものもとらなければいけない」 要するに塩釜輸送所の機能を急がせて復旧させた。だが、塩釜港がタンカーが着岸できない状態になっているから、先ずは塩釜港を整備、復旧させなければならないと言っている。 勿論、他にも様々に手を打っているだろう。だが、記者会見で公表した対策自体の殆んどがこれから取り掛かる計画を述べている内容のものであって、これから取り掛かるという姿勢が塩釜港の復旧を待つという姿勢に象徴的に現れていると見るべきだろう。 タンカーが直接接岸できなくても、ダイバーに潜らせて海面下を調査させて岸壁近くにまで接近できるなら、それが100メートルや200メートルであっても、ホースをつなぎ、タンカーの石油排出口に接続したなら、陸側のタンクローリーの注入口に接続し、タンクローりを前進させてホースがほぼ弛みなく張る状態にしてからタンカーのバルブを開いて石油を通したなら、ホースは沈まず、スムーズに石油をタンクローリーに移すといったことは決して不可能ではないはずだ。 空中給油の要領である。タンクローリー口近くのジョイント部分の金具をワイヤー等で固定しておけば、200メートルのホースの重みと中を通過する石油の重みでタンクローリーが後ろに持っていかれることはないし、満タンになってホースの口を外したとしても、そのホースが後に持っていかれるということはない。 岸壁から200メートル離れたタンカーまでホースを持っていくのはヘリコプターが先端を吊るして移動すればできる。 この方法は福島第一原発の3号機使用済み燃料保管プールへのホースを直接投入して注水することにも応用できるのではないだろう。自衛隊のヘリコプターを放射能の影響を受けない上空にホバーリングさせて先端にホースを吊り上げるフックを取り付けたロープをつなげながら地上に降ろし、地上で待ち構えていた者がそのフックにホースの先端に取り付けたリングにかけたあと、ホースを必要な高さに持ち上げながらプール上空に移動、プールにホースの先端を降ろす。 そのロープをホースの先端から外すには補助紐を引っ張れば脱着可能なフックが存在する。ヘリコプターからそのフックを降ろすとき、ロープと同じ長さの補助紐を同時に降ろせばいい。 二日程続けてヘリコプターの活用を書いたが、同じく道路や港湾、陸上施設の復旧を待つのではなく、ヘリコプターを活用して被災者の要望により早く応えるのも政府あっての危機管理であろう。 昨日のブログでは2004年12月26日のスマトラ沖地震の際にはバイクが支援物資輸送に活用されたと新聞記事を基に書いたが、日本政府は被害状況だけではなく、支援方法の情報を収集し、学習していたはずで、バイクも支援方法の選択肢の一つと看做すこともできたはずである。 バイク野郎を掻き集めて集まっただけの彼らを活用、あるいは被災地域外の白バイ警察官を招集、灯油20リットル缶の3個ぐらいは後部荷台にしっかりと括りつけて通行可能な道を探しつつ遠く孤立した避難場所まで届けさせる方法も決して不可能ではないはずで、特に通信手段が途絶えて情報交換の手段を失った地域との連絡の役目も期待できたろう。通信手段が途絶えた避難場所に彼らが顔を出したなら、元気をも与えたかもしれない。 政府が地震発生後可能な限り早い時点でなすべきことは各施設の復旧にどのくらいの日数がかかるか、復旧後の支援開始によって被災者に届く日数、被災者の生活や医療施設がそれまでに耐え得るか正確な情報の収集と併行させた復旧への取り掛かりと同時に復旧に頼らない物資支援の可能な限りの対策の早急な模索と早急な実施であろう。 特に後者の取り掛かりこそ、政府の存在を有意義足らしめるはずである。 だが、現実には政府はそういった姿を取っていない。裏返すなら、何のために政府が存在しているのか分からない状態に陥っているということではないだろうか。 |
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