橋下徹は日本の維新の会マニフェストは方向性を示しただけのものだと言っていることの正当性

2012-12-01 11:17:02 | Weblog

11月29日(2012年)、日本維新の会の石原慎太郎代表と橋下徹代表代行が衆院選公約発表の記者会見を行なっている。

 そこで橋下代行が「政治家が政策の方向性を示し、政策実現の具体的な工程表は役人が作る」役割分担となっているといった発言があったとマスコミが伝えている。

 いわば公表した衆院選公約「骨太2013~2016」に記載した政策は方向性のみの提示であって、具体的な工程表は書き入れていないということなのだろう。

 記者会見での石原代表と橋下代行の発言を先ず次の記事から見てみる。《維新記者会見要旨【12衆院選】》時事ドットコム/2012/11/29-20:26)

 石原代表「こまごました政策の話をしてもしょうがない。硬直した中央官僚の支配を壊す」

 橋下代行「(政策の)工程表は官僚が作る。政治家に制度設計をつくれというのは無理だ。分かっていない国会議員は自分たちで工程表を作ろうとするが、ほとんど実行できない。メディアは旧太陽の党と一緒になったときに、橋下の原発政策は変わったと(指摘した)。書くだけでいいなら、なんぼでも書くが、実行するかどうかが問題だ。政治家の(示す)方向性は、原発をこのまま増やしていくか、新しいエネルギー供給体制を目指していくかだけだ。それを基に官僚に工程表を作ってもらう。

 (工程表が)2020年代(原発)ゼロになるのか、30年代ゼロなのか、40年代ゼロなのか、50年代ゼロなのか。それがいいか悪いかを最後判断するのが政治だ。30年代ゼロを気持ちとしては捨てていないが、選択肢ができていない。だから、今回の骨太では工程表を示していない。官僚では絶対できないセンターピン(重要なポイント)になるようなものをまとめた。『政策実例』は決まったことではない。議員がアイデアとして出したもので、まだまだ議論の余地がある」――

 政治家ができることは各政策の方向性を示すことのみであって、その方向性に基づいて政策実現の制度設計、工程表の作成を担うのは官僚だから、原発は「30年代ゼロを気持ちとしては捨てていないが」、官僚が「2020年代ゼロになるのか、30年代ゼロなのか、40年代ゼロなのか、50年代ゼロなのか」、脱原発の最適な制度設計、工程表を作っていない段階であり、「選択肢ができていない」からと、公約に「工程表は示していない」ことの正当性を訴えている。

 だからだろう、公約には、「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」の表現のみで、具体的な工程表は一切書き込んでいない。

 だとすると、「骨太2013~2016」と共に公表したという「政策実例」に、安全基準の厳格化や再生可能エネルギーの活用などを進めれば、「結果として、既設の原発は2030年代までにフェードアウトする」と、官僚の役割であるはずの「安全基準の厳格化」や「再生可能エネルギーの活用」等、大枠の形で制度設計を示し、なおかつ同じ官僚の役割であるはずの「2030年代までにフェードアウトする」と工程表をやはり大枠の形で示しているのはなぜなのだろう。
 
 記者会見の発言と「政策実例」に書いてあることと矛盾する。矛盾しているという指摘を避けるために前以て、「『政策実例』は決まったことではない。議員がアイデアとして出したもので、まだまだ議論の余地がある」と弁解したということなのだろうが、橋下代行が言うところの政治家と官僚の役割分担を厳格に守って、例え大枠であっても、制度設計や工程表に少し足りとも踏み込まずに、方向性のみにとどめおかなければ、どう弁解しようとも、矛盾は残る。

 つまり、「どのような制度設計になる分からないから、目標達成年限も工程表も示すことはできないが、エネルギー政策は原発ゼロの方向性を選択する」と書き入れることによって、初めて記者会見の発言と公約文言との整合性を矛盾なく取り得ることができる。

 但しこのような政策の提示こそが公約としては正当だとするなら、制度設計も工程表も何も分からない脱原発か、制度設計も工程表も要らない原発維持かの二者択一となって、国民は選択の具体的な基準をどこに置いていいのか迷うことになる。

 他の政策についても、目標数値や実現達成年限の提示が必要となる場合、そのような工程表作成は行政官僚の役割であって、政治家の役割ではないからと省略した場合、国民の選択の基準を失わせることになる。

 どういった発言だったのか、インターネットから記者会見の動画を探して、関係する箇所のみを文字化してみた。

 橋下代行「じゃー、あのー、結局ですねぇ、政治を良くするっていうのはメディアがしっかりしないとですね、政治はホント、良くならないですよ。

 あのー、国民と政治をつなぐためにメディア、まさに媒介するメディアが必要なわけでね。政治をきちんとチェックをして、えー、きちんと国民のみなさんに提供して、国民のみなさんに判断して頂くという、その重要な仲介役がメディアであるにも関わらずですね、今回のこのマニフェストっていうことに関しても、これ、メディアおかしいですよ。

 今日の『朝日』の社説なんかでも、、あの、原発のね、具体的な工程表を早く示せって、あの、日本未来の党に言ってますけどね、具体的な工程表ってのは、これ、行政官僚が作るんですよ。

 政治家が作るんじゃないってことを僕はね、あのー、大阪都構想の時に何遍も言ってきた。方向性を示すのが、政治家であってね、その方向性に向けて選挙で信任を受けて、そして行政官僚にこれで具体的な工程表を作れと、命じるところが政治家の役割で、具体的な工程表が出てくるときにね、そりゃ色んな利害関係者が反対しますよ。

 で、色んなオプションが出てくる。そのオプションが出てきたときにそれぞれどれを選択するかっていうことも、また、政治家の仕事ですよ。

 それがね、工程表作りなんていうのは選挙で選ばれた僕ら公選職が作れるわけないですよ。

 で、原発を、これを、可能な限り終息させていくね、プランなんていうものを、政治家とその周りの取り巻きのブレーンだけで作れなんて絶対あり得ない。

 で、これはね、やっぱり都庁を率いてきた石原代表、それから府庁、市庁のトップを務めている僕だから分かっている。国会議員というのは分からない。

 で、自分たちで案ばっか作って、工程表を作ろうとする。実際、それじゃあ行政で実行できるかっていうと、ホトンード実行できないですよ。

 普天間の県外移設なんていうのも、政治家言うのは簡単なんだけども、じゃあ具体的なプランあったかというと、ないわけです。

 ――(中略)――

 日本未来の党ですか、飯田哲也さんがブレーンについていますけども、僕はあのブレーンに大阪府市戦略会議の委員になって貰って、1年間議論して貰っているけど、プラン出ていないんですから。

 そりゃあ、10年後にゼロにするって、言やあいいっていう政治だったらですね、何ぼでもいいこと言いますよ。ま、メディアのみなさんがね、どこをチェックしなきゃいけないのか。30年ゼロになるのか、20年ゼロなのか、10年で、10年後ゼロなのかね、そんなのは今の段階でどの政治家も言えませんて。

 唯一言えるのは民主党ですよ。それは内閣持っててね、行政組織使えるわけですから。

 で、あの民主党ですら、閣議決定していないんですから。2030年代ゼロ。で、責任ある政府の立場では閣議決定できない。2030年代できないのに、責任のない議員のグループ、政党になったらね、2030年代ゼロ、ゼロっていうふうに。

 やっぱりね、もうちょっとメディアのみなさんが政治家が何を行政官僚に指示を出すのかが仕事、判断するのが仕事ですから、どこまでね、政治家にそういうペーパーで以って求めるかということを考えて貰わないと、役人が作るような、行政官僚が作るような、具体的な工程表を示せ、示せって、これは政治家の仕事ではないし、そんなことをやっていたら、日本の政治は良くならないし、そんなことを繰り返していたらね、いつまで経っても、決めたことはできないし、守れない。そういう政治になります」(以下略)

 趣旨は新聞が書いているとおりに、政治家の役割はあくまでも政策の方向性を示すことであって、その政策の実現に向けた具体的な工程表の作成は官僚の役割である分担によって成り立っているというものである。

 だとすると、やはり衆院選公約「骨太2013~2016」に「既設の原発は2030年代までにフェードアウトする」と書き入れたことは矛盾することになる。

 「30年ゼロになるのか、20年ゼロなのか、10年で、10年後ゼロなのかね、そんなのは今の段階でどの政治家も言えませんて」と、工程表の提示は不可能だと強調までしていながら、公約には書き入れた。

 但し工程表の提示を可能とする例外として、「唯一言えるのは民主党ですよ。それは内閣持っててね、行政組織使えるわけですから」と、政権与党を挙げている。

 だとしたら、橋下徹は行政組織が使えたはずなのに野田内閣が2030年代ゼロで閣議決定できなかったのはなぜなのか、考えなかったのだろうか。

 理由として考え得る答は行政官僚に制度設計と工程表作成を委託したが、返ってきた返事が不可能ということであったことが閣議決定できない理由だということになるが、そうであるなら、そのことの説明責任を国民に対して果たすのが内閣の務めであるはずだが、そのような説明もない。

 少なくとも野田内閣は行政組織を使うことができる立場上、行政官僚から「2030年代ゼロ」についての適否の回答を得ていることになる。

 その適否に添った閣議決定があってもよさそうだが、ないことの矛盾を橋下徹は考えもしないのだろうか。

 野田首相な11月30日午後からの日本記者クラブ主催の各党党首討論会で次のように発言している。

 野田首相「民主党政権は、2030年代に原発稼働ゼロを目指すために政策資源を総動員するという大きな方向性を閣議決定した」(NHK NEWS WEB

 しかし行政組織を使うことができる以上、方向性の閣議決定だけでは済まないはずだ。

 ここには橋下徹にしろ、野田首相にしろ、発言とあるべき実態との間に矛盾が存在することになる。

 また、橋下徹が少し前に言った「普天間の県外移設なんていうのも、政治家言うのは簡単なんだけども、じゃあ具体的なプランあったかというと、ないわけです」と言ったこととも矛盾することになる。

 当時の民主党は鳩山内閣を持っていて、行政組織を使える状況にありながら、普天間県外移設の完遂可能な工程表をなぜ作らせることができなかったのだろうか。

 アメリカの意向を受けて外務官僚が鳩山首相の県外移設の足を引っ張ったということが断念の理由だと巷間言われているが、それが実際の理由であろうとなかろうと、政治家の方向性の提示に対して行政組織の制度設計・工程表作成は常に完璧ではないということになる。

 もし鳩山首相の県外移設の方向性自体が間違っていたということなら、行政官僚は早い時期に修正に動いてよさそうなものだが、県外断念、県内移設日米合意まで鳩山内閣発足から9ヶ月もかかっている。

 政治家の方向性も間違うことがあり、行政官僚の制度設計・工程表作成も間違いがあるからこそ、日本の国がかくまでに低迷することになったはずだ。

 だとすると、政治家が方向性の提示、行政官僚は制度設計・工程表作成だと、その役割分担がさも絶対的であるかのように声高に言うのは、選挙時、国民が選択の基準を失うばかりか、国民に対してその役割分担が正しい政治のプロセスだと思わせる一種の情報操作に当たることになる。

 政治家が可能な限り各政策の方向性を間違わないためには、あるいは自らが提示した方向性に対して責任を負うためには政治家自身が各政策に対して何らかの実現性の根拠、何らかの結果に対する根拠、いわば国益や国民益につながる可能性の根拠を先見性として持ち得た上で、それらの根拠を国民に説明する責任を負うことが必要条件となるはずで、そのような必要条件を満たすことによって方向性の間違いを可能な限り正したり、責任の所在を明確にすることになるばかりか、国民に対しても政策選択の的確な基準を与えることが可能となるはずだ。

 政治家は方向性の提示、行政官僚は制度設計・工程表作成と役割分担が決まっていると割り切るだけでは、少なくとも国会質疑に於ける野党の政府に対する追及は不可能となる。

 何しろ野党は内閣を持たず、行政組織を使うことができないのだから、行政組織を使った制度設計・工程表の正否の判断はできないことになるからだ。

 政治家とその周りの取り巻きのブレーンだけで政策プランが作れないということなら、野党は行政組織を使った内閣の政策プランとの比較すらできない。

 橋下徹は歯切れよく早口に次から次へと言葉を繰り出すから、尤もらしげに聞こえるが、かなり矛盾したこと、妥当性のないことを平気で口にしている。


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3 コメント

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言論の自由 (村石太キッド&どうしてマン)
2012-12-01 12:59:10
維新 未来 で プログ検索中です
政治のこと 難しいけれど
第三極 本気ならば 政権とるしか政策できないのならば 維新と未来 も 合体 するといいなぁ。社会党とも 合体するといいなぁ
こんな時期に 解党 して 合体するのも
初めて 観たけれど。
茶番劇とか お祭り騒ぎ とかも 言われてしまう。結局 自民の議席は 100以上になるのかなぁ
政治研究会(名前検討中
コメントは どこまで 書いて いいのかなぁ?
返信する
誰かの エゴが 見える♪ (村石太キッド)
2012-12-01 14:39:35
維新 未来 で プログ検索中です
政治のこと 難しいけれど
第三極 本気ならば 政権とるしか政策できないのならば 維新と未来 も 合体 するといいなぁ。社会党とも 合体するといいなぁ
こんな時期に 解党 して 合体するのも
初めて 観たけれど。
茶番劇とか お祭り騒ぎ とかも 言われてしまう。結局 自民の議席は 100以上になるのかなぁ
政治研究会(名前検討中
コメントは どこまで 書いて いいのかなぁ?
返信する
ヨッ!/(^O^)\ナンバーツー (春九千(chunjiuqien@infoseek.jp))
2012-12-13 00:46:50
オイ! コラ!! ペナルティ(プッ)!!!
お前は馘首だ。m9(^Д^)プギャーーーッ

>ある種の白紙委任が必要だ
(朝日新聞 2012年2月10日 朝刊 1ページ 東京本社)
>まず、国民が自分たちでリーダーを選んだっていう責任を取ってもらう。
(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32549?page=3)
あ~ほ~かあ?(やしきたかじん風)

な~に甘ったれたこといっとるんぢゃ?
民主主義国家で政治家に白紙委任するわけないやろ。( ´,_ゝ`)プッ
お前、仕事を舐めとんのか?

「白紙委任」で「国民が自分たちでリーダーを選んだっていう責任を取ってもらう。」て、そりゃ、独裁国家の話やで。
お前、そんなに白紙委任させてくれる政治がやりたいんやったら、北朝鮮でもなんでも、どっか他の独裁国家にでも行けばええやろ?

お前は日本にイラネ。( ´,_ゝ`)ヾシッシッ
日本から出て行け。m9(゜∀゜)σ
バイバーイ♪\(*>ω<*)/♪もー日本に帰ってくんなー

オイ! コラ!! ペナルティ(プッ)!!!
お前は馘首だ。m9(^Д^)プギャーーーッ

pdf版ρ(。。)m
http://www.07ch.net/up2/src/lena8203.zip
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