2017年11月30日の参院予算委、共産党辰巳孝太郎の録音データを用いた安部晋三森友学園疑惑追及は前々日11月28日の衆院予算委、共産党宮本岳志の同じく録音データを用いた追及とほぼ同じであった。森友学園側、財務省近畿財務局、国交相大阪航空局が出席して面談した2016年3月下旬の音声データの会話を書き写したパネルを用いて、国が不動産鑑定評価額9億5600万円の国有地をゴミ撤去・処分費用として8億1974万円値引きし、1億3千万円余のタダ同然で売却した「ストーリ」をつくる口裏わせの会話の体裁を取っているとして辰巳孝太郎は張り切って追及したが、追及し切ることはできなかった。
国側はどんな論理を用いて追及をかわしたのか。
辰巳孝太郎が用いたパネルの体裁が宮本岳志が用いたそれと少し異なるが。大体が同じであるから、後者のパネルの会話をここで再度用いることにする。
国側とミリとも学園側が口裏合わせ? 関西テレビ報道番組の音声データより (国側の職員とみられる人物) 「3mまで掘っていきますと、土壌改良をやってその下からゴミが出てきたと理解している」 「その下にあるゴミは国は知らなかった事実なので、そこはきちっとやる必要があるでしょうというストーリはイメージしているです」 (工事関係者とみられる人物) 「3mより下からは語弊があります。3mより下からは出できたかどうかは分からないと伝えている。 そういうふうに認識を統一した方がいいなら、我々は合わせるが、下から出てきたかどうかは私の方からは、あるいは工事をした側から確定した情報として伝えていない」 (池田靖国有財産統括官・当時) 「資料を調整する中で、どういう整理をするのがいいのか、ご協議させて頂けるなら、そういう方向でお話をさせてもらえたらありがたい」 (工事関係者とみられる人物) 「3mより上のほうがたくさん出てきている。 3mの下からっていうのはそんなにたくさん出てきていない」 (国側の職員とみられる人物) 「言い方としては“混在と、9mの範囲まで”」 (工事関係者とみられる人物) 「9mというのは分からないです」 「3メートルより下はそんなにゴミは出てきていない」 |
太田充財務省理財局長「先般の衆議院の予算委員会でご質問があって、このデータについて確認をさせて頂きました。かいつまんでご紹介申し上げますと、これは会話の一部が切り取られて、一方的に録音されたものでありますが、会話の一部が切り取られたものだというふうに。
で、このデータは平成28年3月下旬から4月頃、録られたものだというふうに思いますが、この元々の前提として3月11日に新たな地下埋設物が出てきたという旨の連絡を森友学園側から受け、更に24日には森友学園より新たな地下埋設物の撤去費用を控除した形で本件土地を購入したいと、こういう要望を出されて、それを踏まえて土地を売却する方向で打ち合わせをしていた。
あの、3月下旬から4月ということは今より以降の話で、ございます。先方から土地について地下埋設物を除去した形で購入したいという要望があって、それから先の話でございます。
そこで近畿財務局の方は地下埋設物の撤去費用を見積もるために資料が必要なので、3メートルより深い所から出てきたものについては新たな地下埋設物になるという認識のもとで色んな資料を提出するということをお願いしているということでございまして、今委員がご指摘があったような口裏合わせ云々と言うことでは全くございません」
要するに音声データに録音された会話は新しい地下埋設物が発見されて、その存在を確認できる「色んな資料」の提出をお願いしている会話だと道理を引っ込ませて無理を押し通そうとするようなことを言っている。
太田充はこれ以後も同じ論理を用いた同様の答弁内容で口裏合わせを否定続ける。つまり辰巳孝太郎は同じ繰返しの答弁しか引き出すことができないでいた。
上記太田充の発言を時系列で見てみる。
2016年3月11日 森友学園から近畿財務局に対して新たな地下埋設物が発見されたとの連絡。
2016年3月24日 森友学園より新たな地下埋設物の撤去費用を控除した形で本件土地を購入したいの要望。
2016年3月下旬から4月頃の音声データはこれ以降録音されたものだと1度ではなく、念を押す形で2度も言っている。
1度目は「3月下旬から4月ということは今(新しいゴミが発見されたことと土地を購入したいとの要望があったこと)より以降の話で、ございます」
2度目は「先方から土地について地下埋設物を除去した形で購入したいという要望があって、それから先の話でございます」
なぜ念を押さなければならなかったか。既に新しい地下埋設物(ゴミ)が発見され、土地の購入希望も提出されている以後のことだから、ないゴミをあるように見せかけて購入価格を大幅な値引きに持っていく「ストーリ」は必要ではないと思わせるためだろう。
そう思わせるために「会話の一部が切り取られて、一方的に録音されたもの」で、全体の会話を示してしているものではないから、さも正確性に欠けるとする印象を与える必要があったのだろう。
例えゴミが発見され、土地購入希望が出された後であったとしても、不当な値引き交渉が行われないとする根拠とはならない。実際に見つかったゴミの量以上に過大に見積もって、値引き額を膨らますことは可能である。
会話が一部で、「一方的に録音されたもの」であっても、録音されている会話は現実に交わされた会話である。辰巳孝太郎は地下埋設物が新たに出てきて、その存在を確認できる「色んな資料」の提出の要望と音声データの一つ一つの会話とどう関連付けることができるのか、どう繋がるのか、問い質すべきだった。
どう逆立ちしようと、関連付けることはできないし、資料提出要望と繋げることはできないはずだ。
辰巳孝太郎は太田充の上記答弁に対して「工事業者はゴミはないと言っているじゃないですか。これ、どう考えるのですか」と相手が認めようとしないことを徒(いたずら)に聞き返したのみで、太田充から「再三に亘って申し上げておりますように」という枕詞つきで同じような答弁を引き出す堂々巡りを何度も誘発するムダな追及を続けるのみであった。
同じ繰返しの質疑を何度も続けてから、辰巳孝太郎は3メートル以深のゴミの有無を会計検査院に聞く方向転換に転じた。
辰巳孝太郎「会計検査院に聞きますが、この杭打ちの工法からして地表に出てきたゴミは一体どの層から出てきたゴミだと推認されますか」
河戸光彦会計検査院長「杭打ちの件についてですが、本件杭工事の施工方法は深層混合処理工法の一種であり、掘削機の先端についた複数の翼状のスクリューにより地盤を撹拌して掘り進み、所定の深度において先端からセメント系固化材を注入し始めて、施工深度に到達するまで地盤を撹拌して掘り進みながらスクリューで撹拌した土壌とセメント系固化材を混合し杭を形成するものとなっております。
この過程で掘削機の先端からセメント系固化材を注入することにより、施工深度の浅い部分に存在する廃棄物混合土から順に地表に押し出されるものと考えられます。
よりましてこのような施工方法であれば、地表に押し出された廃棄物混合土は、施工深度の浅い部分に存在していたものであると考えられます」
辰巳孝太郎「つまり音源テープの工事事業者が当初出てきていないと言っているのは、(工事)専門家として相当の知見を持って述べたものです。深い所からゴミは出てこない。それは過去の資料で明らかです。過去のボーリング調査から、どのようなことが分かりますか」
河戸光彦会計検査院長「森友学園の小学校新築工事にかかる地盤調査報告書によれば、概ね地下3メートル以深は沖積層が分布しているとされていることなどから、杭工事に於いて新たに確認された廃棄物混合土は既知の3メートル程度に存在するものであると考えられるということでございます。
これを踏まえますと、新たに確認された廃棄物混合土がどの程度の深度に埋まっていたかについては十分な確認が必要があったと認められるところでございます」
辰巳孝太郎「今、概ね地下3メートル以下は沖積層という話がありましたが、沖積層って一体何ですか」
河戸光彦会計検査院長「沖積層とは約1万8千年前よりのちの最終氷期以降に堆積した地層とされていると承知しております」
辰巳孝太郎「数万年の経過でできた自然の堆積層になぜビニール片やマヨネーズの蓋が出てくるんですか。そんなものが発見されたら、それこそ歴史的発見じゃないですか。
この政府が認めた音源テープが録られた場所には大阪航空局の職員も同席しておられました。まさに大幅値引きをするプレヤーが勢揃いということになりました。
国交大臣、航空局のいたということを確認いたします」
石井啓一「大阪航空局の職員に確認したところですね、平成28年3月下旬当時は新たなゴミをめぐり、近畿財務局との様々な打ち合わせを行っていたところでありますが、具体的にどの打ち合わせに出席していたかについては詳細に記憶していないということでございます。
ちょっと付け加えて、先程の9.9メートルの杭の話がありましたけども、この杭掘削機、当時の工法はプロペラ羽のようなものが付いた掘削機を地中に貫入させることによって土を掻き混ぜ、柔らかくしながら、同時にセメントミルクを流し込むことで、地中の土とセメントミルクを一体化させて杭を形成していく特殊な工法であります。
この工法を使用した場合、掘削機先端に絡みついた廃材等を大量に含む地下9.9メートルの位置に存在する廃材等が含まれている可能性はあることは考えられています。
先程の沖積層のお話がありました。沖積層ですが、場所により自然に積み上がった地層ですが、場所によりですね、特に河川や池などの分布によってその厚さが変わるものと承知をしております。
豊中市周辺で公表されている様々な公的なボーリングデータに於きましても実際の場所に於きまして地層の構成が厚さ、支持基盤の深さなどが大きく異る状況が示されてございます。
本件土地はかつて池、沼であり、水分が深く、地層までぬかるんだ泥や細かい砂のような柔らかい地層が形成されております。また、池、沼はかつて河川と連接して形成されており、地層が深くぬかるんだ結果、この底部、底は複雑な地層となっていることも想定されております。
また緩い底部の地層が乱され、深い所までゴミが混入している可能性もあると考えてございます」
石井啓一、前以って言い逃れの理論武装に励んでいたのだろう、あるいは役人が考えたのか、なかなか巧妙な答弁となっている。
「この工法を使用した場合、掘削機先端に絡みついた廃材等を大量に含む地下9.9メートルの位置に存在する廃材等が含まれている可能性はあることは考えられています」
実際にゴミが存在していたかどうかが問題となっているにも関わらず、存在していたかどうかを放置して存在する可能性を力説している。存在する可能性が存在していなかったという根拠・証明とはならない。
また、「緩い底部の地層が乱され、深い所までゴミが混入している可能性もあると考えてございます」との表現で、沖積層であっても、かつて沼や池であった場合はそれらの柔らかいヘドロ状態の底に不法投棄等の廃棄物が沈んでその上から埋土した場合の混入の可能性を主張しているが、これも可能性であって、実際に存在したとの根拠・証明とはならない。
但し石井啓一の可能性理論を否定する証明とすることもできない。政府はゴミの存在有無の再調査は困難という姿勢を示している。例えば財務相の麻生太郎は11月29日の参院予算委で「地上には建物があり、調査を行うことは難しい。土地・建物の取り扱いについて管財人と交渉しなければならない」と発言したと「YOMIURI ONLINE」記事が伝え、安倍晋三も同午後の参院予算委で再調査を求める民進党の川合孝典に対して困難だとの認識を示し、理財局長の太田充は「本当に行おうとすれば全部、(土地を)ひっくり返してやらない限り無理だ」と否定的な見解を示したと「共同通信47NEWS」記事が伝えている。
要するに再調査に応じないことで存在する・存在しないを水掛け論に持っていこうという魂胆なのだろう。
辰巳孝太郎は石井啓一の答弁に対して会計検査院の報告を重く受け止めないのか、キチンと受けて止めて欲しい、ゴミは出てこないんだからと反論、「これだけ出てこないという資料がある中で出てきたという証拠を示す責任は国交省にあるんじゃないですか」と石井啓一に対して声を強めていたが、政府側にはそんな気はサラサラないのだから、ないものねだりに過ぎない。
小学校の建物が建ったままでも、あるいは「全部、(土地を)ひっくり返」さなくても調査する方法はある。現在小学校の建物が立っている周囲全体を5メートル程度の間隔でボーリングしてみる。辰巳孝太郎が「ボーリング調査は(石井が言っているように)豊中市全体の話を言っているのではない、小学校の現地だけのこと」だといった趣旨のことを発言していたが、地層はそれが地層の変わり目とか、池や沼、側が存在したといったことは例外として一般的には一定の範囲で一定の深さを保つ。
会計検査院報告書に「地下3.1m以深については、地下約10mまでが沖積層、それ以深が洪積層であるとされている」との記述があるから、会計検査院の報告どおりの地層になっているのか、石井啓一が言ったような沖積層ではない池・沼が埋土された地層となっているのか、ボーリングで明らかにすればいい。
全体的に沖積層だと判明すれば、ゴミは存在しなかったことになる。かつて池・沼だと判定された地層が全体に亘っているのか、その何割かであるかによっても、ゴミが存在した土地の広さが計算できて、政府側が言っているだけのゴミが存在したのかどうかが判明する。
政府はボーリング調査に反対はしないが、難色を示して結局は実行しないといった手を使うかもしれないが、行わせるかどうかが追及する側の腕にかかることになる。