安倍晋三の百田尚樹の「沖縄の二つの新聞は」云々を民主主義に敵対する発言と見ることができない言論感覚

2015-06-27 09:52:30 | Weblog

 
 人格と品位と知識豊富な点で安倍晋三と並んで日本人最高位につけ、その豊かな人間性を買われて安倍晋三の推薦を受けてNHK経営員を2013年11月11日に就任、今年の2末まで務めて日本中から惜しまれて退任した作家の百田尚樹が6月25日(2015年)安倍晋三首相に近い、いわば安倍シンパの自民党若手国会議員約40人出席・自民党本部開催の憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」に講師として招かれて、日本人すべての参考となる、歴史に残る心に響く発言をしたと6月26日のマスコミ各紙が伝えた。

 「沖縄タイムス」から見てみる。市街地に囲まれ世界一危険とされる米軍普天間飛行場の成り立ちについて。

 百田尚樹「元々田んぼの中にあり、周りは何もなかった。基地の周りに行けば商売になると、みんな何十年もかかって基地の周りに住みだした」

 記事解説。〈基地の近隣住民がカネ目当てで移り住んできたとの認識を示した。〉

 〈実際には現在の普天間飛行場内に戦前、役場や小学校のほか、五つの集落が存在していた。沖縄戦で住民は土地を強制的に接収され、人口増加に伴い、基地の周辺に住まざるを得なくなった経緯がある。〉―― 

 百田尚樹「基地の地主さんは年収何千万円なんですよ、みんな。ですからその基地の地主さんが、六本木ヒルズとかに住んでいる。大金持ちなんですよ」――

 言っていることが事実かどうか分からないが、どこにでも特権階級は存在する。極く少数の特権階級の存在性を余りにも米軍基地が沖縄に集中し過ぎている歴史的な現実を理不尽と感じている大多数の一般住民の存在性であるかのように批判して一般住民まで貶める詐術は百田尚樹みたいな人間性豊かな人間でなければできない。

 普天間飛行場の周辺住民約2千人が米軍機の騒音で精神的苦痛を受けたと訴え、那覇地裁沖縄支部が約7億5400万円の支払いを命じた判決に触れた発言。

 百田尚樹「うるさいのは分かるが、そこを選んで住んだのは誰だと言いたい。基地の地主は大金持ち。基地が出て行くとお金がなくなるから困る。沖縄は本当に被害者なのか」

 普天間基地には小学校、中学校、高校、大学までが隣接、もしくは近接している。好んでそこを選んだのではなく、選ばざるを得ない事情があったからだろう。

 基地の地主が被害者でないと想定して、一般住民まがで被害者でないと同類扱いする粗雑な理解力はさすが安倍晋三と考えが通じ合うだけある。

 安倍シンパの出席議員から沖縄の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対する発言。

 百田尚樹「沖縄の二つの新聞は潰さないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」

 新聞、その言論・表現を選択するのは国民である。国民が自らの選択に任せることも国民に保障された言論の自由であり、表現の自由である。何人もこの言論・表現を選択せよと指図することはできない。戦争中、アメリカのレコードを聞いていると、国民の自由な選択を忌避、国家権力がスパイだ、国賊だと、弾圧したことを忘れてはならない。

 だが、国民の選択に任せるべき言論の自由・表現の自由を無視して、政府に批判的な「新聞は潰さないといけない」と、その権利もないの新聞・国民共々の基本的人権をコントロールする意志を覗かせる。

 ここに気に入らない言論の自由・表現の自由に対してその自由を奪おうとする、民主主義に敵対する悪意ある抑圧意志・弾圧意志を見ないわけにいかない。いわば百田尚樹は言論の自由・表現の自由に対して抑圧意志・弾圧意志を衝動として抱えている人物だということである。

 こういった基本的人権に関わる危険人物を政党の会合に呼んで講師とする。百田尚樹と「文化芸術懇話会」のメンバーである自由民主党の国会議員が思想・言論に於いて極めて親近性が高いからであろう。

 このことは記事が取り上げている出席議員の安保法案を批判する報道についての発言が証明する。

 出席議員「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働きかけてほしい」

 出席議員「沖縄は戦後、予算漬けだ。地元紙の牙城で歪んだ世論をどう正すか」――

 百田尚樹同様に新聞・国民共々の言論の自由・表現の自由をコントロールしようとする、民主主義に敵対することになる悪意ある抑圧意志・弾圧意志を見せている。百田尚樹の抑圧意志・弾圧意志を受けて見せることになった自分たちの抑圧意志・弾圧意志ということであって、相呼応した姿を見せ合ったということであろう。

 両者共にそれが気に入らない場合は言論の自由・表現の自由を制限したい、あるいは弾圧したい欲求を人間的な本質性として抱えているということを意味しているはずだ。

 勉強会は自民党の木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐が参加しと記事は書いている。

 翌日6月26日、マスコミが伝えた百田尚樹と出席議員の発言を衆院平和安全法制特別委員会で民主党の寺田学と辻元清美が取り上げて、安倍晋三を追及した。

 発言は《【安保審議詳報】百田氏「沖縄2紙潰せ」発言で紛糾 民主・寺田氏「由々しき発言だ。党総裁として処分すべき」》産経ニュース/2015.6.26 15:49)と続きの記事を参考にした。 

 官房副長官の加藤勝信が寺田学に出席していたのかと問われて答弁した内容が素晴らしい。

 加藤勝信「寺田委員にお答えしたいと思います。文化芸術懇話会、これは政治家に求められる教養と想像力を得るため、芸術家と共通する創作手法と成果の普遍性を追及し、世界の中で輝ける日本を創造し、デザインする上で必要不可欠であり、心打つ政策技術を立案し、実行する知恵と力を習得することを目的として開催されたものでありまして、そもそも自民党の正式な組織ではなく、いわゆる有志による内々の勉強会でございます。私自身も今、官房副長官とおっしゃいましたが、官房副長官としてではなく、一自民党の国会議員として出席したところでございます」

 講師として呼ばれた百田尚樹の発言やマスコミが伝えている出席議員の発言を見ると、「文化芸術懇話会」はその高邁な芸術的設立趣旨に適う目的を十分に果たしていると確実に言うことができる。ご立派!!

 「自民党の正式な組織ではなく、いわゆる有志による内々の勉強会」で、「官房副長官としてではなく、一自民党の国会議員として出席した」と自民党や内閣の責任とは無関係だと早手回しに逃げの手を打つところもご立派!!

 自民党の正式な組織ではなくても自民党所属議員が参加している会合であり、加藤勝信が一国会議員として出席したとしても、それぞれが拠って立つ人間性――つまり人物まで変わるわけではない。「作家としての立場でのお話をされていた。我々としても、そうした視点からのご意見、大変、拝聴に値するなと思いました」と有意義な講演であったとすることで、百田尚樹の言論の自由・表現の自由に対して民主主義に敵対することになる抑圧意志・弾圧意志をあからさまに覗かせた主義主張に違和感すら自覚していない以上、その人間性、人物は官房副長官の肩書を持たせた場合、その資格、適格性は尚更に問題となる。

 だが、本人は一国会議員の出席だからとあくまでも逃げようとする。 

 寺田学は順番として考えていたのだろう、矛先を安倍晋三に変えた。

 寺田学「私は本当にこれ(出席自民党議員の発言)が事実だとしたら、私はしっかりと処分し、議員でいる身分ですらないと思うのですが、首相、このような発言があった、報道になった。そういうことはご認識されていますか」

 安倍晋三「私は報道を承知していません。また委員は伝聞を事実として、ここで述べているわけでありまして、報道自体を知らない訳でございます。また党において、さまざまな議論が行われるわけでありますが、私は基本的には自民党というのは自由と民主主義を大切にする政党でありますから、当然、報道の自由は民主主義の根幹であるという中においての議論であるとこのように思います」

 寺田学「首相お願いです、この後ろに座っている議員の中でご出席されている方いらっしゃいます。お昼1時間あります、午後、私が一番の質問者です。そのような発言があったかどうか確認をしてください。よろしいですか」と発言が事実かどうかの確認を安倍晋三に迫り、

 安倍晋三「私は政府の立場であり、ここに立っているのは、この法案の審査でございまして、党においてもさまざまな会合が開催されるわけでありまして、そのいちいち会合について出席者は誰か、どういう発言をしたかということを、この委員会において、私が政府の立場としてここでお示しする立場ではない。もちろん委員会として、それを調査するということではあれば、別の話でありますが、これは委員会にお任せしたい」

 ところが寺田学は尚も安倍晋三自身による発言の確認を求め、安倍晋三が断り、この繰返しで午前中は時間切れとなった。

 安倍晋三は「私は基本的には自民党というのは自由と民主主義を大切にする政党でありますから、当然、報道の自由は民主主義の根幹であるという中においての議論であるとこのように思います」と言っているのである。「新聞が伝えている発言が事実だとしたら、これらの発言が『報道の自由は民主主義の根幹であるという中においての議論』に当てはまると考えるのか」となぜ追及しなかったのだろう。

 発言の事実確認を尚も求める寺田学に対して事実と仮定した場合の安倍晋三の答弁は次のようになっている。

 安倍晋三「そういう報道があるということは、存じ上げませんが、今、寺田委員が指摘されたような報道があって、それが事実であるとすれば、大変、遺憾ではありますが、だから党の正式な会合ではないわけでありまして、有志が集まった会合でありますし、その中の発言がどのような経緯で発言されたものか確認してみる必要があるんだろう、このように思います」――

 党の正式な会合であろうとなかろうと関係はない。どのような経緯で発言されたものか確認してみる必要もない。発言自体が問題であって、党の正式な会合では言論の自由・表現の自由に対する抑圧意志・弾圧意志を覗かせた発言――民主主義に敵対する発言は許されないが、正式な会合でなければ許されるとすることはできない。

 既に触れたように拠って立つ人間性――つまり人物は会合の性格によって変わるわけではないから、正式な会合かそうでないかで責任の有無を色分けすることはできない。

 例えば国会議員がSMバーや乱交パーティーに出かけて普段の人間性を豹変させた別の人格を見せようとも、その人格は普段の人間性に隠されているその一部であって、人間性そのもの、人物そのものに変わりがあるわけではないから、SMや乱交の趣味があると判明したとしても、国会議事等の国会議員としての活動の場では乱交をしているわけではない、女性にムチ打たれているわけではないとして国会議員としての責任はない、許すとすることができないのと同じである。

 衆院平和安全法制特別委員会の浜田靖一委員長が昼休みの間、「文化芸術懇話会」の会合に出席していて、委員会にも出席している議員に発言の事実を確かめたところ、議員たちは発言を事実と認めたという。

 寺田学はこのことに元気づいたのか、午後の質疑に入っても安倍晋三の事実確認に拘り、報道と沖縄県民に対する謝罪を求めたが、安倍晋三に体よくあしらわれることになった。

 安倍晋三「最初に、寺田委員は私が調べたのかと、この休みの間になぜ調べないんだ、それはけしからんと。けしからんじゃないといわれたから、最初に(色々と用事があって忙しいからと)そのように申し上げた。私は最初に申し上げたように委員長が委員長の職権として調べた、この発言を承知した上において、安倍内閣として自民党としての立場を言えということだったから、言論の自由こそが民主主義の根幹であり、当然、尊重されるべきものであると申し上げた。今後ともその方針は変わらないわけであり、その考え方は今後とも党内において徹底していく考えだ」

 安倍晋三「自民党にはさまざまな講師の方が来て、さまざまな考えを述べる。わが党の考え方とだいぶ離れた考え方を述べる方も往々にしている。そういう方々の、この百田さんだけではなくて、さまざま方々がいろんな発言をされるわけでありまして、その方々が発言された、その場にいないのにもかかわらず、その方に成り代わって、勝手におわびすることは私はできない。そういうわびるかどうかは、そういう発言した人物のみが責任を負うことができるのだろうと思う。その後のやりとりは、私も詳細には知らない。おそらく寺田議員もその後のやり取り全てを知っているということではないんだろう、とこのように思うわけであります」

 安倍晋三「自民党がいわば企業に圧力をかけて、スポンサーを下りろとか、そんなことは考えられない。当然、それはそれぞれの企業が判断されるわけです。当然、その考え方については共有されていると思います」――

 寺田学は百田尚樹や出席議員の発言に対して安倍晋三がどう認識するか、そのこと自体を問い詰めもせずに時間切れとなった。問題の本質が発言が露わにすることになった民主主義に敵対することになる言論の自由・表現の自由に対する抑圧意志・弾圧意志だと的確に把えていなかったから、その方向へ向かうべき追及が向かわないままに時間を費やすことになったのだろう。

 但し安倍晋三も、「党の正式な会合ではないわけでありまして」などと言っているのだから、問題の本質を認識していたわけではない。午後の安倍晋三の発言として挙げた個所から主なところを再度記載してみる。

 「安倍内閣として自民党としての立場を言えということだったから、言論の自由こそが民主主義の根幹であり、当然、尊重されるべきものであると申し上げた。今後ともその方針は変わらないわけであり、その考え方は今後とも党内において徹底していく考えだ」

 「そういうわびるかどうかは、そういう発言した人物のみが責任を負うことができるのだろうと思う」

 「自民党がいわば企業に圧力をかけて、スポンサーを下りろとか、そんなことは考えられない。当然、それはそれぞれの企業が判断されるわけです」

 安倍晋三は民主主義の根幹だからと、言論の自由に関わる原則論を述べているに過ぎない。教科書に書いてあったとしても、あるいは日本国憲法に書いてあったとしても、それが守られているかどうかにこそ留意しなければならない。教科書や憲法に書いてあったとしても、100%守られる保証はどこにもないからなのは断るまでもない。

 安倍晋三は内閣及び自民党の責任者として自民党議員、あるいは閣僚が基本的人権に則らない、言論の自由・表現の自由に対する抑圧意志・弾圧意志を滲ませた発言を一言でも漏らして民主主義に敵対する姿勢を見せたなら、民主主義国家の民主政党を成す一員としての資格はないとして排除しなければならない。

 それ程の厳しさがなければ、普段口にしている「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値」を原則とし、その共有を求める価値観外交を唱える適格性を失うことになるからだ。

 当然、浜田委員長が発言の事実を確認した以上、発言した百田直樹や出席議員のみならず、発言に異を唱えずにそのまま許した勉強会の代表や首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐の責任をも問わなければならない。

 だが、安倍晋三は民主主義に敵対することになる言論の自由・表現の自由に対する抑圧意志・弾圧意志を滲ませた発言だとは認識もせずに、「そういうわびるかどうかは、そういう発言した人物のみが責任を負うことができるのだろうと思う」と党所属ではない百田尚樹一人に謝罪するかどうかを任せて、安倍シンパである出席議員に関しては責任逃れに走った。

 可能性としては「自民党がいわば企業に圧力をかけて、スポンサーを下りろとか、そんなことは考えられない」かもしれない。だが、そのようにしたいと欲する意志を見せた事実は発言が事実だと確認された以上、否定できないのだから、問題とすべきことを問題としない誤魔化しを働かせたに過ぎない。

 要するに安倍晋三は発言から民主主義に敵対することになる言論の自由・表現の自由に対する抑圧意志・弾圧意志を嗅ぎ取ることができないか、あるいは嗅ぎ取ることを拒否して、言論の自由に関わる原則論を振り回して責任逃れを図ったに過ぎない。

 それが「党の正式な会合ではないわけでありまして」、「わが党の考え方とだいぶ離れた考え方を述べる方も往々にしている」、「そういうわびるかどうかは、そういう発言した人物のみが責任を負うことができるのだろうと思う」等々の発言となって現れた。


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