安倍晋三の「アベノミクス3年半で税収21兆円増えた」は格差拡大とその政策の失敗をカラクリとしている

2016-06-24 11:11:59 | Weblog

 6月21日、日本記者クラブで参院選を控えて9党首討論会が開催された。そこで安倍晋三は長いデフレにあったが、「税収を21兆円増やすことができた」と自身の経済政策の成功を広言した。

 尤もこの手の広言は初めてではない。6月1日の通常国会閉幕に合わせた記者会見でも同じことを広言し、6月19日のNHK「日曜討論」でも同じであった。各テレビ局が選挙前に各党首を呼んで党首討論を行うことを恒例としているから、民放テレビでも同じ広言を繰返しているはずだ。

 日本記者クラブでの発言は産経ニュース【参院選・党首討論会詳報】から拝借させて頂くことにした。  

 志位和夫共産党委員長「安倍さんに質問します。安倍さんはアベノミクスの果実として、民主党政権時代の平成24年度(2012年度)に比べて、税収が21兆円増えたと。消費税増税分を除いても13兆円増えたと主張し、『あの4年前の暗い時代に後戻りさせていいのか』と繰り返している。

 私たちも当時の民主党政権には批判を持っているが、安倍さんが比較の対象に持ち出す2012年度というのは、2008年のリーマン・ショックによる税収減と、2011年の東日本大震災による税収減という二重の打撃を受けていた時期です。

 あのトヨタでさえ、法人税を1円も納めていなかった時期です。そうした巨大な外的要因をまったく考慮せず、数字だけを比較するというやり方がフェアな政策論争といえるでしょうか。この選挙戦での政策論争を実りあるものとするためにも、このような手法は慎むべきではないかと考えるが如何か」
 
 安倍首相「先程申し上げましたように、成果、結果が大事なんです。確かに、リーマン・ショック、東日本大震災があった。だからこそ、リーマン・ショックに対して、麻生太郎政権で大型の補正予算を組んだ。その成果は出ている。

 そして私たちが増やした21兆円。これは皆さん、リーマン・ショック以前よりも増えているんです。つまり、あのデフレが始まった平成9年段階に我々は戻すことができたと言っていいと思います。先程申し上げた国民総所得を取り戻す。これは民主党政権時代からではありません。いわばデフレで失った50兆円を私たちはたった3年間でその多くを取り戻している。

 20年間で失ったものをいま私たちは3年間で取り戻しているんです。中小企業の倒産件数は3割減少した。正規の職員、正社員は26万人増えた。これは8年ぶりだ。しかも、労働生産人口が300万人減る中で増やしている。これはどうかご理解いただきたい。

 我々は3党合意のもとに、消費税率を5%から8%へ引き上げた。しかし、残念ながら、我々の予想以上に冷え込んだのは事実だ。しかし、その中でも「税収は21兆円増え、国債の発行は10兆減額した。プライマリーバランス(基礎的財政収支)も我々は14兆円も改善した。

 財政再建に向けて確実に進んでいる。しかし、社会保障費は伸びていく。伸びていく社会保障費に対応していかなければ、この大切な社会保障を次の世代に引き渡していくことができない。そのためにも、われわれは消費税の引き上げは必要であると考えているが、やみくもに引き上げれば税収は増えるものではない。適時適切に引き上げていく必要がある。われわれは2年半延期する必要がある。こう考えました」(以上)

 2014年4月1日に消費税率を5%から8%に引き上げた際、経済が「我々の予想以上に冷え込んだのは事実」だが、そういった状況下でもアベノミクス3年半で「税収は21兆円(消費税税収分が8兆円、株や債券からの税収も含まれているから、実質的には13兆円以下となる。)増え、「国債の発行は10兆減額」、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)は14兆円も改善させた」、国民総所得は「デフレで失った50兆円を3年間でその多くを取り戻している」とその成果を誇っている。

 先ず2014年4月1日に消費税率を5%から8%に引き上げた際、経済が「我々の予想以上に冷え込んだのは事実」としていることの正当性を確かめてみる。

 第2次安倍内閣が成立したのは2012年12月26日。安倍内閣は直ちに補正予算に取り組み、2013年2月26日成立。2012年度補正予算は総額13兆1054億円で、そのうち公共事業を中心とした緊急経済対策費が10兆3000億円を占めている。

 2014年2月6日、消費税増税を睨んで、景気の腰折れを防ぐための公共事業依存の経済対策を柱とする総額5.5兆円の2013年度補正予算案を成立させている。
 
 2015年2月3日、3.5兆円の緊急経済対策を柱とする2014年度の補正予算が成立している。

 この補正予算は公共事業よりも消費や地方の支援に軸足を置いたものだという。

 2016年1月20日、好循環実現のための経済対策を中心とした総額3兆3213億円の2015年度補正予算案を成立させている。

 勿論、補正予算だけではなく、本予算もある。2013年から今年2016年までの本予算のうちの公共事業費を見てみる。

 2013年度本予算公共事業費約5兆2000億円
 2014年度本予算公共事業費約5兆9684億円
 2015年度本予算公共事業費約5兆9710億円
 2016年度本予算公共事業費約5兆9737億円

 占めて23兆円を超える。

 2012年12月26日の安倍内閣発足直後から2014年4月からの消費税5%から8%への増税を視野に入れて総額13兆1054億円の内公共事業を中心とした緊急経済対策費が10兆3000億円の2013年度補正予算を組み、年を追って5.5兆円、3.5兆円、3.3兆円と経済対策・景気対策にカネを注ぎ込んできた。

 そして本予算でも23兆円を超える公共事業費を注ぎ込んできた。

 これだけカネを注ぎ込めばGDP値はそれ相応に上がっていいはずだが、目に見える成果を上げていない。個人消費も1%以下で、見るべき勢いは見えない。

 にも関わらず、2014年4月1日に消費税率を5%から8%に引き上げた際、経済が「我々の予想以上に冷え込んだのは事実」だと言い、「冷え込んだまま」が続いて、結果的に2014年4月からの8%から10%への消費税増税を最初は2017年4月に延期、それでも経済が追いつかずに2019年10月に再延期せざるを得なかった。

 何のことはない。2014年4月からの消費税増税による経済・景気の腰折れを防ぎ、尚且つアベノミクスの3本の矢の経済政策・財政政策を駆使して経済の好循環の回転をつけ、その回転を高速に持っていくために安倍政権3年半で公共事業に依存した経済対策・景気対策に多額の予算を注ぎ込んだものの効果を上げることができず、失敗であったことの証明そのものではないか。

 一方でアベノミクス3年半で消費税増税分を除いて税収が13兆円増えたと言い、デフレで失った国民総所得50兆円の多くを取り戻したと誇っている。

 具体的には、「アベノミクスの3年間の成果」(内閣府/平成28年1月21日)を見ると、〈GNI(国民が受け取った所得の総額)についてみると、実質では2012年10-12月期と比べて約21兆円増加し、リーマンショック前の水準を上回った。名目でもリーマンショックで失った約50兆円のうち約35兆円を取り戻し、16年度には50兆円を超える見込み。〉と書いてある。   

 景気が冷え込んだままで個人消費が見るべき状況で伸びない中での13兆円の税収増と国民総所得の目を見張るような回復額という関係が成立するのは所得余裕層や大企業が主として担った個人消費であり、税負担からの税収増であり、国民総所得の伸びであって、中間層以下の国民や中小零細企業は殆んどタッチしていない貢献と見なければ、合理的な整合性をつけることはできない。

 このことはこの関係を裏返せば、簡単に理解できる。中間層以下の国民が税収増や国民総所得の伸びを担い、貢献していたなら、個人消費そのものも大きく伸びているはずだからである。

 要するにこの関係の成立には厳然たる格差の存在を見ないわけにはいかない。格差があるから、税収や国民総所得が増えようと、中低所得層が占める人数の多い関係から個人消費ぞのものが伸びないことになる。

 当然、安倍晋三が「中小企業の倒産件数は3割減少した」と言おうと、「正規の職員、正社員は26万人増えた」と言おうと、「大学卒の就職率は史上最高」と言おうと、「47全ての都道府県で求人倍率を1にした」と言おうと、すべては格差をキーワードとして、その中に全体を収斂させて解釈しなければならない。

 殊更言うまでもないことだが、税収21兆円の成果誇示、更には国民総所得35兆円の回復誇示はその根底に格差をカラクリとしていて、そういったカラクリでアベノミクス3年半の成果を誇っているということである。

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