安倍晋三の核廃絶の訴えは誰の目にも見えない核の傘を右手に持ち、頭上に差しかけながらのもの

2016-08-19 08:14:20 | Weblog

 オバマ米大統領は「核兵器のない世界」の実現を訴え、その実現の第一歩として、せめてものなりにだろう、「核兵器先制不使用」を検討しているという。

 核保有国のすべてを核兵器先制不使用政策に巻き込むことができれば、核兵器のない世界を仮想することができる。但し北朝鮮やイスラエルといった国が同調するだろうか。

 例え同調したとしたとしても、それぞれの核保有国が国家存亡の危機と考える極度の軍事的緊張関係に立たされ場合、一度宣言した核兵器先制不使用にじっと耐えることができるのだろうか。

 できなければ、ガラスの至って壊れやすい核兵器先制不使用の世界となる。

 7月15日(2016年)の付の「共同通信47NEWS」記事がオバマ米政権検討の核兵器の「先制不使用」政策を巡り、日本政府が内部で議論を始めたと報じていた。 

 但し「核の傘」弱体化への懸念から反対論が根強く、米側に協議を申し入れていると伝えている。 

 この記事が言っている「日本政府」とは安倍政権のことである。当然、安倍晋三の意向が働いている。

 日本は自国の安全保障の最終場面に於いてはアメリカの核に負うつもりでいる。いわば擬似的な核保有国となっている。つまり直接的には保有はしていないが、間接的に使用できる状態の国となっている。

 今年8月9日、安倍晋三は長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で挨拶している。  

 安倍晋三「本年5月、オバマ大統領が米国大統領として初めて、広島を訪れました。核兵器を使用した唯一の国の大統領が、被爆の実相に触れ、被爆者の方々の前で、

 核兵器のない世界を追求する、

 そして、

 核を保有する国々に対して、

 その勇気を持とう

 と、力強く呼びかけました。G7外相会合の「広島宣言」と共に「核兵器のない世界」を信じてやまない長崎及び広島の人々、そして日本中、世界中の人々に大きな希望を
与えたものと確信しております。

 71年前に広島及び長崎で起こった悲惨な経験を二度と繰り返させてはならない。そのための努力を絶え間なく積み重ねていくことは、今を生きる私たちの責任であります」――

 この発言個所は8月6日に行った広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式での挨拶と同じ文言となっている。

 要するにオバマ大統領と共に核兵器のない世界を目指す努力をするとの宣言となっている。

 但し現実には安倍晋三は誰の目にも見えない核の傘を右手に持ち、頭上に差しかけながら力強く訴えていた。

 安倍晋三は8月6日での挨拶の後、広島市内で被爆者7団体の代表から要望を聞くため面会したという。   

 各代表が被爆国として核兵器禁止条約の早期実現に向けた行動などを求めたのに対してその取組みには触れずに「世界の指導者や若者に被爆の実相に触れてもらうことなどで、核兵器のない世界の実現へ取り組みを進める」と述べるにとどめたと記事は書いている。

 要するに核兵器禁止条約の早期実現という直接の努力ではなく、「世界の指導者や若者に被爆の実相に触れてもらう」という間接のまた間接の、そのまた間接の気の遠くなるような努力を約束した。

 このことは広島の挨拶でも長崎の挨拶でも同じ文言で述べている。

 安倍晋三「71年前に広島及び長崎で起こった悲惨な経験を二度と繰り返させてはならない。そのための努力を絶え間なく積み重ねていくことは、今を生きる私たちの責任であります。

 唯一の戦争被爆国として、非核三原則を堅持しつつ、核兵器不拡散条約(NPT)体制の維持及び強化の重要性を訴えてまいります。核兵器国と非核兵器国の双方に協力を求め、また、世界の指導者や若者に被爆の悲惨な実態に触れてもらうことにより、『核兵器のない世界』に向け、努力を積み重ねてまいります」

 被爆者7団体代表との面会時も誰の目にも見えない核の傘を右手に持ち、頭上に差しかけていたからこその安倍晋三の対応なのだろう。

 この安倍晋三がオバマ政権が検討している核兵器の先制不使用政策についてハリス米太平洋軍司令官に対して「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」等の理由で反対の意向を直接伝達したと、米政府高官の話として米紙ワシントン・ポストが報じていると8月16日付の各マスコミが一斉に伝えた。

 多分、安倍晋三は否定するかもしれない。だが、日本がアメリカの核の傘に入っているからこその報道であろう。その事実に変わりはない。

 安倍晋三は「我が国が核兵器を保有することはありえず、保有を検討することもありえない。唯一の戦争被爆国として、我が国は非核三原則を国是として堅持している。核兵器のない世界に向け、強い決意で努力を積み重ねていく。それこそが今を生きる私たちの責任だ」という姿勢を取っているが、一方で「我が国が自衛のための必要最小限度の実力を保持することは憲法第9条によっても禁止されているわけではなく、例え核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものがあるとすれば、それを保有することは必ずしも憲法の禁止するところではない」と、核兵器の保有を日本国憲法は否定していないとしている。

 非核三原則にしても核兵器不拡散条約(NPT)にしても、一国の最高法規である憲法の優位性を否定することはできない。

 核兵器不拡散条約(NPT)は第10条第1項で、〈各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。〉と規定している。

 安倍晋三が憲法が核兵器の保有を認めているとしている以上、如何なる条約や取り決めに関わらず、安倍晋三が保有を欲したとき、衆参両院で頭数さえ確保していたなら、保有することが可能となる。

 もし安倍晋三が保有を実現させた場合、そのときこそ誰の目にも見えない形で常に右手に持ち、頭上に差しかけていた核の傘を投げ捨てるときである。誰の目にも見える形で核そのものを頭上に差しかけることになる。

 安倍晋三は日本をその経済大国化に劣らない軍事大国化とするためにそのことを望んでいるはずだ。

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