安倍晋三自民党憲法改正案の基本的人権保障要件「公益及び公の秩序に反しない限り」の危険性、中国が証明

2014-04-21 05:29:49 | Weblog


 
 2月発表のアメリカ国務省「2013年版米国務省人権報告書」は中国政府のインターネット監視強化や対汚職抗議弾圧の動き、憲法に基づき人権擁護などを訴え る「新公民運動」の活動家29人の逮捕、その他の人権弾圧の拡大を取り上げ、批判している。

 これは中国国民の人権意識の高まりからの抗議活動や政治批判の拡大に対応した中国当局の取締まりの強化という形を取っているはずだ。

 活動家29人逮捕の「新公民運動」は市民の政治参加や社会変革を訴える活動を言い、昨年、広がりを見せたもので、その市民運動を提唱した弁護士の丁家喜氏や民主活動家の趙常青氏ら4人に対して北京の裁判所が4月18日、懲役2年から3年半の判決を言い渡したと、次の記事――《中国「新公民運動」に厳しい判決》NHK NEWS WEB/2014年4月18日 15時55分)が伝えている。

 問題はその判決理由である。「運動を提唱し、公共の秩序を乱した罪」と書いてある。

 記事は、政府高官の資産公開を求める街頭デモに参加した市民30人以上が逮捕されたり、拘束されたりしたと伝えているから、4人以外の市民が運動提唱の煽動に乗って「公共の秩序を乱した罪」といった理由で次々と判決が出る次以降の場面を最も容易に想像することができる。 

 裁判自体も不当な形式となっていて、証人の申請が認められなかったばかりか、判所所周辺は大量の警察官が動員されて厳戒態勢が敷かれ、支援者が連行されたほか、海外メディアも強制的に排除されたとしている。

 記事は最後に次のように解説している。〈中国では腐敗のまん延や所得格差の拡大などを背景に、社会の変革を求める声が水面下で広がっていますが、習近平指導部は言論や思想の統制を強めていて、共産党の一党支配を揺るがしかねない動きを力で抑え込む姿勢を崩していません。〉――

 政府や企業の不正行為や不法行為に対する市民の集団を手段とした抗議活動は政府や企業が大きな権力を有するのに対して市民個人のないに等しい権力を暴力的でない範囲に従った集団化によって対抗させる得ることに根拠を置いた正当な権利であるはずだが、正当であるはずのその権利を取締まり、逮捕や拘束をして不利な裁判を強いて、不当な判決を下す。

 当然、「公共の秩序を乱した罪」としている判決理由が指す「公共の秩序」とは国家権力側が決めた、自らの利益確保・権力確保に好都合とする「公共の秩序」であって、国民・市民の利益に基づいていない、逆に不当を強いる「公共の秩序」を裏返しとしていることになる。

 いわば「公共」という名前を用いて、国家権力が国民・市民の権利を制約し、ときにはその社会生活に不当な圧力を加え、捻じ曲げ、剥奪する。

 2012年に決定した「自民党憲法改正案」も、言葉自体は違っても、その趣旨に於いて中国と同様に国民・市民の権利の保障要件に「公共の秩序」を用いている。

 改正案から、その箇所だけを拾い出してみる。当てはまる言葉に文飾を施した。

〈(国民の責務)

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。〉――

〈(人としての尊重等)

第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。〉――

〈(表現の自由)

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。

2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。〉――

 以前ブログに用いた、誰もがしているであろう解釈を再びここに記してみる。

 〈 「公益及び公の秩序」 は時代によっても性格や内容が異なり、当然、時の国家権力の考え方一つで、「公益及び公の秩序」 は異なる姿を取る。当然、何を以て「公益」とするか、何を以て「公の秩序」とするかは、時代時代の社会的風潮や時代時代の権力の性格によって異なり、その絶対的決まりはないことになる。

 いわば「公益及び公の秩序」 はその時代の国家権力が決めことができることになって、「公益及び公の秩序」を優先させた場合、そのことへの縛りは国民の権利を制限することによって完成するのだから、自民党「日本国憲法改正草案」が国民の基本的人権を制限する条文を含んでいないと確証を与えることはできない。〉――

 自民党「日本国憲法改正草案」に於ける基本的人権の保障要件となっている「公益及び公の秩序」を守ること規定した具体的な危険性を奇しくも中国が証明していることになる。

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