日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 前回取り上げた疫病3件(らしきものも含めて)、そのうち四川省・資陽市と内江市を舞台としたものに続報が出ているのでお伝えします。

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 この疫病、病名が完全に特定できていないのですが、中国当局は「ブタ連鎖球菌」あるいはその変種、との姿勢で臨んでいるようです。WHO(世界保健機関)も目下のところはそれに調子を合わせていて、西大平洋地区報道官から、

「ブタ連鎖球菌の罹患者としては驚くべき人数であり、史上最大規模だ」
「今回の死亡率が際立って高いことを懸念している」
「中国はこれが変種であるかどうかの確認を急ぐ必要がある」

 ……などのコメントが出ています。という訳で内外のマスコミも、

「ブタ連鎖球菌、あるいはその変種」

 という線で固まりつつあるようです。というより、実のところ誰も中共当局の発表を鵜呑みにはしていないのですが(笑)、目下のところそれを崩す有力な対抗馬(病名)とその根拠が出現していない、というところでしょう。

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 今朝(7月27日)の香港各紙を一通り眺めてみましたが、こちらも同様に「ブタ連鎖球菌、あるいはその変種」です。例えば、

 ●『明報』(2005/07/27)
 http://hk.news.yahoo.com/050726/12/1exc1.html

 この記事で香港の専門家筋が「ブタ連鎖球菌にしてはどうもおかしい」と首をひねり、変種なのかも、現場の衛生環境なども関連しているのかも、などと論じたりしています。

 とりあえず被害報告をしておきましょう。昨日(7月26日)正午の段階で感染者(感染の疑いも含む)117名、このうち感染の疑いありとされた者41名、完治して退院した者5名、危険な状態にある者21名、死者24名となっています。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/26/content_3270786.htm

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 私はあれこれ取り沙汰されている病名やその詳細に全く無知なので、症状を把握しつつそれについて論ずる資格はありません。

 ただ、例えば合戦に臨まんとする武将は当然ながら敵の構えと備えを観察しますよね。その伝で中共当局の物腰をみてみると、病名が何であれ、中共当局はすでに多寡をくくっているという印象を受けます。気を抜いてはいないものの、ヤマはすでに越えた、という一種の安堵感に似た認識が当局にあるように思えるのです。

 例えばWHO報道官の談話。驚きや懸念は表明しているものの、「こちらもすぐ支援に」といった押っ取り刀の緊張感はなく、延焼を案じつつ対岸の火事を眺めている、といった印象です。

 前回紹介した鳥インフルエンザについてのWHOによる再三再四にわたる関連情報の開示や現地調査認可の要求(いずれも中共当局に無視されていますが)、といった気ぜわしい対応はしていません。

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 それからより明確な根拠?として、取材規制らしきものが行われていないことが重要です。

 例えば今日付(2005/07/27)の香港紙『明報』によると、同紙記者が、

 ●前々日(道端に横たわる患者にその場で治療を行う防疫服着用の医療チーム)
 ●前日(各所に臨時の動物検疫所が設置されている)

 ……と、感染地区に含まれる資陽市雁江区丹山鎮に入って取材を行っています。特に「前々日」は緊迫した場面にも関わらず、取材を制止された気配はなさそうです。

 ●『明報』(2005/07/27)
 http://hk.news.yahoo.com/050726/12/1exc0.html

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 また、香港のテレビクルーが病院内にカメラを持ち込んで堂々と撮影したりインタビューしたりもしています。

 ●無線電視台「晩間新聞」(2005/07/26)
 http://news.tvb.com/630pm/2005/0726/index.html

 かなり自由に動けている、といった印象を受けるのです。一昨年の中国肺炎(SARS)に際して、北京の病院を取材するのも非常に制限されたものであったことを思えば、スカスカし過ぎです。

 このあたり中共当局は大変素直で正直でして(笑)、見せたくないものは力づくでも見せようとはしません。

 昨年秋の四川省・漢源農民暴動や河南省で発生した回族と漢族の対立、それに先月末に山東理工大学で勃発した学生間の衝突(ウイグル族vs漢族)などを考えれば、取材者にとって今回はほぼフリーパス状態といえるでしょう。

 7月23日から24日にかけて病院や遺族、それに四川省衛生庁などを取材した地元紙『重慶時報』(2005/07/25)、この記事にはまだ「ブタ連鎖球菌」が全く出てきませんが、緊迫した病院内の描写などもあり、やはり取材自体は比較的自由といった印象です(※1)。

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 中共当局によれば、最初に発病者が出たのが6月24日とされています。国営通信社の電子版「新華網」でニュースが流れたのは、「原因不明の疾病で死者が9名に達した」と伝えた7月23日の報道が初めてでしょう(たぶん)。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/23/content_3258345.htm

 「ブタ連鎖球菌らしい」との発表を当局が行ったのは7月25日の午後(夕方以降?)でした。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/25/content_3266312.htm

 それより前に行われた取材、例えば上海紙『新民晩報』(2005/07/25)の病院取材(7月24日)には入口を固めていた警官が同行しています(※2)。ただ内容は「ブタ連鎖球菌」説への流れをつくる記事になっています(上述の『重慶時報』の病院取材にも警官が立ち合ったのかも知れませんが、記事では言及されていませんでした)。

 で、敢えて邪推を試みるとすれば、6月24日からの1カ月間の間に中共当局はやることをやってしまい、つまり見せたくないものをしっかりとマスコミの目の届かない場所へと隠し終えたので、「さあどうぞ」という、ニュースの内容にしては珍しくも鷹揚な姿勢を報道陣に示すことができたのかなあ、といったところです。

 むろん1カ月ではないかも知れません。6月24日は当局がそう言っているだけで、事態はもっと早い時期に発生し、ヤマを越えていた可能性もあります。何をどこへどう隠したのか、については興味津々なのですが、あいにくまだ皆目わかりません。

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 手元の材料をこねくり回した挙げ句、結局「続報」らしいのは感染者の数だけ、という内容になってしまいすみません(反省)。ただ言い訳を許して頂けるなら、深刻な疫病が、四川省だけでなく中国のあちこちで発生しているようだ、ということは前回で書き尽くしました。

 それよりも「熱い夏」です。実際のところ私はこの疫病そのものより、疫病騒動が党上層部の政治的バランス(勢力図)に影響を与えるものかどうか、その方に興味があるのです。

 今回の騒動、規模と内容の割には胡錦涛総書記も温家宝首相もこの件にコメントしていません(談話が出るならそろそろでしょう)。ただ上に書いたように、中国肺炎当時とは異なる用意周到めいたオープンな姿勢もあり、私はそこに中央(の政治勢力のひとつ)の配慮や保護といったものを感じます。

 現場である資陽・内江両市の責任者はともかく、四川省幹部、具体的には省のトップ更迭なんてことにはならないでしょう。……更迭されたらそりゃもう大変、政局です。

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 今回の疫病騒動に前例を求めるとすれば、やはり中国肺炎ということになるでしょう。当時その実態を隠蔽した責任を問われて張文康・衛生部長(当時)のクビが飛びました。ただこの人物は江沢民派と目されており、更迭人事はその勢力を削ぐという政治的側面もあったと言われています(そして胡錦涛・温家宝は積極果断な庶民派との好印象を獲得。一石二鳥ですね)。

 前例にならうなら、四川省トップのクビが飛んでもおかしくないところです。ただし現在の四川省のトップ、つまり省党委員会書記を務めている張学忠は、1990-1994年にチベット自治区の党委副書記を務めています(※3)。当時の直属の上司たる党委書記を胡錦涛が務めていた時期(1989-1992年)と約2年重なるのです。

 昨年の漢源農民暴動、これは羅幹・中央政治局常務委員が成都まで出てきて総指揮官となり、武装警察あるいは人民解放軍2コ師団を投入してようやく鎮圧したとされる未曾有の大暴動だったのですが、それでも張学忠は責任を問われることなく、逆に中央から様々なケアがありました()。

 ですからこの疫病騒動が中央で問題視され、張学忠省党委書記に累が及ぶようだと、これはこれで権力闘争の材料、というより大波乱の政局ということになります。

 ……そういう視点で今回の騒動を眺めてみるのも面白い、とも言えるのですが、やはり今回の主題からは逸れてしまっているようです。こんな終わり方になってしまい申し訳ありません。いつものことですけど(笑)。


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 【※1】http://cqsb.huash.com/gb/cqsb/2005-07/25/content_2073490.htm

 【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/25/content_3264720.htm

 【※3】http://www.people.ne.jp/2002/12/13/jp20021213_24238.html



コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
そうであって欲しいです。 (暇人)
2005-07-27 13:01:17
>つまり見せたくないものをしっかりとマスコミの目の届かない場所へと隠し終えた

是非、そうであって欲しいです。適切にやばいところは処理(ニュアンスは理解してください)した上でならばいいのです。

 大躍進の時の餓死者の大量発生と同じ様におべっかと誤魔化しの報告しか上ってないのなら、えらいことになる。

 そもそも117人中24人死亡というのが解せない。細菌兵器並みの死亡率じゃないかと。衛生状態が悪いだけなら良いのですが。

 妄想であって欲しいのですが、実は人民解放軍のバイオハザードですという落ちだけは勘弁して欲しい。一応、兵器として開発されたものだったら本当に洒落にならない事態になりますから。

 後は政治にかまけて対策を怠らないことを祈るのみですよね。

 中韓ともに内部抗争で事態を放置、悪化させるのは得意ですし。
 
 
 
なるほど・・・ (一通行人)
2005-07-27 17:39:34
御家人さんの気になさっていた事の原因はこれですかね?



【中国】豚の連鎖球菌感染、広東でワクチン生産開始

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050727-00000006-scn-int



生産開始って、ワクチンは既に開発済みだったので

余裕シャクシャクだった訳です・・・。



道理で・・・。

 
 
 
豚肉 (在中国2)
2005-07-27 18:44:05
3日ほど成都に遊びにいってきました。

この豚肉のニュースはテレビの全国ニュースで流れているのですが、「豚肉大丈夫なの」と聞いても、半分ぐらいの人はこのニュース知りませんでした。大丈夫なんでしょうか?ただレストランでビールを飲むとき、「その銘柄はやめた方がいい」とか言われましたが、人によって危ないメーカーが違うので、ビール飲むのやめるか、あきらめて飲むかです。ただ毎日蒸し暑く、30度を軽くこえてるので冷たいビールの誘惑には勝てません。
 
 
 
中国のビール (Unknown)
2005-07-28 01:18:16
>在中国2さん

中国産ビールに対し、発がん性が疑われてるホルムアルデヒドが含まれてるとかいないとか、というニュースがありましたので、それじゃないでしょうか>ビール

決着ついたかどうか、その後聞いてないですが。
 
 
 
ある意味認めたってことだよね (きんぎんすなご)
2005-07-28 06:29:13
当局的には無問題。

<中国産ビール>ホルムアルデヒド含有量低い 「安全宣言」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050720-00000111-mai-bus_all

>中国では「発酵酒衛生標準」の規定の中で、一定量のホルムアルデヒドの使用を認めている。



おいおい

とりあえず大手なら大丈夫そうです。といっても

銘柄指定しても本物かどうか飲食店側を信ずるしかないのが…

 
 
 
原作まで読んだのに・・・・ (大丈夫?)
2005-07-28 09:47:30
超映画批評『亡国のイージス』45点(100点満点中)

http://movie.maeda-y.com/movie/00569.htm



えー! まいったな、対艦ミサイル迎撃する場面がカットされてるのかよ!

あの場面が対照的にイージスの凄さを印象付けるのに!

>しかし、映画化にあたっても北朝鮮の国名を名指しできなかったくらいだから

なんだよそれ・・・・。
 
 
 
四川で寄生虫フィーバー (ランバダ)
2005-07-28 13:01:14
日経サイエンス9月号で、三峡ダム周辺で住血吸虫症が増加していると紹介されています。少なくとも85万人感染とのこと。またチベットから四川西部にかけてエキノコックス症に60万人感染、流行しているそうです。
 
 
 
中国産うなぎ (傍観)
2005-07-28 13:48:00
昨夜中国産鰻を柳川にして食べてしまいました...

●| ̄|_
 
 
 
Unknown (kyouji)
2005-07-28 17:10:32
 住血吸虫にエキノコックス、ってどっちも命に関るん

じゃありませんでしたっけ?^^;;;
 
 
 
はじめまして。 (Lorgan)
2005-08-12 00:45:19
中国の四川省で発生している伝染病について。

中国政府の発表によると事態収束に向かいつつあるとのコメントですが私自身それには懐疑的です。



私が収集した信憑性のある情報は。①正確な情報が極めて少なく、日本のマスコミは認知しているものの殆ど報道していない。②情報はネットか海外のメディアからが殆ど。③もっとも情報をもっている中国政府は情報官制を行い、外国のマスコミの感染地区への取材や立ち入りを禁止している。④収束に向かいつつあるにも関わらずWHOの調査と査察も拒否している。



また、日本政府の対応も気になります。外務省や厚生労働省のHPにはこの件の注意事項などは一切ありません。



中国政府がコメントしたように事態が収束していることが事実なら何も問題が無いのですが…



ちなみ私は反中派でもなければ、法輪功の者でもありません。同様の情報を得ているプログがありましたので書き込みをさせて頂きました。それだけです。長文大変失礼いたしました。













 
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