日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 当ブログは素人がやっている悲しさで、中国観察日記ながら本来不可欠である「消息筋」というものに恵まれていません。

 留学時代に仲良くなった中国人学生がいまはひとかどの地位に就いていて、東京に出張してくる際にメールや電話ではとても話せない、色々な話を聴ける程度です。しかも私の友人は学究肌が多く、党務・政務関連に進んだ者は少ないので、話の深さには限りがあります。

 あとは別の意味で最強の消息筋がいます。盧溝橋を造った人を先祖に持ち純粋な旗人言葉を話す親王家の末裔とか、故・蒋経国一家のお抱え風水師とか……最強ですし色々面白い話を教えてくれるんですけど、あいにく当ブログが扱う方面とは無縁なものが多いのが残念。

 最も心強い存在は読者の皆さん、特に中国在住の方からのコメントです。すでに帰国なされていますが、北京大王たる「dongze」さんや東莞の反革命分子(笑)「五香粉」さんなどからは興味深い現地ルポを送って頂いていましたし、いまでもシンセン在住さんやqueさんをはじめとする皆さんが常に絶妙のタイミングで濃い内容のコメントを寄せて下さっています。

 このほか、メールにてまとまった情報を提供して下さる在中邦人の方々も結構いて、現地感に乏しい私にとってはいつも勉強させて頂いております。ただし、私もひとまとまりの文章を返信しようとするので、レスまで時間がかかってしまいいつも心苦しい思いをしています。

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 このほど、胡錦涛来日のドタバタが一段落したのでようやく返信作業に入れるかと思ったら,今度は四川大震災。今年の中国はあまりに「濃すぎ」ます。

 考えてもみて下さい。年頭からの出来事を並べてみれば、物価高、雪害、毒餃子事件、政府部門の世代交代、チベット問題、ウイグル問題、株安、高まる「愛国無罪」の気運(排外的ナショナリズム&中国世界最強気分)、そして国家主席来日。……その合間合間にはお決まりの農村暴動や再開発・立ち退きをめぐる都市での騒動があり、また「散歩」という名のデモが大都市で発生したりもしました。それでもまだ北京五輪を控えているのですから、今年はこの先、何が起きても不思議ではないように思えてきます。

 それはともかく、以前当ブログにも登場して頂いた、四川省成都市の大学で日本語を教えているAさんから頂いたメールに対し、ようやく時間が空いたということで返信を書いていたところで今回の大地震です。成都市は震源地から最も近い大都市であり、またやはり大きな揺れに見舞われたということで、現地ルポとしての価値があるかと思い、Aさんのお許しを得て以下に掲載する次第です。

 大地震そのものだけでなく、「愛国無罪」の予兆ともいえる「I love Chine」Tシャツの流行に対する御考察もあり、Aさんからのメールは非常に濃厚にして、かつ震災に遭遇した現地の空気をよく伝えた実に興味深く,価値ある内容となっています。



●Aさん(2008/05/12/11:01送信)


御家人さん :

 こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

 成都もだんだんと暑くなって来ました。つい此間まで、暖房を入れていたのですが、間髪も無く、いまはついついクーラーを入れてしまう日々です。元来、クーラーなど余り好きではないのですが、この街は風が吹かないので、どうも部屋がむっとしてしまい・・・つけてしまうというわけです。

 さて、胡錦涛訪日などで日中を取り巻く状況が日々変化していますが、こちらで感じた事などまた少しありますので、いくつか伝えさせてください。

■I love china のTシャツ

 先週の半ばくらいからでしょうか、大学構内で、「I love china 」のTシャツを見かけるようになりました。いくつかのタイプがあるようで、前面が、「I love china (loveの部分は、赤いハートマー ク)」で、背面が、中国の領土を示したもの、あるいは、「beijing 2008」などというものです。

 大学構内には、「Tシャツ売ります」というような張り紙も結構出ていましたので、そういうところに目をつけた「業者」が居るのかもしれません。

 日に日にこのTシャツを着ている人が増えています。私のクラスでも何人か居るのですが、どういう傾向があるかといえば(言葉を選ばず言えば)、単細胞的な短絡的な思考の子が着る傾向にあるように感じます。

 あるいは、深い意味も考えずにカルチャー的に着ているのかな、と。先日の長野騒動の際、CCTVのHPに載った中国人女子留学生と思しき女の子の頬にフェイスペインティングを見かけました。五星旗があんなにカジュアルに捉えられている事に、異様な思いを持ちました。以前中国人に、あれは「血の色」と聞いた事がありますが(どこの国旗もそれぞれに歴史が有ると言ってしまえばそれまでですが)、カジュアルすぎるというか、彼らの根っこのなさ、ただただ浮ついた気持を画面を通して感じ考えました。

 まぁ、デザイン的には、あまり格好の良いものとは言えないし、他の子はきっと「そこまでしなくても・・・」という思いがあるのかもしれません。
 
 いま、いくつかのタイプがあると書きましたが、今日見かけたもので、バックプリントが、「listen to China's voice」と書かれているものがありました。

 また、先日私の会話の授業のなかで、ちょっとしたロールプレイをやってもらったのですが、結構「聖火リレーのトーチをフランスに奪われた」というテーマで話す子が何人か居たりします。彼らの思考を想像するに、「被害者である」という意識が、集団的に根付いているらしく、また、そもそも「思考する」ということや「理由を落ち着いて考える」ということをできないし知らないのがいまの学生ですから、何か「燃料」が投下された場合、すぐに着火し易い状態、沸点に近づいているというのかな、と、御家人さんの記事とあわせて考えて、思います。

 繰り返して書けば、御家人さんの記事を読ませてもらって、共産党上層部は、あれこれあわてている様でもありますが、実際民間大学生は、表面上あわてているわけでもなさそう、とも見えましたし、いままでそう見ていました。しかし、大学生の流れが、着実に、「被害者モードon!」になってるわけで、この、ゆっくりと、しかしじわっとした流れが、どこに行くか分からない、というのが、御家人さんがかねてから何度も指摘されていることなのかな、とも思います。

 最近、街に行き、日本から来ましたと語っても、そんなに引かれるケースは少なくなり、寧ろ、「日本に行きたい」だの、「日本の漫画はxxx」、「浜崎あゆみがxxx」、「ジャニーズのxxxは・・・」という事ばかり語られます。これは私だけの経験ではないようで、特に「中国って反日なんでしょ?」と感じてしまったまま中国入りする旅行者やバックパッカーなんかは、逆の反動で、「別に中国って大したこと無かったよ」という感想になり、「政治が言い過ぎるんだ、仲良くすればいいじゃないか」という論法につながってるように思います。

 こういうことが、一見理想的な形のようで、非常に表面的で、目を眩ませることではないかな、と危惧しています。






●Aさん(2008/05/12/18:22送信)


御家人さん :

 たびたびメール失礼します。

 ご存知のように、今日14:29ごろ、こちらで大きな地震が発生しました。ちょうどそのときは、私は授業が始まるころで、教室で待機していたのですが、かなり大きく長いゆれを感じました。

 今のところ、私の学生を含め、私の大学では大きな被害は出ていないようです(多少、学食の窓ガラスが割れた、コンクリートが落ちた、ということはありましたが)。

 私は比較的落ち着いていたのですが、学生らは、ほとんどの子が地震初体験ということで、かなり動揺しているようです。

 気になるのは、大学の建物の耐震構造です。建築は詳しくないのですけど、こちらは地震が少ないという風に一般的に言われていることもあり、非常に貧弱な構造では、と思われます。

 事実、いま、大学当局から建物から離れ、広い場所へという指示が出されており、学生、教職員とも運動場などに避難しています。
 
 電気、ガスなどは使えますので、部屋に戻れば普段の生活ができるのでしょうけど、少々不安が残りますね。

 とはいっても、いま、ネットカフェからメールを書いていますが、となりの学生と思しき男の子なんかは、地震なんかかんけーねーといわんばかりに、ゲームに興じています。もちろん地震を体験したはずですが。
 
 とりあえずこんなところです。

 なお、「I love china」ですが、あれは、「I love NY」のパロディ的なデザインなんでしょうね。今日、地震発生後に構内を歩いていて、また増えたなぁと思ってるところです。数にすれば全体の1割~1.5割なんでしょうけど、目立つというか…。





●御家人(2008/05/12/22:34送信)


Aさん:

 御家人です。何度もメールを頂きながら御返事を差し上げず申し訳ありませんでした。この時期、仕事はオフシーズンなのですが、お察しの通り胡錦涛来日や長野での聖火リレー余波などでのあれこれがあり、また身体の方も本調子ではないため、Aさんはじめ色々な方に不義理をしてしまっております。m(__)m

 それにしても今年の中国は年頭以来、休むヒマを与えてくれません。胡錦涛が帰国してやれやれと思った途端に今度は大地震。NHKのニュースもトップ扱いでした。成都の西北西90kmが震源でマグニチュード7.8級とのこと。新華社によると確認された死者はすでに107名。ご無事なようで何よりですが、御懸念の通り小学校や中学校が姿をとどめぬほど倒壊して瓦礫の山と化したような映像がこちらでも流れています。

 ニュース映像をみる限りでは、成都市では地震に不慣れな市民は随分驚いている様子でしたが、市内で大きな被害が出ていなければ、いまごろは落ち着きを取り戻しているのではないでしょうか。ライフラインが寸断している地区もあるようですが、成都は大事に至らず僥倖でありました。ただ余震にはくれぐれも御注意下さい。私が留学していた時代は情報収集のためNHKやBBCを聴くぺく短波ラジオが必携だったのですけど、ネットと携帯のある現在ではお持ちの方がどれほどいらっしゃるか……。

 ともあれ温家宝が陣頭指揮のため現地入りするとのこと。といっても震源地とは連絡が途絶えているためまず成都に飛行機で入ることになるのではないでしょうか。

 成都からのお便りをいつも楽しみに拝見しています。カルフールのときも速報して頂きありがとうございました。

 若い世代の間で浸透し始めている「I love China」はちょっと怖い現象です。こうしたエネルギーは往々にして一定レベルまで浸透したところで突如噴出するものです。私がよく使う「ライトユーザー」まで取り込むようになると、政府もうかつにねじ伏せられないパワーとなります。問題は正に御指摘の通り、聖火リレー以来のドタバタについて被害者意識が強いという点でして、被害者だけに「噴出」段階という「キレる」時点で、これが攻撃的なものとなりかねません。

 私の体験でいえば、エネルギーは「噴出」するまで多くの人がその兆候に気付かず、火の手が上がったのをみて驚くものです。これが「ライトユーザー」をも広く取り込むようになると、ムーブメントの内容次第では党中央が「動乱」認定を出さなければならない騒ぎになります。ただ私が現地で体験した民主化運動と違って、現在は「愛国」という錦の御旗に正面切ってダメ出しできない状況ですから、当局も扱い方に苦慮することでしょう。

 文化大革命など政治運動を経た経験から、当局発表については何事もまず疑ってかかった私と同世代や、それより年長の中国人と違って、現在の若い世代は政治運動を知らず、愛国主義教育を受けていること、また歪んだ形ながらも経済発展を実現しつつある現状を基本的には肯定していることから、あまりに素直にコロリと騙されている印象があります。カルフールやCNNへの敵意で垣間見えることができたかと思いますが、あれは「噴出」段階にはまだまだ距離があります。せいぜい前座といったところです。

 ただ素人ヲチ屋の見方から冷徹に申し上げますと、当局が大衆の扱い方や民意の機微に長けていれば、今後実情が明らかになるにつれ被害状況が確実に拡大するであろう今回の地震を奇貨とすることでしょう。充満しつつある排外的ナショナリズム、あるいは「中国世界最強」型のエネルギーに対し、「被災地を救え」キャンペーンを発動することで、「熱」を散らすことに利用するかと思います。

 被災地救済も「愛国的活動」ですから、これへ目を向けさせることで排外的気分や被害者意識をレベルダウンさせつつ、充満したエネルギーを上手に費消させることができるかも知れません。「素人ヲチ屋の見方から冷徹に」というのは、この角度からみた場合、当局にとって地震の被害は大きいほどよい、ということになるからです(いま地震の死者が3000~5000人・負傷者1万人になる可能性との新華社電をNHKが伝えています)。

 御無沙汰してしまった件、改めてお詫び申し上げます。残された御任期をつつがなく送られるよう東京の空の下で祈年しております。


「下」に続く)



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