日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 「快走」というには余りに歪んだ構造ですし、かといってまだ「潰走」してはいませんので(笑)、とりあえず「怪走」という言葉を使っておきます。中国経済の高度成長に対してです。

 このところずーっとGDP成長率が毎年2桁台という成長率なのですが、マトモな成長と言い難いことは、党中央が「科学的発展観」や「和諧社会建設」をスローガンに掲げるととに、さきの党大会でこの2つを中国共産党の憲法といえる党規約に盛り込ませたことでもわかります。

 「科学的発展観」や「和諧社会建設」というのは胡錦涛の指導理論ですが、引退・死後ではなく現役の間にその指導理論が党規約に明記されたのは毛沢東以来のことです。高度成長と自画自賛しつつも、一方ではそこまでしなければならないほど追い詰められた状況が存在し、胡錦涛以下党中央がそのことに強い危機感を持っていることの表れといえるでしょう。

 別な角度からみると、トウ小平ですら成し得なかったパワープレーに走ったというのは、わざわざ党規約に明記しなければならないほど、胡錦涛の指導力が不十分だということです。トウ小平、特にバランサーからカリスマへと変貌を遂げた1989年の天安門事件以降のトウ小平なら、党規約という権威をかざさなくても鶴の一声でどうにでもなりました。胡錦涛にはその力がない訳です。

 で、近年の高度経済成長を胡錦涛政権が決して快く思っていないことは、そうしたスローガンを高々と掲げていることからもわかります。非効率で粗放な規模の拡大、環境汚染や格差の拡大、それに土地強制収用のような収奪めいたことまでしての開発路線というのはGDP成長率を押し上げることはできても、深刻な副作用を社会にもたらすからです。

 ――――

 とりあえず物価高の話から入りましょう。今年に入ってからの中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比で以下のようになっています。

  1月:2.2% (5.0%)
  2月:2.7% (6.0%)
  3月:3.3% (7.7%)
  4月:3.0% (7.1%)
  5月:3.4% (8.3%)
  6月:4.4%(11.3%)
  7月:5.6%(15.4%)
  8月:6.5%(18.2%)
  9月:6.2%(16.9%)
 10月:6.5%(17.6%)

 前回のコメント欄で「町方同心」さんが指摘していたように、当初中国政府はCPI上昇率の目安として、

「3%が警戒ライン」

 としていました。

 ●消費者物価指数、3カ月連続で警戒ライン突破。(2007/06/13)

 ところが3月以降、それを突破したどころか基本的に右肩上がりで10月はとうとう6.5%。



 ●「新華網」(2007/11/23/11:42)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-11/23/content_7131987.htm

 国家統計局の謝伏瞻・局長が11月22日、中国の消費者物価指数(CPI)が月間値で前年同期比6%前後の上昇というペースは今後もしばらく続くだろうとの見方を示した。今年通年のCPI上昇率について謝伏瞻は「4.5~ 4.6%台」との見方を示し、この状況を「依然として受け入れられるレベル」だとしている。




 と当局は何やら強気なのですが、

「依然として受け入れられるレベル」

 という言葉はすでに腰が砕けているからこそ出てくるものではないかと思います。……まあ、いざとなれば「暗箱作業」(密室操作)で数字をいじくればいいのでしょうけど、それでもあまり無茶はできないでしょう。ちなみに第三四半期(1~9月)のCPI上昇率は前年同期比4.1%です。

 ところで上に掲げたCPI上昇率について、4月と9月の上昇幅が前月比でマイナスになっていることに下世話な勘繰りをしてみます。

 まず3月に全人代(全国人民代表大会=なんちゃって国会)が開かれて経済各面に対する政府の目標値が示された直後、4月に発表された3月の数値が「警戒ライン突破」の3.3%ということで4月の数値をいじってみたものの(3.0%)、現実から乖離してしまうのでその後は数字いじりを半ば放棄したのではないかと。

 ――――

 9月の「6.2%」という前月比マイナスというのは言うまでもなく10月15日から5年に一度の重要政治イベント・「十七大」(中国共産党第17回党大会)が開かれていたために縁起の悪い統計は忌避され、

「マクロ経済コントロールが奏功し始めています。胡錦涛政権頑張ってます」

 てなところを見せようと、小数点以下の数字をちまちまと弄くったのだろうと思います。前月の経済統計は翌月の中旬あたりに発表されるのが常なのですが、9月の経済統計が10月25日になってようやく発表されているのも、党大会など一連の政治イベントや新指導部人事が落ち着いたタイミングです。これが10月の経済統計になると平素のスケジュールに戻って11月13日に公開されています。

 ●「新華網」(2007/10/25)
 http://www.gov.cn/wszb/zhibo164/wzsl.htm

 ●「新華網」(2007/10/25/22:30)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-10/25/content_6946647.htm

 ●「新華網」(2007/11/13/11:36)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-11/13/content_7063600.htm

 妄想と一笑して下さって結構ですが、GDP成長率に関しても国家統計局がはじき出した数字と全国各地から上がってきた統計を照らし合わせたら数ポイントも差があった、という「事件」も過去に起きています。

 このために中央が特別調査チームを組んで全国ツアーをやらせたこともあります。発表された統計と現地感覚が余りにかけ離れていて、当局発表の数字を素直に鵜呑みにできないのが、研究者泣かせで中国の面倒なところといえるかも知れません。

 ●「新華網」(2005/03/07/17:19)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/07/content_2663385.htm

 ●護符(2007/06/14)

 ――――

 ところで、上に並べた月ごとのCPI上昇率、その隣にあるカッコ内の数字はCPI上昇率を品目別にバラした際の「食品価格」上昇率です。今年の物価高の牽引役とされているので抜き出してみました。特に6月以降の上昇幅は「食品」であるだけに文字通り「庶民の台所を直撃」といった格好です。

 この「食品価格」には何が含まれるかというと「穀物」「肉類及び肉類加工品」「卵」「水産物」「野菜」「果物」の6品目。タバコやアルコール類は別項目です。要するに毎日三食口にするものが突出して高騰中、ということになります。

 今年10月の前年同月比による6品目の上昇幅は、

 ●穀物:6.7%
 ●肉類及び肉類加工品:38.3%
 ●卵:15.0%
 ●水産物:7.0%
 ●野菜:29.9%
 ●果物:8.5%

 となっており、肉や野菜の高値が目を引きます。……今年は毎月こんな感じで「肉・野菜・卵」の値上がりが際立っているのですが、特に肉類は昨年10月には「100g当たり100円」だったものが今年10月は「100g当たり138円」になっているという訳で、「食費」全体でみても2割近く支出が増えているのですから、庶民にとってはたまったものではありません。


「下」に続く)




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 温家宝、とり... 怪走する中国... »