最近忙しくて雑談に逃げてばかりおります。今回も余太話。でもワクテカの展開を呼ぶかも知れないネタではあります。
その前に、できるだけニュース(古っ)。
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山西省長としてその「鮮やかな手並み」が脚光を浴びた于幼軍が、先ごろ省長職を辞して同じ「団派」(胡錦涛直系の共青団出身人脈)に属する孟学農・元北京市長にポストを譲りました。
●閣僚人事で邪推あれこれ。(2007/08/31)
その人事を伝える記事では于幼軍は「中央に異動」となっておりましたが、文化部の党書記に就任したことを香港の親中紙『大公報』(2007/09/05)が報じました。栄転ですね。
しかも要職。「文藝」(芸術や映画も含む)が中共の定める枠の中限定で発展することを指揮する一方、従来型メディアに加えブログ、掲示板などインターネットにも枠をはめつつ、ACG(アニメ・コミック・ゲーム)の動向にまで目を光らせる部門です。
とりあえず文化部党書記であって文化部長就任ではないのですが、一党独裁のお国柄、各部門のトップは文化部長や山西省長ではなく、文化部党書記や山西省党書記です。非共産党員が部長職に就任している特例は別として、文化部党書記となったのであれば文化部長を兼任することになるでしょう。上記『大公報』の報道によると、現職の孫家正・部長は年齢制限で転任ないしは引退となる模様。
さてその文化部。「文藝」からネットひいてはACGに関わるだけではありません。新時代に則したイデオロギー構築やその宣伝の一翼を担う仕事もあり、その点ではたぶん5年後の党大会で出てくるであろう「胡錦涛理論」みたいなものの練り上げに参画することになります。
実は于幼軍、山西省長になる以前はこの思想工作宣伝活動ではなかなかの業績を残しており、開明的かつ実務に強いという好印象が内外にはあるようです。「団派」でもあり胡錦涛の文化政策及び理論面での腹心ということになるでしょう。
ポスト胡錦涛と噂される李克強・遼寧省党書記の補佐役ともなるでしょうね。山西省という地方政府で「治国」研修というテストをクリアして中央に戻って来た訳ですが、今度は党中央の党務を経験させるべく10月15日に開幕する第17回党大会で党中央政治局入りを果たせるかどうか注目したいところです。
●『大公報』(2007/09/05)
http://www.takungpao.com/news/07/09/04/ZM-790032.htm
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それから今回の本題と少しは関係があるかも知れないニュース。いや前回の方が関わりが深いかも知れません。
●ベンガル湾で海上共同訓練、日米印など5か国艦艇27隻(読売新聞 2007/09/04/19:16)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070904i211.htm
【ニューデリー=永田和男】日本、米国、インド、オーストラリア、シンガポールの5か国が参加する海上共同訓練が4日、ベンガル湾のアンダマン諸島周辺海域で始まった。
9日までの共同訓練には、海上自衛隊の護衛艦「おおなみ」、「ゆうだち」やP―3C哨戒機2機が派遣されているほか、米空母「キティホーク」「ニミッツ」、印空母「INSビラート」など5か国の艦艇計27隻が参加し、対空戦、対潜戦、対水上戦などの戦術訓練を行う。
日米印3か国は4月にも房総半島沖の太平洋で共同訓練を行っているが、今回の訓練は、安倍首相が戦略的対話の枠組みとして提唱する日米豪印が勢ぞろいしたことで、「新たな対中戦略パートナーシップ」(英BBC放送)と、中国けん制の色彩が強いとの見方が各国メディアの間で頻繁に出ている。
このため、関係国政府は「訓練の目的はシーレーン防衛の強化だ」(ラジュ印国防副大臣)などと打ち消しに努めている。
中国はいよいよ理屈抜きで空母が欲しくなったことでしょう(笑)。ベンガル湾、つまり現在の中国海軍では未だ手の届かないインド洋方面で演習が実施されたことも刺激材料なのかも。
実際、中共系メディアは敏感に反応しており、この演習を指して、
「アジア版NATOだ」
という『北京日報』の脊髄反射的な論評記事が国営通信社・新華社の電子版たる「新華網」に転載されています。
あと「日印関係の強化で対中牽制を狙うなんて考えるだけムダ」なんて評論も新華社のオリジナル記事として「新華網」に出ています。安倍晋三・首相の訪印というパンチがそこそこ効いているようです。戦略面においては首相の靖国神社参拝より痛いでしょうし。
●「新華網」(2007/09/04/09:09)
http://news.xinhuanet.com/mil/2007-09/04/content_6659168.htm
●「新華網」(2007/09/04/15:00)
http://news.xinhuanet.com/world/2007-09/04/content_6661643.htm
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あとは短信ながら写真つきでインパクトのある話題。河南省・鄭州市で先日、炭鉱事故で兄弟を失った女性2人が「不公正」「冤」と大書したシャツを着て、ビルから飛び降り自殺して抗議しようという騒ぎがありました。何が「不公正」で何が「冤」なのかは不明ですが、警官の説得により飛び降りは回避されたようです。
●『明報』(2007/09/05)
http://www.mingpaonews.com/20070905/cci1.htm
この記事を読んで思ったのですけど、例えばいま不思議に絶好調な株式市場が大暴落したら、攻撃的な「股民」(投機目的の個人投資家)は証券会社を焼き打ちしたりデモを行ったりして(デモは実例あり)、気弱な向きは今回のような挙に出ることになるかも知れません。
その株の話。最近になって現地証券筋のあちこちから「そろそろ危ないんじゃねーか」との声が出て中国国内で記事になったりしていますが、今度は当の深セン証券取引所がレポートを発表。その中で、
「株価の上昇が業績の伸びをはるかに上回っている。バブル要因に要注意」
との警報を発しています。
●「新華網」(2007/09/04/08:46)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-09/04/content_6658929.htm
年初からの懸念材料である消費者物価指数も8月は前年同期比の上昇率が「十何年ぶりの上昇幅」と騒がれた7月よりもさらに高くなる見通しのようで。
●「新浪網」(2007/09/04/04:23)
http://finance.sina.com.cn/china/dfjj/20070904/04233943471.shtml
他にも台湾問題などがありますし、チベット族の不穏な動きに対処すると称して武装警察2000名を四川省に増派したという情報も。何より5年に1度の党大会を来月に控えており、来年夏の北京五輪に向けて中国は何やら香ばしさが増しつつあるといった印象です。……あ、あと山東省で回族と漢族の衝突事件があり死者が出たとの報道がありますが、これについては目下情報収集中。
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さて本題。といってもごく短い余太話ですけど。
先日、中国の曹剛川・国防相が来日したことは皆さん記憶に新しいかと思います。何かが劇的にどうなったということもないのですが、実務者レベル、つまり制服組同士の交流を強化しようということになりました。例えば中国の海軍艦艇が日本を親善訪問したりすることになるようです。
ということは、海上自衛隊の艦艇も中国を親善訪問することになる訳で。
それが実施の運びとなった際には胡錦涛政権が全力で「親善ムード」醸成に取り組むことになると思いますけど、庶民レベルでは「日本鬼子」の再来であります(笑)。本気でそう思い詰める馬鹿はそれほどいないでしょうけど、江沢民が丹精して磨き上げた反日風味満点の愛国主義教育を30歳から下の世代は全身に浴びて育っています。大義名分はあるということです。
毎度毎度のことになりますけど、胡錦涛や温家宝が「和諧社会」(調和のとれた社会)の実現を呼号しなければならないほど、現在の中国社会は激しく不調和。その表現として様々な格差の存在や都市暴動や農村暴動があります。
そこへ「日本鬼子」の軍艦が艦首に日章旗・艦尾に軍艦旗(自衛艦旗)を翻して堂々と乗り込んで来るのです。フラストレーションがたまっているところで、これは恰好のはけ口になるかも知れません。やるなら北京五輪の開催前に是非。
あながち余太話でないかも知れないのは、『大公報』電子版がそれを本気で懸念していることです。もっともそれは悪化した社会状況下における庶民の鬱憤晴らしの好機としてではなく、純粋に「歴史問題」フラグが立って荒れるのではないか、という心配ですけど。
●「大公網」(2007/09/05)
http://www.takungpao.com/news/07/09/05/YM-790856.htm
いずれにせよ入港期間中もラッパで奏でられる君が代とともに軍艦旗の掲揚・降下が行われるでしょう。楽しみですねー。私が上海に留学していたとき米国海軍の艦艇が上海を訪問し、乗組員は制服着用で上陸していましたけど、「日本海軍」となるとどうでしょう。
「不測の事態に遭遇する恐れがあるため上陸中の単独行動は禁止」
とかの注意事項が乗員に出されたりして。何だか支那事変当時のようですけど(笑)。
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【追記1】2007/09/06/03:19
さっき記事漁りをしていたら中国国内でも似たような報道が行われていました。電波系基地外反日紙『環球時報』の論評記事です。
しかもあの『環球時報』だというのに、「大公網」同様に「歴史問題」フラグが立つのを避けようと必死。ママン『環球時報』がいつもと違うよー(笑)。燃料投下じゃなくて火消しかいっ。orz
●日本の軍艦が中国の港湾へ入って来るのに際して(2007/09/05/09:21)
http://news.sina.com.cn/pl/2007-09-05/092113821257.shtml
この記事、胡錦涛の対日融和・現実外交路線が『環球時報』まで浸透していることを示すものなのでしょうか。
むしろ、何やら2005年春の反日騒動のときに似ているようでもあります。
全国各地で毎週末に反日デモが行われる事態にまで拡大したのにビビッたアンチ胡錦涛派が、「反日」を掲げて胡錦涛派に政争を挑むのを急遽とりやめて手打ちを行い、党上層部が一枚岩になって火消しに躍起になった、アレです。
あまりの盛り上がりに反政府運動へと転化するのを恐れたのです。胡錦涛派もアンチ胡錦涛派も「中共人」ですから、色々な反目が存在していても、「中共人」の権益が脅かされては困るという点では全く一致します。
党上層部になると「中共人」権益を保証する機関たる「政権」の運営当事者ですから、海自艦艇の中国訪問に際して考えていることはたぶん私と同じだと思います。でも余計なことは書けませんから「歴史問題」の一点張り。
ちなみに作者は中国人民大学国際関係学院の東亜研究中心主任。以前は国際関係学院といえば国家安全部などに人材を供給する,要するに各種諜報員の養成機関だったのですが、いまはどうなのでしょう。
この記事、付属掲示板では売国奴扱いされています(笑)。でも40近くしかレスがついていません。どうも喰い付きが悪いので党中央はこの種の記事をもう少しバラまいて事態を香ばしくする必要があります。
どうした糞青ども(自称愛国者の反日信者)元気ないじゃねーか。ネトゲにハマっているから天下国家は二の次なんて冗談はなしだぞ(笑)。
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【追記2】2007/09/07/14:45
中国政府の発表によると于幼軍は文化部副部長に就任したとのことです。文化部長ではありませんでした。早トチリしてしまい申し訳ありません。
●「新華網」(2007/09/06/09:01)
http://news.xinhuanet.com/politics/2007-09/06/content_6669611.htm
ただ文化部党書記には就いていますから、実質的に于幼軍が文化部のトップであることは確かです。
そこまで気の利く政治家、官僚はいないでしょう
逆に寄港させるな、ぐらい言いだしかねませんよ
「支那滅裂」という言葉に変わるのではないかと思いました。
http://blog.china.com.cn/sp1/daixu/
清国北洋艦隊訪日ように海軍拡張の大義名分にする。ついでにハニートラップで海自隊員に不祥事を起こさせて逆長崎事件にするとか・・・・。いかんなどんどん悪人になっていく。
選手、役員、観戦旅行客を全部収容するにはそれでも足りないかもよ~~
オマケに最近の国内の自民叩きも
中共の日本マスゴミを使った陽動にしか見えなくなってる自分が居ますよ・・・。
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