とんでもないニュースが飛び込んできました。大ネタです。しかも台湾問題という中国にとって最も敏感な部分に日本が大きく踏み込んだ、というものですから大変ですよこれは。
……ところが報道自体に誤認めいた部分があったりしてちょっと頼りなく、大ネタながらも号外号外と叫んで回るには確度に疑問符。
ともあれまずその報道をどうぞ。
●日本政府、台湾の国連加盟申請不受理「解釈不適切」申し入れ(産経新聞 2007/09/07)
【台北=長谷川周人】台湾が独自で行った初の「台湾」名義による国連加盟申請に対し、潘基文事務総長が国連は「一つの中国」政策を維持しているとして申請書を不受理としたことを受け、在国連日本代表部は国連事務局に対して先月、「台湾に関する地位認定の解釈が不適切だ」という異例の申し入れを行った。日本の在台代表機関に相当する交流協会が6日、明らかにした。
1972年9月の日中共同声明で日本は、中国が主張する「一つの中国」を「理解し、尊重する」として、「同意を与えていない」というのが基本的な立場だ。これに対して国連が、事務総長見解として「一つの中国」政策を国連全体の解釈とするのは「不適切」という日本政府の認識を明確にした形だ。
申し入れは米国に続いて約半月前に行ったもので、日本代表部は台湾の戦後の帰属問題に関しても、「サンフランシスコ講和条約で台湾を放棄したが、どこに帰属すべきかは言うべき立場でない」という日本政府の基本認識も伝えた。
日本もやるときゃやるじゃん、GJ!……と言いたいところですが、この記事は何やら聞き書きに終始していて、「日中共同声明」を読んでいない気配すらあるので眉唾ものです。ただし日本政府がこの「申し入れ」を行ったことが事実ならば、この記事とは別の意味で重大ニュースということになります。
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いうまでもないことかも知れませんが、中国にとって目下の対日関係における最大の懸案は「歴史問題」でも「自由と繁栄の弧」でもなく、「台湾問題」です。
「台湾は中国の一部であり、台湾の独立反対を支持すると明言してくれ」
といった意味のことを、4月に来日した温家宝・首相が安倍晋三・首相に執拗に迫っています。さきごろ来日した曹剛川・国防部長も安倍首相、高村防衛相、町村外相との会見でそれぞれ同じことを持ちかけています。ところが日本側はこの問題ばかりは譲歩せず、
「日本は、台湾問題についての『日中共同声明』の立場を堅持する」
と繰り返し、また米国同様に、
「台湾海峡の現状を改変するような一方的な言動は支持しない」
として、中国にも自重するよう求めています。
「その『日中共同声明』の立場って具体的にどういうこと?」
と中国側が反問しないのは、「日中共同声明」の台湾に関する部分について日本政府が真っ正面から解釈を披露すると、中国としては具合が悪いからです。
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その「日中共同声明」の台湾に関する部分は、同声明における第三項にあたります。
三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
「ポツダム宣言第八項……」から後の部分と組み打ちすると話が面倒になるのですが、要するにこの項目において中国政府は台湾を「中華人民共和国の領土」と主張しているのに対し,日本政府は中国側のその主張を「十分理解し,尊重する」としながらも、「支持する」とか「承認する」といった言葉が使われていません。
つまりこの項目は両論併記。中国は「台湾は中国の一部」と主張し、一方の日本は「勝手に言ってろ。日本はそれに同意しかねる」と述べており、「台湾は中国の一部」と認めていません。「日中共同声明」の草案作成で一番もめたのがこの部分です。
前掲『産経新聞』の記事では、
「1972年9月の日中共同声明で日本は、中国が主張する『一つの中国』を『理解し、尊重する』として、『同意を与えていない』というのが基本的な立場だ」
としてまいすが、これは誤りです。日中共同声明の第二項が、
日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
となっていて、「一つの中国」は日本側も正式に承認しているのです。日本政府が正式に承認していないのは「一つの中国」ではなく、「台湾は中国の一部」ということ。……だと私は思うのですが、長谷川記者、そのあたりはどうなんでしょうか?ていうか記事書く前に「日中共同声明」を読みました?
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中国は最近、「台湾」名義での国連加盟、という動きに対し、
「台湾は中国の一部」
ということを国連の場で承認してもらおうと画策しており、米国及び日本の「申し入れ」はそれに対するものではないかと私は思います。日米両国とも「一つの中国」は正式に承認しているので、それに異を唱えることはない筈だからです。
「台湾は中国の一部」ということに対する異議申し立てであるところが中国にとってはゆゆしき事態となります。今回の「申し入れ」が事実なのであれば、その意味で「重大ニュース」なのです。
「その『日中共同声明』の立場って具体的にどういうこと?」
と中国側が反問していないのに、日本政府が自ら乗り出して「日中共同声明」について真っ正面から台湾問題に関する解釈を披露したことになるからです。
中国側の反応が気になるところですが、香港の親中紙『大公報』の電子版が台湾・中央通信の記事をすぐさま転載しています。ただ中央通信の記事は上の『産経新聞』の報道をそのまま紹介したものなので、「一つの中国」がどうのこうの、という記者の誤認(と私はみています)もそっくりそのまま掲載されています(笑)。
●「大公網」(2007/09/07)
http://www.takungpao.com/news/07/09/07/ZM-791957.htm
中国にとっては薮蛇となってしまった格好です。もしかしたら軍部の反発があるかも知れません。
台湾にしてみれば「日本が台湾の地位について一歩踏み込んでくれた」と好意的に捉えるべきニュースになるかと思います。日台関係という点からみても日本側による重大な挙措ということになるでしょう。
とりあえずここまでです。あとは詳報待ちということで。
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【追記】2007/09/08/00:27
関連報道です。こちらの方が簡潔かつ正確でしかもわかりやすいですね。
●台湾の地位解釈は不適切=日本が国連に申し入れ(時事通信2007/09/07-08:14)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007090700137
【台北7日時事】日本の対台湾窓口、交流協会台北事務所は7日までに、台湾の国連加盟問題をめぐり潘基文国連事務総長が「台湾は中国の一部」との見解を示したことについて、日本政府が8月に「この解釈は不適切と考えている」と申し入れていたことを明らかにした。
●「台湾、中国の一部」 潘総長見解に日本同意せず(東京新聞夕刊 2007/09/07)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007090702047161.html
【台北=野崎雅敏】日台交流の日本側窓口機関、日本交流協会台北事務所は七日、台湾の国連加盟問題で国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が示した「台湾は中国の一部」との見解について、日本政府が国連事務局に「同意しない」と伝えていたことを明らかにした。台湾メディアによると、米国やカナダも事務総長の見解に同意しない旨を国連側に伝えているという。
一九七二年の日中国交正常化の際の共同声明では、中国側の「台湾は不可分の領土」という主張に対し、日本側は「理解し、尊重する」とするにとどまっている。
とりあえず、これを読めば大筋がわかるかも
http://blog.canpan.info/okazaki-inst/archive/276
http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-10041351188.html
岡崎さんの進言なんでしょうね。これはきっと。
しっかし下品ねえ・・・
もう少し理論的に反駁してみなさい。
厳命します(笑)
さっさと憲法制定して独立宣言すれば民主国家の雄である米国は反対できないはずですが?
どうせ国連の場でも中国の反対があると思います
中共の人的圧力、常任理事国の立場、強大な軍事力、経済力で世界の反対を押し切ろうとするでしょうが先に軍事的侵略をすると世界が中共に「NO」のサインを出すでしょう
中共が米国と事を構える時が最大のチャンス
尤も尖閣侵攻、東シナ海で日本と事を構えるのが先かも知れませんがw
だとしたら大笑いですが。
>>洗脳されし四十代さん
情報ありがとうございます。私はその辺がどうも薄ぼんやりしていたのですが、御教示頂いたリンクで疑問が晴れました。
>>Unknownさん(複数?)
御家人(二四型甲)は横文字が嫌いなオサーンですから英語投稿は24時間後に削除します。中国語なら文字化けでも対応してあげるかも知れません。どうしても横文字ならエスペラントでどうぞ。いずれにしても時間がないので「各位辛苦了!」で斬って捨てるかも知れませんけどw、その辺は諒とされたし。
韓国では「台湾=中国」という認識が一般認識なんですか?
シーレーン防衛って意味では韓国も無関係じゃないと思うの
ですけど。
ホンマかいな?と続報を待っていたのですが、
どうなのでしょうか。
いろいろ探しましたが、今のところ、
是に関した情報もあがってきませんし。。。。
"日本が理解し尊重するのは
中国が「台湾は不可分の中国領」
という立場、
中国の台湾に対する立場であって
誰かの台湾に対する主張ではない"
ということです。
コリアンが中国の主張に同意しよう
がしまいがどうでもよいが
"国連全加盟国の主張が、または
日本の主張、立場が「台湾は
不可分の中国領」だと
国際社会に印象付けられ、思われては
かなわない"ということです。
国連日本政府代表の立場は
あくまで放棄した台湾についての
いかなる見解も日本は持たず
すなわち
誰かの台湾についてのいかなる主張をも支持する立場にない"ということです。
つまり日本の国連代表は
「台湾は不可分の中国領」も
「台湾独立」も支持しないということです。
しかし法務省入管は台湾人を中国人と
みなしているがこの点と先の日中共同声明第二項が指摘されると
日本政府はどう反応するのでしょう?
このニュース、中共政府はスルーしたい?でしょうね~、ヘタに公式に抗議すれば自身の悪行がばれる(洗脳中の日本人やその他の国の人に)訳ですから。是非他の中国&香港報道が後追い続けて火がついてほしいですね~。
潘基文が、たかだか事務総長の分際で
私見によって、台湾の申請書を不受理としていた
(しかも周辺国選出でありながら)
ことが一番の問題では?
理事国から異論が出るのは当然でしょうね
この問題に触れることは薮蛇だということを理解しているが、どうしても言わずにはいられない。
オリンピックというイベント、平和の祭典を梃子に台湾が何らかの行動を起すことは言われていたと思います。結果として何も変わらないとしても中共政府が統べる中国が中華民国以後の正当な中国の代表であるということを、確かなものにしたいのでしょうか。連合国により常任理事国にしてもらったが、それが一種の性質が悪い政治的バーターだという事実が重くなってきているのかと思っています。
国は、現在の国際の枠組みを形作る各種条約のなかで存在するもの。この中国、台湾の関係は色々と勉強になりますし、戦後国家の承認が曖昧な中国にとって、それが中国の国際社会における弱みに繋がっているのは事実ですが、とりあえずはめ込まれている位置を良く考えてこの問題に対処しないと中国は難しい立場になることは請け合いかと思っています。
中共があれから60年以上経ったからみんな忘れたと思っていたとしたら大間違い、逆に時間が経ってしまった分だけやりにくくなっていると思います。長文失礼しました。
満州、内モンゴル、チベット、ウイグルはいつ中国のものになったのかと。
ブログにも書きましたが、国連は「一つの中国」政策を採用しているはずです。北京政府が国連に入るきっかけになった国連総会決議もそういうラインです。そういう意味でご指摘の点は正鵠を得ています。
なお、江沢民訪日時の日中共同宣言でもこういうくだりがあります。
「日本側は、日本が日中共同声明の中で表明した台湾問題に関する立場を引き続き遵守し、改めて中国は一つであるとの認識を表明する。日本は、引き続き台湾と民間及び地域的な往来を維持する。」
ご指摘のとおり、日本が異議を唱えたのは「台湾は当然中国の一部である」というところです。これは国連総会決議では全く読み取れませんし、日中共同声明でも微妙なニュアンスです。ただ、一応ポツダム宣言第八項では以下のようになっていることは留意しておいて良いと思います。
「八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」
更にはここでいうカイロ宣言とは以下のような文言があります。
「右同盟國ノ目的ハ日本國ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戰爭ノ開始以後ニ於テ日本國カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ滿洲、臺灣及澎湖島ノ如キ日本國カ清國人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民國ニ返還スルコトニ在リ
日本國ハ又暴力及貪慾ニ依リ日本國ノ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ驅逐セラルヘシ」
まあ、これをどう解釈するかですが中国なりの解釈はあるでしょうね。
いずれにしても、「(中国ではない)台湾」が国連加盟申請をした際に「一つの中国」政策だけではねつけることは無理でしょう。「一中一台(一つの中国があり、一つの台湾がある)」政策は採用していない、つまりは台湾は中国の一部であるという含意がない限りは撥ね付けられないのですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%88%E7%B8%BB%E6%94%BF%E7%AD%96
都護府の場所と、それぞれの役割
都護府とは、辺境警備や占領政策のための軍事機関である。
安西 - 640年設置。シルクロードの天山南路の守備。
単于 - 650年設置。内モンゴル支配。
安東 - 668年設置。朝鮮北部・満州支配。
北庭 - 701年設置。天山北路の守備。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%8D%E6%AD%A3%E3%81%AE%E3%83%81%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E5%88%86%E5%89%B2
チベットに対する元朝、明朝の措置
明朝の初期、初代洪武帝は、明に使者を派遣してきたチベット諸侯に対し、元朝と同様、規模の大小に応じた衛所の称号を与えた。この称号の授受により、チベット諸侯が明朝皇帝の軍事指揮権に服し、同等の称号を有する明朝の軍人と同じ職務を担ったわけではなく、単なる名誉のランク付けにとどまる。明が遣使してきた諸国、諸民族に対し行った冊封において、民族単位で統一政権を樹立した朝鮮、安南、琉球、日本では各国の最高実力者が代表して「王」号を受けたのにたいし、統一政権を樹立せぬまま明と通好した女真、チベットなどの有力者たちは、個別に衛所の各級の称号を受けたのである。洪武帝によるチベット諸侯の冊封においては、「烏思蔵衛(うしぞうえい)」、「朶甘衛(だかんえい)」にそれぞれ指揮使司、宣慰使が1つづつ、以下、チベット全土であわせて元帥府1、招討司1、万戸府13、千戸所4などが配置された。ここでいう「烏思蔵」とはチベット語「ウー・ツァン(dbus gtsang)」を音写したもので、今日の西蔵部分の中核部を占める中央チベットを、「朶甘」とはアムドとカムの略称「ドカム(mdo khams)」を音写したもので、今日の西蔵の北部・東部と青海・甘粛・四川・雲南の諸省に分割されたチベット東部地方を指す。のち、永楽帝の時、中央チベットを制圧するパクモドゥパをはじめとする有力勢力が冊封をうけ、三大法王、五大教王等と呼ばれたが、後の清代にみられるような、「烏思蔵」のみをチベットとみなし、「朶甘」部分を中国の「内地」とみなすような区分は、この時期にも、行われていない。
九州には「筑紫都督府」っていうものがありました。
そうなると、九州は中国のものですね。
667年(天智天皇6年)「筑紫都督府」-九州支配
あの連中なら、本気で言い出しそうですw
中華民国は漢民族が清から独立した国家として、他の地域も清から独立させれば良かったのでしょうが。
(外モンゴルはその解釈で独立し、チベットも一度は独立したのですが。)
そうなっていれば、朝鮮戦争とベトナム戦争はなかったかもしれないということを考えれば。
それに中華民国は中華人民共和国を正当な後継者とは公式に認めていないはずです。
>そうなると、九州は中国のものですね。
>667年(天智天皇6年)「筑紫都督府」-九州支配
いいえ、「筑紫都督府」は日本の政府機関です。↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AE%B0%E5%BA%9C
649年(大化5年)には「筑紫大宰帥」の記述があるほか、天智天皇から天武天皇にかけての時期にはほかに「筑紫率」「筑紫総領」などが確認でき、中央から王族や貴族が派遣されていた事を示すと考えられている。機関としては、667年(天智天皇6年)に「筑紫都督府」があり、671年(同10年)に初めて「筑紫大宰府」が見える。政庁地区(都府楼地区)の発掘調査では3時期の遺構が確認されているが、そのうちの第1期と呼ばれる7世紀後半から8世紀にかけての遺構群が、この段階のものと考えられている。
十一月丁巳朔乙丑 百濟鎭將劉仁願遣熊津都督府熊山縣令上柱國司馬法聰等 送大山下境部連石積等於筑紫都督府 は日本書紀天智天皇6年の記述です。
唐の政府機関は「都護府」、
日本の政府機関の一部は「都督府」
間違いやすいのでお気をつけ下さい。
「都督」というのは、元々中国語(漢語?)です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%BD%E7%9D%A3
都督
白村江の戦いで「唐と新羅の連合軍」に負けた後、
急に「都督府」という唐風の呼び方が出て来るのが
個人的には興味深いですね。
http://blog.mypress.jp/i/story.php?writer_id=hirosan&story_id=1383032
唐軍と米軍のGHQ:1280年を隔てたシンクロニシティ
古代史って、とても面白い分野だと思います。
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