(シリーズ「08憲章」【1】へ)
それでは問題です!
ちゃーらーらーちゃらっらー ちゃちゃちゃちゃちゃーららー。
……はい、正解はYMOの「以心電信予告編」の冒頭4小節でした。……なんて与太を飛ばしている場合じゃなくなりました。
「いやはや大変なことが起きてしまいました」
とは前回の書き出しですが、今回は、
「いやはや大変なことになってしまいました」
です。何やら私も当事者の一人になってしまった訳で。
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簡潔にいきます。前回の文末にて、
【※注】不肖御家人、何やら腰が引けているようでも、「08憲章」の内容が内容だけに暗躍することだけは忘れません。この件については、ひょっとしたら贅沢なボーナスステージがあるかも。……とだけ、申し上げておきます。m(__)m
と書きましたが、人事を尽くしたおかげで幸運にもボーナスステージのゲットに成功しました!
右サイドの「御家人の特別推奨本」にある『趙紫陽軟禁中的談話』を出版したことでも知られる香港の中国情報月刊誌『開放』。香港観光に来た中国本土の旅行者がこっそり買って帰る雑誌としては同ジャンルの『争鳴』と人気を二分する大手誌です。
その『開放』の社長兼編集長で今回の「08憲章」にも署名している金鐘氏に対し、生意気にも当ブログがこのほど独占取材を敢行してしまいました。
開設以来4年半にして初めての本格的なインタビューであります。しかも相手は著名なチャイナウォッチャー。ボリャームと内容に富んだインタビュー記事を明日付(12月12日)の当ブログに掲載します。
実は昨日午後(12月10日)、当方が同氏の了解を得た上で、一問一答式を想定してメールにて質問を送ったのですが、夜半になって、
「2時間書いているがまだ終わらない」
というメールが金鐘氏から届いて、こちらは戦慄。
各設問に対する回答のボリュームが果てしないものになっているのではないか、あるいは回答ではなく、まとまった文章が送られてくるのではないか、とあれこれ考えてなかなか寝つけず、今朝は睡眠不足のままカレン族のLさんと恒例の「朝食会」となりました。
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昼ごろに連絡を入れてみたら、
「ああ、書き終わりましたよ。もうすぐ送ります」
と嬉しい応答に私は大感激。……ただし話はそこでは終わらなかったのでした。
「ところでこの件だけれども……」
とやにわに金鐘氏が語り始めました。せっかくだからこの機会を利用して拡大企画にしてしまおう、というのが金鐘氏の意向。弱小ブログのインタビューに過ぎなかった話が、私の想像を超えて遥かに大きくなっていたのです。
「08憲章」とその内容に関する解説をより多くの人に知ってほしいから、私が翻訳してここに出す「日本語版」を、日本国内でどんどん拡散してほしい、マスコミ等にも送付してほしい、というもので、
「いやはや大変なことになってしまいました」
を頭の中で繰り返しつつ、金鐘氏のプロフィールや画像などがほしいとこちらからお願いし、OKをもらって、いま送られてきた肝心カナメのテキストに目を通している最中。いや、これはしびれます。ビリビリくる内容です。
ちなみにタレ込みサイト「博訊網」によると、「08憲章」への賛同署名者数は海外の中国人を含め、すでに1000名を突破したそうです。
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発表された第二次署名者一覧をみると、中国国内では弁護士、芸術家や作家、医師などを含めたいわゆる知識人だけでなく、記者、企業経営者、学生、プログラマー、エイズ救済活動家などが散見されるようになりました。何と軍人も1名。あとは農民の署名者が増えてきたのと、組織化された人権擁護グループがまとまって名前を列ねているのが目を引きます。
もともと農村の土地強制収用や都市再開発での強制立ち退きなどの被害者救済で活躍していた人権派弁護士が多数署名していますから、こうした人たちから半ば組織化されている被害者、さらにそこから一般庶民へのつながりが生まれていけば、ひょっとすると大化けする可能性もあります。
●「博訊網」(2008/12/11)
http://news.boxun.com/news/gb/china/2008/12/200812111257.shtml
一方、劉暁波氏の逮捕は胡錦涛・国家主席が直々に命じたものだ、との消息筋情報も出ています。「08憲章」における「中華連邦共和国の成立を目指す」という一項に、
「これは人権や民主の認識の相違に関する問題ではなく、国家分裂の企みだ。中華人民共和国を顛覆し新たな中華連邦共和国の建国を企図するという深刻な問題だ」
と激怒し、
「署名した者たちは全て国家反逆罪を犯したに等しい。厳重に処罰しなければならない」
との指示を下したというものです。いやーさすがは胡錦涛、私のように端折ることなく、しっかりと「08憲章」を精読しているようですね(笑)。
●「博訊網」(2008/12/11)
http://news.boxun.com/news/gb/china/2008/12/200812111309.shtml
最後に改めて「08憲章」の要点を以下にまとめておきます。
●基本理念は「自由,人権、平等、共和、民主、憲政」であるとし、
「新中国は名義上は『人民共和国』だったが、実質的には『党の天下』だった。執政党が政治,経済,社会の一切を独占し、反右派運動、大躍進、文化大革命、六四(天安門事件)、また民間宗教活動や人権擁護運動への弾圧など一連の人権災害をもたらした。その結果数千万人の生命が失われ、国民も国家も極めて惨憺たる代価を払うことになった」
と中共一党独裁体制にダメ出し。主な具体的目標は下記の通り。
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●多党制、普通選挙制、三権分立の実現と基本的人権の尊重。
●集会・デモの自由、表現の自由、言論の自由、結社の自由、報道の自由、出版の自由、宗教の自由、学術研究の自由の実現。
●私有財産の保護。
●財政・税制改革の断行と社会保障制度の確立。
●環境保護の強化。
●都市と農村の二本立てである戸籍制度の一本化。
●各組織における党委員会は国家による法治を著しく阻害するため廃止。
●イデオロギー色の濃い政治教育や政治科目試験の廃止。
●軍隊の国軍化(現在の人民解放軍は政府ではなく党中央の指揮下にある)。
●香港・マカオの自由な制度を保障し一国家二制度の実質を保つ。
●自由と民主を前提に台湾と対等な立場で協議の場を持ち、最終的には民主的憲法の下に中華連邦共和国の建国を目指す。
●過去の政治運動で迫害された者とその家族に対する名誉回復と国家賠償の実施。全ての政治犯、良心または信仰によって犯罪者とされた者の釈放。
「中華連邦共和国」はともかく、考えてみると最後の一項も興味深い内容です。トウ小平が主導したために放置されたままの反右派運動、それから1989年の天安門事件において処罰された者や被害者の名誉回復を実現し、国家による補償も行う。……ということになります。
わかりやすくいえば、天安門事件で失脚した趙紫陽の名誉回復が行われることとなり、そうなれば失脚した趙紫陽の後釜に座った江沢民やその後継者である胡錦涛の正統性が揺らぐことになる訳です。
まあ、それを言ったら中共政権そのものが民意の洗礼を受けていない訳ですから正統性も何もあったものではありませんが。
ともあれ金鐘氏へのインタビュー記事は明日付(12月12日)の当ブログにて掲載します。ご期待下さい。
そして私はこれから翻訳作業。……とその前に、急いで顔を洗ってきます(笑)。
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