日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 もう15年ばかり前の話になりますが、私が香港に渡って最初に住んだのが湾仔(ワンチャイ)という街でした。香港島側でビクトリア湾に面し、ショッピングセンターである銅鑼湾(トンローワン)に隣接していて、オフィス街の中心である中環(セントラル)にも近い便利な場所です。

 マンションの1階は有名な夜総会(ナイトクラブ)。香港黒社会で若手から急速に成り上がり「湾仔之虎」との異名を持つ親分の拠点でした。

 私が住んでからしばらくして「湾仔之虎」はマカオで暗殺され、その半生が映画化されたりもしましたが、夜総会は従前通り営業を続けていました。その入り口には駐車係と正装したインド人のボーイが立っていて、残業で帰宅が深夜になっても治安に不安を覚えなかったものです。

 海から遠くないことで、私の部屋も一応ビルの隙間から少しだけビクトリア湾と、その対岸である九龍の背後の山並みを見渡すことができました。

 ……あれはニューイヤー(太陽暦の1月1日)のときだったと記憶していますが、午前0時になった途端、周辺を走っている車が一斉にクラクションを鳴らし、湾内に停泊している船舶もあちこちでボーッと警笛を響かせて新年が祝われました。

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 中国本土は9月18日が祝祭すべき日のようです。全国各都市で一斉に車のクラクションが鳴らされ、防空警報のサイレンが轟いた街もあったという派手な慶祝ぶり。1931年に起きた柳条湖事件の記念日です。

 そういえば数年前、その記念日近くに社員旅行で珠海を訪れた日本の土建屋を接待するために、地元の業者が即座に売女約200人を揃えるという神業をみせたこともありましたね。その報道に接して、私は毛沢東以来の伝統を持つ人海戦術いまなお健在、との思いを強くしたものです。

 その9月18日を中共政権が半世紀以上経った現在でも「国恥日」としている理由はよくわかりません。中共による50年以上の治世の間にもっと恥ずかしい出来事がたくさん起きたのを忘れてほしいからかも知れませんが、基地外の考えることを常人が理解しようとしても徒労に終わるので詮索はやめておきます。

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 記念日ですので当日の中国国内メディアには関連報道が山ほどありましたけど、あれは一体どこまで本気なのか。少なくとも圧倒的多数の民意を背景にしたものでないことは確かなようです。

 ……というのは、翌9月19日の香港紙『明報』に興味深い記事が出ていました。

 ●瀋陽総商会、九・一八の慶祝イベント自粛を呼びかけ(『明報』2006/09/19)
 http://hk.news.yahoo.com/060918/12/1t8em.html

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 これは「九・一八」の舞台となった瀋陽市の地元夕刊紙『遼瀋晩報』が報じたのを引用したもので、同市総商会の李振林・副会長が、

「9月18日は国恥日なんだから慶祝行事などおめでたいイベントは控えよう」

 と『遼瀋晩報』を通じて呼びかけたというものです。

 「九・一八」=「918」=「きゅういちはち」となりますが、この「きゅういちはち」を北京語で発音すると、

「就要發」(大儲けは目の前)

 という商売人にとっては縁起のいい言葉となり、それゆえ9月18日を開店日や会社設立日に選び、オープンセレモニーといった祝賀イベントを開催するケースが少なくないそうです。

 国の恥、民族の恥より自分の商売優先という訳です。大らかで結構な話ではありませんか(笑)。

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 縁起がいいなら大安吉日と一緒で、結婚式にも向いた日取りということになるでしょう。この点につき『遼瀋晩報』が市民30名に取材したところ、

「9月18日を絶対結婚記念日にはしない」

 と答えたのはわずか3名。残る90%(27名)の市民は、

「9月18日であろうとなかろうと気にしない」

 と回答したとのこと。これまたいい話ですねえ(笑)。いかに中共政権がイデオロギーや中共史観を振り回しても、政権への根強い不信感と社会状況の悪化には勝てません。一般市民が実生活優先であること、歴史問題に興味が薄いことをはからずも示してしまうアンケートとなりました。

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 地元瀋陽でさえこんな有様ですから、後は推して知るべしです。本気なのは実生活とは関係ないニートまがいの糞青(自称愛国者の反日信者)あたりでしょう。

 連中は連中なりに真面目なのです。ただその尻馬に乗って騒いで鬱屈を散じたい失業者や失地農民やチンピラがいます。昨春の反日デモ&プチ暴動がその好例ですが、今回も不完全燃焼気味の騒動がいくつか起きたようです。

 大した騒ぎに発展しなかったのは、統治者たる中共政権が反日騒動で懲りて警備態勢を強化していたからでしょう。盛り上がりたい糞青どもにしても、ネタが「九・一八」だけでは燃料不足でしょうし。

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 中国本土がそんな感じですから、特別行政区たる香港はもっと冷めていました。

 ●A45 網絡電台討論區
 http://forum.a45radio.com/index.php

 というBBSがあります。私の知る限りでは、無用な罵倒合戦などの少ない、マトモな部類に入る香港でも数少ない掲示板のひとつです。

 このBBSで9月18日、
「今日は九一八だ」というスレッドが立ちました。スレ立て人のコメントは、

「ご感想をどうぞ」

 という一言だけです。それに対するレスを並べてみます。

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 ●ない。nothingだ。(感想なんて)何もない。ホント中国人はこういう馬鹿なことを覚えておきたがるんだよな。何代も前のことだぜ。

 ●共惨党がもうすぐゲームオーバーになるから、そしたら国恥日だ国恥日だと騒ぐこともなくなるだろ。
(「共惨党」はママ)

 ●本当に何とも思わないな。

 ●御馳走で接待してくれるんなら別だけどな(笑)。

 ●何の感想もない?これ読んでみろよ。少しは面白いぜ。
 http://www.dajiyuan.com/b5/5/8/21/n1025794.htm

 (リンク先は大紀元のインタビュー記事。「九・一八」の前後に中共がいかに抗日活動の足を引っ張ったかが語られている)

 ●実際、本当に国恥日だよ。日本軍の悪行はまぎれもない事実だ。だけどこういった国恥日を(何の関係もない)中共が自分のものにして、その機に乗じて民族感情を煽り、反日感情を高めている。それから反日デモだのSKIIだの、こんなことやってたら(日中)両国人民が仲良くなるのも容易じゃないな。

 ●ある。
(赤字で大書)

 ●何があるっていうんだよ。もしあのとき中国が日本に「解放」されていてたら、いまよりもっと強大になっていた、って言う奴だっているんだぜ。これって売国奴思考か?

 ●それわかるよ。日本と韓国に残っている中国の伝統文化は我らが輝ける中共国よりもずっと多いしな。

 ●歴史を忘れないというのなら、もちろん「九・一八」を忘れることはない。東北三省の人民が受けた戦火や蹂躙には血涙の尽きることはない。でも中国を侵略したのは日本だけか?第二次大戦の末期、ソ連が敗退を重ねる日本に突如宣戦布告し、中共の党勢回復に手を貸した。そして東北三省に大挙進軍して、日本軍に対しては武装解除や物資の略奪を行い、大量殺戮もした。民間人の死傷者も数知れない。でもこうした歴史について、中共政権や左巻きのバカどもは無知を装い、絶対言及したりしない。

 ●必殺の一撃だな。その通り中共は記憶を選択することが好きなんだよな。

 ●だから去年、中国と香港で反日デモがあったとき、『蘋果日報』に四コマ漫画が出ていたよな。「抗議竄改歴史」(歴史の改竄に抗議する)ってプラカードを掲げていたデモ参加者を警察が引っ捕まえて、「抗議」の後ろに必ず「日本」の二文字を加えろ、そうしないと国家政権転覆罪で起訴するぞ、って警告してたやつ。歴史なんて昔っから政治と権力の賜物で、現在が過去をいいように規定することでしかないな。

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 ……とのことです(笑)。ここまで冷めた見方をするのは香港人の民度ゆえなのか、それとも中国本土と違って香港には言論の自由があるため本音で語ることができるからなのか。

 一考に値するテーマかも知れませんね。




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