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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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社会主義栄辱観――ホントに効くのかこの薬?
中国観察
/
2006-04-18 07:08:15
何やら東シナ海が風雲急を告げて参りました。……というのは一小市民としての実感なんですけど、本当のところはどうなんでしょうね。
いや、胡錦涛訪米直前というタイミングが出来過ぎているようでもあります。今回の米中首脳会談で日中関係は主要議題ではないでしょうけど、胡錦涛が靖国とか何とか言い出したら、ブッシュはこれを持ち出して切り返せるではありませんか。
でも中国側の関連部門の公式サイトによれば、3月1日付で発表しているんですよね。
http://www.msa.gov.cn/Thgl/Hxtjgview.aspx?ID=489
これは1カ月半も放置しておくべきネタではないと思うのですが、日本政府はこういうサイトの定点観測はやっていないのでしょうか。だとしたら恐るべき怠惰です。「偽サイトの可能性もあったから」とかいう日本側関係筋の記事がどこかに出ていましたけど、お役人なんですから、「役儀により改める」などと中国側に事実関係を問い合わせればいい訳で。でもそれがすぐできない風通しの悪さがあるのでしょうか。
……と思っていたらこんなニュースが。
――――
●航行禁止海域は中国側・中国外務省が日本に修正説明(Nikkei Net 2006/04/18/01:55)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060417STXKB066217042006.html
外務省は18日未明、東シナ海のガス田拡張工事のため中国海事局が航行禁止を通知した範囲に誤りがあったと中国外務省から北京の日本大使館に説明があったことを発表した。
外務省は修正により中国の作業範囲は日中中間線の中国側になるとしている。〔共同〕
――――
これで落着、ということになってしまうんでしょうか。経緯に不満と不安の残る出来事ではあります。
どうやら米中首脳会談のタイミングで動いた訳でもなさそうですけど、まあ仮にそれを狙って日本政府筋が動いたものだとしても、今回は胡錦涛の方が役者が一枚上でした。
連戦ですよ連戦。橋龍や紅の傭兵よりも使い勝手がよくて、靴の舐めっぷりも2Fすら足元に及ばない連戦・国民党名誉主席、これを招いておいて胡錦涛は対台湾融和策をズラリと並べてみせましたからね。米中首脳会談の観点からすれば、東シナ海の一件よりやはりこちらの方がインパクトが大きいでしょう。
で、この対台融和策ですが、
●台湾財界を籠絡する。
●台湾政界及び世論の分断化を図る。
●台湾内部に確固とした親中勢力をつくる。
●台湾経済を取り込む形にして、経済制裁をチラつかせるだけで台湾が身動きできないようにしてしまう。
●中台関係において、米国に「誠意」というポーズを示す。
●胡錦涛が対台政策の主導権掌握にかかった。
……てな感じだろうと思います。最後の一項は憶測なんですけど、
――――
◆胡錦涛が対台湾政策の主導権掌握を狙う?
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0604140006&cat=002CH
いや、下衆の勘繰りなんですけどね。汪道涵・海峡両岸関係協会会長(当時)が昨年末に死去したあとも会長ポストは不在のまま。同会はしばらくその状態を続けるつもりらしいので、訪中した国民党・連戦前主席を歓待するなどちまちまと動いている胡錦涛が色気を出しているのではないかとつい邪推してしまった次第。
――――
……と姉妹サイト
「楽しい中国ニュース」
(2006/04/15)に書いたように、傍証めいたものはあります。
党中央台湾事務弁公室の人事には昨年5月に手をつけています
し、旧正月直前には台湾の対岸である福建省を視察して「最前線」の兵士たちを慰労しています。そして今回の大盤振る舞いですから、「おれが仕切るんだ」という胡錦涛の意気込みが感じられるように思えます。そこで「ちょっと待った!」と声がかかったら腰が砕けてしまうのかも知れませんけど(笑)。
――――
さて本題ですが、中共上層部の目下の政治状況、これは
前回
紹介したように反胡錦涛諸派連合が何やら勢いづいてきていて、しばらく外遊により北京を留守にすることになる胡錦涛にとってはどうも心許ない。
そのせいなのかどうか、最近はずっと先月の全人代(全国人民代表大会=立法機関)ごろに胡錦涛が言い出した
「社会主義栄辱観」
(八栄八辱=八つの誉と八つの恥)の関連活動を主要メディアがこぞって報じるというキャンペーンめいたものが続いています。
反胡錦涛諸派連合の不穏な動きはこれで吹っ飛ばしてしまえ、というほどの勢いです。それでも反胡錦涛諸派連合は着々と手を打っているようなのですが。……とりあえずその「八栄八辱」なるものを紹介しておきます。
――――
●祖国を熱愛することは誉、祖国を危うくすることは恥
●人民に奉仕することは誉、人民を裏切ることは恥
●科学を尊重することは誉、愚昧で無知なのは恥
●勤勉に労働することは誉、安逸に流れ怠惰なのは恥
●団結して互助することは誉、人を踏みにじって私利私欲に走ることは恥
●誠実で信用を守ることは誉、利に目が眩んで道義を忘れることは恥
●法律を遵守することは誉、法律を無視することは恥
●刻苦奮闘することは誉、贅沢と淫乱に流れることは恥
――――
……と、小学生にも理解できる内容で風紀粛正を狙った、いかにも道徳教育の好きな胡錦涛らしい代物です。どうも最近私は胡錦涛を「計画経済型」と呼びたい気分がありまして、発想を飛躍させ時機を捉えて利を稼ぐ商人、つまり市場経済型というよりは、毎日黙々と畑仕事に汗を流すタイプではないかと思えてきます。
政治手法がどこか毛沢東に似ているという指摘は当初からあるものですが、滅私奉公的な党員を讃え、その事蹟に学べというキャンペーンを張ったり、その党員の美談を歌劇にまでしてしまうあたりは現在の他の政治家には真似できないところでしょう(笑)。この「八栄八辱」にしても要するにレッテル貼りであって、文革テイストがほのかに漂っています。たぶん胡耀邦や趙紫陽と同時代の政治家であれば胡錦涛は間違いなく保守派に回る器だと思います。
「人を踏みにじって私利私欲に走ることは恥」
というのは市場経済への移行を目指す中国にあっては際どい表現です。じゃあ出稼ぎ農民の苛酷な労働環境はどうだ、農民を泣かす土地収用はどうだ、ということになります。特に出稼ぎ農民の苛酷な労働条件を念頭に置いてこの一節を掲げれば、中国の現在の経済成長モデルを頭から否定することになってしまいます。まあ、胡錦涛の掲げる「調和社会」には様々な格差の是正も含まれている訳ですから、掲げること事態は問題ではないのですが、従来型の改革で、つまり出稼ぎ農民をこき使ってきた既得権益層の反発があるかも知れないという点で、際どいのです。
で、この「八栄八辱」です。都市部ではネットや携帯電話も普及している現在において、小学生相手にならともかく、大学生や社会人にもこの教育活動に参加させる、というのはいかに民度が低いとはいえ参加者も主催者も馬鹿らしく感じることでしょう。明快すぎるほどの善悪の基準だけに、誰かを批判するときの道具としては非常に使い勝手がいいとは思いますけど。
――――
ともあれ胡錦涛派は時代錯誤的なこの「八栄八辱」を掲げて大々的に宣伝しています。それによって反胡錦涛諸派連合の動きを封じるという狙いもあるのだろうと思いますが、このレッテル貼りは素朴な内容だけに、逆手にとられることもあるかも知れません。
そこで反胡錦涛諸派連合の動きですが、
前回
紹介した一連の流れに続いて、上海で『江沢民と彼の母校上海交通大学』という本が出版されることになり、上海市のトップである陳良宇・市党委員会書記をはじめ地元指導部が出席した関連座談会も開かれています。
報じたのは香港紙『星島日報』(2006/04/16)。どうも「江沢民視察+江沢民視察報道+同日に黄菊健在報道+関連書籍出版+上海市指導部による記念座談会」という上海閥のコンボ技だったようですね。
http://www.singtao.com/yesterday/chi/0416eo03.html
それから反日活動家の代表格で「中国民間対日賠償請求連合会」の童増・会長も新ネタを披露。こちらは香港紙『明報』(2006/04/14)の記事で、戦時中に徴用された所有船舶が撃沈されるなどの損失を被った船会社の経営者の息子が、日本政府を相手どって25億元(人民元)というこの種のケースでは過去最高額の賠償請求を日本大使館に行っている、というものです。和解ができなければ中国国内での裁判に持ち込む、とは童増の弁。
http://hk.news.yahoo.com/060413/12/1myb4.html
胡錦涛にしてみれば裁判を許せば「日中共同声明」との絡みで対日関係がより面倒なことになりますし(しかも被告は日本政府)、許可しなければ国民の反日感情や糞青(自称愛国者の反日教徒)主導によるネット世論、そして軍部を含む党内の対日強硬派から集中砲火を浴びることになりかねません。
――――
そこで出てくるのが「八栄八辱」の、
●祖国を熱愛することは誉、祖国を危うくすることは恥
●人民に奉仕することは誉、人民を裏切ることは恥
といったあたりです。尖閣諸島、沖ノ島、東シナ海ガス田紛争、靖国神社参拝や歴史認識の問題などで上記2項目を持ち出されれば、胡錦涛もううっと詰まってしまうのではないでしょうか。そういう困っている胡錦涛をやや離れた場所から冷ややかに眺めているのはきっと首相の温家宝です(笑)。
要するにこの「社会主義栄辱観」(八栄八辱)という薬は、効き目に疑問符がつくだけでなく、用法によっては半端じゃない副作用があるかも知れない、ということです。親分が北京を留守にするということに加え、「八栄八辱」ばかりに血道を上げているがために反胡錦涛諸派連合がバラまいた地雷をうっかり踏んでしまいかねない。……現在の胡錦涛派にはそういう脆さがあるように思えてなりません。
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