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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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電波発言の裏にチラつくは制服組の影?
中国観察
/
2006-01-10 22:55:18
以前にも書いたことがあるかも知れませんが、ニュースというのは中国ネタに限らず、一定期間放置しておくことで関連記事が集まり全容が明確になる、という種類のものがあります。
今回のニュースもそれに類するものかと私自身は考えています。ただ前回、前々回の当ブログコメント欄で取り上げている方が多いので、不本意ながら現時点での情報をもとに取り組んでみたいと思います。
そのニュースというのは他でもありません。
――――
●中国、日本に「報道規制」を要求・マイナス面の報道多い(Nikkei Net 2006/01/09)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060109STXKB032609012006.html
【北京9日共同】中国外務省の崔天凱アジア局長は9日、北京での日中政府間協議で「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかり書いている。日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」と述べ、日本側に中国報道についての規制を強く求めた。
メディアを政府の監督下に置き、報道の自由を厳しく規制している中国当局者の要求に対し、日本外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長らは「そんなことは無理」と説明したという。
日本側によると、崔局長はまた、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題や日本国内での「中国脅威論」の高まりなども挙げ「(日中間にあるのは)日本が起こした問題ばかり。中国は常に守りに回っている」と批判した。
佐々江局長は「日本だけが一方的に悪いという主張は受け入れられない」と反論したが、双方の隔たりの大きさに、日本の外務省幹部は「これが日中関係の置かれている実態」と苦笑した。
……ちょっとのぞいたら某巨大掲示板の東亜板でも関連スレッドが現時点で第6弾にまで伸びていました。反響の大きさを感じさせます。まあ内容が内容ですから当然といえるでしょう(笑)。……と笑って済ませていいのかどうかが問題です。
いや、最初に読んだときは私も「そんなことは無理」のあたりでコーヒーを噴いてしまったのです(笑)。ただ落ち着いて考えてみると、これはやはり異常です。日本側を唖然とさせた中国外交部・崔天凱アジア局長の発言、これは崔天凱自身が、
「何でこんなこと俺が言わなきゃならないんだよ。やってらんねーよ」
と思っているのではないでしょうか。
――――
過去にも中国人犯罪問題(2003年)やサッカーアジアカップ(2004年)などの機会に、似たような発言が中国側から出ています。でもそれは、
「日本のメディアも騒ぎ過ぎる」
というもので、「指導すべきだ」までは踏み込んだことがありません。その理由は明白です。中国においてはあらゆるメディアが「党と政府の代弁者たること」と義務付けられ、要するにお上の御用新聞とか広報紙といった役割に徹するよう求められています。しかしたとえ中共政権がいかにトチ狂っているとしても、日本におけるメディアはそうではない、報道の自由がある、ということぐらいは理解しているから「騒ぎ過ぎる」で鉾を収めているのです。
たとえ中共政権のブレーンたる日本研究者たちのレベルが低かろうと、あるいは政治的方針という枠や「反日」という踏み絵に縛られて自由な研究発表ができない状況であろうと、これは専門家でなくても外交の担当者であれば常識として有している知識でしょう。
日本どころか、自国の特別行政区である香港ですら報道の自由が認められているのですから、そのくらいのことはわかっている筈です。それを「指導すべきだ」なんて言ったら国際的なお笑いネタにされてしまいます。外交部がそれをわからない筈がありません。
それなのに、「指導すべきだ」と言ってしまいました。トチ狂っているとしか思えません。在上海日本総領事館職員の自殺事件でも同じことを感じました。そこまで踏み込むよう外交部が強要されたのではないかと。例えば日本総領事館事件について日本側に反論するのはいいとして、国内メディアにまでその一切を報道させてしまったのはどういうことでしょう。国民に広く知らしめることで、中共政権にとって得になることがあるのでしょうか。
10年前に比べれば、日本における親中派メディアや政治勢力の退潮が著しく、中共指導部がそれに苛立ち焦燥している、ということはあるでしょう。しかし、ただそれだけの話なのでしょうか。こと対日外交については、一種の動脈硬化ともいえる状況が最近続いているように思えてならないのです。
――――
中国国内メディアに対する報道統制の強化というのは、最近確かに目立つ動きが相次いでいます。『新京報』『南方都市報』『百姓』に対する弾圧がその好例です。
●マスコミ弾圧?珍しくもない――とは言えないぞこれは。(2005/12/30)
●来年はいよいよ……かも。(2005/12/31)
●米MS、中国人ジャーナリストの人気ブログを閉鎖(読売新聞 2006/01/07)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060107i306.htm
胡錦涛・総書記は「中国映画産業生誕100周年記念式典」や「創刊50周年を迎えた『解放軍報』視察」などで発表した重要講話で報道統制強化を示唆しています。国務院(中央政府)新聞弁公室が当局からの情報発信強化に努めると強調していましたが、これは情報発信の主導権を政府がメディアから奪回しようという動きの表れとみていいでしょう。
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/29/content_3983955.htm
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/29/content_3986231.htm
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/29/content_3986381.htm
以下のニュースも同じ文脈で読むことができます。
●中国、環境汚染事故などの危機管理指針を発表(読売新聞 2006/01/08)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060108i113.htm
●中国政府:緊急対応マニュアル発表、実施 指導部に危機感(毎日新聞 2006/01/09)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20060110k0000m030053000c.html
中国では重要なニュースに関しては、国営通信社・新華社から配信された記事だけを使い、メディアが独自の報道を行ってはならない、という不文律?があります。その新華社の役割に、政府が割り込んでいこうという動きかと思います。昨年春の反日騒動当時のように、新華社も政争になると国営通信社という立場をかなぐり捨て、一方に与する場合があるからかも知れません(笑)。
また、新聞には全国クラス、省クラス、都市クラスといった格付けがあるのですが、省クラス以下の地方紙は、地元以外のニュース(例えば炭鉱事故)を独自に報じてはならない、という約束事も昨年か一昨年に加わったようです。
上記「緊急対応マニュアル」は突発的な事件に対する迅速な対応強化を謳ったものですが、情報発信の主導権を当局が握れば、逆に事件・事故を隠蔽したり、報道を遅らせたりすることが可能になるのです。
――――
情報統制という意味では、インターネットに対する規制や削除職人の活動、ネットカフェに対する営業時間や未成年者の利用に対する制限強化、またテレビやラジオで流される番組や広告の事前審査厳格化、さらには携帯電話の実名登録制導入に向けた動きも進んでいます。
前にも書きましたが、中国は一党独裁制ですから権力に対するチェック機能がありません。統治者は中央であろうと地方当局であろうと汚職でも何でもやりたい放題なのです。ところが改革開放政策によって競争原理と分権化が導入されました。
例えば新聞の世界も競争原理の導入、つまり市場経済化によって販売部数競争がヒートアップし、特典をつけたり値下げしたりするだけでなく、スクープをものにして市民の支持を得ようという動きに流れていきました。ごく自然な成り行きだと思うのですが、市民の喝采を浴びるスクープというのは往々にして汚職告発など権力を脅かす性質のものですから、統治者にとっては面白いことではありません。
当ブログで再三再四指摘しているように、統制強化というのは胡錦涛自身の好みでもあるようですが、大なり小なり権力や利権を手にしている者にとっても、報道統制強化は歓迎される措置でしょう。
……という訳で、最近急に動きだした観のあるマスコミへの締めつけですが、私はこれを政争の反映とはみていません。ただ冒頭に紹介した「日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」発言や上海総領事館事件にみられる動脈硬化のような対応ぶり、そこに私は変化を感じるのです。
「李登輝氏が春に訪日予定」
なんてニュースが流れれば、事態はより明確なものになるでしょう。
●握ったか・握られたのか・胡錦涛。(2006/01/05)
……このエントリーで勘繰った通りです。指導力不足の胡錦涛と人民解放軍主流派が取引をして、その結果、軍機関紙『解放軍報』が胡錦涛支持の姿勢を強化して礼讃報道にいよいよ力を入れるようになり、軍主流派の胡錦涛擁護を内外に印象づけることとなりました。
ただその見返りとして、制服組が政治の世界、特に外交問題に口出しする、ひいては大きな影響力を行使するようになったのではないか、その現実的表現のひとつが上海総領事館事件であり、今回の「日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」発言ではないか。……と私は思うのです。
ただこれも冒頭で述べた通り、裏付ける材料が揃っていないのでまだ勘繰りの段階にすぎません。「少し寝かせておくべきネタ」たる所以です。
――――
見極めのつかない「勘繰り」段階のまま話を続けますと、トチ狂った、動脈硬化ともいえる現在の外交部の対応ぶりは、対日強硬姿勢とイコールで結べるものではありません。強硬的対応にしても、外交上あるいは内政面への影響をも考慮した上での利害得失、これを度外視した「電波」型のゴリ押しは、相手国あるいは国際社会を唖然とさせ、大笑いさせ、ひいては眉をひそめさせることになってしまいます。
中共政権の中でも、外交部はそれを理解しているでしょう。しかし制服組(軍人)というのは往々にして、逆に問答無用で押し切るスタイルに傾きがちなものです(主流派でなければ、劉亜洲中将、朱成虎少将といった超電波型の将官もいますね)。
中共政権の対日外交がそういう制服組のニオイがする「電波」傾向に転じたと仮定すれば、分水嶺はどの辺りにあるのか。……これはなかなか難しい問題ですが、昨年12月27日に行われた外交部報道官による定例記者会見ではすでに外交部が「転向」させられているように感じます。
会見に出てきたのは秦剛・報道副局長ですが、内閣府の調査で「中国に親しみを感じる」と回答した日本人が32.4%と過去最低を記録した一方、「中国に親しみを感じない」が63.4%と過去最高記録を叩き出したことについて、
「中日人民の感情が冷え込んでいる根本的原因は、日本が台湾、歴史問題などにおいて絶えず過った言行を繰り返しているからだ」
と秦剛は回答しています。「原因は日本にある」という決めつけは相変わらずですが、「台湾、歴史問題」というのは興味深いところです。
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/27/content_3976500.htm
「台湾」が「歴史問題」の前に置かれています。単に台湾は内政問題だから先になった、ということならそれでいいのですが、そういう理由でないとすれば、「台湾」を前に置いた点に制服組の気配が感じられるように思えます。「台湾>歴史問題」というのは軍部の優先順位とも一致するでしょう。
――――
そもそもこの一年余りにおいて、軍部が対日関係で敏感に反応したのは靖国問題などではありません。日本の新防衛大綱、李登輝氏訪日、尖閣諸島の灯台国有化、日米安保2プラス2……これらが切実な問題なのです(ちなみにこれらに「靖国」「歴史教科書」「安保理改革」などの諸問題が加わって胡錦涛政権への「手ぬるい」という不満が高まったことで、昨年春の「反日」を掲げた政争につながっていきます)。
最近では『解放軍報』が評論員論文として日本は軍備拡張を急いでいると非難しましたが、「抗日何たら60周年記念」といったイベント絡みのものを別とすれば、同紙が対日問題で重要論文を掲載するのは珍しいことで、それだけ危機感を強めているといえます。また昨日(1月9日)には離島防衛をテーマとした日米合同演習にも同紙は速報型の署名論評を掲載しています。かなり気になるのでしょう(笑)が、自分の職域に関する問題ですからピリピリするのは当然ともいえます。
http://news.xinhuanet.com/mil/2006-01/09/content_4026902.htm
そしてこれも日米合同演習への脊髄反射なのか、『解放軍報』(2006/01/09)は上述した署名論評を掲載する一方で、予備役、交通機関、メディアに対する戦時動員態勢について論じた署名論評が3本出ています。どうも穏やかではありませんね(笑)。
http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/09/content_379941.htm
http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/09/content_379943.htm
http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/09/content_379944.htm
――――
職域で論ずれば、歴史云々ではなく台湾問題こそが軍の守備範囲であり、現実問題であることは言うまでもありません。ですから、
「李登輝氏訪日、念願の『奥の細道』たどる旅へ」
「森喜朗・前首相が台湾を再訪」
といった出来事が起きれば、状況がよりはっきりとしてくるのではないかと思うのです。いや、そういう趣旨の飛ばし記事が流れるだけでも十分な観測気球になるかと。……李登輝さん、森さん、そういう訳ですからここはひとつ、
「近いうちにまた行ってみたい。あそこは実にいいところだ」
という程度のコメントでもいいですから、探索射撃をして中共政権の出方をうかがってみてくれないものでしょうか(笑)。
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