一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

日弁連「東日本大震災法律相談Q&A」

2011-03-31 | 東日本大震災

Twitterの私のTL上ではとても不評だった東日本大震災法律相談Q&A(日本弁護士連合会 災害復興支援委員会、2011年3月29日現在)を読んでみました。

結論から言うとこんな感想。
(弁護士でもない素人が何言ってやんでぇ、なんですが、頭書きに「東日本大震災に伴い発生する様々な法律問題に対応するための弁護士及び市民向け法律問題Q&Aを作成しました」とあるので市民として一言)

内容的には役に立つ部分も多いが、章ごとに分担して執筆したためかトーンがばらばらでQの重複があったり単なる法律の概説のようなところもある。この手のものをスピード優先で出すことは意味があると思うが、一つのQ&A集として全体を編集する目が必要だったのではないか。
後述のようにけっこういいQ&Aもあるのだが、残念ながら総論的であまり実戦的でないものも目立つ。
一方で「第17章 原子力被害に係る問題」では原子力事業者の責任や出荷制限措置に対してかなり踏み込んだ「主張」をしており(Twitterで弁護士に問題にされていたのは主にここ)、これがこのQ&Aの価値を減殺(平たく言えば色眼鏡で見られる)してしまっている。ちなみにこれは日弁連の公式見解なのだろうか?

ということで、残念ながら「市民」に役立つ内容は一部に限られそうなのが残念です。
それから、このレベルのQ&Aが役立つ弁護士というのはちょっと実力的に心配な感じがしなくもないのですが・・・


せっかく通読したので章ごとにちょっとコメントしてみます。(以下引用部分の強調は全て筆者、あと、知識不足・読解力不足による誤解や間違いがあると思いますので気がついた方は教えていただけると幸いです)


第1章 土地・建物所有者

ここは全体的に突込みが足りないので実戦的でない。
たとえばすべてのAにわたって瑕疵担保責任の消滅時効や不法行為の除斥期間についての言及がないのはミスリーディングでは。


第2章 マンション区分所有者
 
区分所有法の大規模修繕や建替えについては教科書どおりのまとめがありますが、それ以上でない。「○○の法律問題Q&A」という類の本のよくない方の部類に属する「書きやすい通り一遍のAにあわせてQを作る」ような感じ。

当面問題になるのは、理事長が自分の裁量でできる保存行為の範囲はどこかなど、マンション管理適正化法関連の部分だと思うので、そこにも言及したほうがよかった。

また大規模修繕や建替えは修繕費用や建替え反対の区分所有者に対する買取費用をどう捻出するかという方が現実的にはネックになるため、修繕積立金の残額とか修繕費用の多寡がポイントになるので、まずは(弁護士でなく)マンションの管理会社に相談した方がいい、と書くべきなのではないか。


第3章 借地・借家

比較的論点は網羅している。
ちょっと気になるのがQの目線が借地人・借家人からだけであること。これも借地借家法のに沿って説明をしたからそうなったのか、それとも執筆者が「被害者」「弱者」の(所謂「市民派弁護士」の)視点に偏っているのかは不明(逆の立場からQ&Aを読めばいいだろ、と言われればそうだが)。

津波の被災地だと当面問題になりそうなのが借地権の有無でなくそもそも地代が払えない・払ってもらえないという問題で、借地権が存続しているとしても債務不履行をすれば解除される(できる)という基本のところとか、逆に底地人がデフォルトして抵当権が実行されたときに優劣関係などは書いておいたほうがいいのではないだろうか。


上述した「編集の不在」の例としてはこういうのがある

Q2(第1章)  隣家のブロック塀が建築工事の瑕疵により地震で倒壊したため,私の自宅の一部が壊れてしまいました。このような場合,誰にどのような責任を追及できるのでしょうか。
A  震度5程度の地震でブロック塀が倒壊したのであれば,ブロック塀を所有する隣家やブロック塀を工事した請負業者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することが考えられます。

Q31 借地上の建物の賃借人ですが,建物が地震で全壊したときは借家権は消滅してしまうのでしょうか。
A  原則として借家権は消滅します。再築後の建物についても借家権を主張できません。再築建物について改めて借家契約を締結する必要があります。

Q2の「震度5程度で倒壊したのであれば・・・」というのもちょっと唐突で工作物責任の設置保存の瑕疵と宮城県沖地震の判例の考え方などを説明しないとわからないのでは(というか「建築工事の瑕疵により」とAを先取りしているQ自体が手抜きなんだが)。
一方で、Q31では地震で建物が全壊したら借家権は消滅、といっているが、震度によっては貸主の債務不履行責任を問える可能性もあり、また入居に当たって宅建業者から受けた重要事項説明に建物の耐震診断をしている場合にはその結果が含まれているはずなのでそことの齟齬の有無の確認などをアドバイスすべきでは。

また、Q23で再築の話をしておきながら、再築までの期間の対抗要件についてはQ30を見ないと書いてないというように、読む人の視点から作られていない感じがする。


第4章 罹災都市臨時借地借家法

よく知らないのでノーコメント


第5章 債務の処理,破産など

Q73 地震で家屋が倒壊したのですが,住宅ローンの支払義務だけは残ってしまうので
すか。
A  家屋が倒壊しても,住宅ローンの支払義務はそのまま残ります。ただし,地震保険に加入している場合は,その保険金が住宅ローンの支払いに充当されます。

但し書きは保険金請求権に質権が設定されている場合で、任意に加入している場合には当然には充当されないのでミスリーディングでは?

Q76 地震で家屋が倒壊,損傷したため,新築,補修等したいのですが,どのような制度があるのですか。公助(公的支援),共助の制度について教えてください。
A 公助制度としては,自治体による融資制度,被災者生活再建支援法に基づく支援制度,災害救助法に基づく応急修理制度などがあり,共助制度として,兵庫県では,兵庫県住宅再建共済制度が発足しています。

Q77 地震で家屋が倒壊,損傷したため,家屋の建替資金,補修資金を捻出するために,
新規融資を受けられないでしょうか。
A  阪神大震災,新潟県中越地震の際には,住宅金融公庫等の政府系金融機関のほか,民間金融機関でも,通常よりも低利で,据置期間の延長,一定期間の支払い猶予措置等の軽減措置を講じた新規融資をすることがありました。被災地の自治体の中にも,特別融資等をしたところがありました。

参考になる情報だが、「詳細は自治体に確認ください」と書くべきではないか。それとも弁護士会でこのような制度ができたら継続的にフォローして周知をはかるということか(それならとてもいいことだと思う)。


第6章 金融取引など

Q88 リース契約のコピー機が壊れてしまいました。契約はどうなりますか。
A リース契約の場合には多くの場合,特約条項により地震等の場合にも月々のリース分割金あるいは規定損害金を支払う必要があるとされます。

ファイナンス・リースだからということか。この場合は修理や部品交換もしてくれない(または有償対応)ということ?


第7章 保険(生命保険・地震保険)

コメントなし。地震保険の説明はちょっとまだるっこしいが、わかりやすくまとまっていると思う。


第8章 不在者の財産管理な

Q105 災害により父親が行方不明のまま安否も全く分かりません。父の財産について相続は開始するのでしょうか。
A  認定死亡や失踪宣告が下されていれば相続は開始しますが,そうでなければ相続は開始しません。

これなどは不親切の典型で、認定死亡や失踪宣告の制度の手続、必要な期間などを説明しないと「市民」はわからないと思うのだが。


第9章 消費者問題

「特定商取引法によるクーリング・オフ,消費者契約法による契約取消し,錯誤による契約無効,詐欺による契約取消し,不法行為に基づく損害賠償等によって代金の返還を求めていくことが考えられます。」

というAが多いのだが、そもそもどういう商品・役務が対象になるのか、どういう手続きが必要かなどを解説しないとよくわからないとい思う。


第10章 労働問題

ここは雇用者・被用者双方の論点をカバーしている。
現実的にはQ113、Q114の「欠勤」に至る前に有給休暇の消化・時期変更権などの問題があるとは思うが。
計画停電と勤務の取り扱いとかに言及するとかゆいところに手が届いてうれしいんだが難しいか。


第11章 租税特別措置

詳しくないので省略


第12章 外国人の人権

これは非常にいいまとめだと思う。
できればここだけ英・中・ハングルで日弁連のウエブサイトに載せるべきでは?(そうすれば相談を受けた弁護士とかボランティア団体も印刷して見せることができる)

Q138 日本に来て,わずかの間に被災をしたため,日本語がよくわかりません。通訳をしていただきたいのですが,だれに,どのように依頼したら確保できるのでしょうか。

とあるが、ここにアクセスして上の文章が理解できる人は、日本語力があるかサポートがある人に限られると思うのだが、というのは余計な突っ込み?


第13章 高齢者・障害者の人権

これも、老人ホームに関するQ142、Q143やQ144~Q146の具体的な制度の説明は役に立ちそう。
ただ、制度の概要のAについては少なくとも問合せ先を書くべきでは(それともこれも今後日弁連がフォローし周知を図るならなおいいが)。

あと、Q141の個人情報がらみでいうと、総論は確かにそうなんだけど、本人が意識不明の緊急時にのみ提供するなどの運用もできそう。また逆に同意さえ取れば何やってもいいと受け取られるとまずいと思う(このへんは運用にかかわるのでQ&Aは難しいんだろうけど)。


第14章 子供の人権
 
法律相談か?という疑問はあるがコメントはなし。


第15章 環境問題

Q154 アスベスト建材が使われている自己所有建物が震災により影響を受けています。①全壊・半壊で解体が必要の場合,所有者としてどのようなことをしなければなりませんか。また,②解体までは必要ではなく,補修で使い続けられる場合には,どのようなことを守らなければなりませんか。
A ①所有者は,解体工事を発注するにあたり,解体事業者がアスベストの対策措置ができなくなることのないよう,解体方法,費用等について配慮しなければなりません。また,②所有者は,補修して使用し続けるときも,一定の場合には,震災により飛散するようになった吹きつけアスベストの除去等をしなければなりません。

個人的は疑問として、津波被災地でアスベスト建材を含む建物がバラバラになってしまった場合でも法遵守が求められる(べきな)のだろうか?
これと同様に建築資材リサイクル法とか廃棄物処理法も瓦礫の撤去において厳密に適用されるのだろうか。
(執筆者も「弁護士に聞くとこういう答えになると思います」と前置きをつぶやいてから書いているのかもしれませんが、津波被災地のように瓦礫になってしまった場合などはまずは行政に相談、というのが一番いいアドバイスだと思います)

Q156  地震により隣の建物が倒壊し,自宅敷地部分に瓦礫が残ったままになっています。自分で勝手に撤去してもよいでしょうか。また撤去費用はどちらが負担しなければならないでしょうか。
A  所有者の承諾を得ずに勝手に撤去してはいけません。費用負担については,地震により全くの不可抗力による倒壊の場合には隣地所有者に撤去費用を負担させることは難しいですが,隣家所有者に過失がある場合ないし必ずしも不可抗力による倒壊とはいえない場合には隣地所有者に撤去費用を負担させることができます。また,一定の範囲につき公費負担の制度もあります。

これも、津波被災地のように財産価値がなく、どこの家の瓦礫かわからないものについてもこのAが正しいのかは疑問。
次章のこちらの整理のほうが妥当と思う(というか何で重複してるうえに結論が違うんだ?)

Q163 私の私有地上に津波で流されて来た自動車や船,瓦礫などが放置されています。誰に撤去を求めればよいですか。その費用は誰が負担するのですか。
A  原則として,物権的請求権として,妨害排除請求の相手方である船,自動車,瓦礫の所有者の負担において片付けてもらうことになります。ただし,原因が不可抗力である場合には,物権的請求権は生じないとする大審院時代の古い判例もあります。
また,そもそも津波被害の場合には,瓦礫等所有者を特定することができない事態も多いことが想定され,そのような場合には土地所有者の負担で撤去せざるをえないことになります。
また,土地所有者が撤去した場合,自力救済として不法行為責任を負う可能性がありますが,財産的価値がなくなっているなどの場合には,損害ないし違法性がないとして,不法行為責任を負わない場合も広汎に存するものと考えられます。
以上は私人間の法律関係ですが,このほかに公費による撤去が行われる可能性があ
ります。阪神・淡路大震災では,廃棄物処理法の特例として,倒壊家屋等の解体・撤去を,災害廃棄物処理事業として所有者の承諾の下に市町村の事業として行い,その費用の2分の1を国が補助する特別措置が講じられました。


第16章 津波の被害に係る問題

この章はQの立て方、カバーする論点など質問する側に立って非常によく整理できていると思うし、執筆者の踏み込み方のスタンスには共感が持てる。(上のQ163など)


第17章 原子力被害に係る問題
 
これが問題の最終章。
ほとんどネタかと思うところもあります。

Q170 原発の発電の仕組みを教えてください。
Q171 福島原発の構造について教えてください。
Q172 地震発生時に制御棒を入れて停止したというのはどういうことですか。
Q173 発電が停止したのに冷却しなくてはいけないのはどうしてですか。
Q174 福島第1原発はどうして冷却できないのですか。
Q175 なぜ格納容器から放射能で汚染された蒸気を放出したのですか。
Q176 使用済み燃料プールというのは何ですか。
Q177 4号機の爆発,火災はどうして起こったのですか。
Q178 放射能とは何ですか。
Q179 放射線とは何ですか
Q180 放射能の半減期とは何ですか。
Q181 放射能による被害を考える場合に参考になる概念を教えてください,
Q182 放射能の程度と人体への影響の関連について教えてください。
Q183 避難指示の根拠は何ですか,
Q184 屋内退避,避難の目安は何ですか。
Q185 いつまで避難しなくてはいけないのですか。

と、弁護士の「法律相談」の範囲の広さに驚嘆します(そりゃ枝野官房長官は弁護士ですけど)。

で、問題はここから

Q188 原子力事業者,原子力機器メーカーの責任を教えてください。
A 原子力事業者の責任については,「原子炉の運転等の際,当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは,当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。但し,その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは,この限りではない。」(同法3条1項)に規定されています。
1項本文は,原子力事業者の無過失責任を規定しています。問題は但書です。想定外の地震といえば異常に巨大な天災地変になるとすると容易に免責されてしまいます。過小評価すれば免責されるのはおかしな話です。原発の耐震設計では,極めてまれであるが発生する可能性のある地震をさらに不確かさを考慮して想定しなければならないのですから,異常に巨大な天災地変とすべきではないと考えます
原子力機器のメーカーの責任については認めません。同法4条1項に「前条の場合においては,同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は,その損害を賠償する責めに任じない」と規定して原子力事業者に責任を集中しています。そして同条3項に「製造物責任法の規定は適用しない」と規定して製造物責任を認めません。原子力発電所の安全性確保に重大な責任を負っている原子力機器メーカーの責任を認めないのは法の欠陥だと考えます。


Q190  民法の不法行為による損害賠償請求,国家賠償法による損害賠償請求は可能ですか。
A 可能です。原子力の損害に関する法律には,それらの適用を排除する旨の規定は存在しません。また,同法の目的は,被害者の保護を図り,及び原子力事業の健全な発達に資すること(同法1条)ですから,民法或いは国家賠償法の適用事例が存在し,被害者の保護を図る必要がある場合に,これを排除することは,同法の目的に反することになります。
例えば,報道されているように,廃炉を免れようとして海水注入が遅れ,今回の事故に至ったとしたならば,民法709条の責任は生じます。

Q192 農産物の出荷制限の指示を出しておきながら,食べても人体に影響を及ぼさないという政府報道はどのように理解したらいいのでしょうか。
A 食品衛生法における今回の暫定規制値は, 原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」を採用したものですが, その指標の作成は, I C R P 等の国際的動向を踏まえ, 甲状腺の線量年5 0 ミリシーベルトを基礎にして食品の摂取量等を考慮して策定されたものです。放射線防護の観点から遵守しなければならない基準ですので,農作物の出荷制限は, 止むを得ない措置です。
それでいながら,人体に影響する程度の放射線量ではないというのは,混乱させるだけの公報です。人体に対する影響は明確ではなく,低線量でも人体に対する影響があることもあるので出荷制限をしているが,低線量であるほど人体に与える影響が顕在化する確率が少なくなると考えられるという程度にとどめるべきでしょう。
なお,農産物の原産地表示が全県表示であるから,制限値を超えない農産物の生産地のものも出荷制限すると広報されましたが, きめ細かい生産地表示に改めれば解消できる問題です。また,洗えば放射線量が減少すると広報しているのですから,洗ったうえで放射線量を測定すれば,制限値を超えないかもしれません。政府の対応は,風評被害を助長することになりかねません。

上のほうは法律的な主張として成り立つのかもしれませんが、広報の仕方や野菜の洗い方まで日弁連は心配しなくても国民の自由と正義は守られると思うのですが・・・

東電の責任や国の手厚い補償を求めるというのは日弁連の一つの活動として弁護士自治に基づいてやっていただければいいと思ういますが、「法律相談Q&A」であれば、損害賠償というのは原子力損害賠償法や不法行為(国賠?)の要件を満たすこと、そして因果関係のある損害であること、損害額は訴える側が立証する責任があること、(そしてその結果ほとんどのケースにおいては損害賠償額は損害が発生する前の状態に完全に回復する額には、(特に主観的には)足りないこと)をきちんと説明すべきではないかと思います。

日弁連はあくまでも法律の専門家であり、法律的解決にはおのずから限界があることを周知することで、被災者が「損害賠償請求」に過度に期待せず、別の枠組み(たとえば特別立法による補償など)を別のルートを使って働きかける必要性に気づかせることも重要な役割ではないかと思います。

ちょっと偉そうなことを言いましたが、仕事で相談する弁護士も、「紛争解決にあたってどのような枠組みを使うのが一番適切か」という視点から相談に乗ってくれる人の方が信頼できるので。


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カウンター・ウエイト

2011-03-30 | 原発事故・節電・原発問題

節電対応で事務所の廊下はほとんど照明を落とし、暖房便座も止めたりしていると「まあなくても不都合はないもの」が結構あるのに気がつきます。
(「一番なくてもいいのはお前の出社だろう」という突っ込みは禁止)

エレベーターも運転台数を減らしているので2~3フロアなら歩くようにしていると、なんとなく身体によさそうだったりしますが、今日エレベーターに乗ったらたまたま一人。

これはもったいない!

ただ、よく考えると、エレベーターは籠とつながったワイヤの反対側にカウンター・ウエイト(釣合い錘)がついていてバランスしているはずなので、一人で上るときはウエイト側の方が重く、ほとんど電力を使わずにエコなのではなかろうか、と考えて調べてみました。
wikipediaによると 

カウンターウェイトの重さは無積載かご重量の1.5倍程の重さがあるが、かご側の乗客が満員状態になるとカウンターウェイト側はかご側の3/4程度の重量になるように設計されている。  

だとすれば、上りなら一人しかいなくても気後れする必要はなく、下りはできれば少し待って他の人と乗りあうのがいい、というのが小さな省エネの知恵のようです。


ちなみに、カウンターウエイトがどのへんに設定されてるかは今回の大震災や原発事故にあたっての野党やマスコミ報道への視点としても大事かもしれません。

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『オーケストラ!』

2011-03-27 | キネマ

 「人が死なない」という前提だと、大きく分けてラブ・ストーリー、おバカコメディー(たまに死ぬ)と中高年ががんばる話になるのですが、一番最後のカテゴリーを選ぶ傾向にあるのは歳のせいかもしれません。

さて、この作品は旧ソ連時代に共産党からのユダヤ系演奏家の排斥の指令を拒絶したため解雇され、劇場の掃除人として働いているボリショイ交響楽団の元主席指揮者だったアンドレイ・フィリポフが、キャンセルの代役公演を探していたパリの劇場からのファックスを見て、昔のメンバーでオーケストラを再結成しボリショイ交響楽団になりすましてパリに乗り込む。そしてフィリポフが指名した若手女性ソリストとは実は・・・という話です。

そして最後の公演のところで大団円を迎える、というきちんと定石を踏まえたうえで、かつ魅力あふれる作品になっています。

登場人物の造形がユーモアと皮肉たっぷりで、ロシア訛りのフランス語(字幕はがんばっていますがフランス人は大笑いなんだろうな)や楽団員のユダヤ人やジプシー(って言葉使っていいんだっけ?)のふるまい、パリの劇場の支配人や元共産党員、ロシアの成金などポイントごとの配役が効いています。
このへんの脇役の生かし方はさすがフランス映画です。


苦難や悲劇を乗り越えた先に希望がある映画、いい選択でした。

 


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敷引特約に関する最高裁判決

2011-03-26 | 法律・裁判・弁護士

「一票の格差」判決とともに最高裁からこんな判決も出てました

敷金から修繕費「高すぎなければ有効」 最高裁判決  

これは関西地方で多い商慣習で、賃貸住宅の敷金や保証金を返す際、修繕費相当として一定金額を差し引くと定めた契約条項(敷引特約)の有効性が争われた事案です。  

賃貸住宅については昨年くらいから「更新料」条項の有効性を問う訴訟が合い次いでいて、現在何件か上告されていたと思いますが、それを占う意味でも参考になると思います。  


判決文(参照)によると、本件は賃貸借契約において、敷引の額は入居期間によって漸増するようあらかじめ決められていて、「賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる損耗や経年により自然に生ずる損耗については,本件敷引金により賄い,上告人は原状回復を要しない」と規定さているところの敷引特約の有効性が争われた事案です。  

そしてこの敷引特約について、消費者側(一審、二審で敗訴したので上告人)は、建物の賃貸借では通常損耗等(たとえば畳や壁クロスの日焼けなどの誰が住んだとしても普通おきる資産の減価)は通常は賃料対価としてその中に含まれるべきにもかかわらず、賃料に加えて賃借人に通常損耗等の補修費用を負担させる本件敷引特約は賃借人に二重の負担を負わせる不合理な特約であるから消費者契約法10条により無効である、と主張しました。  


これに対し判決はまず、  

賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものであるから,賃借人は,特約のない限り,通常損耗等についての原状回復義務を負わず,その補修費用を負担する義務も負わない。  

したがって本件特約は消費者である賃借人の義務を加重するもの(=消費者契約法10条に形式的には該当する)である、とします。 
※ 今回の結論にかかわらず、借りる側としてこの基本原則を理解しておくことは、マンションやアパートを借りるときには大事だと思います。  

つぎに消費者契約法10条で定める契約条項が無効になる要件:当該条項が民法1条2項に規定する基本原則、すなわち信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるかについてつぎのように伸べます。(太字は筆者)  

賃貸借契約に敷引特約が付され,賃貸人が取得することになる金員(いわゆる敷引金)の額について契約書に明示されている場合には,賃借人は,賃料の額に加え,敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結するのであって,賃借人の負担については明確に合意されている。そして,通常損耗等の補修費用は,賃料にこれを含ませてその回収が図られているのが通常だとしても,これに充てるべき金員を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合には,その反面において,上記補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるのが相当であって,敷引特約によって賃借人が上記補修費用を二重に負担するということはできない。  

そして  

また,上記補修費用に充てるために賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは,通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から,あながち不合理なものとはいえず,敷引特約が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであると直ちにいうことはできない。  

と、一般的には明示的に合意された場合には敷引特約(やそこにおいて通常損耗を賃借人負担とすること)は有効であるとします。
ただ、そのような特約が常に有効なわけではなく、次のような場合には無効になりうると示唆します。  

敷引金の額が敷引特約の趣旨からみて高額に過ぎる場合には,賃貸人と賃借人との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差を背景に,賃借人が一方的に不利益な負担を余儀なくされたものとみるべき場合が多いといえる。  

そして敷引特約が無効になるのは以下のような場合であるとします。(下線は原文のまま

消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である。   

そしてこれを本件についてみると

  • 本件敷引金の額が、契約の経過年数や本件建物の場所、専有面積等に照らし、通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。
  • 本件敷引金の額は、経過年数に応じて賃料の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっている。
  • 賃借人は、他に賃料の1か月分の更新料の支払義務を負うほかには,礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない

ので、敷引金の額が高額に過ぎることはなく、したがって、本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできないと結論付けています。  


この判決の意義としては、敷引特約や通常損耗を借主負担とする特約について、それを一律に有効・無効の判断をせず、個別の契約条件(=当事者にどのような合意があったか)によって判断する、としたところにあると思います。 

おそらく更新料についても、合意内容(契約に明示されていたか)やその条件の合理性を個別に判断することになるのではないかと思われます。  

これは、東京都の賃貸住宅紛争防止条例賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(いわゆる「東京ルール」)とも整合性が取れていますし、現実的な落ち着きだったのではないかと思います。  

これらが一律「無効」とされた場合、貸金業の過払い金返還訴訟同様に請求すれば必ず取れるという「七面鳥撃ち」のような訴訟になるので、過払い金訴訟の次の「草刈場」として弁護士が殺到し、零細な貸家業も含めて賃貸住宅業が混乱するという展開も想定されたのですが、それは防げそうです。  

一方、今回具体的に2年間入居後の賃料の2倍弱程度の通常損耗を賃借人に負担させることを有効としたことから、これを中心に一つの相場が作られるのではないかと思います。
ただ、この水準は結構高いところ(賃貸人に有利なところ)で線引きがされたかな、という印象を受けます。
最高裁の判断基準は「信義則に反しない」というかなり広めのストライクゾーンだからなのでしょうけど、これがきっかけで貸家業が強気になって、かえって相場が上がるようにならなければいいと思います。
(まあ、それが行き過ぎると、また訴訟が起こって「実費との著しい乖離」などがメルクマールになったり、代物弁済同様精算義務を課されたりと、行きつ戻りつしながら中期的には妥当な相場が形成されるのでしょうね)

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『ホルテンさんのはじめての冒険』

2011-03-25 | キネマ

ノルウェーの映画

ノルウェーの首都オスロと第2の都市ベルゲンを結ぶ「ベルゲン急行」に乗務する運転士のホルテンさん。40年にわたって毎日決まった時刻に決まった仕事を生真面目にこなしてきた彼も、とうとう定年を迎えることになった。しかし定年退職の日、前の晩にお祝いの席を開いてもらった彼は、あろうことか人生初の大遅刻をしてしまう・・・
生真面目一徹だったホルテンさんがその後つぎつぎと巻き込まれるトラブルをきっかけにして、定年後の新しい人生を踏み出す、という映画です。

舞台がノルウェーのオスロの冬ということもあり、また室内の照度も節電モードの日本より低い上に、ホルテンさんは極めて無口で、にぎやかな場面は退職祝いの席ぐらいしかなく、他の登場人物も穏やかな人ばかりなので、とても落ち着いた映画ですが、要所要所の設定やエピソードが効いていて、ニヤッとさせられます。

「人生は手遅ればかりだ。でも逆に考えれば何でも間に合う」という言葉に後押しされて「定年後」(しかも67歳)であっても「老後」ではない人生にゆっくり一歩を踏み出すホルテンさんの幸せを祈りたい気持ちになります。

 

予告編を下にのせますが、けっこうネタバレがあるので、先に見ないほうがいいかもしれません。

 

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東電のやる気

2011-03-24 | 原発事故・節電・原発問題

この状況で揚げ足を取るようなことは言いたくはないのですが、昨日から東京電力のホームページの冒頭に「お詫び」が出てます。

http://www.tepco.co.jp/index-j.html

 

計画停電については最後の段落で

一日も早く安定的に電気を送り届けることができるよう、復旧作業に全力を尽くしておりますので

(太字筆者)とあるので引き続きがんばってもらいたいものです。

ところが真ん中の段落で原発については

現在、政府・関係各省庁、自治体のご支援とご協力を仰ぎながら、緊密に連携をはかりつつ、事態の悪化防止に向けて、全力を挙げて懸命に取り組んでおります。

目標は「悪化防止」=現状維持であって、「事態の解決」や「収束」じゃないんですね・・・
確かに現時点では効果的な対策がないのかもしれませんが、懸命に取り組む目標が現状維持では困ります。
それに現場の志気も下がるんじゃないでしょうか。

不必要に楽観的なことを言うのがいいとは思わないのですが、広報や法務が責任を回避しようと言い回しをいじくった挙句に末期症状の患者に対する医者のセリフみたいになってしまったとしたら残念です。


それとも、東電は積極的に解決する当事者能力がなくなってしまっているから他人行儀なことを書いているのでしょうか。
そうだとすると、主導権を握っているのが誰かがもっと心配なのですが・・・
("Helicopter Ben"ならぬ"Helicopter Kan"だったらいやだな)

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Our son of a bitch

2011-03-23 | キネマ
「人が死なない」という条件をつけると意外と該当する映画が少ないことに愕然としながら気分転換に借りてきたのが「松嶋&町山 未公開映画を観るTV」で紹介された映画のDVD化企画のうちの一本。
『スーパーサイズ・ミー』でマクドナルドの連続1ヶ月3食食べ続けに自ら挑戦したスパーロック監督がオサマ・ビン・ラディンを探しに中東を訪れて現地の人に聞いて回るというドキュメンタリータッチの映画です。

アル・カイダ自体は中東全体で根強い支持をされているというわけではなく、批判も多いが、それ以上に現状の長期独裁政権(2009年公開なのでエジプトなど)への不満と政権を支持するアメリカへの根強い不信感がクローズアップされてくるという展開になっています。

まあ、切り口自体は既にテレビのドキュメンタリーで取り上げられていそうで『スーパーサイズ・ミー』ほど個人的にはインパクトはなかったのですが、こういうのが3大ネットワークでは取り上げられないで映画になるというあたりがアメリカの国情なのでしょうか。


この映画のなかで、アメリカが(その掲げる理想にも関わらず)自国の利益のために独裁政権を支援してきた歴史を象徴する言葉として、そこでもフランクリン・D・ルーズヴェルトがニカラグアのソモザ大統領について言った"He may be a son of a bitch, but he's our son of a bitch."という言葉(参照)が引用されています。


?搶ャ平の「白猫黒猫論」もそうですが、「役に立つ」ことを最優先にすべきときもあるわけで、その意味では今回菅総理が震災救援・復旧担当として入閣を打診するなら、自民党の谷垣総裁でなく、小沢一郎ではないでしょうか。

もともと岩手は「小沢王国」なので土建業者などには太いネットワークがあるはずで、急場の課題である瓦礫の撤去と道路の応急修理による物資輸送ルートの確保には最適の人材ではないでしょうか。
それに今回は「小沢詣で」をする業者だけでは到底処理しきれないほどの仕事量があります。
仕事がないところに公共事業を出すから利権に結びつくのであって、キャパを超える仕事量があれば利権にはつながらないはずです。
「小沢王国」の君主としては東北3県+福島・茨城の救援・復旧を頼まれたら「できない」とはいえないはずだし「一兵卒」としてコネクションを総動員して働くのではないかと。
それに、資金使途には厳しい眼が向けられるし今度問題になったらさすがにアウトなのは本人も十分承知でしょう。


いいアイデアだと思うんだけどなぁ。












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正常性バイアス

2011-03-21 | 天災・人災

中日新聞【地震特集「備える」】 から
避難遅らす「正常性バイアス」 広瀬弘忠・東京女子大教授  

避難が遅くなる仕組みは?  

現代人は今、危険の少ない社会で生活している。安全だから、危険を感じすぎると、日常生活に支障が出てしまう。だから、危険を感知する能力を下げようとする適応機能が働く。これまでの経験から「大丈夫だ」と思ってしまいがちだ。これが「正常性バイアス」と呼ばれるものだ。  

災害でパニックはめったに起こらないと指摘している。  

私たちの調査で、災害でパニックが起こったと確認できる例はほとんどない。特に日本のように地域の人同士がつながっている社会では、パニックは起こりにくい。「自分を犠牲にしても」と互いに助け合おうとする心理が強くなるからだ。  
現状では、強い正常性バイアスの結果、パニックになる以前、つまり何が起こっているのか分からないうちに災害に巻き込まれる。日本では避難警報が出ても避難率はいつもゼロから数%程度と低いことからも明らかだ。  

逃げ遅れないために必要なことは?  

いざというときに正常性バイアスを打ち破り、「危険だ」と直感できるような訓練をしておくことが大切だ。そのためにはある程度、災害の恐怖感を体に覚えさせておかなければならない。  

災害からまずは身の安全を図る、という初動が大事なのは記事の指摘の通りだと思いますが、難しいのは初動後ひと段落着いた時点で自分の身の安全が図られているのかをどう判断するかです。 

たとえば地震や津波から逃れた後に「さらにもっと大きな地震や津波が来るのではないか」ということをどう判断するか-正常性バイアスに注意する一方で、逆に危険性を過大評価してパニックにもならないためにはどうすればいいか-は難しい問題だと思います。  

今回でも買いだめは「危険バイアス」(というのかな?)がかかっているように思いますし、原発事故のリスク評価をめぐる混乱は双方入り乱れて事実関係を横においてお互い論者が相手のバイアスを責め合っている感じがします。  


そしてこの「正常バイアス」は企業活動とかサラリーマン生活について、より真剣に受け止めたほうがいいかもしれません。  

「これまでの経験から「大丈夫だ」と思ってしまいがちだ。」というのは『ブラック・スワン』でも幾多の例が挙げられています。  

また、下の引用部分の「現代人」を「40代の正社員」と置き換えてみるのもいいとおもいます(自省をこめて)。  

現代人は今、危険の少ない社会で生活している。安全だから、危険を感じすぎると、日常生活に支障が出てしまう。だから、危険を感知する能力を下げようとする適応機能が働く。  

そしてさらに問題なのは  

特に日本のように地域の人同士がつながっている社会では、パニックは起こりにくい。「自分を犠牲にしても」と互いに助け合おうとする心理が強くなるからだ。  

の部分で「地域の人」=「正社員」に、「自分」=「非正規雇用の従業員」に置き換え、しかもそこで安全が確保できて自分には津波が及ばないと思っていることなのかもしれません。
(一度雇用が極端に流動化してみると、企業も人材の安定的な確保のために一定の雇用保障のしくみを作ることになって、どこかに「相場」が落ち着くのかもしれませんね-自分の安全を考慮しないとw)

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バグダッドの死神

2011-03-18 | 天災・人災

今回の地震と原発事故で首都圏から避難する人も出ているようです。

そこは個人の考え次第ですが、特定のリスクは避けられてもリスク全体を避けることは出来ない、というのが標記の寓話。

昔のエントリで取り上げたようにいくつかのバリエーションがあるようですが大筋はこんな話

バグダッドの商人が召使を市場に買い物に行かせたところ、ガタガタ震えながら戻ってきた。
召使曰く
「市場で死神に声をかけられてしまいました。死神は私を脅すしぐさをしたのです。ご主人様、どうか馬をお貸しください。馬でサマラまで逃げれば死神から逃れられるでしょう」
商人が馬を貸すと、召使はそれにまたがり一目散に逃げて行った。

その後商人が市場に行くと、市場の人ごみの中に死神を見つけたので
「朝私の召使に会ったときに、何で脅すようなしぐさをしたんだ?」と聞いた。

「脅かしたりなどしていない」と死神は言った。
「なにしろあいつとは今晩サマラで会うはずだったのにバグダッドで出くわしたから、こっちがびっくりしたんだ」

避難・疎開するというのも一つの選択肢だと思いますが、大事なのはそれでひと段落、と思わないことなんでしょうね。

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スポンサー様のご意向で

2011-03-17 | 東日本大震災

やはり皆思ってたんですね。

「東北地方太平洋沖地震」にあたってACジャパンのCM放送についてのお詫びとお知らせ

現在、民放テレビ・ラジオ各局において、震災の報道の合間にACジャパンのCMが多数放送されております。
これらのCMは、ACジャパンの会員社である放送各局でACジャパンが制作した公共広告を放送していただくためにご提供し、放送局のご判断で必要と思われた場合にお使いいただく広告素材です。

未曾有の大惨事となったこの度のことを受けて、多くの企業がCMの放送を自粛され、ACジャパンのCMが放送されることになりました。これらのCMはかならずしも非常時に対応できるようには作られておりません。そのため、視聴者の皆様に大変ご不快な思いをおかけしましたことを、心より深くお詫び申し上げます。

以前広報をやってた人の話では、ACの広告はCM枠を取っていたスポンサー企業が不祥事などでCMを自粛するときなどによく流されるそうです。

今回、震災の報道に当たってCM抜きで放映していた民放がCMを再開したものの、逆にスポンサーの方が放映を自粛したのでこういうことが起きたのでしょう。

テレビ局としてはCM枠を提供しない限り料金を請求できないし、スポンサー側としては、提供したのにCM放映を断って何も流さない(番組を流す)と税務署から寄付として扱われてしまったりするというような事情があるのかもしれませんが、もう少しスマートな解決があってもよさそうです。

逆に、下を見るとCM放映時の緊急地震速報の割り込みはもっと積極的にやったほうがスポンサーのイメージアップにもなると思います。
また、速報性では携帯電話とも勝負しなければならないのですから、テレビというメディアの生き残りをかけて取り組むべき課題かもしれません。

(それにしても昼間の時間帯ってCMがこんなに続けて流されてるんですね・・・)



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船頭多くして

2011-03-17 | 原発事故・節電・原発問題

ここ一番で指揮命令系統は大丈夫?という話2つ

放水に放射線の壁 ヘリ投入「命がけ」 によると

「本当に最悪の事態になったら、東日本がつぶれる、ということも想定しなければならない。そういうことへの危機感が(東京電力に)非常に薄い」・・・菅首相はそう語ったうえで、「自分はものすごく原子力に詳しい」とも自負し、危機回避を主導する意気込みを示した。

一方で

もともと防衛省・自衛隊サイドには危険な任務の割に効果がハッキリしないことへの疑念もある。「我々に原発のノウハウはない。防護服は核攻撃された後でも活動できるようになっているが、(原子炉から放出される)高濃度の放射能には耐えられない」(自衛隊幹部)との慎重論がくすぶる。
防衛省内には・・・米軍への期待感もあった。しかし・・・米側も、福島第1原発については放射線被害への警戒感を隠さない。15日には消火ポンプ車2台を東電に引き渡したが、地上からの給水活動には加わらず・・・

さらに、警視庁(=東京)から機動隊の放水車を動員するようで、今度は別の役所が出てきます。

それに、原子力安全・保安院という組織の役割もよくわかりません。
(技術者が多いようで、慣れない記者会見では見ていて気の毒なときもしばしばあります)

専門家の意見を聞いて責任者が実現可能性のある判断し、現場はそれを遂行する、というところができていないようで心配です。



もう一つは東京電力。

何で社長が記者会見に出てこない?という批判もありますが、「原発事故」と「電力供給」という性格の違った、しかしともに重要な問題なので、それぞれの担当責任者が出てくること自体のはいいと思うのですが、肝心の副社長の説明がいまひとつはっきりしません。

この副社長は本当に担当なんだろうか、と有価証券報告書を見てみると、原発関係では「原子力・立地本部本部長」として武藤栄代表取締役副社長が、部副本部長として皷紀男代表取締役副社長と小森明生常務取締役がいます。
電力供給関係では、「電力流通本部長」として藤本孝代表取締役副社長、副本部長として山口博常務取締役がいます。

他所さまの会社のことを余計なお世話を承知で言うと、ちょっと上が重すぎる感じがします。これだと機動的な意思決定はできなそうだし、責任の所在も曖昧になりそうです。
特に原子力関係は副本部長の皷氏のほうが取締役の序列も年次も武藤氏より上、さらに執行役員で副本部長がもう一人います。しかも常任監査役も3人に2人が原子力畑です。
原子力畑はエリートコースなので、割り振るポストを増やしているのかもしれません。
そうだとするときちんとした判断ができるのかもっと心配ですね。

ちなみに小宮山元東大総長が社外監査役をやっています。
ここに大きな「看板」を持ってきたのは、今後違った意味で会社に対して効いてくるかもしれませんね。(小宮山氏本人に対しても効いてくるかもしれませんが・・・)

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災い転じて

2011-03-16 | 原発事故・節電・原発問題

首都圏の電力不足は当分続くことが予想され鉄道の輸送量も復活しないなかで、企業が活動を続けていくには、今後在宅勤務が現実的なものになると思います。

今まではなんだかんだ言って会社に出社し、同僚の顔を見て、自席について、会議をして、というのがなんとなく仕事をしている感があって、在宅勤務というのは一部の企業以外には浸透していませんでしたが、今後は必要に迫られて広がるのではないかと思います。

在宅勤務のメリットは、仕事が効率的になることです。
たとえば会議をするにも物理的に顔を合わせることがないので、事前に議題や論点を示すことが必須だし、その場で議事録を書く必要もあるので議論の結論も明確になります。
そして、会議に参加しているが発言をしない人、無駄な発現をする人をあぶりだすことになります。

なので、在宅勤務・テレワークが増えると、業務に貢献していない人が誰かが明確になります。
そしてその多くは40代・50台の(中間)管理職-研修などでよく言われるマネジメントをしない「乗っかり型の上司」-なのではないかと想定されます。
企業としてもそういう存在は看過できなくなるので、そのうちリストラのターゲットになります。

そうすれば、若年層のチャンスが増え、組織も効率化し、ひいては世代間の所得移転が実現し、景気回復にも貢献することになります。


第二次世界大戦後の日本も、企業の役員や役所の高官は財閥解体や公職追放などでいなくなった結果、当時の若手が戦後の高度成長の旗振り役になったわけで、「重し」を一気に取り去るのは、今後の日本の発展にとって必須なように思います。


僕は既に「重し」の仲間入りをしてしまっているので、在宅勤務を命ぜられてしばらくして会社に顔を出したら自分以外は普通に会社に勤務していて、「あれ、何しに来たんですか?」なんて言われることを覚悟しないといけませんがw

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とりあえず早寝早起き

2011-03-14 | 原発事故・節電・原発問題

地震災害の復旧やまだ収まっていない福島原発問題、電力供給不足による輪番停電への対応などブログを更新している場合ではないのですが、現時点での備忘。

・被災地の不明者の捜索・復旧はとにかく物量と人員を投入するしかないと思うが、各国の救助隊や、自衛隊・消防・警察、(今後登場するであろう)ボランティアをいかに上手に配分するかが大事だろう。(報道では各所で救助・救援が進んでいるようだが、報道はそれが可能な所に限定されているので「手が回っていないのはどこか」が不明)

・福島原発はいろいろ文句を言っても結局東電しか対応する能力のある当事者がいないのでがんばってもらうしかない。

・もっと突き詰めて言うと、自動制御が機能しない今となっては現場で被曝リスク覚悟で作業(たとえば注水ポンプを作動させるとか中央監視室でなく格納容器に近いところでの作業)する作業員にかかっている。彼らを尊敬しながら期待するしかないし、東電のえらいさんが駒のように扱ったりしないことを祈ろう。

(以下、被災地の救助・復興以外に首都圏にいる僕らが気をつけるべきこと)

・輪番停電はぎりぎりまで停電を避けようと東電が送電の調整を努力すると逆に「狼少年」になってしまうというジレンマがある。試行錯誤で落着点を探すしかないのではないか。

・今日は電力消費のピークが夜間だったが、震災の影響で稼動をとめている工場が復活すると、もっと厳しくなるだろう。更に冷房シーズンになれば電力消費は倍増する。

・一方で原発停止分の電力供給はそう簡単には復旧しない。さらに、ここ数日新潟・長野で中規模の地震が頻発しており、ここで復旧したばかりの柏崎刈羽原発(確か発電量は東電原発で最大)まで休止すると、経済活動に相当のダメージが出る。
ここは天に祈るしかない。

・ということで、電力不足問題は、東電は当面4月までと言っているが、停電はさらに頻繁にかつ長期化するのではないか。

・したがって日常生活や通勤でのストレスが続くので、早く電力不足下の生活ペースに慣れて体力・気力の消耗を防ぐのが重要。

・なので、朝は早起きして空いているときに出勤、そのために早く寝て体力温存、というのが当面の一番の対策ではないか。(夜の飲み会も当分ないでしょうし)

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『銃・病原菌・鉄』

2011-03-11 | 乱読日記
2000年の本ですが、積読したままなんとなく旬が過ぎてしまった感じがして放っておいたものが年末の書棚整理で復活。

乱暴なくくりをすると『デフレの正体』同様、事実を基に因果関係を精緻に分析していくことで、世間に流布している考えの誤りを正すというスタイルの本です。

ただ本書は、「現代の人類社会の不均衡の原因は何か」を人類の1万3000年の歴史を遡って論じているというスケールの違いがあります。

タイトルの「銃・病原菌・鉄」は現代社会において西欧文明が支配的な地位を占めている直接的な原因を示していますが、なぜ西欧文明がそれらを手にすることができたのか、という更に遡った考察が本書のハイライトでもあります。


本書を読むと小さい運不運、成功・失敗に一喜一憂しなくならなくなる、という直接的な効果も得られます。





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受験競争の正体(『デフレの正体』応用編)

2011-03-10 | よしなしごと

朝日新聞の夕刊のトップ記事
志願者1位、明治譲らず

早稲田(一般入試の募集人員5630人)の志願者が11万3653人で確定した後、明治(同4582人)は8日に11万3864人になった。

最近は大学受験者数が60万人を切っているので(参照)、一人で複数学部を受験する人を考えても受験生10~20人に一人は早稲田や明治を受けているということになりますね。

あと募集人員の多さも印象的で、辞退者を考えなければ大学受験生の1%は早稲田に入学することになりそうです。
(5600人も学生がいると、確かに早稲田を出たからといって全員が内定をもらえるとは限らないということも実感します)


『デフレの正体』流にこうやって絶対数を見ると、実は京大や早稲田、同志社などの名門大学も大学相互の比較はともかく受験者数が減って定員が代わらない以上合格者の絶対的なレベルは下がってきていて実は入りやすくなってきているのではないかということがわかります。

カンニング問題で「受験制度の根幹を揺るがす」と大学当局者が言っていたのは、それをバラしてしまったからなのでしょうか。
「Yahoo知恵袋」ですぐ正答が寄せられたということは、問題のレベルが下がった、またはきちんと勉強していれば比較的容易に解けるような(難問奇問でない)良問を出すということなのかもしれません。

そして結構合格へのハードルが低いということが知れてしまうと、京大としては就職などでの学歴の威光が効かなくなるでしょうし、私立大学においては大学受験を回避するために附属小・中学校の人気が高まり、それらを増設することで収益増を図るというビジネスモデルが揺らぐことになるのかも知れませんね。

そうだとすると、大学関係者がいきりたつのも(その当否はさておき)わかるような気もします。

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