月水食堂のお弁当

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竹本孝之 後編

2011-05-10 19:24:02 | 日記
なんだ、お前も実は隠れファンだろ?という顔でオリビアは私を見た。

が、私は竹本孝之には昔から興味ないし、彼が今なおアイドルの名残やオーラを残しているとも考えにくい。

しかし、竹本孝之のヒット曲は私とて知っている。
出だしからガンガン攻めてファンを熱狂させたあのワイルドさは印象的だった。

竹本孝之が人気を征する頃、私はたぶん20歳前だったと思う。
当時、私は調理員として大手企業のレストラン厨房で働いていた。

そこへ途中入社で配属されてきたのがまだ16歳だったウィリー。

ウィリーはビー玉みたいな大きな瞳と、もちもちした白い肌の男の子。
いつも体を傾けて歩き、しゃべりすぎてはたまによだれをたらす精神的に幼い少年だった。

まだ中学を出て間もないというのに、実家から出され会社の寮に入れられ 昼は厨房で仕事。夜は調理師学校へ通うといった生活をしていた。

ウィリーは人なつこく、一見お馬鹿さんに見せながら、実は脅威の計算王で、そろばんでは段を持っていた。

ウィリーは何故か私になつき、いつも私の後ろを子犬のようについてきた。
遠くにいても、高い声で
「ぽぽんさ~ん」と叫び手を振った。

友人たちはそんなウィリーと私の関係をちゃかし、私は辟易しながらもどこかウィリーを憎みきれずにいた。

当時付き合っていた私の恋人に対し、ヤキモチをやきながらも羨望の気持ちを訴えた。

ウィリーは、手先が器用で、よく私の爪を切りたがり切った後はきれいに磨いでくれた。

今考えると不思議な存在で、当時ウィリーが憧れていた竹本孝之の歌を聴かされながら、ウィリーの爪とぎに心地よさを感じていた。

そう私にとって、竹本孝之=ウィリーなのだ。

あのウィリーは今どこで暮らしているのかな?