歩かない旅人

 彼がなした馬鹿げたこと・・・彼がなさなかった馬鹿げたことが・・・人間の後悔を半分づつ引き受ける。ヴァレリー

産経新聞『産経抄』を読んで

2016-02-26 11:35:57 | 私の好きな歌です。

 

  

 

 我が家のテレビもシャープのアクオスです。幕張副都心にある、シャープのシャープビルにも見学に行ったのも、ついこの間のような気がします。

   

 世の中は何とも言えない、分からない力に動かされているようです。100メートルを超えるシャープビルで散々シャープの自慢話を聞かされました。亀山工場では生産が間に合わなくなって、堺市の方にもっと大きい工場を作るという話です。

   

 どうしてこんな結果になって仕舞ったか、私にはさっぱりわかりません。テレビは故障もなくきれいな画面で私たち老夫婦を楽しませていますが、あの時案内した若い女子社員は、どうなってしまうのでしょう。

 

 🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺

 

 【産経抄】 2016・2・26付

シャープは「遠い星」を追い求めることができるのか 「従業員の雇用は守る」…その約束を信じたい 

 

 シャープの創業者、早川徳次さんを主人公にした、芝居が、昭和49年に上演されている。『遠い星』という題名だった。当時80歳のご本人は、「恥ずかしい」と照れていた。

 ▼東京生まれの早川さんは、幼い頃に養子に出され、小学校を2年で中退する。丁稚(でっち)奉公先で身につけた金属細工の技術を生かして、19歳で独立を果たした。3年後に発明するのが、後に会社の名前にもなる、シャープペンシルである。

   

 ▼ところが、大正12年の関東大震災で工場は全焼、妻と2人の子供を失った。大阪へ移って、ラジオの国産第1号を完成させたところで、舞台の幕は下りる。「遠い星」とは、逆境のなか気持ちを奮い立たせて追い求めた「希望の星」を指す。会社は、戦後もいくつもの危機を乗り越え、世界初、日本初の製品で業界をリードしてきた。

 ▼そのシャープが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に6600億円で買収されることになった。鴻海は「鴻飛千里 海納百川」に由来する。大きな雁(がん)は千里を飛び、海はすべての川を納める、という意味らしい。

   

▼社名の通り、小さな町工場は40年間で、世界最大のEMS(電子機器受託製造)企業にまで、大きく羽ばたいた。一代で築き上げた郭台銘会長もまた、立志伝中の人物といえる。「従業員の雇用は守る」、との約束を信じたい。もちろん、先端技術の流出はあってはならない。

   

 ▼実はシャープには、恩義がある。駆け出し記者時代、悪筆が一番の悩みだった。ワープロの「書院」との出合いがなかったら、仕事を続けていられなかっただろう。わが家の居間に鎮座するのは、「亀山モデル」の液晶テレビ「アクオス」である。ファンの一人として、「遠い星」へと続く、再生の歩みにエールを送る。

 

  🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺

 

 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業という会社が、チャイナの息がかかっているかどうかがなんとなく気にかかりますが、日本の景気も中々思うようにいかないで、心配の種です。

 しかし大型電気店に行けば、何十台かのテレビが展示されています。日本には世界でも珍しいくらい多くの企業がテレビを製造していますし、電機会社も切磋琢磨で技を磨いています。

   

 これを他山の石とせず、日本の技術に関する好奇心と追及力は世界でも群を抜いています。世界を導く技術力は、シャープがどうなってもまだまだ健在でしょう。