歩かない旅人

 彼がなした馬鹿げたこと・・・彼がなさなかった馬鹿げたことが・・・人間の後悔を半分づつ引き受ける。ヴァレリー

我が祖国の行方に無関心でいられるか!

2016-02-13 09:50:40 | 月刊雑誌「WいLL」を読んで

 

  

 

スカパーなどで朝8時から共同通信のアメリカ大使館側のほんの小さな一角で、月曜日から金曜日まで5日間2時間余に渡ってニュース解説をしています。その中のメンバーの一人が木曜日担当の青山繁晴氏です。

   

 この【虎の門ニュース8時入り】では、地上波ではほとんど取り上げないような、取り上げられないようなニュースを、打ち合わせなく話しまくります。

   

 なかでも断然群を抜いているのが木曜日でガラス窓の向こう側には人の群れが出来ます。そんな中で、青山氏は普通のメディアでは絶対に避けて通るようなニュースを実に分かりやすく解説してくれます。

 しかしいつも青山氏の超人ぶりには魂消ていますが、その言論活動も、切れ味が鋭く、自らの取材力には敬意と尊敬と博識ぶりと解析能力の凄さを覚えます。昨日に続いての第二弾です。

 

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 (月刊雑誌『WiLL』3月号より)

   

 澄哲録片片(ちょうてつろく・へんぺん)

           第十三回

 僕らの目的地はどこにある  (抜粋その2)

   

 独立総合研究所代表取締役社長兼・主席研究員

          青山 繁晴

 

 「日米対等」への不動の意思

 アメリカとは日本にとって何物だったか。日本は本当は、連合国に負けたのではない。それは国際連合(UN/国連は意図的な誤訳。正しくは連合国)を支配するP5(パーマネント・ファイブ)すなわち安保理の常任理事国を見れば分かる。

 日本軍はイギリスに負けるどころか、シンガポールをはじめ大英帝国の植民地から英軍を追い払った。そこにイギリス軍が戻ったのは戦後である。

 フランス軍はほぼ戦うことなく日本軍に屈服し、その植民地だった仏領インドシナに日本軍の進駐を許した。フランスが植民地支配を復活させようとしたのは、これも戦後だ。

 ソ連が日本に侵攻したのも実質的には戦後であり、中華人民共和国に至ってはその成立が対戦終結から4年後だ。

 すなわち連合国に負けたのではなくアメリカにだけ敗けた。そのためアメリカは敗戦後の日本を単独で徹底的に利用することが出来た。

 その支配構造が、敗戦から71年となる現在も、経済、政治、外交・安全保障そして社会と文化に極めて奥深くビルト・インされたままなのが真実の日本である。

 このアメリカがみずから、世界における支配構造を崩していく今、日本でも支配構造が変わるはずだ。そのさなかに政権を維持しているのが安倍総理である。安倍総理の本願は、憲法改正ではない。

   

 正確に申せば、改憲も手段でありゴールではない。ではゴールは何か。それは、日本が敗戦国を脱することである。具体的には、戦勝国アメリカに対して平等な地位に近づくことである。

 安倍さんが手元から離さない愛読書がある。もともと読書も映画も好きな政治家であるが、いざと言う時にひも解くのはこの一冊になる。それは『岸信介証言録』だ。

 オーラル・ヒストリー(当事者が語る歴史)の一冊であり、法学者が岸信介元総理にインタビューしている。その中で岸さんは、総理の座と引き換えに成立させた日米安保条約の改定、いわゆる60年安保についてこう語っている。

   

 「(前略)日米対等の立場における日本の安全保障を確立することだと思うんです。(中略)国民的な防衛に関する意識、独立の精神的基盤を確立することが一番大事なんです」

 岸元総理と安倍現総理の関係について、たとえば朝日新聞は短くはない連載を掲載した。わたしは共同通信の記者を20年務めた。記事作りの手の内は知り尽くしている。

 連載の背後にある意図があからさまに伝わって来た。安倍総理が祖父である岸さんの真の後継者であろうとしている、良い孫を演じようとしていると印象付ける記事の流れだった。

 しかし安倍さんの岸政権への関心は、独裁者まがいの一族支配にあるのでは全くない。岸元総理の「日米対等」への不動の意思こそ関心事である。

敗戦国からの脱皮の手段

 私が現在の立場(シンクタンク社長)ではなく、共同通信を辞して三菱総研の研究員だったころに安倍さんに岸政治への再評価について語ろうとしたことがある。

 安倍さんは一瞬で表情を消した。わたしは内心で驚いた。人懐っこい性格の安倍さんが、こんな無表情な顔を作ること自体が珍しいし、岸さんを大好きだという噂が政界の常識だったから、なぜこんなに嫌がるのかとも思った。

 安倍総理にこれを訪ねたことはない。だが安倍総理は、お父さんの故・安倍晋太郎元外相の写真すら、私邸にあまり飾ってない。

   

 安倍さんは世襲議員だ。世襲議員などひとりもいないに越したことはない。だが客観的に、公平に断言しよう。安倍さんは世襲議員ではあっても同族、一族にほとんど関心はない。

 だから、岸政治を孫として崇めていると言う噂に警戒的なのだ。甘利世評を気にしない人だが、これだけは嫌なのだろう。安倍総理にとって、日韓合意も改憲も、そしてTPPもみな「日米対等。それによる敗戦国からの脱皮」への手段なのである。

 わたしは、そのゴールについては安倍総理と意見が一致する。不肖ながら社長と主席研究員を務める独立総合研究所(独研)は、いかなる権力や企業からも独立し、利害関係を持たず、

 補助金の類を受け取らないと言う意味で「独立」の名を関していると同時に、「日本国の真の独立に寄与する」と言う意味でも独立総合研究所なのだから。だがプロセスについては意見が様々に異なる。

 TPPもそうだが、もっとも重い違いが昨年12月28日に結ばれたばかりの、いわゆる「慰安婦問題」をめぐる日韓同意である。わたしは安倍晋三総理とは親交があるとは言えない。

 そもそも、ろくに会ったことすらない。パーティに招かれたこともない。合ったのは前述した機会、岸政治について一言だけ語ろうとした時を含めて、四半世紀の間に10回にも満たないだろう。

 それも二人きりで会ったことは一度も無く、すべて余人がいた。余人がいたことを公表できなかった場合もあるが、実際は、居た。

 これは、わたしが政治記者として政治家と密かに二人きりで会うのを仕事のノウハウとしていた頃も通じての話だ。だからわたしを古くから知る人々にとって意外だろう。

 権力者との関係は、これでよい。利害関係を持たないためにも。総理の周りには放っておいても、人が群がる。

 わたしは電話で意見するだけである。それも滅多に電話しない。総理は究極の公人であり国益に尽くすその時間を邪魔したくないからだ。

 

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 安倍晋三総理を見ていると、今までにない人懐っこさを見ますが、まさに日本人特有のものだと思います。戦時中、日本兵は現地で人懐っこく、子供たちに対しては優しかったと聞きます。しかし、こんなに相手と真剣に話す総理も稀です。

 歴代の総理の様に、相手の質問に対して鼻をくくったような答弁をせず、相手に向かって果敢に理論を吹っ掛け、やり込めてしまう事さえ有ります。

 我々の目線とさして変わらない、そんな人が、われらの総理になったという感じは、私にはひしひしと感じられます。これってすごい事なのですがどうでしょう。

 安倍応援団には実に頼もしい総理ですが、相手の野党にとって、こんなに戦いにくい総理は居ないでしょう。簡単に言えば「大人げない」と言われそうですが、これが安倍総理の真骨頂でしょう。