バベットの晩餐会 / ガブリエル・アクセル
102 min Denmark
Babettes gaestebud (1987) / Babette's Feast (USA)
Directed by Gabriel Axel. Written by Gabriel Axel based on a novel by Karen Blixen. Produced by Bo Christensen, cinematography by Henning Kristiansen, film editing by Finn Henriksen. Performed by Stephane Audran (Babette Harsant), Birgitte Federspiel (Old Martina), Vibeke Hastrup (Young Martina), Bodil Kjer (Old Philippa), Hanne Stensgaard (Young Philippa), Jarl Kulle (Old Lorens Lowenhielm), Gudmar Wivesson (Young Lorens Loewenhielm), Jean-Philippe Lafont (Achille Papin), Bibi Andersson (Swedish Court Lady-in-waiting), Ghita Norby (Narrator).
「わたしは全力をつくして、ひとを幸福にしようとしました」
メッセージは、ひとりの天才のこのことばに凝縮される。
公開当時、作品があまりにも評判になり、バベットが晩餐会でつくったメニューを再現しましたというディナーコースまであらわれたのを思い出す。見直してみて、前回よりもさらに深く、よかった。
静かな語り口、むだのない編集。えがかれる人びとには、じつは悪人はだれもいない。おもだった登場人物は5人。その全員が、自分の幸福を断念したひとである。なにかをあきらめ、望みを切り捨てて人生をすごした。そして老いた。けれど最後まで、自分のことを思う以上に誰かを思う、あるいは、なにかのために生きるという生き方は捨てなかった。全員に共通しているその誠実さが、見るがわに深い慰めをつたえてくる。
十九世紀のデンマークの寒村で、厳格な新教の一派の人びとは肉体的な快楽を忌避する。最高の料理人が腕をふるった晩餐に臨むことに悩み、おいしいとみとめることを必死に拒む。その老人たちの表情が、つくづくいじらしくて、おもしろい。かわいい。けれど淡いユーモアには愛情がともなわれていて、つめたくはない。そうして善というものには、まったく異なるかたちがあるのだということを、みごとに伝えて終わっている。
見ているほうまで、あのすてきなごちそうを食べたキモチになるから不思議です(笑)。
メモリータグ■鳥籠に入って運ばれる、うずらちゃん。うう、かわいい。でもおいしいのだ……。
102 min Denmark
Babettes gaestebud (1987) / Babette's Feast (USA)
Directed by Gabriel Axel. Written by Gabriel Axel based on a novel by Karen Blixen. Produced by Bo Christensen, cinematography by Henning Kristiansen, film editing by Finn Henriksen. Performed by Stephane Audran (Babette Harsant), Birgitte Federspiel (Old Martina), Vibeke Hastrup (Young Martina), Bodil Kjer (Old Philippa), Hanne Stensgaard (Young Philippa), Jarl Kulle (Old Lorens Lowenhielm), Gudmar Wivesson (Young Lorens Loewenhielm), Jean-Philippe Lafont (Achille Papin), Bibi Andersson (Swedish Court Lady-in-waiting), Ghita Norby (Narrator).
「わたしは全力をつくして、ひとを幸福にしようとしました」
メッセージは、ひとりの天才のこのことばに凝縮される。
公開当時、作品があまりにも評判になり、バベットが晩餐会でつくったメニューを再現しましたというディナーコースまであらわれたのを思い出す。見直してみて、前回よりもさらに深く、よかった。
静かな語り口、むだのない編集。えがかれる人びとには、じつは悪人はだれもいない。おもだった登場人物は5人。その全員が、自分の幸福を断念したひとである。なにかをあきらめ、望みを切り捨てて人生をすごした。そして老いた。けれど最後まで、自分のことを思う以上に誰かを思う、あるいは、なにかのために生きるという生き方は捨てなかった。全員に共通しているその誠実さが、見るがわに深い慰めをつたえてくる。
十九世紀のデンマークの寒村で、厳格な新教の一派の人びとは肉体的な快楽を忌避する。最高の料理人が腕をふるった晩餐に臨むことに悩み、おいしいとみとめることを必死に拒む。その老人たちの表情が、つくづくいじらしくて、おもしろい。かわいい。けれど淡いユーモアには愛情がともなわれていて、つめたくはない。そうして善というものには、まったく異なるかたちがあるのだということを、みごとに伝えて終わっている。
見ているほうまで、あのすてきなごちそうを食べたキモチになるから不思議です(笑)。
メモリータグ■鳥籠に入って運ばれる、うずらちゃん。うう、かわいい。でもおいしいのだ……。