うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0068. Dreamcatcher (2003)

2005年08月26日 | 2000s
ドリームキャッチャー/ローレンス・キャズダン

Dreamcatcher (2003)
Directed by Lawrence Kasdan based on the novel by Stephen King. Morgan Freeman as Col. Abraham Curtis. Thomas Jane as Dr. Henry Devlin, Jason Lee as Beaver, Damian Lewis as Jonesy, Timothy Olyphant as Pete Moore, Tom Sizemore as Lt. Owen, Donnie Wahlberg as Douglas 'Duddits' Cavell, Andrew Robb as Young Duddits.


深い雪の森が印象的。スティーヴン・キングの原作で、設定は子供時代からの親友4人組が軸になる点で、スタンド・バイ・ミーと共通している。とはいえ展開は、汚なくて臭くて血みどろで、どろどろのエイリアンもの。こういう話だったの?と唖然、爆笑。アメリカ先住民族の魔よけで知られる「ドリームキャッチャー」、タイトルは全くあっていません。

体内に寄生した巨大なエイリアンは血まみれで肛門から出てくる。少年時代に助けたひ弱な子供、じつは「よいエイリアン」のダディッツが授けてくれた超能力で悪いエイリアン(笑)に立ち向かう男たち。見るからにいじめられそうなひ弱少年ダディッツ、晴れやかな笑顔がまことによいです。エイリアンと対決しつづけてきた戦闘指揮官にはモーガン・フリーマンが登場し、話はごたごたよたよたと楽しく進行する。プライベートライアン、ブラックホークダウンのトム・サイズモアが、ここでも軍人の役で出ていた。



メモリータグ■記憶の倉庫として登場する古い螺旋形の図書館。とてもひかれる。部分的にでも実在するの? 思わずネットで検索してしまいそう(笑)




0067. The Terminal (2004)

2005年08月23日 | 2000s
ターミナル/スティーヴン・スピルバーグ

The Terminal (2004)
Directed by Steven Spielberg. Played by Tom Hanks as Viktor Navorski, Catherine Zeta-Jones as Amelia Warren, Stanley Tucci as Frank Dixon.


周到に構築された人情喜劇。方向はずばりフランク・キャプラだろう。ニューヨークのケネディー空港に足止めされた架空の国、クラコージア人の男が、人助けをしてスタッフの英雄になっていく演出などは、てらいなくやるだけやってしまっている。リアリティーとしては難しいが、細部が練られているため、もつ。

男がどうしてもニューヨークに来なければならない理由はとても技巧的で、よくできている。つまりいかにもニューヨークで、しゃれていると同時に臭い。この情報は断片的に、すこしずつあきらかにされていく。オーソドックスだが、常に効く伏線のありかた。『プライベート・ライアン』で主役の男の職業が謎になっていたのとおなじ、あれである。この種の「箱」がひとついる。

1. 彼は古い缶を大事そうにもっている。
2. 缶には、なにか紙のようなものが入っているのがみえる。だがよくはわからない。
3. あの缶はなんなのか、と作中でほかの人物が話し合うシーンが入り、観客の関心をさそう。
4. この中にはジャズが詰まっているんだ、という本人の台詞。
5. 親しくなった女性にようやく説明をする。父親はジャズのファンで、かつて尼さんに英語でファンレターを書いてもらった。ずらりと並んだ往年のジャズプレーヤーの写真が開示される。この全員がサインを送ってくれた。だがあと一人だけ足りない。サックスのベニー・ゴルソン (Benny Golson) のサインがないのだ。待っている間におやじは死んだ。だから自分はそのサインをもらいにきた。
6. ついにニューヨークの街に出てラマダホテルのジャズクラブへいくと、まさにゴルソンがそこにいて演奏が始まる瞬間。みじかい会話を交わして、音も聴ける。サインをもらうシーンはカットされているが、もちろんもらえる。

なおゼタジョーンズが客室乗務員で登場する。この異性間のシークエンスがハッピーエンドにならないところはそれなりにほろ苦くおさえてある。制服姿は似合っているが、実際にハンクスと並べてみるとどうしても合わない。キャスティング上、カップルとしての見え方よりも別の要素を優先したのだろう。余談ながら、意地の悪い空港監督官を演じたスタンリー・タキはベン・キングズレーを若くした顔だちで、最初は混乱したほど似ていた。



■メモリータグ:壁のしっくい塗り(だったと思う)をしながら、腰をふってジャズダンスのステップを踏むハンクス。うまい(笑)。なりきっていて、ちょっとあやしげ。




0066. 誰も知らない (2004)

2005年08月17日 | 2000s
Nobody Knows (Dare mo Shiranai) / Hirokazu Koreeda

誰も知らない (2004)
監督・脚本・編集/是枝裕和 撮影/山崎裕 音楽/ゴンチチ 出演/柳楽優弥 やぎらゆうや:明、YOU:けい子、北浦愛 きたうらあゆ:京子、木村飛影 きむらひえい:茂、清水萌々子 しみずももこ:ゆき、韓英恵 かんはなえ:サキ、タテタカコ:コンビニの店員、串田和美 くしだかずよし:大家夫妻の夫


うちのめされる。演出や編集がそもそも離れ業だけれど、その技術以上に、描こうとするもののぶれのなさ、それをどのようにすれば表現できるのかをここまで考え抜いたことが信じられなかった。

印象的なシークエンスはいくつもあるけれど、ベランダの草が健やかに育っていくさりげない映像は、この作品全体を表象している。棄民の状態にある子供たちが、乾いた古い土をひろってきて、食べ終えたカップヌードルの容器に入れる。そこに枯れかけたような種をうえ、ベランダに置いて水をあたえる。やがて青々と草花が育つ。育てている子供たち自身とおなじように、そこにあるすべての素材は捨てられたもの、かえりみられないものである。死んでいく姿を誰も知らず、生きている姿も誰も知らない。けれど、そうでない命は、じつはないのではないか。終わりの日まで、生命はほかの生命を生かしながら、みずからも生かされる。それはひっそりとした営みであるにちがいない。

最後にどのシーンで終わるかは、いくつかの選択肢があったと思う。妹を埋葬し、羽田から戻る夜明けで終えることもできたろう。そうすればおそらく表現として、もっともインパクトが強い終わり方になった。

けれどこの監督はそうしなかった。明日にも終わるかもしれない脆い生活の、まちがいなくほぼ最後の時期にあたる一日を、のこされた全員がおだやかに歩く後ろ姿で終えた。子どもたちは社会的な認識の不足によって保護をもとめなかったのではない。保護された時点で、自分たちが一緒に暮らすこのありかたが終わることを知っていたために、保護を避けたのである。だからこそ、社会的に異質で隔絶していても、背負うものが重くとも、家族と生きることを放棄しない「日常」で終わることはより深く誠実だった。同時に、より勇気のいる終わり方だった。


なおモデルになった1988年の巣鴨置き去り事件の場合、公判によれば子どもはもともと5人、14歳の長男のほか7歳、3歳、2歳の幼女と、乳児の次男で、発見されたときは重い栄養失調だった子供もいる。次女は主に長男の友人たちに折檻されて死亡。次男はさきに病死しており、母親はこの遺体をビニールに詰めて押し入れにおいていた。だがそれらの事実と、この作品はべつのものである。



■メモリータグ:冒頭では大切に台におかれた京子のおもちゃのピアノが、やがて足がとれて斜めになり、床におかれるようになる。子どもたちの暮らしが次第に荒れていくことを視覚的に表現した物質のひとつ。ほかに、畳に放り出された洗濯物、消しゴムのように小さくなって床に転がるユキのクレヨン、そのクレヨンで公共料金の督促状の裏に描かれる母親の似顔絵などがある。母親は子どもの数を知られないよう、外に出ることをゆるさずにきたため、毎日室内で絵を描いて遊ぶのである。




0065. ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 (2003)

2005年08月05日 | 米アカデミー作品賞and/or監督賞

ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還/ピーター・ジャクソン

The Lord of the Rings: The Return of the King (2003)
Directed by Peter Jackson based on J.R.R. Tolkien, screenplay by Fran Walsh. Elijah Wood as Frodo, Ian McKellen as Gandalf, Liv Tyler as Arwen, Viggo Mortensen as Aragorn, Cate Blanchett as Garladoriel, Orlando Bloom as Legolas.


十分にたのしめる冒険劇。あえて文句をいくつか。
使命を成就したフロドがわざわざエルフの国へ旅立つ必要はない。ホビットは最後までホビットとしてあたりまえに暮らすことが重要で、つまり、特別な使命をおこなう人物が、人物として特別である必要はない。というより、ここでは特別であってはならない。ふつうの人間(あるいはふつうのホビット)が、ある日巨大な役回りにおかれ、いかなる強制も直接の義務もなくそれをひきうけてまっとうすることに意義があった。だからこそおもしろいのであって……。とはいえ、それが人間ではないところがトールキンならではの異教性ともいえる。人間では無理だといっているのだから。ただ、人間(の一部)はその使命の無償性と意義をきちんと理解して、ホビットの意志に呼応した。つまりレスポンスはできるという設定である。奥が深い。

映画の話に戻ると、さらに一番最後のエピローグ約20分は論外。エンディングタイトルのあいまに数カットずつ凝縮して流せば十分だったはずの、あまりに予測のつく後日譚ばかりだった。ながらく制作の苦楽を共にしたメンバーと別れることが名残り惜しかったかもしれないけれど、作品を自分の私有物にしてしまうと、作品を失う。自分に跳ねかえってきそうなこわい教訓だった。

追記:ところがハリウッドはすっかりこのシリーズに恋をしたらしい。2004年米国アカデミー賞でなんと11部門を受賞している。作品賞・監督賞・脚本賞・編集賞・美術賞・音楽賞・歌曲賞・衣装デザイン賞・メークアップ賞・視覚効果賞・録音賞(サウンドミクシング賞)。


■メモリータグ:ゴンドールの巨大な門。


0064. The Italian Job (2003)

2005年08月05日 | 2000s

ミニミニ大作戦/F. ゲイリー・グレー

The Italian Job (2003)
Directed by F. Gary Gray. Mark Wahlberg, Charlize Theron, Donald Sutherland


意外に愉しめた。泥棒チームを組む男女の間に、展開がみえてしまうラヴシーンがないのもさっぱりしている。引退間際の大泥棒にドナルド・サザーランド、その娘の金庫破りにシャーリーズ・セロン。彼女は典型的なモデル系の美人にみえるのに、きちんと表情がある。マーク・ウォールバーグは猿の惑星などに出ている、やや地味な俳優。

「ミニミニ大作戦」という訳題は、1969年にこのタイトルで公開された旧作のリメークだかららしい。最後の逃走シーンにはオースティン・ミニが三台使われる。ただ、いかにもコメディーのタイトルなので、今回の演出にはあまり合わなかった。時代もちがうし、無理に踏襲しなくてもよかったような気もする。

 

 
■メモリータグ:リーダーが撃たれた直後、冬の湖に車ごと落下するメンバー。「ボーン・スプレマシー」の落下シーンを連想した。

 


0063. The Lord of the Rings: The Two Towers (2002)

2005年08月04日 | 2000s
ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔/ピーター・ジャクソン

The Lord of the Rings: The Two Towers (2002)
Directed by Peter Jackson based on J.R.R. Tolkien, screenplay by Fran Walsh. Elijah Wood as Frodo, Ian McKellen as Gandalf, Liv Tyler as Arwen, Viggo Mortensen as Aragorn, Cate Blanchett as Garladoriel, Orlando Bloom Legolas, Sean Astin as Sam.


この第二作に入ると物語は三つの流れをつうじて多角的に展開され、活気を増す。一つはウルク・ハイの大軍を迎えうつローハンの大規模な武力戦。もう一つは、サルマンの本拠を攻撃して崩落させる樹の精エントたちの自然力。そしてもう一つが不穏な道案内を抱えながらゴンドールへむかうフロドたちの旅程。この分裂と対立の核には、指輪がもつ根本的な分裂性がある。それは指輪の魔力に支配されかかるフロドにも反映される。

守り、攻め、厳しい使命というこの大・中・小の戦いの隅で、さらに最小のたたかいがゴラムという一つの生きものの中で起こる。ここが核。第四の、最も深いこの戦いの敵は自己自身である。全三作をつうじて一番強く内面を造型されたのは醜い妖怪で、この最小のたたかいが、じつは世界を左右する最大のたたかいになる。このシーケンスのおかげで、苦いものが出ていた。



■メモリータグ:ローハンの半円の城の構造。




0062. Head in the Clouds (2004)

2005年08月03日 | 2000s

トリコロールに燃えて/ジョン・ダイガン 英・米

Head in the Clouds (2004)
Directed by John Duigan. Cinematography by Paul Sarossy, costume design by Mario Davignon. Charlize Theron as Gilda Besse, Penélope Cruz as Mia, Stuart Townsend as Guy.

 
ロケ地と映像にとても気をつかって、眺めのいい映画に仕上げようと努力していた。キャンパスの緑地の映像などは、イギリスならではの選択かもしれない。二〇世紀前半のパリの場面では、ヒロインのアパルトマンの前の通りをみるからに書割らしいセットで組んでいる。最初はとまどった。おそらく当時の舞台演劇や、その影響が大きかったであろう映画の画面づくりにならうことでノスタルジーを演出していたのだろう。衣装の再現をふくめ、細部をよく追究してこまやかな心情の揺れを描いている。

驚いたのはペネロペ・クルス。妖しいストリッパーから真摯な従軍看護婦まで大きく幅のある役なのに、どれを演じてもそのものにみえる。台詞はぎこちないにせよ、たいへんな才能だった。シャーリーズ・セロンも富豪の奔放な令嬢によく合っている。この優れた俳優二人と友愛で結ばれるスチュワート・タウンゼントはむしろ平凡な力量なのに、役得です。最近では『リーグ・オブ・レジェンド』The League of Extraordinary Gentlemen (2003) でドリアン・グレイを演じている。

 

■メモリータグ:女性の反対をおしきってスペイン戦線に参戦し、戻った男性は彼女のアパルトマンの前のカフェで待つ。女性が出てくる。喜んで彼女のほうへ進み出るが、女性は顔をしかめ、黙って階段の下へ歩き去る。絶望する男のアップ。ほらほら追いかけないと。彼女怒ってるのはあたりまえでしょう、と楽しんで見たシーン。最後の階段はみるからに書割。

 

 


0061. The Lord of the Rings (2001)

2005年08月02日 | 2000s
ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間/ピーター・ジャクソン

The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring (2001)
Directed by Peter Jackson based on J.R.R. Tolkien, screenplay by Fran Walsh. Elijah Wood as Frodo, Ian McKellen as Gandalf, Liv Tyler as Arwen, Viggo Mortensen as Aragorn, Cate Blanchett as Garladoriel, Orlando Bloom Legolas.


指輪の主は、指輪を捨てることができる人物。当然ながら、捨てればもはや主ではなくなる。この逆説的な指輪が、世界の命運を巻きこんだ物語全体の磁力をなす。ビルボをふくめ主人公フロドの前に指輪をもっていた者たちは、指輪の僕ではあっても、主ではなかったことになる。

映画は、深みはないがあっけらかんとしたエンタテインメントに仕立てられている。ジャクソンは根本的にファンタジーむきの監督なのだろう、むずかしく考え込むことはしない。影の王たちの描き方などに怖さがあっておもしろい。主演のウッドはこの役にあっているが、眉をひそめた単調な表情は三作をつうじて変わらない。全体にキャストは弱い。南半球での長期撮影とあって一流の俳優は次々と断ってきたようである(あるいはスケジュールがあわなかった)。ひきうけた役者たちはこのあと大躍進することになる。

この第一作ではエルフの姫アルウェンの描き方が戦闘的だとして原作ファンから猛烈な抗議が出たらしい。この映画の屈託ない雰囲気にはマッチしていると思う。ただフロドを救出して馬で逃げる背後に追手が迫るシーンは、きちんと撮影できていない。現版ではどうみても追手に追い越されているように見える。どのくらい捨てカットがあるのかわからないが、ある程度まで編集で修正できた点と思う。



■メモリータグ:エルフの世界へ渡る河から、飛沫が白馬のかたちをなして立ち上がってくる。