うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0214. Commando (1985)

2007年07月29日 | 1980s
コマンドー / マーク・レスター
90 min USA

Commando (1985)
Directed by Mark L. Lester, written by Jeph Loeb and Matthew Weisman, cinematography by Matthew F. Leonetti. Performed by Arnold Schwarzenegger (John Matrix), Alyssa Milano (Jenny Matrix), Rae Dawn Chong (Cindy), Dan Hedaya (Arius).


一人で敵の要塞を壊滅させてしまうシュワちゃん、怪力モード全開の、筋肉人間時代の作品です。たくさんのスタントのみなさん、痛かったでしょう。おつかれさまでした。でもこれ、もしかするとコメディーなのかしら……。無関係の死者が山のように出ていて、1980年代のアクション映画の茫然指数の高さがよくあらわれていた。

1947年うまれのシュワルツェネッガーはこの映画を撮影した時点で30代後半、筋肉をよく保っている。ことし2007年で60歳。実業家としても富裕な資産を築いたそうだし、不思議なひとだとあらためて思う。彼が政治家になるなんて悪夢だとスティグレールなどは明言するのですけれど、プロセスはどうあれ、ブッシュよりましかも?(笑)

シュワちゃんの愛娘の役はアリッサ・ミラノちゃん。表情がとてもかわいかった。



メモリータグ■ひとが入っている電話ボックスを投げとばすシュワルツェネッガー。おお。




0213. True Grit (1969)

2007年07月25日 | 1960s
勇気ある追跡 / ヘンリー・ハサウェイ
128 min USA

True Grit (1969)
Directed by Henry Hathaway, written by Charles Portis (novel) and Marguerite Roberts (screenplay). Cinematography by Lucien Ballard. Performed by John Wayne (Marshall Reuben J. 'Rooster' Cogburn), Glen Campbell (La Boeuf), Kim Darby (Mattie Ross), Jeremy Slate (Emmett Quincy), Robert Duvall (Ned Pepper), Dennis Hopper (Moon).


晩年のジョン・ウェインの西部劇。ガンコなおじいちゃんと元気のいい孫むすめ、といった組み合わせなので、家族むけによさそう。制作は1969年、「若者むけ」のニューウェーヴが押し寄せていた時期ながら、これはむしろ古風な流れのなかにある。

父の「かたき討ち」を決意した少女が、賞金ねらいのガンマンを二人やとって山奥へ追跡にむかう。アメリカの映画で、かつてくりかえし描かれた"理想の少女像"がでてくる。明るくて行動力があって、もちろん頭がよくて、おとなにまけないコミュニケーション能力をそなえ、ついでにかわいくて冗談がいえる。これを演じるのはキム・ダービー。1947年生まれなので実年齢では二十歳をすぎているけれど、「少女像」に徹している。

辟易しながらしだいに少女をみとめ、うけいれていくのがジョン・ウェイン。1907年生まれ、公開当時で六十二歳。のった馬がかわいそうになるくらい体重があるものの、最後はかっこよく馬をのりこなして少女に別れを告げてみせた。現場も気をつかったろうと思うカットだった。

旅に同行するもう一人のガンマンはグレン・キャンベル。デニス・ホッパーやロバート・デュバルが脇で顔をみせている。新緑の山がうつくしかった。



メモリータグ■おおきな茶色のねこが、ウェインの小屋に同居している。ペットではなくて、対等の関係なのだそう。にゃおーん、そうですとも。




0212. Bull Durham (1988)

2007年07月22日 | 1980s
さよならゲーム / ロン・シェルトン
108 min USA

Bull Durham (1988)
Directed and written by Ron Shelton. Cinematography by Bobby Byrne. Performed by Kevin Costner 1955- (Crash Davis), Susan Sarandon 1946- (Annie Savoy), Tim Robbins 1958- (Ebby Calvin 'Nuke' LaLoosh).


ケヴィン・コスナー、スーザン・サランドン、ティム・ロビンスという個性的な主演者たちがマイナーリーグのさえない野球選手の話を演じる、じわりとマイナーでほんわかなコメディー。

ロビンスがまだ青年で、とぼけた味がにじむ。『スプラッシュ』Splash (1984) に出ていた、若いトム・ハンクスを連想しました。あのひょろっとした男の子がこんな大俳優になるなんてねえ、という(笑)。

丸顔のロビンスがピッチャー、長い顔のコスナーがキャッチャーというおもしろい組み合わせ。投げる才能はあるけれど、コントロールもかけひきの戦略もないロビンス、いっぽう年長で苦労人で頭脳的なコスナー。おまえはメジャーにいく力があるのに、こんな弱小チームでなにをやってる、というコスナーの挑発にいつのまにかこたえているロビンス、結末はもちろん……。



メモリータグ■なぜかあやしいセミヌードで投球をしている自分、というロビンスの悪夢。ごくろうさま。




0211. The Mosquito Coast (1986)

2007年07月19日 | 1980s
モスキート・コースト / ピーター・ウィアー
117 min USA

The Mosquito Coast (1986)
Directed by Peter Weir, written by Paul Theroux (novel) and Paul Schrader (screenplay). Cinematography by John Seale. Costume Design by Gary Jones. Performed by Harrison Ford (Allie Fox), Helen Mirren (Mother Fox), River Phoenix (Charlie Fox), Jadrien Steele (Jerry Fox), Hilary Gordon (April Fox), Rebecca Gordon (Clover Fox) and Conrad Roberts (Mr. Haddy).


母国アメリカに落胆した発明家が、家族をつれてアフリカに移住する。ジャングルの奥地をきりひらいて生活を始めるものの、次第に状況は悲惨なものになっていく。

ジャングルをつきすすむ独裁的な主人公の像は、どこか『アギーレ』を思い出させる。ここにはヘルツォークのような壮大な神話性はないけれど、よくえがけている。ポール・セローの原作がある。

監督はピーター・ウィアー。腰をすえて、じっくり撮っている。このひとはたしかに手を抜かない。手順をはぶかない。同時期の『目撃者』でも、アーミッシュが家を建てるところをじっさいにみせた。そうした作業のプロセスや物質性そのものが映像にもたらす重みを、知りぬいた作家だと思う。このひとのつくるものには、そうした「つきあわされる重さ」がある。リアリティーです。ここでも、密林にほんとうに村落をつくり、さまざまな発明品をじっさいに配した。それをほんのワンカットしか使わなかったりする。すごい。

キャストは妻がヘレン・ミレン、けなげな長男がリヴァー・フェニックス。いい表情をしていた。伝説の Stand by Me (1986) とこの作品は同年。

エクセントリックな発明家はハリソン・フォードが演じている。うーん、この時期だったら、たとえばダスティン・ホフマンのような性格型の俳優が演じると、さらにじっとりとした複雑な狂気が漂ったかも。でもそれは個人的な好みの問題で、ここでは過酷な撮影に真剣にとりくんでいる。監督と信頼関係があったのでしょう。なおIMDBによると、この役はジャック・ニコルソンが候補だったそう。なるほど、わかりやすいひとをえらぶのね。

ピーター・ウィアー。オーストラリア出身、1944-。
おもな作品:
Master and Commander: The Far Side of the World (2003)
The Truman Show (1998)
Fearless (1993)
Green Card (1990)
Dead Poets Society (1989) 『いまを生きる』
The Mosquito Coast (1986)
Witness (1985) 『刑事ジョン・ブック 目撃者』
The Year of Living Dangerously (1982) 『危険な年』
Gallipoli (1981) 『誓い』
Picnic at Hanging Rock (1975)



メモリータグ■終盤、家族はよれよれの布をまとって、難破した船の残骸でジャングルの奥地の河を遡行していく。子供たちのよれよれ感とシンプルさが、ちゃんと愛らしくみえるようアレンジされている。衣装はゲイリー・ジョーンズ。The Talented Mr. Ripley (1999) や、The English Patient (1996) などたくさんの作品を手がけている。




0210. Kaena : La prophetie (2003)

2007年07月15日 | 2000s
ケイナ / クリス・ドゥラポルト、パスカル・ピノン
85 min France Canada

Kaena : La prophétie (2003)
Directed by Chris Delaporte and Pascal Pinon, written by Patrick Daher, Chris Delaporte. Compositing supervisor by Harry Bardak. Voice : Kirsten Dunst (Kaena), Richard Harris (Opaz).


衰えていく共同体を邪悪な神から救うヒロインという、とても米国的なお話。なぜか英語版だったこともあり、フランスのCGとは信じがたい思いでみていた。フランスの若いクリエーターたちの感覚がもののみごとに「ハリウッド化した」ことがよくわかる。CGは、グローバル化がもっともすすんでいる創作領域なのでしょう。20年ほどのあいだに、地域的文化性という要素は蒸発したらしい。

もともとフランスは、CGクリエーターをそだてるしっかりした国立教育組織をもっていた。いいアーティストも多く、彼らは、はやくから北米や欧州で活動してきた。ただ、CGにかんしては、もはや世界の基本技術はおなじというしかない。質感、モーション設定、多重撮影。個々の腕前の差異はあるものの、最後はコストという要素に還元される。手をかけた仕上がりのみごとさは、時間、人件費、ソフトウェアの開発費などに依拠している。いいかえれば、そうしたコストに還元できないほどの決定的な才能をもった作家には、まだ出会わない。

この作品の絵は美しくできていた。フランスCG界の総力をあげた体制だったのでは。
ところが、こうなると逆に勝負は原点にもどることになる。つまり脚本、監督、作画という「人間の発想力」が問われてしまう。フランスでも、最高のCG作家(と脚本家)はまだ育っていないらしい。今回の脚本はアメリカ映画のストーリーパターンに宮崎駿さんの影響を足したような展開で、ざんねんながらあまり独創性にはめぐまれていなかった。「フルCGでアニメをつくろう」という技術的な動機から入った作品は、がいして失敗している。ものごとの順序が逆だからかな。

といいつつ、たのしく見ていました(笑)。ヒロインの名前はカイーナ。勇敢な少女の造型が快い。キルステン・ダンストが声を担当していて、台詞も非常に明瞭だった。
翌年につくられた、日本の『アップルシード』とあわせて見るのもおもしろいかもしれません。



メモリータグ■恋人の帰りを不安に待つ、村の青年。男の子はこれでいいと思いまーす。




0209. 病院坂の首縊りの家 (1979)

2007年07月08日 | 1970s
Byoinzaka no kubikukuri no ie / Kon Ichikawa
aka. The House of Hanging
139 min Japan

病院坂の首縊りの家 (1979)
監督:市川崑、原作:横溝正史、脚本:日高真也・久里子亭、撮影:長谷川清、音楽:田辺信一、企画:角川春樹事務所、出演:石坂浩二(金田一耕助)・佐久間良子(法眼弥生)・桜田淳子(法眼由香利)・久富惟晴(五十嵐猛蔵)・入江たか子(後妻五十嵐千鶴)・萩尾みどり(法眼琢也の愛人山内冬子)・あおい輝彦(義理の息子山内敏男)・草刈正雄(日夏黙太郎)・横溝正史(老推理作家)・加藤武(等々力警部)・三谷昇(石切鑑識課員)・三木のり平(野呂十次)・白石加代子(宮坂すみ)・草笛光子(雨宮じゅん)・ピーター(吉沢平次)

振袖を着た、丸い頬のお人形のような女の子が出てくる。時代をかんがえずに富田靖子さんだろうと思ってみていたら、富田さんは1969年生まれで当時まだ十歳。じっさいは桜田淳子さんでした。クレジットで知って、ちょっとびっくり。きちんと俳優として演じていたので……。全体はたいへん豪華なキャスト。

『病院坂の首縊りの家』は、このシリーズのなかで、いちばん暗い雰囲気かもしれない。といっても、どの作品も連続殺人なのだから、いまさら暗いもないのですけれど。ただ、ほかの作品はおおむね鄙びた山奥を舞台にしていて、伝説性が漂う。でもこれは都会的で、そういう遠さがないからかもしれない。

横溝さんが、いわゆるカメオ出演で登場している。おもえば角川が横溝さんのシリーズをプロモートしていこうという会議の席上で、スタッフは誰ひとり、横溝さんがご存命かさえ知らなかったというエピソードがあった。こうして映像になっているのをみると不思議な気がする。八つ墓村など、子供のころおもしろく読みましたけれど。



メモリータグ■画面の上から下へ、急坂を降りてくる人力車。カメラがふたたび上にあがると、坂の上に金田一さん。映像の切り取られ方は横長なのだけれど、これを上下にながく撮った構図が印象に残る。「病院坂」にふさわしい絵だった。