エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

ピウ岳 (1134.1m)

2012年08月10日 | 山紀行 (日高山系)
死闘の笹薮漕ぎも頂上へ直登挑む・・ピウ岳(1134.1m)
■ 山 行 日    2012年8月9日(木)  日帰り
■ ル ー ト     里平川下二股右股~北西面直登沢 往復
■ メ ン バ ー     
夫婦登山 №16
■ 登 山 形 態    沢登り&藪漕ぎ
■ 地 形 図    1/25000地形図  「貫気別山」  「太陽」
                            「岩清水」  「新冠湖」

■ コースタイム   登り 5時間35分  下り 3時間45分
<登り>
07:15        里平橋手前ゲート(駐車)
07:40        中里平橋
08:05        上里平橋
08:15~25     河原にて登山口デポ(沢靴に)
08:55~09:00  C370下二股
10:20        C680二股
10:55        C850源頭
12:50        ピウ岳頂上

<下り>
13:20        下山開始
14:00        C850源頭
14:20        C680二股
15:30        下二股
16:05~20     登山靴デポ地点
17:05        林道ゲート(登山口)


★ ピウ岳・・・
北日高の主稜線から西に離れた位置のピウ岳は、貫気別山(1318m)を主峰にリビラ山(1291m)、樺司山
(1111m)と共に1000mを超える山並みが繋がり日高の主峰「幌尻岳」の展望台ともなるが隠れた存在
の山々かも知れない。この中でリビラ山は、里平大滝コースという登山道が開削されていたが平成15
年の台風により里平川が氾濫し、里平大滝に通じる林道は寸断され麓の町では死者も出る大災害と
なってしまった。

平成19年9月と10月復興途中の工事中にリビラ山を訪れたが、見るも無残な渓相と崩壊した林道の姿
は衝撃的だった。

あれから5年が経過し再来する山は、リビラ山ではなく「ピウ岳(1134m)」の未踏峰。

リビラ山から南に延びる稜線上約3.5キロの位置にピウ岳があるが、登山道は無く以前から気になって
いた1000m超峰の山である。登頂には、新冠湖(東側)側の林道からアイマベツ川東面直登沢が一般
的のようだが現在林道が通行止めのため利用出来ず西側のリビラ川支流から西面直登沢を利用して
挑む事にした。

このルートの登頂記録はほとんど無く、唯一ヒットしたのは「登別嶝友会」の記録だった。

大いに参考になるも林道歩きと藪漕ぎのアルバイトが厳しそうだった・・。




林道入口となるゲート前に駐車して長い林道歩きから出発する (この先に里平橋がある)

★ 廃道化する林道・・・
以前と同じ林道入口にあたるゲートは施錠されているので道路脇に駐車して出発準備をする。

唯一の山行記録から沢にはロープを必要とする滝が無い事からロープは車にデポして行く事にした。
また、長い林道歩きは沢靴では無く登山靴で歩く事も記録から参考にさせて頂く事にする。

上里平橋まで約3.5キロ、更に里平川C370下二股まで約1キロほどあるが、林道には草が生い茂り
土砂や岩が落ちている場所や林道が崩壊している箇所もあってとても車が走れる状況には無かった。
5年前の沢とはまた渓相が変わり川幅を広くしながらも清流が流れる山奥の静かな場所になっている。

歩ける林道は、上里平橋までだった。
それ以降はすぐに崩壊した林道跡で広い河原に降りた方が歩き易かった。
登山靴で歩いて来るなら上里平橋で沢靴に履き替えることをお勧めしたい。

いずれにせよゲートから下二股まで
1時間40分のアルバイトが加味される事がこのルートを選ぶ課題と
なりそう。



淡々と荒れた林道を歩く・・・


以前はここまで車が入れたが現在は草が生い茂る廃道化した林道跡になってしまった

上里平橋からまだ未踏の「樺司山」を望む・・・

★ 挑戦・・・

林道歩きのアルバイトを終えてようやくピウ岳への直登沢出合となる下二股に到着する。
台風の傷跡をそのままに広く荒れてしまった二股は決して綺麗な渓相とは言い難い。左を辿ればリビラ
山の大滝コース、右は今回のピウ岳西面直登沢になる。休憩を挟んで
9:00丁度に出発する。

エバ夫婦の新たなる挑戦の一歩・・・とちょっと大袈裟に。



荒はに広がった下二股付近の河原・・・左股がリビラ山、右股がピウ岳へ

★ 平凡・・・

地形図上には、C600付近まで右岸に林道表示があるが実際にはほとんどが崩壊したのかそれと分か
る痕跡は少ない。
最初から沢の中を淡々と歩くが倒木や流木で歩き難い箇所も何箇所かあった。

沢自体も平坦でほとんど滝も無くガレ場の沢登りに近い感覚で淡々と登る。
C500付近で唯一の滝?になる2mのF1に出合う。直登も可能だがまだ濡らしたくないので左脇から登
る。以降は水量も極端に減り楽しい沢登りとは決して言えなかった。



右股出合から望む「ピウ岳」は遥かに遠くに見える・・


この沢の唯一の滝F1かも・・・


平坦な沢歩きが続く・・・

★ 直登沢へ・・・

参考記録では西面沢を稜線まで詰めて約1時間の藪漕ぎを強いられ下二股から登頂まで約4時間20
分を要していた。当初自分たちも同じルートを辿る予定で登って来たが、C680の二股の状況を見て考
えが変わった。
その右股はV字型の急斜度だったが、ピウ岳の北西面直登沢になり直接ピークに達する最短ルートだ
った。ただその地形図には標高900付近で沢形は無くなり以降上部の状態は不明だった。

仮に900で沢形が消えた時は、標高差200mを超える急斜面の藪漕ぎとなるがそれも念頭に入れて
とにかく直登沢に挑む事にした。

直登沢は、水量の少ないガレ沢で落石の危険もありそうな急で険悪な沢だった。
一歩一歩確実に登りながら高度を稼ぐが、標高約850で突然沢は無くなり源頭では僅かに伏流した
水が申し訳なさそうに流れ出ていた。



見た目以上に急にガレ沢・・・


最上部がこの沢の源頭だった・・

★ 猛烈な笹薮を楽しむ・・・

源頭は僅か850付近だった。
判っているつもりもここから頂上までは約300mの標高差があり一瞬突っ込みを戸惑うエバだった。
取りあえず沢の上の笹薮に登り一考する・・・。

笹は、根曲りではなく背丈も身の丈までは無かった。斜度はあるが「なんとかなるか・・」と行ける所まで
という偵察のつもりで突入することにした。

コンパスで正確に方向を定めテープを頻繁に付けながら猛烈な笹を掻き分けて登り始める。
高度計が900、950と増えて行く事が嬉しく頑張っている自分たちの励みになっていた。

「ダメならいつでも下山すればいいさ」という夫婦登山ならではの気軽さも手伝って気が付くと登り続けて
いた。1000mを超えると上部に明るい稜線が近づき登行意欲が倍増するから不思議だ。

何度も滑っては転び・・を繰り返し、正に死闘の藪漕ぎは2時間近くに及んだ。



エバなら胸元もチーヤンは身の丈の笹薮だった・・


それでもところどころでホッと出来る場所があり藪を楽しむ余裕さえある

★ ついに登頂・・・

12:50 ついに頂上に辿り着く。
それは1mの狂いも無く見事に直登した証の三角点を見つける。

思いも寄らぬ登頂に感激の夫婦。なんか不思議な感じだった・・・。

視界はあまり良くなかった。周りの灌木も邪魔をしているがガスが立ち込めて僅かにリビラ山方向だけを
望める程度だった。

山頂標識は木の下に落ちているのを見つけて取付けた。
周りは藪だらけだったので休める程度に笹を刈る。

何気にビール(ノンアルコール)を出すチーヤン
ここで聞く「プシュッ・・」の音はたまらない幸福感が湧く。
ぬるくても何故に美味しいビールもどき・・・五臓六腑に染み渡った。




ピウ岳の三角点  二等三角点で点名は比宇山(ぴうやま)らしい


良く頑張ったチーヤンが美味そうに飲むノンアルコール「フリー」


議論がありそうな頂上標識、作成して持ち上げるその努力は買います・・


思い掛けない初登頂に感激しました  8/9ピウ岳(1134m)

★ 感謝の下山・・・

13:20 下山開始
別ルートからの下山も考えていたが、頻繁に付けて来たテープの回収もあるので登ったルートを

往復する事にする。

もう二度と登る事は無いかも知れないこの山に登頂させてくれた事を感謝して下山に掛かる。

テープを回収しながらでも滑り下りるように下りは早い。

直登沢源頭から登り2時間を要したが、下りは僅かに40分で降りて来た。





ガレの直登沢は下りも慎重に降りる・・・源頭の伏流水は冷たく美味しかった


唯一の滝で打たれよう・・と思ったが、冷たいので止めた


無事に本流となるリビラ川の下二股付近に降りて来た。 荒れた広い河原が象徴的な渓相だ。

★ 思い・・・

この山魂にまつわる沢登りでは一度で登頂した山は無く沢も読図の失敗などで二度三度と足を運ぶ
因縁の場所だった。
なので今回も「偵察」だよね。と冗談を言いながらの山行だった。
急きょ現地でのルート変更も「偵察」からはみ出る事無く「行ける所まで・・」の意向が強かった。
なのに登頂に至ってしまった思いは強く感激である。

難しい滝は無くルートに迷う分岐も無い、強烈な笹の藪漕ぎに耐え得ればこそ辿りつけたピークだった
のかも知れない。
久しぶりに10時間に及ぶ山行が出来てちょっと満足のエバ夫婦である。

未踏の「樺司山」もすでに二度も登山口まで足を運びながら「虫」と「装備の間違い」が原因で中止と
なっていただけに今回の一度で成功したピウ岳は忘れられない山行になりそうだ。

秋に計画している三度目の樺司山が楽しみになって来た・・・。





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